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明細書 :ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すマウス及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4217782号 (P4217782)
公開番号 特開2005-013151 (P2005-013151A)
登録日 平成20年11月21日(2008.11.21)
発行日 平成21年2月4日(2009.2.4)
公開日 平成17年1月20日(2005.1.20)
発明の名称または考案の名称 ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すマウス及びその作製方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01K 67/027
請求項の数または発明の数 7
全頁数 43
出願番号 特願2003-185409 (P2003-185409)
出願日 平成15年6月27日(2003.6.27)
審査請求日 平成17年9月16日(2005.9.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】安倍 真澄
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189、【弁理士】、【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100074228、【弁理士】、【氏名又は名称】今城 俊夫
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100082821、【弁理士】、【氏名又は名称】村社 厚夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
審査官 【審査官】長井 啓子
参考文献・文献 日薬理誌,vol.119, pp.219-226 (2002)
Genomics, vol.61, pp.268-276 (1999)
Nature Genetics, vol.22, pp.82-84 (1999)
調査した分野 C12N 15/00
A01K 67/027
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
RECQL4遺伝子のエキソン13に変異をホモで有し、
RECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードしており、
RECQL4がヘリカーゼ活性を喪失しており、かつ、
ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す、マウス。
【請求項2】
RECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失している、請求項1に記載のマウス。
【請求項3】
RECQL4遺伝子のエキソン13が配列番号3に記載の配列を有する、請求項2に記載のマウス。
【請求項4】
RECQL4遺伝子のエキソン13へ変異をホモで導入することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のマウスの作製方法。
【請求項5】
作製されたマウスのRECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
RECQL4遺伝子のエキソン13が配列番号3に記載の配列を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RECQL4遺伝子のエキソン13への変異導入をジーンターゲッティングによって行う、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す非ヒト哺乳動物、特にマウス及びその作製方法に関する。より具体的には、RECQL4遺伝子のエキソン13に変異を有し、ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すマウス及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロスモンドは、多形皮膚萎縮症(ポイキロデルマ、poikiloderma)と若年性の白内障を特徴とする疾患を、トムソンは多形皮膚萎縮症と遺伝性の骨形成異常を特徴とする疾患を報告したが(Rothmund, A. (1868) Uber cataracten in verbindung mit einer eigenthumlichen hautdegeneration. Arch. Klin. Exp. Ophthal., 4, 159-182.、Thomson, M.S. (1936) Poikiloderma congenitale. Br. J. Dermatol., 48, 221-234)、後に、ロスモンド・トムソン症候群として病名が統一された。即ち、ロスモンド・トムソン症候群(以下RTSと略記)は、成長障害、多形皮膚萎縮症, 脱毛、白内障、骨形成異常、骨肉腫の発がん頻度が高いという徴候を示す常染色体劣性遺伝病である(Ichikawa, K., Noda, T. and Furuichi, Y. (2002) Preparation of the gene targeted knockout mice for human premature aging diseases, Werner syndrome, and Rothmund-Thomson syndrome caused by the mutation of DNA helicases. Nippon Yakurigaku Zasshi., 119, 219-226.、Vennos, E.M. and James, W.D. (1995) Rothmund-Thomson syndrome. Dermatol. Clin., 13, 143-150.、Vennos, E.M., Collins, M. and James, W.D. (1992) Rothmund-Thomson syndrome: review of the world literature. J. Am. Acad. Dermatol., 27, 750-762)。
