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明細書 :太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3787629号 (P3787629)
公開番号 特開2004-235325 (P2004-235325A)
登録日 平成18年4月7日(2006.4.7)
発行日 平成18年6月21日(2006.6.21)
公開日 平成16年8月19日(2004.8.19)
発明の名称または考案の名称 太陽電池
国際特許分類 H01L  31/04        (2006.01)
C04B  35/653       (2006.01)
FI H01L 31/04 A
C04B 35/60 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2003-020473 (P2003-020473)
出願日 平成15年1月29日(2003.1.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年秋季(第131回)日本金属学会講演概要 (2002.11.2) 57頁に発表
審査請求日 平成15年1月29日(2003.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】宇治原 徹
【氏名】宇佐美 徳隆
【氏名】藤原 航三
【氏名】中嶋 一雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】金高 敏康
参考文献・文献 特開2002-353432(JP,A)
調査した分野 H01L 31/04
C04B 35/653
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
光電変換機能を持つシリコン結晶層を備えた太陽電池であって、
前記シリコン結晶層は、シリコンより大きいバンドギャップを持つ半導体粒子が三次元的に分散されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記半導体粒子は、炭化ケイ素粒子であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
前記半導体粒子は、2μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池。
【請求項4】
前記半導体粒子は、前記シリコン結晶層に1~30重量%分散されていることを特徴とする請求項1または3記載の太陽電池。
【請求項5】
前記シリコン結晶層は、前記半導体粒子との界面付近に歪が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の太陽電池。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、シリコン結晶は太陽電池材料として最も多く用いられている。
【0003】
従来の太陽電池としては、光電変換部材が単一のpn接合を持つシリコン結晶層を備えた構造ものが知られている。しかしながら、太陽光は紫外線、可視光線、赤外線と幅広いスペクトルを含むにも拘わらず、単一のpn接合を持つシリコン結晶層を有する太陽電池ではある波長域の光のみを吸収して電気に変換するため、光電変換部材と太陽光の間における波長の不整合により光電変換効率の高い太陽電池を実現することが困難であった。
【0004】
このようなことから、異なる種類の半導体薄膜(吸収波長帯域の異なる半導体薄膜)を組み合わせることにより光電変換効率を向上したタンデム型太陽電池が研究、開発されている。この太陽電池は、太陽光をバンドギャップの大きい半導体薄膜から小さい半導体薄膜へと順々に吸収・透過させることにより、太陽光の広い波長領域の光を吸収して光電変換効率を向上することを企図したものである。
【0005】
前記タンデム型の太陽電池は、主に薄膜の多層積層技術を用いて製造される。また、各半導体薄膜はそれぞれ電極が接続され、最大電力を取り出すための最適な構造に設計されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のタンデム型の太陽電池は多層薄膜形成技術が必要で、基本的に多くの半導体薄膜を組み合わせるために、構造が非常に複雑になり、最適な構造設計も非常に困難になる。その結果、太陽電池のコストが非常に高価になり、用途が限定される問題があった。
【0007】
