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明細書 :自由噴流式極超音速風洞試験装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3409083号 (P3409083)
公開番号 特開2002-340733 (P2002-340733A)
登録日 平成15年3月20日(2003.3.20)
発行日 平成15年5月19日(2003.5.19)
公開日 平成14年11月27日(2002.11.27)
発明の名称または考案の名称 自由噴流式極超音速風洞試験装置
国際特許分類 G01M  9/04      
FI G01M 9/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願2001-141401 (P2001-141401)
出願日 平成13年5月11日(2001.5.11)
審査請求日 平成13年5月11日(2001.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501137577
【氏名又は名称】独立行政法人航空宇宙技術研究所
発明者または考案者 【氏名】永井 伸治
個別代理人の代理人 【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信 (外2名)
審査官 【審査官】本郷 徹
参考文献・文献 特開 平5-172691(JP,A)
特開 平11-44607(JP,A)
特開 平10-267786(JP,A)
調査した分野 G01M 9/04
特許請求の範囲 【請求項1】
気流入口としての円形断面ノズルと、気流出口としての吸込口を有する測定室を有する自由噴流形式の極超音速風洞において、前記測定室内に支持された風洞模型に、極超音速気流が衝突することにより発生する模型衝撃波が、前記測定室中を流れる自由噴流の境界面に到達する付近に、前記模型衝撃波を前記風洞模型の後方に反射させる整流板を設けたことを特徴とする自由噴流式極超音速風洞試験装置。

【請求項2】
前記整流板は、前記自由噴流境界の外側に接する円筒体の一部からなることを特徴とする請求項1記載の自由噴流式極超音速風洞試験装置。

【請求項3】
前記整流板を、前記風洞模型の後方に配置したことを特徴とする請求項2記載の自由噴流式極超音速風洞試験装置。

【請求項4】
前記整流板に、前記風洞模型を支持する模型支持棒が通過する切り欠きを設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自由噴流式極超音速風洞試験装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、自由噴流形式の極超音速風洞試験装置に関する。

【10】
従来のものと相違する点は、円形断面ノズル1の軸方向延長上の、模型後方であって、模型衝撃波17(図で二重線で示している)が吸込口3の前方で自由噴流境界に到達する位置に、自由噴流境界の外側に接するように、風洞模型4の下部の一部を覆う円形断面ノズル1の外径と同径の整流板7が設置されている点である。なお、整流板には、模型支持棒5が通過する支持部切り欠き8が設けられ、風洞模型の迎角が調節できるように、模型支持棒5が傾斜角調節可能に風洞試験装置に固定されている。

【11】
次に、本発明の原理及び作用効果を、図2において従来の風洞試験装置と対比しながら説明する。図2は、本発明の特徴とする整流板7の作用効果を説明するための図で、図2(A)は、整流板がない場合、図2(B)は、整流板を配置した場合のそれぞれ気流の流れを模式的に示す図である。極超音速流れ中に、風洞模型(実施形態の場合、有翼往還機模型を使用。)を配置したときの気流の流れをシュリーレン写真等で観察すると、風洞模型の先端から模型衝撃波17が発生している。

【12】
この衝撃波は、図2(A)に示すように、風洞模型後流側に伝搬していくが、極超音速流れ(自由噴流)が、この衝撃波17を通過するとき、流れの流線は中心軸より外側に曲げられる。いま、自由噴流境界近くの衝撃波直前の圧力をP1、衝撃波直後の圧力をP2とすると、P1<P2となる。そして、自由噴流境界線11上の圧力をP3とすると、P1=P3であるため、自由噴流境界11に達した衝撃波17は、膨張波(反射膨張波18)として反射し、膨張波後の圧力をP4とすると、P4=P3となる様な流れとなる。この反射した膨張波18は、自由噴流の流線10を、さらに外側に曲げる働きをするため、下流に設置された吸込口3から溢れる流れが多くなる。溢れる流れが多くなると、測定室に充満して、測定室圧力が上昇し、風洞試験に困難を来すようになる。

【13】
この問題を解決する本発明では、整流板7が、図2(B)に示すように、衝撃波17が、自由噴流境界11に達する位置に、自由噴流境界の外側に接する形で設置されている。この場合、風洞模型4からの衝撃波は、整流板7に固定壁反射して反射衝撃波20となり、この衝撃波発生点での自由噴流境界は消滅し、衝撃波は、気流の流れ(自由噴流)の流線10を中心軸方向に向ける作用を起こす。同様に、自由噴流境界近くの衝撃波直前の圧力P1、衝撃波直後の圧力P2の関係は、P1<P2となる。また、自由噴流の境界線上の圧力P3は、P1=P3である。そして、反射衝撃波後の圧力をP4とすると、P1~P4の相互の関係が、P1=P3<P2<P4となるような流れとなる。このとき整流板7は、自由噴流境界11の外側にあるため、反射点より上流部分の試験気流への影響は無く、全体の閉塞比も増加させない。また、風洞模型4周りの気流は超音速であり、反射した衝撃波角度以上の上流側には擾乱情報が伝搬しないため、風洞模型後方で衝撃波が反射しても風洞模型周りの試験気流には全く影響を及ぼさない。