【0003】
これらの症状はまたRTSが早期老化症候群であることを示唆する。代表的な早期老化症候群として、ウェルナー症候群とブルーム症候群が知られ、それぞれ、WRN遺伝子とBLM遺伝子の突然変異が原因であることが知られている(Mohaghegh, P. and Hickson, I.D. (2001) DNA helicase deficiencies associated with cancer predisposition and premature ageing disorders. Hum. Mol. Genet.,
10, 741-746.)。
これらの遺伝子はRecQヘリケース遺伝子(RecQ helicase)ファミリーに属している。この同じファミリーに属しているRECQL4遺伝子については、多くのRTS患者で突然変異が見つかっている。突然変異は、RECQL4タンパク質分子の中でとくにヘリケース活性をもつ部分に集中している(図1の矢印部分)。そこで、RECQL4遺伝子のヘリケース活性部分の変異がRTSの原因なのかを確認し、RTS患者のマウスモデルを作る目的で、RECQL4遺伝子を破壊したマウス個体の作製が試みられていた。しかし、RECQL4遺伝子の22個のエキソンの中でエキソン5~8をノックアウトしたマウスは胎生3.5~6.5日に死亡し、作製には成功していなかった(Ichikawa, K., Noda, T. and Furuichi, Y. (2002) Preparation of the gene targeted knockout mice for human premature aging diseases, Werner syndrome, and Rothmund-Thomson syndrome caused by the mutation of DNA helicases. Nippon Yakurigaku Zasshi., 119, 219-226)。
【非特許文献1】
Ichikawa, K., Noda, T. and Furuichi, Y. (2002) Preparation of the gene targeted knockout mice for human premature aging diseases, Werner syndrome, and Rothmund-Thomson syndrome caused by the mutation of DNA helicases. Nippon Yakurigaku Zasshi., 119, 219-226
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す非ヒト哺乳動物、特にマウス及びその作製方法を提供することである。より具体的には、RECQL4遺伝子のエキソン13に変異を有し、ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すマウス及びその作製方法に関する。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、マウスRECQL4遺伝子(単にRecql4とも記載する)のエクソン13のみを改変することによって、RECQL4遺伝子欠損マウスを作製し得ること、及び、作製された遺伝子欠損マウスが、ヒトのロスモンド・トムソン症候群の特徴の少なくともいくつかを示すことを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す非ヒト哺乳動物;
(2)ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すげっ歯類動物;
(3)ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示すマウス;
(4)RECQL4遺伝子のエキソン13に変異を有し、かつ、RECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードする、前記(3)に記載のマウス;
(5)RECQL4遺伝子のエキソン13に変異を有し、かつ、RECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードする、RECQL4遺伝子欠損マウス;
(6)RECQL4遺伝子のエキソン13が配列番号3に記載の配列を有する、前記(4)又は(5)に記載のマウス;
(7)RECQL4がヘリカーゼ活性を喪失している、前記(3)~(6)のいずれか1つに記載のマウス;
(8)RECQL4遺伝子のエキソン13に変異を導入することを特徴とする、前記(3)~(7)のいずれか1つに記載のマウスの作製方法;
(9)作製されたマウスのRECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失している、前記(8)に記載の方法;
(10)作製されたマウスのRECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードする、前記(8)又は(9)に記載の方法;
(11)RECQL4遺伝子のエキソン13が配列番号3に記載の配列を有する、請求項(8)~(10)のいずれか1つに記載の方法;及び
(12)RECQL4遺伝子のエキソン13への変異導入をジーンターゲッティングによって行う、前記(8)~(11)のいずれか1項に記載の方法
である。
【発明の実施の形態】
本明細書において、「ロスモンド・トムソン症候群(RTS)の特徴を示す」とは、皮膚の異常(多形皮膚萎縮症、無色毛及び脱毛等)、低身長(体長)、骨形成障害、白内障、免疫異常、不稔及び悪性腫瘍といったヒトRTSの特徴のうち1以上の特徴を示すことをいう(後述の表1を参照)。
