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明細書 :Fischer-Tropsch合成用触媒の調製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3882044号 (P3882044)
公開番号 特開2005-046742 (P2005-046742A)
登録日 平成18年11月24日(2006.11.24)
発行日 平成19年2月14日(2007.2.14)
公開日 平成17年2月24日(2005.2.24)
発明の名称または考案の名称 Fischer-Tropsch合成用触媒の調製方法
国際特許分類 B01J  23/75        (2006.01)
FI B01J 23/74 311Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2003-281798 (P2003-281798)
出願日 平成15年7月29日(2003.7.29)
審査請求日 平成15年7月29日(2003.7.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】山田 宗慶
【氏名】小泉 直人
【氏名】望月 剛久
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特表2002-512556(JP,A)
KRAUM, M. et al.,Fischer-Tropsch synthesis: the influence of various cobalt compounds applied in the preparation of s,Appl. Catal. A Gen.,1999年,Vol. 186, No. 1,2,p. 189-200
LOOSDRECHT, J. van de et al.,Preparation and properties of supported cobalt catalysts for Fischer-Tropsch synthesis,Appl. Catal. A Gen.,1997年,Vol. 150, No. 2,p. 365-376
調査した分野 B01J 21/00-38/74
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
コバルト化合物とニトリロ三酢酸、トランス-1,2-シクロヘキサジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、およびエチレンジアミン四酢酸からなる群から選択される少なくとも1種のキレート剤とを溶媒に溶解して、コバルトを含むキレート錯体を含有するpH8~11の溶液を調製する工程、
前記溶液を、担体としてのシリカに含浸させる工程、
溶液が含浸されたシリカを乾燥する工程、および
乾燥後のシリカを焼成して、前記コバルトの酸化物を担持させる工程
を具備することを特徴とするFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項2】
前記キレート剤は、前記コバルト原子1モル当たり0.1~2モルの割合で用いられることを特徴とする請求項1に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項3】
前記キレート剤は、前記コバルト原子1モル当たり0.3~1モルの割合で用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項4】
前記コバルト化合物は、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、水酸化物塩、ハロゲン化物塩、およびシアン化物塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項5】
前記溶液を前記シリカに含浸させる前に、前記シリカを空気中500~600℃で焼成する工程をさらに具備することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項6】
前記キレート錯体を含有する溶液の前記シリカへの含浸は、湿式含浸法、乾式含浸法、または減圧含浸法により行なわれることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項7】
前記コバルトは、5~40重量%の量で前記シリカに担持されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項8】
前記乾燥は、大気圧雰囲気下、室温~150℃、12~24時間の条件で行なわれることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
【請求項9】
前記焼成は、空気中、300~500℃で2~5時間の条件で行なわれることを特徴とする請求項ないし8のいずれか1項に記載のFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Fischer-Tropsch合成用触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fischer-Tropsch(FT)合成は、非石油系炭素資源(天然ガス、バイオマス、石炭等)由来の合成ガス(CO+H2)から炭化水素を合成する反応である。