本発明は、従来の製法をそのまま適用可能で、構造も簡単で、高い光電変換効率を有する太陽電池を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る太陽電池は、光電変換機能を持つシリコン結晶層を備えた太陽電池であって、
前記シリコン結晶層は、シリコンより大きいバンドギャップを持つ半導体粒子が三次元的に分散されていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る太陽電池を詳細に説明する。
【0010】
本発明の太陽電池は、光電変換機能を持つシリコン結晶層を備えている。前記シリコン結晶層は、シリコンより大きい伝導帯を持つ半導体粒子が分散されている。前記シリコン結晶層は、太陽光の入射側に表面電極が、太陽光の出射側に裏面電極が、それぞれ形成されている。
【0011】
前記シリコン結晶とは、シリコン単結晶、シリコン多結晶を意味する。
【0012】
前記シリコン結晶層は、5μm以上の厚さを有することが好ましい。ただし、裏面電極を兼ねるグラファイトのような基板にシリコン結晶層を形成する場合にはそのシリコン結晶層の厚さは5~10μmにすることが好ましい。バルクシリコン結晶から切り出してシリコン結晶層を作製する場合は、そのシリコン結晶層の厚さは100~350μmにすることが好ましい。
【0013】
前記光電変換機能を持つシリコン結晶層としては、例えばpn接合を持つシリコン結晶層、pin接合を持つシリコン結晶層を挙げることができる。
【0014】
前記シリコンより大きい伝導帯を持つ半導体粒子としては、例えば炭化ケイ素(SiC)粒子、ダイアモンド粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子等を挙げることができる。
【0015】
前記半導体粒子は、2μm以下、より好ましくは0.5~1.5μmの平均粒径を有することが望ましい。これは、次に説明する3つの理由によるものである。1つ目の理由は、太陽光を前記半導体粒子が分散されたシリコン結晶層に入射させた場合、太陽光のうちのシリコン結晶層に吸収される波長を持つ光が前記半導体粒子に吸収されるのを防ぐために、前記半導体粒子をそのSi吸収光の波長より短い平均粒径である2μm以下にすることが好ましい。2つ目は、一定重量の半導体粒子をシリコン結晶層に分散させた場合、半導体粒子の粒径を小さくするほど、その粒子の存在に起因するキャリア発生部位が増大することから、前記半導体粒子を2μm以下の小さい平均粒径にすることが好ましい。3つ目は、半導体粒子との界面近傍のシリコン結晶層に歪を生じさせることで、半導体粒子の平均粒径が2μmを超えると、界面近傍のシリコン結晶層の歪の力が増大してそのシリコン結晶層に転位(欠陥)が生じる虞がある。
【0016】
前記半導体粒子は、その平均粒径が2μm以下である条件の下で、前記シリコン結晶層に1~30重量%分散されていることが好ましい。前記半導体粒子の分散量を1重量%未満にすると、半導体粒子の分散によるキャリア発生の増大効果を十分に達成することが困難になる。一方、前記半導体粒子の分散量が30重量%を超えると、前記シリコン結晶層を構成するSiの連続性が阻害されて光電変換の機能が損なわれる虞がある。より好ましい前記半導体粒子の分散量は、10~25重量%である。
【0017】
特に、前記半導体粒子はその平均粒径が2μm以下、前記シリコン結晶層の厚さが5μm以上であるとの条件の下で全分散量の少なくとも50%以上が前記シリコン結晶層に3μm以下の粒子間距離をあけて分散されていることが好ましい。前記粒子間距離は、例えば半導体粒子分散シリコン結晶層の断面を電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することが可能である。前記半導体粒子の全分散量の割合および粒子間距離の規定は、前記シリコン結晶層に対する半導体粒子の分散密度、分散量を示す指標である。すなわち、前記半導体粒子が前記シリコン結晶層に3μmを超える粒子間距離をあけて分散することは、前記半導体粒子が比較的低密度でかつ少ない量で前記シリコン結晶層に分散されていることを意味し、太陽光の入射に際して前記半導体粒子の存在に起因するキャリア発生部位が減少してより一層の光電変換効率の向上が望めなくなる。より好ましい前記シリコン結晶層に分散される半導体粒子の粒子間距離は、0.5~3μm、さらに好ましい半導体粒子の粒子間距離は0.5~2μmである。
【0018】
次に、本発明に係る太陽電池の製造方法を説明する。
【0019】