本明細書において、「RECQL4遺伝子欠損マウス」とは、RECQL4遺伝子に変異を有し、その結果、REQCL4タンパク質が正常な機能を有しないマウス、特にREQCL4のヘリカーゼ活性が失われているマウスをいう。本発明の「RECQL4遺伝子欠損マウス」は、ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す。
本発明においては、RECQL4遺伝子のエキソン13に変異が導入され、それによってRECQL4タンパク質の機能、特にヘリカーゼ活性が失われている。
マウスRECQL4のcDNA配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示した。本発明の一実施態様においては、エキソン13は配列番号3に記載の配列を有する。配列番号3に記載のエキソン13は、配列番号1中のヌクレオチドNo.1945-2124に相当する。
本発明の一態様では、マウスRECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失している。エキソン13(180bp)は、ヘリケース活性に不可欠なアミノ酸配列をコードするエキソンである。エキソン13は、その構成塩基数が3の倍数(180bp)である。したがって、エキソン13全体が通常のスプライシングから除外されると、次のエキソン14~22においてフレーム(アミノ酸配列の読み枠)が保たれて野生型Recql4と相同なタンパク質を発現するようなエキソンとなる。エキソン14~22のいずれのエキソンも構成塩基数が単独では3の倍数ではないので、このようなエキソンを構成しうるエキソンとしては、エキソン1~22の中でエキソン13が最もC末端のエキソンとなる。したがって、本発明のRECQL4遺伝子欠損マウスでは、そのRECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードしていることが好ましい。
【0005】
RECQL4タンパク質は、ヘリケーススーパーファミリーII型(SFII)に属し、7つの保存領域を有するタンパク質である。その中で、エキソン13はモチーフIIIをコードする。モチーフIIIのTAT(SAT)配列は、ATPの加水分解を必要とするヘリケース活性とDNAへの結合にとって重要であることが仮想的RNAヘリケースのX線構造解析により示されている(Story, R.M., Li, H. and Abelson, J.N. (2001) Crystal structure of a DEAD box protein from the hyperthermophile Methanococcus jannaschii. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 98, 1465-1470)。また、マウスeIF4a(SFIIの一つ)のSAT配列の突然変異(Pause, A. and Sonenberg, N. (1992) Mutational analysis of a DEAD box RNA helicase: the mammalian translation initiation factor eIF-4A. EMBO J., 11, 2643-2654.)及びマウスBlmのモチーフIIIの突然変異(Bahr, A., De Graeve, F., Kedinger, C. and Chatton, B. (1998) Point mutations causing Bloom's syndrome abolish ATPase and DNA helicase activities of the BLM protein. Oncogene, 17, 2565-2571.)によって、ヘリケース活性が欠損することが示されている。更に、E.coliのRecGヘリケースのTAT配列の突然変異がブランチ・マイグレーション(branch migration)を抑制することが示されている。これらの報告は、モチーフIIIの存在がヘリケース活性にとって不可欠であることを示している。したがって、本発明の一つの実施態様においては、エキソン13のモチーフIIIを破壊する変異が導入されていてもよい。この場合でも、本発明のRECQL4遺伝子欠損マウスは、そのRECQL4遺伝子のエキソン14~22が、野生型RECQL4遺伝子のエキソン14~22に対応するアミノ酸配列をコードしていることが好ましい。
マウス以外の非ヒト哺乳動物、特にげっ歯類動物を標的とする場合も、モチーフIIIが含まれるエキソンを変異導入の標的とし、かつ上述した性質を有する変異を導入することができる。
マウスとしては、一般的にモデルマウスの作製に用いられる129/SVを使用することができる。
【0006】
本発明において、RECQL4遺伝子への変異の導入は、いわゆる遺伝子ターゲッティングによって行うことができる。
本発明のマウスを作製するためのターゲッティングベクターとしては、例えば、
(1)ポジティブ選択マーカー、
(2)ポジティブ選択マーカーの5’側領域に存在し、RECQL4遺伝子のエキソン1~12又はその一部に相同な配列(Long arm)、及び、
(3)ポジティブ選択マーカーの3’側領域に存在し、RECQL4遺伝子のエキソン14~20又はその一部に相同な配列(Short arm)
を有するベクターを利用することができる(図2、中段)。
Long arm及びShort armは、一般には長い方が好ましいと考えられており、例えば、5’側領域はRECQL4遺伝子のエキソン1~12を含み長さが4kb以上あることがより好ましいが、3’側及び5’側のいずれについても長さは本発明に本質的ではなく、このような遺伝子ターゲティングに通常利用される長さを有していればよい。また、相同組換えを生じさせる領域は、標的領域と完全に同一である必要はなく、相同組換えが生じる程度の配列類似性を有していればよい。
ポジティブ選択マーカーとしては、一般に薬剤耐性遺伝子を用いることができ、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子を用いることができる。
