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明細書 :移動天体検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3425597号 (P3425597)
公開番号 特開2002-139319 (P2002-139319A)
登録日 平成15年5月9日(2003.5.9)
発行日 平成15年7月14日(2003.7.14)
公開日 平成14年5月17日(2002.5.17)
発明の名称または考案の名称 移動天体検出方法
国際特許分類 G01C  1/00      
FI G01C 1/00 E
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2000-334364 (P2000-334364)
出願日 平成12年11月1日(2000.11.1)
審査請求日 平成12年11月1日(2000.11.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人航空宇宙技術研究所
【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】柳沢 俊史
【氏名】磯部 俊夫
【氏名】木村 武雄
【氏名】中島 厚
個別代理人の代理人 【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男 (外2名)
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 山本直孝 木下大輔 渡部潤一,移動天体検出プログラム,地球惑星科学関連学会2000年合同大会予稿集,日本,2000年
磯部秀三,地球危機に対する宇宙モニタリング,映像情報メディア学会誌,日本,1999年,Vol.53,No.1,71-75
調査した分野 G01C 1/00
B64G 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数コマの同じ天球領域の画像から、画像上に大量に写っている恒星の像を除去し、画像上を移動していく移動天体を検出する方法において、CCDカメラによって撮像された少なくとも3コマ以上の観測画像から、前記移動天体の動きを仮定し、その動きに合わせて前記観測画像の一部を切り取り、それら複数の切り取り画像の中央値画像を作成することによって、移動天体の検出には大きな妨害となる大量の恒星像を完全に除去し、仮定した動きの移動天体の像のみを残存させた画像を得て、前記移動天体を検出する方法。

【請求項2】
複数コマの同じ天球領域の画像から、画像上に大量に写っている恒星の像を除去し、画像上を移動していく移動天体を検出する方法において、CCDカメラによって撮像された少なくとも3コマ以上の観測画像から、前記移動天体の動きを仮定し、その動きに合わせた画像の一部を切り取り、それら複数の切り取り画像の中央値画像を作成し、さらに、この作業によって作成された前記複数の中央値画像の平均値画像を作成することにより、移動天体からの光量に対する雑音の比を大幅に抑えて、1コマの観測画像では検出が不可能であった暗い移動天体を抽出し、前記移動天体を検出する方法。

【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動天体を検出する方法を、使用している観測システムで検出が可能なあらゆる移動方向、速度の移動天体に対して実施することを特徴とする移動天体を検出する方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、移動天体(人工天体、スペースデブリ、小惑星、彗星等)の検出技術に関し、特に、小型で暗い人工衛星等の人工天体の監視や軌道決定、また、運用中の人工衛星等に衝突することによって、産業に多大な被害をもたらすスペースデブリの発見、及び軌道決定、さらには、人類の産業活動や存続そのものに大きな影響をもたらす地球衝突型の小惑星や彗星の早期発見、及び軌道決定に関する技術である。

【10】
次に、切り取った全ての画像2-1~2-3の同一ピクセルについて、中央値をとることによって、中央値画像3-1を作成する。平均値は、全ピクセルの値を均等に考慮しているのに対し、中央値は、切り取った全ての画像の着目ピクセルの値を取り込み、値順に並べてその中央に位置するデータの値を採用するもので、特異値を示したピクセルの値は関係してこない。すなわち、本発明で中央値をとるということは特異値を捨てる処理をすることを意味している。切り取った画像のピクセル配置をあらわした図1のピクセル配置図において、1升目が、1つのピクセルを示す。例えば、各画像2-1~2-3中の、ピクセル配置における位置Fにあるピクセルと、位置Mにあるピクセルに注目してみる。簡単のため、天体が存在しているピクセルは、「1」というピクセル値を示し、存在していないピクセルは「0」というピクセル値を示すとする。位置Fに相当するピクセルは、切り取った画像2-1,2-2,2-3のうち2-2には、恒星が存在している。つまり、それぞれ位置Fのピクセル値は「0」、「1」、「0」であり、これらの中央値は「0」である。

