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明細書 :人工骨に好適な酸化チタン-有機高分子複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4737925号 (P4737925)
公開番号 特開2005-028081 (P2005-028081A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年8月3日(2011.8.3)
公開日 平成17年2月3日(2005.2.3)
発明の名称または考案の名称 人工骨に好適な酸化チタン-有機高分子複合体
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 M
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2003-293611 (P2003-293611)
出願日 平成15年7月11日(2003.7.11)
審査請求日 平成17年7月1日(2005.7.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小久保 正
【氏名】川下 将一
【氏名】中村 孝志
個別代理人の代理人 【識別番号】100089406、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 宏
【識別番号】100096563、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 榮四郎
審査官 【審査官】小森 潔
参考文献・文献 特開2002-248163(JP,A)
特開2002-272835(JP,A)
特開平10-108905(JP,A)
特開平01-291859(JP,A)
特開2002-325834(JP,A)
特開平09-173435(JP,A)
特開平11-323570(JP,A)
調査した分野 A61L 27/00-27/60
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及び6-ナイロンからなる群から選択される高分子化合物からなる基材中間層を形成することなく、チタンテトラアルコキシドのアルコール溶液に酸性のアルコールと水からなる溶液を加えて得られた溶液に温度0℃~50℃、数秒~1週間浸漬するチタニア溶液処理を施し、前記基材表面に直接チタニアゲルを形成し、該チタニアゲルを形成した基材を50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃溶液に浸漬処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液中あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜に変性することを特徴とする人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の製造方法
【請求項2】
チタンテトラアルコキシドがチタン酸テトライソプロピルであり、アルコールがエタノールであり、酸が無機酸である請求項1に記載の人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の製造方法
【請求項3】
チタニア処理溶液がチタンテトラアルコキシドとアルコールの溶液を温度0℃~10℃に保持しながら酸性のアルコールと水からなる溶液を滴下して調製したものである請求項1または2に記載の人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の製造方法。

【請求項4】
低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及び6-ナイロンからなる群から選択される高分子化合物からなる基材に、中間層を設けることなくチタンテトラアルコキシドのアルコール溶液に酸性のアルコールと水からなる溶液を加えて得られた温度0℃~50℃の溶液に数秒~1週間浸漬するチタニア溶液処理を施し、前記基材表面に直接チタニアゲルを形成し、該チタニアゲルを形成した基材を50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃の溶液に浸漬処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液中あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜に変性し人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料を得、前記複合材料をアパタイトに対して過飽和な水溶液に浸漬してアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法
【請求項5】
人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料がチタンテトラアルコキシドとしてチタン酸テトライソプロピルを、アルコールとしてエタノールをそして酸として無機酸を用いて得られたものである請求項に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法
【請求項6】
人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料が低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及び6-ナイロンからなる群から選択される高分子化合物を用いて得られたものである請求項4または5に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法
【請求項7】
人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料がチタンテトラアルコキシドとアルコールの溶液を温度0℃~10℃に保持しながら酸性のアルコールと水からなる溶液を滴下して調製したチタニア処理溶液を用いて得られたものである請求項4,5または6に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体材料としてポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドを用い、前記支持体表面に直接チタニア溶液処理およびこれに続けて温水または酸を加えた室温~95℃溶液に浸漬する処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜を形成した人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
骨としての強度を有し、擬似体液(SBF)中でのアパタイトの形成能の高い、換言すれば、生体活性の高い層の形成になじみがあるエステル基および/または水酸基を含有する有機ポリマー、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、EVOH)を基材形成材料として用いて、該ポリマーからなる基材の表面に、SBFからアパタイト層を形成できる無機材料の層を形成した人工骨用の複合材料の研究が盛んに行われている。
この様な中で、基体材料の表面に生体活性の高い層が形成され易くするための研究もされてきた。特に前記生体活性の層の形成に有利な官能性の基を持たない有機ポリマーを使用する場合にはこのような中間層の形成は必須のものと考えられていた。また前記中間層の形成に3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン〔OCN(CHSi(OC〕(以下、IPTS)およびシリカ溶液を反応させて変性した基板材料が提案され、更に、前記表面に珪酸カルシウム(calcium silicate)溶液で処理することが提案されていた。
【0003】

【非特許文献1】M.Uchida,H.-M.Kim,T.Kokubo,S.Fujibayashi,T.Nakamura J.Biomed.Mater.Res.,64A(2003)164-170.