1)ボロンのようなp型不純物(またはリン、砒素のようなn型不純物)がドープされたシリコン粉末と半導体粒子とを目的とする組成になるように秤量し、これらを均一に混合する。つづいて、この混合粉末をシリコンの融点より高く、前記半導体粒子の融点未満の温度で加熱し、その温度を保持した後、急速冷却することにより、前記半導体粒子が分散されたp型(またはn型)のバルクシリコン結晶を作る。このバルクシリコン結晶から薄板状のシリコン結晶(シリコン結晶層)を切出し、研磨処理等を施した後、このシリコン結晶層にこれにドープされた不純物と反対導電型の不純物を例えば気相拡散、固相拡散のような拡散技術により導入して前記シリコン結晶層にpn接合を作る。次いで、前記シリコン結晶層の太陽光入射側の面に例えばITO等からなる表面電極、前記シリコン結晶層の太陽光出射側の面に例えばアルミニム等からなる裏面電極を形成して太陽電池を製造する。
【0020】
2)グラファイトのような裏面電極を兼ねる基板上に半導体粒子が分散され、ボロンのようなp型不純物(またはリン、砒素のようなn型不純物)がドープされたシリコンのターゲットをスパッタリングして前記不純物がドープされたシリコンおよび半導体粒子を同時に成膜してシリコン結晶層を形成する。つづいて、このシリコン結晶層の表面(太陽光入射側の面)に例えばITO等からなる表面電極を形成して太陽電池を製造する。
【0021】
次に、本発明に係る太陽電池を図1を参照して説明する。
【0022】
シリコン結晶層1は、半導体粒子2が分散され、かつpn接合3を有する。太陽光4が入射される側の前記シリコン結晶層1の面には、ITOのような透明導電材料からなる表面電極5が形成されている。太陽光が出射される側の前記シリコン結晶層1の面には、アルミニウムのような導電材料からなる裏面電極6が形成されている。
【0023】
以上説明した本発明によれば、光電変換機能を持つシリコン結晶層を備え、前記シリコン結晶層をシリコンより大きい伝導帯を持つ半導体粒子が分散された構成にすることによって、以下に説明する作用から光電変換効率が高く、簡素な構造を持つ太陽電池を実現できる。
【0024】
図2は、本発明の太陽電池における半導体粒子が分散されたシリコン結晶層の半導体粒子近傍を示す概略図、図3は図2のシリコン結晶層の半導体粒子近傍におけるバンドギャップ図である。なお、図2中の11はシリコン結晶、12は半導体粒子、13は半導体粒子12との界面近傍に位置するシリコン結晶に形成された歪である。
【0025】
図1に示すようにシリコン結晶層1に太陽光4を照射すると、図2に示すシリコン結晶11部分および半導体粒子12の両方で発電に寄与するキャリアの発生がなされる。つまり、太陽光の異なる波長の光がシリコン結晶11部分および半導体粒子12で吸収されて、それぞれの箇所でキャリアの発生がなされる。この時、図3のバンドギャップ図に示すように半導体粒子はシリコンの伝導帯より高エネルギー側に位置する伝導帯を持つため、半導体粒子で生成されたキャリア(エレクトロン)はシリコン結晶へ移動し、結果的にシリコン結晶内のキャリア発生量を増大させることができる。このため、図1に示す表裏の電極5,6間から大きな開放端電圧および短絡電流を取り出すことができる。
【0026】
また、半導体粒子12の界面近傍のシリコン結晶11に形成された歪13は、図3のバンドギャップ図に示すようにシリコン結晶11のバンドギャップより小さくなるため、シリコン結晶11で本来吸収し得ない長波長の光を吸収して、キャリアの発生量を増大させることができる。このため、図1に示す表裏の電極5,6間から大きな開放端電圧および短絡電流を取り出すことができる。
【0027】
したがって、太陽光の照射においてシリコン結晶11で所定の波長を持つ太陽光を吸収してキャリアを発生でき、シリコン結晶11部分で吸収し得ない光を半導体粒子12で吸収してキャリアを発生でき、さらにシリコン結晶11で本来吸収し得ない長波長の光を半導体粒子12の界面近傍にシリコン結晶11に形成された歪13で吸収してキャリアを発生できるため、半導体粒子が分散されていないシリコン結晶層に比べてキャリア発生量を増大でき、光電変換効率の高い太陽電池を実現できる。
【0028】
特に、2μm以下の平均粒径を有する半導体粒子を用いることによって、前述した3つの理由からキャリア発生量をより増大でき、光電変換効率のより高い太陽電池を実現できる。
【0029】
さらに、前記半導体粒子をその平均粒径が2μm以下である条件の下で、前記シリコン結晶層に1~30重量%分散させることによって、半導体粒子および半導体粒子との界面近傍のシリコン結晶層に生じる歪における種々のバンドギャップを有する部位(キャリア発生部位)をシリコン結晶層に適切に形成できるため、キャリア発生量をより一層増大でき、光電変換効率のより高い太陽電池を実現できる。