ターゲッティングベクターは、相同組換えが起きたことを確認するためのネガティブ選択マーカーを更に含んでいてもよい。そのようなマーカーとしては、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子を利用することができる。
【0007】
次に、このようなターゲッティングベクターを胚性幹細胞(ES細胞)へ導入する。導入方法は特に限定されず、このような場合に用いられる当業者に知られた一般的な方法及び条件を利用することができる。例えば、エレクトロポレーション、リポフェクチン法などが利用できる。
ターゲティングベクターを導入したES細胞は、適切な条件下で培養することができる。例えば、ES細胞の培養に適し、かつ、ポジティブ選択用マーカー及びネガティブ選択用マーカーに対応した薬剤を含む培地中で培養することができる。ES細胞の培養条件及び培養方法は当業者にはよく知られたものである。必要であれば、更にPCR等により導入された遺伝子及びその位置、方向を確認することもできる。
【0008】
得られたRECQL4遺伝子欠損ヘテロES細胞(Recql4 +/-)を、当業者によく知られた方法に従って、胚盤胞へマイクロインジェクションする。その後、偽妊娠動物への導入等により目的とする遺伝子が導入されたキメラ動物を得ることができる。得られたキメラ動物は、ES細胞由来の性質、例えば毛皮の色等を指標として導入遺伝子について選抜することができる。
選抜された動物と遺伝子導入していない動物とを交配して子孫動物(F1動物)を得る。ES細胞由来の性質、例えば毛皮の色を指標にして生殖細胞に導入遺伝子を有する動物を更に選抜することができる。必要であれば、更に得られた動物の一部、例えば尾部からDNAを取得し、PCRによって導入遺伝子の有無を確認することもできる。このようにして得られたRECQL4遺伝子欠損ヘテロ動物(Recql4 +/-)同士を交配してRECQL4遺伝子欠損ホモ動物(Recql4 -/-)、例えばRECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失している変異動物を得ることができる。
【0009】
得られた本発明のRECQL4遺伝子欠損動物(Recql4 -/-)を、野生型動物(Recql4 +/+)を対照として、その性質を調べることができる。例えば、動物の外観観察、皮膚の状態観察、悪性腫瘍の発生頻度の計測、Recql4の転写産物量の測定、組織標本観察、細胞学解析等を行うことができる。転写産物量は、例えばトータルRNA又はポリ(A)RNAをRT-PCRによって定量することができる。組織標本観察は、常法に従って、ホルマリン等で固定し、パラフィン包埋した切片を用いて行うことができる。細胞学的解析は、組織から細胞を単離し、例えば、種々の刺激、特に放射線、又は紫外線に対する感受性を測定することによって行うことができる。更に、一定期間後の動物の体重、体長、体高等を指標に動物の成育能を測定することもできる。
本発明のRECQL4遺伝子欠損動物(Recql4 -/-)、特にマウスでは、顕著な脱毛、びらん性の出血を伴う病変が見られる。また、上皮、真皮、皮下組織の形成が不良となる。本発明のRECQL4遺伝子欠損動物、特にマウスでは、骨組織の形成、特に、骨梁形成が不良となる。また、本発明のRECQL4遺伝子欠損動物、特にマウスでは生長も遅延し、生後10週において正常固体の約1/3程の大きさしかない。また、このようなマウスから採種した細胞は増殖速度が野生型の2/3程度に低下する。さらに、本発明のRECQL4遺伝子欠損動物、特にマウスは小腸上皮の絨毛の大きさ及び数が正常固体に比べて減少する。
表1は、本発明のRECQL4遺伝子欠損マウスのこれらの特徴、及びその他の特徴とヒトのRTSの症状を比較した結果である。このことは、本発明のRECQL4遺伝子欠損動物、特にマウスがヒトのロスモンド・トムソン症候群(RTS)のモデルとして利用し得ることを示す。本明細書において、「ロスモンド・トムソン症候群の特徴を示す」とは、下記の表においてRTSの特徴として示される1以上の特徴を示すことをいう。
【0010】
【表1】
表1.本発明のRECQL4欠損動物の特徴とヒトのRTSの症状の比較
JP0004217782B2_000002t.gifa:一部のRTS患者の細胞はX線及び紫外線に感受性だが、そうでない患者もいる。
b:2~8週齡のマウス(n=23)について得られたデータ。
c:T細胞が僅かしか見られない。
d:組織学的検査によればRecql4遺伝子欠損マウスの精子形成は正常であったが、Recql4遺伝子欠損マウスをC57BL/6マウス又は同腹仔と交配した場合には新生仔は生まれなかった(オスn=5、メスn=4)。
e:MEFについてのデータ。
【0011】
【実施例】
実施例1
ターゲッティングベクターの構築
ターゲッティングベクターは、ポジティブ選択マーカーとしてのネオマイシン耐性遺伝子及びネガティブ選択マーカーとしてのチミジンカイネース遺伝子(相同組換えが起こらなかった場合、そのままゲノムに取り込まれて、細胞をガンアシクロビルに対して致死感受性にする遺伝子)を含むNTBluntベクターへ、Long arm及びShort armを挿入することにより構築した。
NTBluntベクターは、ネオマイシン耐性遺伝子(PGKNeo)を有するpKJ1ベクター(NAR, vol19, no. 20 5755-5761, 1991. McBurney MW et. al.)を制限酵素EcoRI, BglIIで切り出し、得られたPGKNeopAを、制限酵素EcoRI及びBamHIで切断したpBluescriptIIへ挿入し、更にチミジンカイネース遺伝子(HSV-TK)を常法に従い挿入することにより作製した。
Long arm(ポジティブ選択マーカーの5’側領域)は、マウスES細胞のRecql4遺伝子のエキソン1からエキソン12を含む4.3kbのゲノムDNA(ES細胞株R1から通常のフェノールクロロホルム抽出により調製)を鋳型に、次のプライマーを用いたPCRにより作製した。
mQ4-1(+)30 5’-CTTTTGCACGGCTGCACGGGCGACGGCCAG-3’ (配列番号4)
mQ4-Co1(-)30 5’-CAGCTATGCCAAGGTGCTGAGCCACATCTC-3’ (配列番号5)