【0003】
FT合成用触媒としてCo触媒を使用すると、直鎖の高分子量炭化水素が得られ、これは高品位なディーゼル燃料として注目されている。Co触媒の調製に当たっては、硝酸Coを前駆体として用いてEDTA、クエン酸を配合することにより、アルミナまたはチタニア上に高分散でCo種を形成できることが報告されている(例えば、非特許文献1、および非特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、こうして得られたCo触媒は、金属Coへの還元が進行せず、活性をほとんど示さない。

【非特許文献1】J. van de Loosdrecht, M. van de Haar, A .M. van der Kraan, A. J. van Dillen,J.W.Geus,Appl.Catal.A.Gen.,150,365(1997)
【非特許文献2】M. Kraum, M. Baems, Appl. Catal. A. Gen.,186,189(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、CO転化率が大きく高い活性を示すFischer-Tropsch合成用触媒を調製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、コバルト化合物とニトリロ三酢酸、トランス-1,2-シクロヘキサジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、およびエチレンジアミン四酢酸からなる群から選択される少なくとも1種のキレート剤とを溶媒に溶解して、コバルトを含むキレート錯体を含有するpH8~11の溶液を調製する工程、前記溶液を、担体としてのシリカに含浸させる工程、溶液が含浸されたシリカを乾燥する工程、および乾燥後のシリカを焼成して、前記コバルトの酸化物を担持させる工程を具備することを特徴とするFischer-Tropsch合成用触媒の調製方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、CO転化率が大きく高い活性を示すFischer-Tropsch合成用触媒を調製する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0009】
本発明の実施形態にかかるFT合成用触媒の製造方法においては、一酸化炭素を水素化し得る遷移金属は、キレート錯体として用いられる。
【0010】
一酸化炭素を水素化し得る遷移金属としては、例えば、コバルト、ニッケル、鉄、銅、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウム、および白金等を用いることができる。特に、高分子量炭化水素を合成するには、コバルト、鉄、およびルテニウムが好ましい。
【0011】
こうした遷移金属は、金属硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩等の塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、酸化物塩、水酸化物塩、ハロゲン化物塩、およびシアン化物塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物として用いることができる。これらのうち、特に硝酸塩あるいは酢酸塩が好ましい。金属化合物は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0012】
キレート錯体は、上述したような金属化合物にキレート剤または有機酸を作用させることにより形成することができる。
【0013】
キレート剤としては、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、トランス-1,2-シクロヘキサジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(CyDTA)、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いることができる。
【0014】
また、有機酸としては、例えば、グリシン、アスパラギン酸、およびクエン酸等を用いることができる。
【0015】
上述したような金属化合物と、キレート剤および/または有機酸とを溶媒に溶解して溶液(含浸液)が調製される。溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、および芳香族類を用いることができ、特に水が好ましい。
【0016】