【0030】
とりわけ、前記半導体粒子をその平均粒径が2μm以下、前記シリコン結晶層の厚さが5μm以上であるとの条件の下で全分散量の少なくとも50%以上が前記シリコン結晶層に3μm以下の粒子間距離をあけて分散させることによって、半導体粒子および半導体粒子との界面近傍のシリコン結晶層に生じる歪における種々のバンドギャップを有する部位(キャリア発生部位)をシリコン結晶層により多く、かつ均一に形成できる。このため、太陽光を前記半導体粒子が分散されたシリコン結晶層に照射させた場合、キャリア発生量をより一層増大でき、光電変換効率が著しく高い太陽電池を実現できる。
【0031】
また、本発明の太陽電池は従来のタンデム型太陽電池のように多層薄膜形成技術により多くの半導体薄膜を組み合わせることが不要で、構造が簡素である上、従来のpn接合を持つシリコン結晶層を有する太陽電池と同様な方法で製造が可能であるため、大規模の設備投資も不要であるため、低コスト化で実用化が容易である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。
【0033】
(実施例1)
まず、p型不純物であるボロン(B)が1016cm-3ドープされたシリコン(Si)と平均粒径1μmの炭化ケイ素(SiC)粒子とをSiに対してSiCが10重量%の割合になるように秤量して十分に混合した後、グラファイト坩堝に入れた。つづいて、前記坩堝を高温加熱炉に設置し、1650℃に加熱保持した後、急速冷却して円柱状のSiC粒子分散Si多結晶体を作った。このSiC粒子分散Si多結晶体は、SEM写真での観察により、平均粒径1μmのSiC粒子がシリコン多結晶体に0.5~3μmの粒子間距離をあけて分散されていることが確認された。
【0034】
次いで、前記円柱状のSiC粒子分散Si多結晶体を切断して厚さ300μmの円板とした後、表裏面を鏡面仕上げした。つづいて、このSiC粒子分散Si多結晶円板をn型不純物であるリンの雰囲気に曝してリンを前記多結晶円板に気相拡散して表面から1μmの深さにpn接合を形成することにより、光電変換機能を持つSiC粒子分散Si多結晶円板とした。この後、スッパタ技術および選択エッチング技術により前記pn接合を有するSiC粒子分散Si多結晶円板の両面にITOからなる表面電極、アルミニウムからなる裏面電極を形成して前述した図1に示す太陽電池を製造した。
【0035】
(比較例1)
p型不純物であるボロン(B)が1016cm-3ドープされたシリコン(Si)をグラファイト坩堝に入れ、高温加熱炉中で1650℃に加熱保持した後、急速冷却して円柱状のSi多結晶体を作り、このSi多結晶体から厚さ300μm、表面から1μmの深さにpn接合を有する光電変換機能を持つSi多結晶円板を作製した以外、実施例1と同様な太陽電池を得た。
【0036】
得られた実施例1および比較例1の太陽電池について、分光エリプソメトリー装置を用いて太陽光の入射面の偏光反射率を測定することにより、各太陽電池の光電変換機能を持つSiC粒子分散Si多結晶円板、Si多結晶円板での吸収係数の波長依存性を調べた。その結果を図4に示す。
【0037】
図4から明らかなように本発明の実施例1におけるSiC粒子分散Si多結晶円板は、比較例1におけるSi多結晶円板に比べて高エネルギー側で多くの波長域の光を吸収できることがわかる。これは、本発明の実施例1におけるSiC粒子分散Si多結晶円板がより多くのキャリアを発生し、大きな開放端電圧および短絡電流を取り出せることを意味する。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、従来の製法をそのまま適用可能で、構造もタンデム型に比べて簡単で、光電変換効率が高くかつ低コストの太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の太陽電池に一形態を示す概略断面図。
【図2】 本発明の太陽電池における半導体粒子が分散されたシリコン結晶層の半導体粒子近傍を示す概略図。
【図3】 図2のシリコン結晶層の半導体粒子近傍におけるバンドギャップ図。
【図4】 実施例1および比較例1の太陽電池の光電変換機能を持つSiC粒子分散Si多結晶円板、Si多結晶円板での吸収係数の波長依存性を示すグラフ。
【符号の説明】
1,11…シリコン結晶、2,12…半導体粒子、3…pn接合、5…表面電極、6…裏面電極、13…歪。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3