Short arm(ポジティブ選択マーカーの3’側領域)は、マウスES細胞のRecql4遺伝子のエキソン14からエキソン20を含む1.9kbのゲノムDNA(ES細胞株R1から通常のフェノールクロロホルム抽出により調製)を鋳型に、次のプライマーを用いたPCRにより作製した。
mQ4-6(+)30 5’-TTGAGCTCAGCGGGTCAGCCAACATCCCTG-3’ (配列番号6)
mQ4-9(-)30 5’-TGCTCTAAACAGGGTCCACAACTGGGAAAG-3’ (配列番号7)
ポリメラーゼとしてKODplus (TOYOBO)を用い、添付のプロトコールに従いPCRを行った。
NTBluntベクターへの制限酵素HpaIの認識部位にShort armを、制限酵素SwaIの認識部位にLong armを常法により挿入した。ターゲティングベクターの作製の基礎になったベクターNTBluntを図3に示す。
【0012】
Recql4遺伝子のジーンターゲティング
ターゲッティングベクターに用いたマウスES細胞は、マウスES細胞R1株(Nagy, A博士より入手。連絡先:Division of Molecular and Developmental Biology, Samuel Lumenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, ON, Canada)(Nagy, A., Rossant, J., Nagy, R., Abramow-Newerly, W. and Roder, J.C. (1993) Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 90, 8424-8428.)であった。
ターゲッティングベクター30μgを、R1細胞2×107個と共にキュベット(電極間4mm)(BioRad)に加え、GenePulserII (BioRad)を用いたエレクトロポレーション(電圧:250V、容量:950μF)によりマウスES細胞へ導入した。
得られたターゲッティングベクター導入ES細胞を、Nagyらの文献(Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 Sep 15;90(18):8424-8. Derivation of completely cell culture-derived mice from early-passage embryonic stem cells.; Nagy A, Rossant J, Nagy R, Abramow-Newerly W, Roder JC. Division of Molecular and Developmental Biology, Samuel Lumenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, ON, Canada.)にしたがい、選択薬剤G418(ポジティブ選択用;ネオマイシン誘導体)及びガンアシクロビル(ネガティブ選択用)を含む培地中で培養した。
双方の選択薬剤に耐性を示す細胞のクローンを培養し、常法によりゲノムDNAを抽出した。抽出したDNAを、制限酵素XbaIで消化し、アガロースゲル電気泳動に付し、ナイロンメンブレンへ転写した。次いで、Recql4遺伝子のエキソン21と22を含むゲノム領域0.6kbの DNA断片からなるプローブ
【0013】
5'-GGACACTCAGGGTCCAAAACCTGGGCAGACTCAGGTAAGTGCCACACCTCTGAGGATAGTTCTTAAAGCTTGGGACAGTGACATGGCCCCATTCAACCCTGACCCCACAGTTCAATCCCTGCTTGGCTCAAGGTTTCCTTGGCTGCTCCGGGTGTGATTTTACATGACAGATGCTATGGTAGCTCAGATGAGGTTACATGCTATCCTCCCACAGCTTCAGGACTGGGAGGACCAAATACGCCGGGATGTCCGCCAGCTCCTGTCCCTGAGGCCAGAAGAAAGGTTTTCAGGAAGGGCTGTGGCCCGCATCTTCCATGGCATTGGTGAGGGCCACGGGGTTGCCTGGTGCCAGCGGGGGATGGGTATTAGAGCCAGCTGAGTCCTCAGGCCTGTGTTTCTGCTCCACCCTAGCGAGTCCATGCTACCCAGCCCAGGTGTATGGGCTGGACCGGCGCTTCTGGAGGAAGTACCTACACCTGGACTTTCATGCCCTGATGCACCTAGCTACAGAAGAGCTCCTGCTGAGAGGCCGATGACCACCTTACATGGGAGGGTGCCACATGATTGAGGCATGAGGCAAGCC-3' (584 bp)(配列番号8)
【0014】
を蛍光ラベルしたもの(図2の「3’プローブ」)を用いて、サザンハイブリダイゼーションを行った(Wurst, W. and Joyner, A.L. (1993) Gene targeting: A Practical Approach. IRL press, Oxford.)。結果を図4に示す。
野生型マウス(Recql4+/+)(すなわち、2本の染色体のいずれにおいてもRecQL4のエキソン13が欠損していない遺伝子)のES細胞クローンは8kbのバンドを与えた。一方、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)、すなわちターゲッティングにより1本の染色体のRecQL4のエキソン13が欠損したマウスのES細胞クローンは6kb及び8kbのバンドを与えた。RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)、すなわち2本の染色体のいずれにおいてもRecQL4のエキソン13が欠損したマウスのES細胞クローンは6kbのバンドのみを与えた。RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)のES細胞クローンを更なる工程に用いた。
【0015】
RECQL4遺伝子のエキソン13欠損マウスの作製