【特許文献1】特開2002-325834、特許請求の範囲、〔0012〕、〔0013〕
【0004】
前記技術に対し、非特許文献1には、アナターゼのような特定の構造を持つチタニアゲル中のTi-OH基がSBF中において短期間内にアパタイト核の形成を引き起こすことを報告している。前記基材表面をIPTS処理した上に、更に珪酸カルシウ厶(calciumsilicate)溶液で処理した試料はSBF中で2日以内でもその表面にアパタイトを形成するが、前記珪酸カルシウムゲル層は急速にSBF中に溶解すので試料の表面でのアパタイトの形成を制御するのが困難であったのに対し、チタニアゲルのSBFへの溶解度は前記珪酸カルシウムゲル層に比べて格段に小さいから、Ti-OH基を持つチタニアゲル層は生体活性層として優れている。
【0005】
前記特許文献1には、有機ポリマーから実質的になる基材表面にチタニアゲルを形成後、該チタニアグルを温水あるいは酸水溶液処理することにより、哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成できる酸化チタン膜に変性して得られた人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の発明が報告されているが、アパタイトを形成する酸化チタン膜を、中間層の形成を要することなく、形成できる基材を構成するポリマーとしては、水酸基および/またはその誘導体、チオール基、アルデヒド基、アミノ基を含有するものを使用することが必須であることを報告している〔0013〕。
従って、前記人工骨の複合材料は、基材を構成するポリマーとして活性な基を持つものを使用するか、生体活性層の形成を可能にする中間処理を必要とするものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、基材を構成する材料として、人工骨の基材として前記活性基を有さないポリマーを用い、かつ、前記中間層の形成を必要としないで人工骨用の酸化チタン-有機高分子複合体を提供することである。
前記課題を解決すべく、基材ポリマーとして汎用され、または有利な材料である、ポリオレフィン、特にポリエチレン、特に低密度ポリエチレン、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、またはナイロン、特に6-ナイロンを用いて、前記中間層の形成を要することなく人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料を得ることができないか、前記基材構成材料から得た試料、生理活性酸化チタン層形成用材料および酸化チタン-有機ポリマー複合材料形成条件などの組み合わせを、多くの試行錯誤により検討した。後の実施例とEVOHを用いる比較例から理解されるように、驚くベき結果得られた。すなわち、前記基材構成材料を前記本発明者らが報告した特許文献1に記載の「チタンテトラアルコキシドのアルコール溶液に酸性のアルコールと水からなる溶液を加えて得られた温度0℃~50℃溶液に数秒間~1週間浸漬するチタニア溶液処理を施し前記基材表面にチタニアゲルを形成し、該チタニアゲルを形成した基材を50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃溶液に浸漬処理して」基材表面に形成した酸化チタン層が高い生体活性を持ち、かつその上に形成されたアパタイトが接着テープを用いた剥離試験において、高い耐剥離性を持っていることを確認し、前記課題を解决することができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明第1は、(1)ポリオレフィン、ポリエステルおよびナイロンからなる群から選択される低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及び6-ナイロンからなる基材に、直接チタンテトラアルコキシドのアルコール溶液に酸性のアルコールと水からなる溶液を加えて得られた温度0℃~50℃の溶液に数秒間~1週間浸漬するチタニア溶液処理を施し前記基材表面にチタニアゲルを形成し、該チタニアゲルを形成した基材を50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃の溶液に浸漬処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液中あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜に変性することにより得られる人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の製造方法である。好ましくは、(2)チタンテトラアルコキシドがチタン酸テトライソプロピルであり、アルコールがエタノールであり、酸が無機酸である前記(1)に記載の人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料であり、より好ましくは、(3)ポリオレフィンが低密度ポリエチレンであり、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであり、そしてナイロンが6-ナイロンである前記(1)または(2)に記載の人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料であり、一層好ましくは、(4)チタニア処理溶液がチタンアルコキシとアルコールの溶液を温度0℃~10℃に保持しながら、特に氷冷水により前記温度に保持しながら酸性のアルコールと水からなる溶液滴下して調製したものであること前記(1)、(2)または(3)に記載の人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料の製造方法である。
【0008】