【11】
また、位置Mに相当するピクセルは、全てに移動天体が存在している。つまり、位置Mのピクセル値は、「1」、「1」、「1」であり、これらの中央値は「1」である。中央値をとることにより、切り取った画像上を移動していく恒星の影響を除去し、移動天体のみを残すことが可能になる。本実施形態では、例として、中央値画像3-1を作成するために、3コマの観測画像1-1~1-3を用いたが、利用するコマ数及び何コマの画像を利用するかは、雑音となる恒星の数による。多くの恒星が画像に含まれている場合は、その影響をなくすため、より多くの画像を用いて中央値画像を作成しなくてはいけない。

【12】
処理手順(2)は、本発明の次なるステップの実施形態に係り、処理手順(1)により得られた中央値画像を複数コマ用いて、平均値画像を作成し、1コマの観測画像では検出が不可能である暗い移動天体を抽出するものである。図2は、平均値画像ができるまでの処理手順(2)を説明する図である。前記(1)の処理手順で、中央値をとるということは、恒星の影響を除去するという効果の他に、恒星以外の夜空の明るさによる背景雑音の影響を抑え、暗い移動天体を検出できるという効果がある。ここで、中央値をとったときの背景雑音の値(中央値画像の背景雑音)をσmとすると、σmは、式(1)のように表される。
【数1】
JP0003425597B2_000002t.gif但し、σiは、1コマの画像の背景雑音、係数1.2は統計的に得られた値、nは、中央値画像を作成するのに用いた観測画像のコマ数である。

【13】
しかし、平均値は、中央値と比較して、背景雑音の抑制がより効果的である。平均値をとったときの背景雑音の値(平均値画像の背景雑音)をσaとすると、σaは、式(2)のように表される。
【数2】
JP0003425597B2_000003t.gif上記式(1)、(2)からわかるように、平均値をとれば、中央値の1.2倍暗い移動天体まで検出可能であることがわかる。本実施形態は、さらに検出限界をあげるため、前記実施形態に係る処理手順(1)より、それぞれ複数コマの画像の中央値画像3-1,3-2,・・・,3-kを作成して恒星の影響を除去し、その後、より暗い移動天体を検出するために、作成された複数コマの中央値画像3-1~3-kの平均値画像4-1を作成するものである。

【14】
上記処理手順(3)は、本発明のさらに次のステップの実施形態に係り、前記処理手順(1)、(2)の作業を、移動天体の考えられるあらゆる速度ベクトルに関して実行するものである。図3は、処理手順(3)において実行される走査すべき移動天体の速度ベクトル領域を示した図である。太い矢印が、移動天体の画像上の速度ベクトルで、実線で囲まれた灰色部分がパラメータ領域であり、X軸及びY軸は、移動天体の画像上の速度ベクトルの2つの成分をあらわす。速度成分の最大値は、CCD画像の大きさと、利用する画像のコマ数によって決定する。また、図3中で原点付近の領域は、移動量が小さいため、恒星の除去が効果的に行われない領域である。すなわち、移動天体が恒星の動きに近い動きをしている移動天体に着目して本発明の処理手順(1)を実行しても、その場合には恒星の除去は効果的でない。図3のパラメータ領域にはいる任意の速度ベクトルVに対し、切り取る画像の大きさは一意的に決定される。

【15】
図4は、移動天体の速度ベクトルの相違による切り取る画像の大きさ及び移動方向の違いを示す図である。実線で囲まれた四角は、CCDカメラによる観測画像の大きさをあらわし、破線で囲まれた四角は、切り取られた画像の大きさをあらわす。また、太い矢印は、速度ベクトルVを示す。図4(A)で示されているように、速度ベクトルVの絶対値が小さい場合、切り取る画像の面積は大きく、図4(B)で示されるように、速度ベクトルVの絶対値が大きい場合、その面積は小さくなる。図4(A)、図4(B)より、移動量の少ない移動天体の方が、検出が可能となる有効面積が広いことがわかる。多数の各移動天体に対してこの処理を実施することにより、着目天体だけでなく該着目天体に近い動きをしている他の天体の検出が可能であり、その画像も平均値処理を施すことで明るく強調することができる。これによって得られた多数の画像を総合することにより、従来手法では得られなかった暗い移動天体の把握が可能となる。