Recql4+/-のES細胞クローンを、C57BL/6JNrs妊娠マウス(黒眼、黒色毛、独立法人放射線医学総合研究所で維持されているストレイン)の卵管切除によって得たブラストシスト(桑実胚)へ、マイクロインジェクター(ナリシゲ)およびピエゾマイクロマニピュレーター(プライムテック)を用いて注入した。この胚を精管結紮した雄と交配させた偽妊娠の代理母マウスの胎内に導入しキメラマウスを作製した。
作製したキメラマウスの中から、Recql4+/-のES細胞が示す毛皮の色(アグチ)が80%以上含まれるオスのマウスを選択した。
選択したオスのマウスとC57BL/6のメスのマウスとを交配して、エキソン13が欠損したRecQL4アレル遺伝子(Recql4-)が生殖系列へ導入されたF1マウスを作製した。
F1マウス個体の遺伝子型の識別は、尾の一部を切除してDNAを抽出し、Recql4遺伝子に対するプライマーを用いたPCRにより行った。使用したプライマーは以下の通りである。
mQ4-5 (+) 30 5'-CTCGTGGTCTCGCCTCTCCTGTCACTCATG-3' (配列番号9)
mQ4-6(-)30 5'-GCCCACCATGGACAGGCAGGTGCGGAGGAG-3' (配列番号10)
pgkNeo5'-1(-)30 5'-CTTGGGAAAAGCGCCTCCCCTACCCGGTAG-3' (配列番号11)
遺伝子型を確認したRECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4 +/-)同士、あるいは、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4 +/-)とC57BL/6との交配により、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)を作製した。
【0016】
Recql4遺伝子転写産物の配列決定による欠失部位の確認
野生型マウス(Recql4+/+)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)のそれぞれについて、14.5日胎児からはプライマリーの胎生線維芽細胞(MEF)、成熟個体からは脳、心臓、胸腺、腎臓及び精巣から常法にしたがいトータルRNAを調製した。調製したトータルRNAに対し、下記のプライマー(図2の矢頭)を用い、Recql4遺伝子転写産物についてのRT-PCRを行った。
mQ4-5(+)30 5'-CTCGTGGTCTCGCCTCTCCTGTCACTCATG-3' (配列番号12)
mQ4-8(-)30 5'-CAGCTGGGCACTGCCGCCAAGGCAATGCAG-3' (配列番号13)
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)のMEF及び精巣から得られた変異PCR増幅産物(転写産物)は、対応する野生型マウス(Recql4+/+)のPCR増幅産物(転写産物)と比較して短かかった。
変異PCR増幅産物を、pGEM-T Eazy(プロメガ)へ常法によりクローニングし、下記のプライマーを用いて塩基配列を決定した。
5'-CTGCCTCTCTCAGTGGTCAC-3' (配列番号14)
5'-GACAGGCAGGTGCGGAGGAG-3' (配列番号15)
配列決定したRECQL4遺伝子ホモ欠損マウスのPCR増幅産物の配列と野生型マウスのPCR増幅産物の配列とを比較したところ、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)のPCR増幅産物では、エキソン13を構成する配列(180塩基)が完全に欠失していることが明らかになった(図5)。このことは、上述のターゲッティング方法により得られたマウスにおいて、
(1)RECQL4遺伝子のエキソン13全体が欠失していること、及び
(2)スプライシングの結果、エキソン12の3’末端とエキソン14の5’末端とが正常に結合していること(すなわち、エキソン14以降に対応するアミノ酸配列は野生型の対応するアミノ酸配列と同じである)
を示している。
【0017】
試験例1
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)におけるエキソン13欠失転写産物の発現量の評価
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)における変異Recql4転写産物(エキソン13欠失転写産物)の量と、野生型マウス(Recql4+/+)における正常Recql4転写産物の量とを定量的PCRにより比較した。
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスのトータルRNA 1μgより合成されたcDNAを基準として、野生型マウスの精巣のトータルRNAより合成されたcDNAの希釈系列を作製した(RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスを1として野生型マウス0~0.1)。作製した野生型マウスのcDNAの各希釈系列とRECQL4遺伝子ホモ欠損マウスのcDNAとの混合物を鋳型として、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスで欠失しているエキソン13を挟む下記のプライマーのセット
5'-CTCGTGGTCTCGCCTCTCCTGTCACTCATG-3'(配列番号16)
5'-CAGCTGGGCACTGCCGCCAAGGCAATGCAG-3'(配列番号17)
でPCRを行った。結果を図6に示す。尚、示されている各混合物の混合比は、それぞれ同一のcDNAサンプルを鋳型としてGapdh遺伝子に特異的なプライマーセットによるRT-PCRを行ったデータをもとに補正された値である。図6より、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスにおける変異転写産物の発現量は野生型マウスの野生型転写産物の発現量の1~2%であることが明らかになった。
【0018】
試験例2
成長遅延
(1)生存率による評価