キレート剤を金属化合物に作用させるにあたって、キレート剤の配合割合は、金属化合物に含まれる金属原子1モル当たり0.1~2モルであることが好ましく、0.3~1モルであることがより好ましい。キレート剤の配合割合が0.1モル未満の場合には、キレート剤の添加効果が小さく、最終的に得られる触媒活性が向上しないおそれがある。一方、2モルを越えると、溶液の粘度が大幅に上昇するため、担体への含浸が困難になるおそれがある。有機酸の場合も、キレート剤と同様の割合で用いることが好ましい。
【0017】
金属化合物とキレート剤(または有機酸)とを含有する溶液中では、金属化合物はイオン化して金属イオンが生じ、この金属イオンを中心にキレート剤(または有機酸)が配位して、キレート錯体が形成される。なお、キレート錯体とは、2個以上の配位原子を有する配位子が環を形成して中心金属に結合した錯体をさす。
【0018】
金属イオンを溶液中に安定して溶解させるために、溶液の水素イオン指数(pH)は所定の範囲内に調整することが望まれる。適切なpHは、金属に応じて決定され、例えば、Co化合物またはNi化合物を使用した場合には、pHは8~11の範囲内であることが好ましく、9~10がより好ましい。溶液のpHが上述した範囲を大きく逸脱すると、その溶解が困難になるか、あるいは一次的な溶解後、短時間で析出するような不安定な溶液となるおそれがある。
【0019】
溶液のpHは、pH調整剤を添加することによって、所定の範囲内に設定することができる。pH調整剤としては、通常の酸または塩基を用いることができる。金属化合物が、酸または塩基を含む塩である場合には、pH調整剤も、この酸または塩基と同一であることが、担体への不純物の含有を低減させる観点から好ましい。
【0020】
本発明の実施形態にかかる調製方法においては、上述したようなキレート錯体を含有する溶液を担体としてのシリカに含浸させた後、乾燥、焼成といった工程がなされる。
【0021】
担体として用いられるシリカの比表面積、細孔容積、および平均細孔径は、特に限定されるものではないが、比表面積が100m2/g以上、細孔容積が0.5mL/g以上、平均細孔径が10nm以上であることが望ましい。こうした条件を満たしたシリカは、一酸化炭素の水素化反応を行なうための触媒を調製するために好適である。シリカは、前述の溶液を含浸させる前に、空気中500~600℃で焼成して、内部の不純物を除去しておく。
【0022】
キレート錯体を含有する溶液をシリカに含浸させるに当たっては、例えば、湿式含浸法、乾式含浸法、および減圧含浸法等を採用することができる。このとき、溶液の使用量は、多孔体固有の水分細孔容積量に相当する体積量であることが好ましい。
【0023】
なお、本発明の実施形態にかかる方法により調製される触媒においては、担体としてのシリカに担持されるべき遷移金属の好ましい量は、その金属の種類に応じて決定される。例えば、コバルトまたは鉄の場合には、5~40重量%の範囲でシリカに担持されることが好ましい。また、貴金属であるルテニウムの場合には、1~10重量%の範囲でシリカに担持されることが好ましい。遷移金属の担持量が上述した範囲の下限未満の場合には、後述する水素と一酸化炭素との混合ガスの反応時における一酸化炭素の転化率が低下するおそれがある。一方、上限値を越えて多量に担持しても、それに見合った一酸化炭素の転化率の向上が期待できない。
【0024】
最終的に上述した量で遷移金属が担持されるよう、含浸の工程の回数を適宜決定することが望まれる。1回の含浸のみでは上述した金属担持量にならない場合は、この含浸および後述するような乾燥の工程を複数回、繰り返して行なってもよい。
【0025】
溶液を含浸させた後のシリカは、必要に応じて円柱状、三葉状、四葉状、球状等の形状に成形することができる。
【0026】
乾燥は、常圧乾燥法や減圧乾燥法等により行なうことができる。例えば、常圧乾燥法の場合、大気圧雰囲気下、室温~150℃、12~24時間の条件で行なうことができる。
【0027】
その後、空気中、300~500℃で2~5時間程度の条件で焼成を行なうことができる。
【0028】
上述した方法により、一酸化炭素を水素化し得る遷移金属の酸化物がシリカ上に高分散された触媒が調製される。得られた触媒は、常法により活性化処理を施した後、Fischer-Tropsch合成反応に用いることができる。
【0029】
活性化処理としては、例えば、反応塔内に活性化処理前の触媒を充填し、活性化剤として水素や一酸化炭素または水素と一酸化炭素との合成ガスを流通させながら、300~500℃まで徐々に加熱し、所定の実操作温度で4~12時間程度保持する処理が挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態にかかる方法により調製された触媒の存在下、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスを300~500℃の温度、0.1~20MPaの圧力にて反応させることによって、ガソリン燃料油成分、ディーゼル燃料成分を含む水素化生成物が得られる。
【0031】
具体的には、円筒状のステンレス製高圧反応管内に例えば粉末状の前記触媒を充填し、この反応管を例えば外部に配置したヒーターで、その内部温度が300~500℃となるように加熱する。この状態で、水素と一酸化炭素とを含む高圧混合ガス(0.1~20MPa)を流通させることにより水素化生成物を製造する。