【14】
図1に示す本発明に係る自由噴流式極超音速風洞試験装置の実施形態に戻り、その構成を詳述する。同実施形態では、風洞模型4周りの作業環境を良好に保つため、風洞模型4の下方側に整流板7を配置することにより、特に、大迎角時に模型腹面から下流下側に伝搬する強い衝撃波を効率的に反射する設計となっている。測定室2内の圧力が増加してしまうと、自由噴流領域は狭まり、自由噴流境界は、整流板7より中心軸側に離れるが、膨張波により偏向された流れは、整流板7に衝突して、同様な衝撃波を発生するため、効率は悪化するけれども、整流効果は持続される。整流された風洞模型後流によって吸込口3より溢れる流れが減少し、また、整流された流れによるエジェクター効果によって減圧が期待でき、測定室の圧力上昇を抑えることが出来る。

【15】
次に、自由噴流式極超音速風洞試験装置に、本発明に係る整流板を設置したものと、設置しない従来技術によるものに対して測定した諸特性から本発明の効果を実証する。図3は、整流板が無い場合(従来方式によるもの)、図4は、測定室に整流板を設置した場合(本発明に係るもの)の、それぞれ模型迎角、測定室圧力、ノズル壁出口圧力(ノズル壁出口の4箇所の測定値)、ノズル壁圧力(ノズル出口より、75mm、137mm、203mmの位置の測定値)の通風時間30秒中の時間変化を測定した結果を示す図である。図3及び図4に示されるように、通風時間の経過と共に、模型迎角を増加してくと、閉塞比が増加し、迎角と平衡して測定室圧力も増加し、ノズル壁圧力の増加が出口から上流側へ伝搬していくことがわかる。

【16】
図3に示す整流板の無い場合では、迎角41.5°付近で、測定室圧力やノズル壁出口圧力が急激に増加している。そして、その時点で吸込口から溢れる流量が過大となり、平衡圧力、さらには極超音速気流が維持できなくなり、これ以上の迎角では試験不可能となる。それに対して、図4に示す測定室に整流板を設けた場合は、測定室圧力の増加が抑制され、さらに迎角45.0°までは、測定室圧力が迎角と平衡して増加し、ノズル出口より上流側203mm位置でのノズル壁圧の変化は見られない。 そして、迎角45.0°を越えた時点で、平衡が崩れ、極超音速気流が維持できなくなる。このように、整流板を設置した本発明の実施形態を試験した結果では、図4に示すように、迎角45.0°まで、安定した気流及び試験データを得ることが出来た。

【17】
図5は、本発明の整流板を設けた自由噴流式極超音速風洞試験装置に実際に風洞模型を投入し、投入から退避まで、模型迎角を段階的に変えて風洞実験した場合の図3及び図4と同じデータを取った特性図である。図より明らかなように、迎角45°まで安定した気流及び試験データをとることができた。模型退避後も極超音速流れが継続し、測定室圧力、ノズル壁出口圧力、ノズル壁圧力が減少して一定値となる。また、限界閉塞比は整流板無しの最大6.6%から、整流板有りで、最大7.0%まで拡大することが出来た。そして、整流板を設置しても模型周りに大きな空間が確保でき、模型周りの作業や、光学的観測のし易さ等、自由噴流式の運用上の利点も十分に維持されている。

【18】

【発明の効果】以上のように本発明に係る自由噴流式極超音速風洞試験装置によれば、測定室の風洞模型の後方に整流板を設けるという簡単な構成により、大型模型の大迎角試験を行っても、試験気流に影響が及ぶことがなく、極超音速試験を継続することができ、試験可能な限界閉塞比の範囲の拡大を図ることができる。

【2】

【従来の技術】超高速航空機や、地上と宇宙の衛星軌道を結ぶ宇宙往還機の開発には、非常に高速の気流を発生することができる極超音速風洞での風洞試験が不可欠である。この場合、風洞模型は大型であればあるほど、模型上の測定点を増やすことができ、より精密な試験が可能となり、超高速航空機や宇宙往還機の開発期間の短縮や開発リスクの低減に直結する。特に、再使用型有翼宇宙往還機の大気圏再突入状態を模擬するためには、大迎角の風洞試験が重要である。