作製した 頭のRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)うち、約40%は生まれた直後に死亡した。生存した個体のうち、80%は生後2日以内に死亡し、95%の個体は生後2週間以内に死亡した。しかし、残りの5%は生後2週間以降も生存していた。
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の胎生致死率を観察するため、帝王切開によって得られた胎児の遺伝子型を調べた。その結果、野生型マウス(Recql4+/+):RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-):RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)=19:43:14であり、メンデルの法則にほぼ従った分布を示した。したがって、胎生期の死亡はRecql4遺伝子の変異によるものではないと考えられる。
(2)体重による評価
野生型マウス(Recql4+/+)、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の19日目の胎児における体重はそれぞれ、1.48±0.17g、1.51±0.21g及び0.86±0.12gであった。したがって、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスの体重は野生型マウスの約60%であった(図7)。
RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスの成長遅延はその後も持続し、生後10週間後では、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスの体重は野生型マウスの体重の約1/3であった(図8)。
(3)細胞増殖による評価
野生型マウス(Recql4+/+)、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の各個体からMEFを単離し、その細胞増殖を調べた。
MEFの単離は、14.5日胚の頭部と内臓を除去し、組織を細かく破砕し、トリプシン処理により行った。培地は、Dulbecco's modified Eagle's medium(シグマ)に10%胎児牛血清、50μU/ml ペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン及び58μM 2-メルカプトエタノールを添加したものを用いた。培養は10mmのシャーレ中、37℃、CO2濃度5%に管理したインキュベーターにて行った。細胞培養は、105個の細胞を60mmのシャーレ2枚ずつに播種し、毎日培地を代えて行った。細胞の計数は、24時間毎にコールターカウンター(ベックマン=コールター)によって行った。結果を図9に示す。野生型マウス(Recql4+/+)及びRECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)由来のMEFと比較して、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)由来のMEFは有意に低い増殖能力を示した。
以上の結果より、本発明のRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)は、野生型マウス(Recql4+/+)と比較して成長遅延を示すことが明らかになった。成長遅延は、ヒトRTSの症状の一つであるので、本発明の変異型マウスはヒトRTSのモデル動物として利用可能である。
【0019】
試験例3
皮膚の異常
(1)外観による評価
ほとんどのRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)が何らかの皮膚の異常を示した。生後は目立たなかったが、生後6週までに頸部、背部、前足の付け根から側腹部にかけて脱毛があった。更に尻や腹部に毛の脱色を示した個体もあった。脱毛部位が個体表面の20%に達する個体も存在した。
生後2~3月後には、脱毛部位にびらん性の出血をともなう病変が観察された。これらの病変はかさぶたを作って治癒に向かったが、再び発毛を見るには至らなかった。本病変は、皮膚が脆弱でありかつ物理的接触の機会が多い部分(例えばオスでは陰茎)で多く観察された。
皮膚の乾燥は尾部において最も顕著であり、生後3~4ヶ月の個体の60%で観察された。
(2)組織学的評価
組織学的評価を行うために、マウス組織を、10%の緩衝フォルマリンによって固定し、パラフィン包埋して切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。顕微鏡写真は、ECLIPS TE300(ニコン)により倍率40×、100×及び400×で撮影した。
野生型マウスと比較して、変異マウスの皮膚は、上皮、真皮、および皮下組織の低形成を示した。
以上の結果より、本発明のRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)は、野生型マウス(Recql4+/+)と比較して、皮膚の異常を示すことが明らかになった。皮膚の異常は、ヒトRTSの症状の一つであるので、本発明の変異型マウスはヒトRTSのモデル動物として利用可能である。
【0020】
試験例4
他組織の低形成
骨組織、小腸上皮及びリンパ組織の顕微鏡写真を試験例3と同様の方法により撮影した。
野生型マウスと比較して、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)では骨形成層における骨梁形成の減少が見られた。
更に、小腸上皮の絨毛の大きさと数の減少も明らかであった。クリプト及び結合組織における細胞分裂像も少なかった。これは、RECQL4遺伝子のエキソン13の欠損が、増殖の盛んな腸上皮に特に影響を及ぼすことを示唆している。
リンパ系の組織を観察したところ、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の胸腺は、野生型マウスと比較して顕著に小さかった。