【0032】
この他に、出入口を有する高圧タンク内に高沸点有機溶媒に粉末状の前記触媒を分散させたスラリーを収容し、この高圧タンクを例えば外部に配置したヒーターでその内部温度が300~500℃になるように加熱した状態で、水素と一酸化炭素を含む高圧混合ガス(0.1~20MPa)を前記入口から前記スラリー内に流通させることにより水素化生成物を製造することも可能である。
【0033】
本発明の実施形態にかかる方法により調製された触媒は、通常、粉末状(例えば、平均粒径50~150μm)として用いられる。この他に、この粉末を成型してペレットとしたものを粉砕した顆粒状の形態で使用してもよい。
【0034】
前述の混合ガスの各成分比率は、水素化生成物中に選択される目的とする成分の種類等に依存するため、一概に規定できないが、通常、水素(H2):一酸化炭素(CO)=1~4:1にすることが好ましい。例えば、選択する成分がディーゼル燃料油成分である場合には前記混合ガスとして水素(H2):一酸化炭素(CO)=2:1の混合比率のものを用いることが好ましい。
【0035】
前記触媒の存在下で前記混合ガスを反応させる反応系において、温度および圧力を前記範囲に設定することにより、目的とする成分としてC1のメタンからC4のブタンと、C5~C9のガソリン燃料油成分およびC10~C20のディーゼル燃料油成分と、ワックスのような高沸点パラフィンとを任意に選択することが可能になる。
【0036】
前記混合ガスを前記高圧反応管に供給する時の流速は、一酸化炭素の転化率に影響を及ぼす。一般に、前記混合ガスの流速を遅くすると、一酸化炭素の転化率が高くなるものの、製造された水素化生成物の各成分の分布も変化して目的とする成分の収量も変化する。このため、前記混合ガスの流速は目的とする成分の収量を高める、つまり選択性を高める観点から、0.1MPa、20℃換算で、50~100cm3/分にすることが好ましい。
【0037】
以下、具体例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】
(実施例1)
遷移金属を担持するための担体として、SiO2(JRC-SIO-5)を用意した。このシリカは、比表面積が約200m2/g、細孔容積が約1.0mL/g、平均細孔径は約15nmである。
【0039】
シリカは、空気中、550℃で120分程度焼成し、不純物を除去しておいた。
【0040】
一方、遷移金属としてのコバルトを含有する溶液は、次のように調製した。
【0041】
内容積5mLのメスフラスコに1.0mLの二回蒸留水を収容し、キレート剤としてのNTA 0.8gをその中に分散させた。その後、28質量%のアンモニア水1.0mLを加えて、NTAを溶解させた。続いて、このメスフラスコ内の内容物に、硝酸コバルト1.23gを加え溶解させた後、二回蒸留水を加えて総体積5mLとした水溶液(含浸液)を調製した。この含浸液のpHは9.5であった。
【0042】
この溶液1.0mLを約10℃に維持し、前述のシリカを10分程度浸漬させることによって、コバルト担持量が5wt%となるようにシリカに溶液を含浸させた。
【0043】
溶液が含浸されたシリカは、空気中、393Kで12時間乾燥させた後、空気中、623Kで4時間の焼成を行なって、(NTA-Co)触媒を調製した。
【0044】
(実施例2)
NTAを1.24gのEDTAに変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。この溶液中には、遷移金属としてのコバルトと、キレート剤としてのEDTAとは等モルで含有されている。
【0045】
得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(EDTA-Co)触媒を得た。
【0046】
(実施例3)
NTAを1.55gのCyDTAに変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。この溶液中には、遷移金属としてのコバルトと、キレート剤としてのCyDTAとは等モルで含有されている。
【0047】
得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(CyDTA-Co)触媒を得た。
【0048】
参考例4)
NTAを0.31gのグリシンに変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。この溶液中には、遷移金属としてのコバルトと、有機酸としてのグリシンとは等モルで含有されている。
【0049】
得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(Glycine-Co)触媒を得た。
【0050】
参考例5)
NTAを0.55gのL-アスパラギン酸に変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。この溶液中には、遷移金属としてのコバルトと、有機酸としてのL-アスパラギン酸とは等モルで含有されている。
【0051】
得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(Aspratic-Co)触媒を得た。