【16】

【実施例1】図5は、本発明の移動天体検出方法を適用して得られた画像の一実施例を示す図である。静止軌道上の衛星やデブリを捉えるため、口径50cm、F2.0の広視野望遠鏡に、3cm×3cmのイメージエリアをもつCCDカメラを設置し、静止軌道領域を恒星追尾モードで露出時間2秒、撮影間隔13秒で、30コマの連続撮像を行った。静止軌道上の天体の動作は、恒星追尾の場合、1秒間で約15″東に移動する。そのため、この動きに合わせた領域を各画像から切り取り、まず、10コマの中央値画像を3コマ作成し、その3コマの中央値画像の平均画像を作成した。図5(A)は、1コマの観測画像から静止軌道上の天体の動作に合わせて切り取った画像である。画像には、移動天体の検出には雑音となる恒星が多数写っている。図5(B)は、30コマの観測画像を用いて本発明の手法によって作成された最終画像である。画像のほぼ中央に、静止軌道上の天体が明確に捉えられている。雑音となる恒星は、ほぼ完璧に除去されており、また検出された静止軌道上の天体の輝度も、1コマの観測画像と比べて明るくなっていることがわかる。このことは、1コマの観測画像では捉えることのできない暗い移動天体も、本発明によれば不必要な明るい存在である恒星をまず除去し、必要ながら比較的暗い存在である移動天体を平均処理によって強調して検出できることを示している。

【17】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、複数の観測画像からの移動天体の動きに合わせた切り取り画像を用いて、中央値画像及び平均値画像を作成することにより、移動天体検出にとって雑音となる恒星の影響を完全に除去し、さらに1コマの観測画像では捉えることのできない暗い移動天体の検出が可能となる。さらに、多数の各移動天体に対して本発明の処理を実施することにより、着目天体だけでなく該着目天体に近い動きをしている他の天体の検出が可能であり、その画像も平均値処理を施すことで明るく強調することができ、これによって得られた多数の画像を総合することにより、いままでの検出方法では捉えることができなかった観測システムの限界等級以下の暗い移動天体を、自動的に捉えることができるようになる。このことは、運用中の人工衛星や現在建設中の国際宇宙ステーションに深刻な影響を及ぼし、さらに現在、検出がが困難とされている径が数cm~数10cmサイズのスペースデブリの発見、軌道決定に大きく貢献する。また、人類の活動や存続を左右する、径が数100m~lkmサイズの地球衝突型の小惑星や彗星の早期発見を可能にする。

【2】

【従来の技術】図6は、従来の移動天体の検出方法を説明する図である。図6中の観測画像(1-1)及び(1-2)は、同じ天球領域を一定時間間隔で、(1-1)、(1-2)の順で撮像した画像である。画像(1-1)中の1~9、及び画像(1-2)中の1'~9'は恒星であり、恒星1と恒星1'、恒星2と恒星2'、・・・、恒星9と恒星9'が、それぞれ同じ恒星を表している。画像(1-1)中の10、及び画像(1-2)中の10'は、移動天体であり、撮像間隔の間に天球上を移動している。従来の移動天体検出方法は、この撮像して得られた2コマの画像を解析して、それぞれの画像に写っている天体を見付け出し、カタログ化する(図6中のカタログ(1-1D)、カタログ(1-2D)参照)。カタログには、それぞれ天体1~10、及び天体1'~10'の位置、明るさ(Mag)等の情報が書き込まれている。この2つのカタログを比較して、2コマの画像上で同じ位置に、存在しない天体の対を検出することにより移動天体を知る。

【3】
近年、CCDは、大面積化し、一回の撮像で観測できる天空領域は、飛躍的に広がっている。その結果、移動天体を捉えられる確率も上昇するが、移動天体検出にとっては雑音となる恒星の数も増大し、その数は数万に達する。この膨大な雑音の中から、移動天体を検出するには、かなりの困難を伴う。また、移動天体は画像上を移動してしまうため、暗い移動天体を検出するために、露出時間をかけて、天体からの光を画像上の定位置に蓄積させるという恒星の観測に用いられる技術を利用することができない。有効な露出時間は、移動天体が点像に留まっている時間となり、限界等級は、観測に用いられる望遠鏡の口径と、CCDの量子効率で決まってしまう。