更に胸腺細胞の数も、野生型マウスと比較して有意に小さかった(新生仔マウスについて野生型マウスは1×107(n=1)、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスは0.6~5×105(n=2);成体マウスについて野生型マウスは2.0×107(n=1)、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウスは1.3×107(n=1))。
また、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の胸腺ではリンパ濾胞の皮質と髄質の区別が不明瞭であった。更に、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)では、白質層(white pulp)の大きさと数が野生型マウスと比較して顕著に少なかった。
以上の結果より、本発明のRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)は、骨形成障害、小腸上皮の異常及びリンパ組織の異常を示すことが明らかになった。骨形成障害は、ヒトRTSの症状の一つであるので、本発明の変異型マウスはヒトRTSのモデル動物として利用可能である。
【発明の効果】
本発明により、従来、致死性が高いと考えられていた、RECQL4遺伝子欠損ホモ動物(Recql4-/-)、特にRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)及びその作製方法が提供される。本発明のマウスは、生長遅延、皮膚の異常、骨形成不良を含む、ヒトRTSの特徴を多く示し、ヒトRTSのモデル動物として利用可能である。
【配列表】
JP0004217782B2_000003t.gifJP0004217782B2_000004t.gifJP0004217782B2_000005t.gifJP0004217782B2_000006t.gifJP0004217782B2_000007t.gifJP0004217782B2_000008t.gifJP0004217782B2_000009t.gifJP0004217782B2_000010t.gifJP0004217782B2_000011t.gifJP0004217782B2_000012t.gifJP0004217782B2_000013t.gifJP0004217782B2_000014t.gifJP0004217782B2_000015t.gifJP0004217782B2_000016t.gifJP0004217782B2_000017t.gifJP0004217782B2_000018t.gifJP0004217782B2_000019t.gifJP0004217782B2_000020t.gifJP0004217782B2_000021t.gifJP0004217782B2_000022t.gifJP0004217782B2_000023t.gifJP0004217782B2_000024t.gifJP0004217782B2_000025t.gifJP0004217782B2_000026t.gifJP0004217782B2_000027t.gifJP0004217782B2_000028t.gifJP0004217782B2_000029t.gifJP0004217782B2_000030t.gifJP0004217782B2_000031t.gifJP0004217782B2_000032t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ヒトRTS患者で報告されているRECQL4遺伝子の突然変異の位置を示す図である。図中の矢印が突然変異の位置を示す。矩形は一つのエキソンに相当する。影付きの矩形は RecQヘリケースドメインを示す。
【図2】図2は、本発明のRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の作製スキームを示す。上段は野生型マウスのRECQL4遺伝子の構造を示す。中断は、遺伝子ターゲティングベクターの構造を示す。下段は遺伝子ターゲッティングによる相同組み換え後のRECQL4遺伝子の構造を示す。TKはチミジンカイネース遺伝子を示し、Neorはネオマイシン耐性遺伝子を示す。矢印は転写の方向を示す。
X印は制限酵素 XbaIの認識配列の部位を示す。
「3’プローブ」は、サザンハイブリダイゼーションに使用したプローブの領域を示す。
矢頭はRT-PCRに用いたプライマーを示す。
【図3】図3は、RECQL4遺伝子のエキソン13を破壊させるための、遺伝子ターゲティングベクターの作製の基礎になったベクターNTBluntを示す。
【図4】図4は、野生型マウス(Recql4+/+)、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の個体の尾の一部から抽出したDNAの、Recql4遺伝子の3'プローブによるサザンブロットの結果を示す。
【図5】図5は、遺伝子ターゲッティング前後の、マウスのRECQL4遺伝子の転写産物より作製したcDNAの塩基配列を示す。
【図6】図6は、RECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)におけるエキソン13欠失転写産物についての定量的PCRの結果を示す。
【図7】図7は、野生型マウス(Recql4+/+)、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の19日目における外観を示す。
【図8】図8は、野生型マウス(Recql4+/+)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の生後10週間後における外観を示す。
【図9】図9は、野生型マウス(Recql4+/+)、RECQL4遺伝子ヘテロ欠損マウス(Recql4+/-)及びRECQL4遺伝子ホモ欠損マウス(Recql4-/-)の各個体に由来するMEFの細胞増殖を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8