【3】
図6は、従来の極超音速風洞試験装置の一例の構成を示す図である。図中1は円形断面ノズル、2は測定室、3は吸込口、4は有翼往還機等の風洞模型、5は風洞模型4を支持する支持棒、6は測定部である。従来、極超音速風洞における極超音速の流れをつくるノズルとしては、円形断面ノズルが採用されている。この円形断面ノズル1により作り出された極超音速の流れは、非常に高速であるため、風洞模型4の前方でノズルを切り落としても、切り口から生じた流れの弱い擾乱は、風洞模型4の後方にのみ伝搬する。

【4】
また、測定部6は、風洞模型4の周囲に空間を設けることにより、試験対象の風洞模型4の取り扱いや、各種光学観測が容易となるため、風洞模型周りの壁が取り払われた自由噴流形式の測定部となっている。この自由噴流形式の測定部6は、閉鎖型測定部より大きな風洞模型が試験できるとともに、澱み点温度の高い極超音速風洞において風洞壁窓ガラスの耐熱対策が不要となる等の長所があるとされている。そして、測定部6は、極超音速の流れを保つ低圧の測定室2内にあり、下流部に自由噴流を吸い込む吸込口3が設けられる。

【5】
極超音速の気流は、円形断面ノズル1から噴出され、風洞模型4が設置された測定室2内を進行し、吸込口3に吸入される。そのとき、風洞模型4によって自由噴流の流線10は、吸込口3より溢れ、気流が溢れる流れ12となって測定室2内に充満し、測定室圧力が上昇する。なお、二点鎖線11は自由噴流境界を示している。一方、測定室2に充満した静止空気は、吸込口3からエジェクター効果により吸い込み流れ13として、吸い込まれる流量が増大し、逆に圧力が降下し、測定室2の圧力は、ある平衡点に達する。

【6】
このような従来の極超音速風洞試験装置には、以下のような問題点があった。
(1)大型模型の大迎角試験を行うと、気流のノズル内における流れに影響が及ぶ。図6に示すように、大型模型を大迎角に設定して試験を行う場合、気流断面に風洞模型4及び支持棒5を投影した面積と、気流断面積との比で表される閉塞比が大きくなる。このとき、測定室2内の圧力上昇は、気流静圧をはるかに上回り、円形断面ノズル1出口よりノズル境界層内の亜音速流れを介して上流側に伝搬する(矢印14で示す)。すると、ノズル内境界層は、逆圧力勾配をもつため、境界層剥離模式線15(太い鎖線)で示すように壁面より剥離し、剥離箇所で境界層剥離衝撃波16が発生し、それが風洞模型4に伝搬して模型周りの気流に悪影響を及ぼす。
(2)試験できる風洞模型の大きさ及び迎角に限界がある。さらに、迎角の増大や風洞模型の大型化により閉塞比が増大すると、測定室圧力が上昇し、ノズル下流側で極超音速流が維持できなくなり、風洞試験そのものが不可能となる。

【7】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、そのような状況に鑑みてなされたもので、自由噴流形式の極超音速風洞の測定室における圧力上昇を抑えて試験可能な限界閉塞比を増加させ、大型模型を高迎角で試験ができるようにした自由噴流式極超音速風洞試験装置を提供することを目的とするものである。

【8】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の自由噴流式極超音速風洞試験装置は、模型衝撃波の反射特性を利用し、風洞試験に影響しない風洞模型後方に整流板を設け、気流の流れ場を変化させ、測定室の圧力上昇を抑え、限界閉塞比を向上させたものであり、気流入口としての円形断面ノズルと、気流出口としての吸込口を有する測定室を有する自由噴流形式の極超音速風洞において、前記測定室内に支持された風洞模型に、極超音速気流が衝突することにより発生する模型衝撃波が、前記測定室中を流れる自由噴流の境界面に到達する付近に、前記模型衝撃波を前記風洞模型の後方に反射させる整流板を設けたことを特徴とする構成からなる。

【9】

【発明の実施の形態】本発明による自由噴流式極超音速風洞試験装置の実施形態を、航空宇宙技術研究所の1.27m極超音速風洞において実施した実験例を基に詳述する。図1は、本発明に係る自由噴流式極超音速風洞試験装置の一実施形態における要部構成を示す図で、図1(A)は、風洞の測定室近傍の横断面を示し、図1(B)は(A)におけるI-I断面図を示しており、1は円形断面ノズルで、2は測定室、3は吸込口、4は風洞模型、5は模型支持棒、6は測定部であり、これらは従来例として説明したものと共通である。
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5