【0052】
参考例6)
NTAを0.87gのクエン酸に変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。この溶液中には、遷移金属としてのコバルトと、有機酸としてのクエン酸とは等モルで含有されている。
【0053】
得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(Citric-Co)触媒を得た。
【0054】
(比較例)
NTAを配合しない以外は、前述の実施例1と同様の手法により溶液を調製した。得られた溶液を用いる以外は、前述の実施例1と同様の手法により、(Co)触媒を得た。
【0055】
得られた触媒は、それぞれ高圧固定床流通式反応器に収容して、水素気流中、773Kで還元することにより前処理を施した。その後、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスを導入して、次の条件でFT反応を行なうことにより水素生成物を製造した。
【0056】
反応温度:503K
全圧:1.1MPa
2/CO=2
W/F=5g-cat h/mol
FT反応開始15時間後の各触媒について、XRDおよび水素吸着量測定を行なって、活性、選択性および結晶子径を調べた。得られた結果を下記表1にまとめる。
【表1】
JP0003882044B2_000002t.gif

【0057】
上記表1に示されるように、キレート剤を含有しない溶液を用いて調製されたCo/SiO2触媒(比較例)の転化率は、20%未満にとどまっている。これに対して、キレート剤または有機酸を含有する溶液を用いて調製した場合には、いずれの触媒でも活性が向上した。特に、NTAを添加した触媒では、CO転化率が3倍近く増加している。キレート剤を含有する溶液を用いて調製された触媒においては、生成物の選択性も変化している。具体的には、C5-の選択性が減少して、CH4の選択率が増加している。生成物が低分子量化したことから、Co種がシリカ上に高分散していることがわかる。
【0058】
次に、X線回折法によりCoの結晶状態を観察した。焼成後の触媒のXRDスペクトルは、Co34に帰属される。シェラー式より、Co34の結晶子径を算出し、その結果を前記表1に示した。キレート剤を添加した溶液を用いて調製された触媒は、キレート剤を含まない溶液を用いて調製された触媒に比べ、結晶子径が小さくなっている。このため、キレート剤を含有する溶液を用いることによって、高分散Co種がシリカ上に形成されていると推測される。
【0059】
また、結晶子径と連鎖成長確率には相関がみられ、Co種がより高分散することにより生成物が低分子量化する。
【0060】
続いて、水素吸着量を測定することにより還元触媒の金属Co量を求め、これによりTOF(ターンオーバー数)を算出して、キレート剤の添加効果を検討した。
【0061】
下記表2に、還元後の各触媒についての水素吸着量およびTOFを示す。
【表2】
JP0003882044B2_000003t.gif

【0062】
キレート剤を含有する溶液を用いて調製することによって、得られる触媒の水素吸着量が増加している。この水素吸着量とCO添加率との間には相関がみられるため、TOFは各触媒とも同様な値を示している。こうした結果から、キレート剤含有溶液を用いることによるCO転化率の増加は、活性サイトの質の変化ではなく、数の増加に起因すると推測される。
【0063】
ここで、含浸溶液中におけるキレート剤の添加効果について検討した。SiO2とCo種との相互作用の強さ(Co種の粒子径)は、含浸溶液のpHに依存する。具体的には、SiO2表面におけるシラノール基の状態は、等電点を境として以下に示すように変化する。
【化1】
JP0003882044B2_000004t.gif

【0064】
通常、硝酸Co溶液は、等電点よりも塩基性側にある。また、特に強い塩基性(例えば、酢酸Coを前駆体とした場合)では、2価のコバルトとSiOとが強く相互作用する。この場合には、結晶子径は減少するものの金属への還元が困難になって、FT活性を示さないCo2SiO4が多く形成される。したがって、こうした触媒を活性化するためには、500℃以上の高温での還元処理を施さなければならない。
【0065】
一方、本発明の実施形態にかかる方法において用いられるキレート錯体は、負の電荷を有する。こうしたキレート錯体は、シラノール基との相互作用は大きくないことから、Co2SiO4などが生成されない。また、キレート錯体は硝酸Coと比較して分子サイズが大きいため、乾燥、焼成時に金属のシンタリングが起きず、高分散コバルト種が生成すると推測される。
【0066】
キレート剤を含有する含浸溶液のpH、あるいはキレート錯体の分子サイズを変化させることによって、得られるFT触媒の活性をさらに高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、FischerFischer-Tropsch合成反応の主生成物である炭化水素が燃料、あるいは化学原料として利用される産業、すなわち、エネルギー関連産業および化学産業に好適に用いることができる。