本発明の第2は、(5)ポリオレフィン、ポリエステルおよびナイロンからなる群から選択される低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及び6-ナイロンからなる基材に、直接チタンテトラアルコキシドのアルコール溶液に酸性のアルコールと水からなる溶液を加えて得られた温度0℃~50℃の溶液に数秒~1週間浸漬するチタニア溶液処理を施し前記基材表面にチタニアゲルを形成し、該チタニアゲルを形成した基材を50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃の溶液に浸漬処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液中あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜に変性し人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料を得、前記複合材料をアパタイトに対して過飽和な水溶液に浸漬してアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法であり、好ましくは、(6)人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料がチタンテトラアルコキシドとしてチタン酸テトライソプロピルを、アルコールとしてエタノールをそして酸として無機酸を用いて得られたものである前記(5)に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法であり、より好ましくは、(7)人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料がポリオレフィンとして低密度ポリエチレンを、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートをそしてナイロンとして6-ナイロン用いて得られたものである前記(5)または(6)に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法であり、一層好ましくは、(8)人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料がチタンテトラアルコキシドとアルコールの溶液を温度0℃~10℃に保持しながら酸性のアルコールと水からなる溶液を滴下して調製したチタニア処理溶液を用いて得られたものである前記(5)、(6)または(7)に記載のアパタイトを形成した人工骨用複合体の製造方法である。

【発明の効果】
【0009】
発明の効果として、形成されるアパタイト層と酸化チタン-有機ポリマー複合材料とが強固に結合する人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明をより詳細に説明する。
A.基板材料としては、ポリオレフィン、ポリエステルおよびナイロンからなる群から選択される高分子化合物を用いることができる。特に密度ポリエチレン(住友化学社製)、ポリエチレンテレフタレート(PET、東洋化成社製)および6-ナイロン(Scientific Polymer Products,Co.Ltd.)を好ましいものとして挙げることができる。人工骨としての有用性を確認するための試料(S)としては、10×10×1mmの基板を製造して用いた。
基材はブロック、シート、ファイバー、テープ、フィラメント、糸など色々な構造の物で良く、更に、前記材料を素材として二次加工品、例えば、織物(三次元織物などを含む)、不織布、スライーバーなどとして、補強用人工骨としての特性を改善した形状とすることができる。
【0011】
B.チタニア膜を形成するためのチタニア処理
チタニア処理の工程を図1に示す。
前記A.で調製した試料基板(S)の一つの角に白金線(Pt)を融着させた。
チタニア溶液(T.S)は、Ti(OiC(=TiPT)と半量のCOHを含む0~10℃に保持した溶液に、例えば氷冷により0~10℃に保持する条件下で、残り半量のCOHとHNOとHOを含む溶液をゆっくりと滴下することにより調製した。原料比は、Ti(OiC:HO:COH:HNO=1.0:0.1~10:1~100:0.01~10(モル比)である。
調製されたチタニア溶液中に、0~50℃、例えば25℃で数秒間~1週間、例えば24時間、前記試料を浸漬した。その後、試料を0.1~10cm、例えば2cm/分の速度で引き上げ(P.U)チタニア溶液処理試料(T.S.S)を得た。定温乾燥器(空気中、ヤマト社製、DK-600)、加熱温度30~150℃で、24時間かけて乾燥した。
【0012】
C.B.で調製したチタニアゲル層にアパタイト形成能を付与する処理。
この処理は、チタニアゲルの温水あるいは酸水溶液(W.W.T)処理によりアナターゼ微結晶中にTi-OH基を有するチタニア膜を形成させるもので、酸濃度pH7以下および/または期間1時間~1ヶ月および/または温度30℃~120℃、特に50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃溶液に浸漬処理の条件を好ましいものとして採用し得るものである。
ここでは無機酸溶液としてHCl水溶液を用いて処理した場合を示した(図2)。例えば、前記B.の処理をした試料を0.1M塩酸水溶液で80℃で8日間浸漬する温水処理をした。
【0013】
D.チタニア溶液処理、更に温水処理した種々の高分子の表面構造変化を下記の測定機器類を使用して分析した。
1,電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM);日立製作所社製、製品名S-4700。
2,エネルギー分散型X線分光分析(EDX);堀場製作所社製、製品名EMAX-7000。