【4】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、複数コマの画像を利用することにより、利用した観測システム(望遠鏡及びCCDカメラ)で検出可能な、あらゆる移動方向、移動速度の移動天体について、その検出の妨げとなる大量の恒星の像を除去し、さらに1コマの観測画像では、検出が不可能な程度に暗い移動天体の検出を可能にする方法の提示を目的としている。

【5】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、複数コマの同じ天球領域の画像から、画像上に大量に写っている恒星の像を除去し、画像上を移動していく移動天体を検出する方法において、CCDカメラによって撮像された少なくとも3コマ以上の観測画像から、前記移動天体の動きを仮定し、その動きに合わせて前記観測画像の一部を切り取り、それら複数の切り取り画像の中央値画像を作成することによって、移動天体の検出には大きな妨害となる大量の恒星像を完全に除去し、仮定した動きの移動天体の像のみを残存させた画像を得て、前記移動天体を検出するようにしたものである。

【6】
さらに、本発明は、複数コマの同じ天球領域の画像から、画像上に大量に写っている恒星の像を除去し、画像上を移動していく移動天体を検出する方法において、CCDカメラによって撮像された少なくとも3コマ以上の観測画像から、前記移動天体の動きを仮定し、その動きに合わせた画像の一部を切り取り、それら複数の切り取り画像の中央値画像を作成し、さらに、この作業によって作成された前記複数の中央値画像の平均値画像を作成することにより、移動天体からの光量に対する雑音の比を大幅に抑えて、1コマの観測画像では検出が不可能であった暗い移動天体を抽出し、前記移動天体を検出するようにしたものである。

【7】
さらに、本発明は、前記移動天体を検出する方法を、使用している観測システムで検出が可能なあらゆる移動方向、速度の移動天体に対して実施して、多数の移動天体を検出するようにしたものである。

【8】

【発明の実施の形態】本発明による移動天体検出方法の実施形態を、以下に説明する。本発明は、撮像された複数コマの観測画像を利用することにより、利用した観測システム(望遠鏡及びCCDカメラ)で検出可能な、あらゆる移動方向、移動速度の移動天体について、その検出の妨げとなる大量の恒星の像を除去し、さらに1コマの観測画像では、検出が不可能な程度に暗い移動天体の検出を可能にするものであるが、本発明による移動天体の検出の処理手順は、主に、次の3つに分けられる。
(1)あらかじめ移動天体の動作を予測して、複数コマの観測画像の中央値画像を作成し、移動天体の検出の妨げとなる恒星像を除去する、
(2)前記(1)の処理手順で作成された中央値画像を、複数コマ作成し、それらの中央値画像の平均値画像を作成し、1コマの観測画像では検出が
不可能である暗い移動天体をも抽出する、(3)前記(1)及び(2)の処理手順を、さまざまな移動天体の動作に合わせて実行する。

【9】
以上の処理手順(1)~(3)を、図面を参照して説明する。上記処理手順(1)は、本発明の一実施形態に係り、複数コマの観測画像の中央値画像を作成し、移動天体の検出の妨げとなる恒星像を除去するものである。図1は、中央値画像の作成により恒星像が除去される処理手順(1)を説明するための図である。図1において、1-1,1-2,1-3は、時間軸に示すように、この番号順に、一定時間間隔で撮像された同一領域の観測画像である。各画像1-1~1-3で、☆印は、恒星を表し、●印は、移動天体を表す。まず、一定時間間隔で撮像された複数コマの画像1-1~1-3から、それぞれ移動天体の動作に合わせた領域の画像(図中、点線で囲まれた領域)2-1,2-2,2-3を切り取ってくる。画像2-1~2-3では、●印の移動天体は、すべての画像で同一位置に存在しているが、☆印の恒星の位置は、各画像で変化している。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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