3,X線光電子分光器(XPS:MT-5500、ULVAC-PHI Co.Ltd.製)
4,薄膜X線回折計(TF-XRD:RINT2500、(株)Rigaku製)
5,チタニア薄膜の剥離強度測定;住友3M社製、製品名スコッチテープ(登録商標)による基板表面に形成されたアパタイトの接着強度の測定
【0014】
E.擬似体液(SBF)中への浸漬によるアパタイト形成能の試験
試料を、pH7.40および温度36.5℃に調整された30mLのSBFに、最長7間までの種々の期間浸漬する。試料は該溶液から取り出し、超純水により静かに洗浄後、室温にて乾燥する。
アパタイトに対して過飽和な水溶液の一例(擬似体液:SBF、ヒトの血漿とほぼ等しい無機イオン濃度を有する。〔T.Kokubo,H.Kusitani,S.Sakka,T.Kitsugi and T.Yamamuro,“Solutions able to reproduce in vivo surface-structure changes in bioactive glass-ceramic A-W”,J.Biomed,Mater.Res.24,721.734(1996)〕を表1に示す。
【0015】
【表1】
JP0004737925B2_000002t.gif

【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1を示す。
試料の作成。
圧力90kgf/Cm、時間10分で、それぞれの樹脂の温度、ポリエチレン(PE)では180℃、ポリエチレンテレフタレート(PT)では270℃、ナイロン 6(N-6)では230℃、比較例のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)では210℃の条件において加圧プレスして有機高分子基板を作製した。
【0017】
下記の表2の原料をチタニア溶液の調製に用いた。TiPT(3.8687g)と半量のCOH(2.9g)を含む溶液を調製し、該溶液を0~10℃に氷冷しながら、該溶液に残りの半量のエタノール(2.9g)、水(0.2450g)および硝酸(0.0858g)からなる溶液を加えて加水分解しチタニアゲル溶液を調製した。
25℃に保持した前記のチタニアゲル溶液10中に前記プレス成形した各試料を24時間浸漬し、チタニア溶液処理をした。前記浸漬後、試料を2cm/分の速度で引き上げ、乾燥器中、80℃で1日間乾燥させに前記プレス成形しチタニア溶液処理試料(S)を作成した。
【0018】
【表2】
JP0004737925B2_000003t.gif

【0019】
前記チタニア溶液処理試料(S)のチタニアゲル層にアパタイト形成能を付与するために、前記チタニア溶液処理試料(S)を0.1M塩酸水溶液10mLに80℃で8日間浸漬し、アパタイトに対して過飽和な水溶液との接触によりアパタイト層形成能を有する酸化チタン層に変性した。
【0020】
図3に、シランカップリング剤(SC)処理することなく、前記チタニアゲル溶液処理及びそれに続く温水処理を施した試料を前記SBFに7日間浸漬したPE、PET、ナイロン-6及びEVOHの薄膜X線回折パターンを示す。PEの場合には、チタニア-温水処理によりアナタース及び/又はブルッカイトに帰属されるピークが観察された。SBF浸漬7日後には、いずれの試料においてもアパタイトに帰属されるピークが観察された。
【0021】
図4に、SC処理することなく、チタニア溶液及びそれに続く温水処理を施した後、SBFに2日または7日間浸漬されたPE、PET、Nylon6およびEVOHのFE-SEM写真を示す。チタニア-温水溶液処理により、薄層が形成されていた。EDX測定によれば、この層はチタンを含んでいた。これより、SC処理を施さなくとも、直接チタニア-温水処理することにより、試料表面にチタニア層を形成させることができることが分かる。SBF浸漬2日後には、PE、PET及びNylon6の表面には、ほぼ均一なアパタイト層が形成されていたが、EVOHの表面には、アパタイトは形成されていないことが分かった。SBF浸漬7日後には、EVOH表面にもアパタイトが形成したが、その量はきわめて少なかった。
【0022】
図5に、スコッチテープ(登録商標)による引き剥がし試験後の試料表面のFE-SEM写真を示す。PE、PET及びNylon6の場合には、引き剥がし試験によってもアパタイトは剥離していなかったが、EVOHの場合には、アパタイトは基板から剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のことから、基材材料として特定のものを用いることにより、SC処理のような前処理をすることなく、本発明者らが開発した、基材表面にチタニアゲルを形成するチタニア溶液と該チタニアゲルを50℃~95℃の温水または酸を加えた室温~95℃溶液に浸漬処理して、アパタイトに対して過飽和な水溶液中あるいは哺乳動物の体液から哺乳動物の骨のアパタイトと同じCa/P原子比のアパタイトを形成する酸化チタン膜に変性する処理とを組み合わせることにより、酸化チタン膜との結合強度が優れたアパタイトが形成され、かつ、生体活性が優れた人工骨用酸化チタン-有機ポリマー複合材料を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】試料のチタニア溶液処理の工程の説明
【図2】試料の温水処理の工程の説明
【図3】実施例1のチタニア溶液処理-温水処理した試料、およびSBF浸漬後TF-XRD(薄膜X線回折)パターン
【図4】実施例1のチタニア溶液処理-温水処理した試料、およびSBF浸漬後のアパタイト形成特性を示すFE-SEM(電界放出型走査型電子顕微鏡)写真
【図5】実施例1で得られたアパタイト形成試料のスコッチテープ(登録商標)による剥離試験後のFE-SEM(電界放出型走査型電子顕微鏡)写真
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4