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明細書 :固体酸化物型燃料電池及び固体酸化物型燃料電池の運転方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4504642号 (P4504642)
公開番号 特開2005-071717 (P2005-071717A)
登録日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
公開日 平成17年3月17日(2005.3.17)
発明の名称または考案の名称 固体酸化物型燃料電池及び固体酸化物型燃料電池の運転方法
国際特許分類 H01M   8/06        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
H01M   8/12        (2006.01)
FI H01M 8/06 R
H01M 8/06 Z
H01M 4/86 T
H01M 8/12
請求項の数または発明の数 34
全頁数 16
出願番号 特願2003-297780 (P2003-297780)
出願日 平成15年8月21日(2003.8.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、化学工学会 第68回年会 研究発表講演要旨集(平成15年2月22日刊行)に発表
特許法第30条第1項適用 特許法第30条第1項適用、第14回 固体イオニクス国際会議(2003年6月22日-27日)の要旨集に発表
審査請求日 平成18年2月24日(2006.2.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】伊原 学
【氏名】横山 千昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
審査官 【審査官】蛭田 敦
参考文献・文献 特開平05-067472(JP,A)
特開2002-134121(JP,A)
特開2002-367644(JP,A)
調査した分野 H01M 8/00 ~ 8/24
H01M 4/86 ~ 4/98
特許請求の範囲 【請求項1】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質層と、を少なくとも有する固体酸化物型燃料電池であって、
前記アノードは、多孔質の複合金属酸化物材料を含む電極反応層を有しており、
前記電極反応層には、電極活物質として、固体炭素からなる粒子が担持されており
記固体炭素からなる粒子は、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を前記電極反応層中に供給し、次いで、前記電極反応層中において、200~1200℃の温度条件下で前記有機化合物の熱分解反応を進行させる熱処理工程を経て形成されており、かつ、
前記固体炭素からなる粒子を還元剤として消費することによって発電すること、
を特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記固体炭素からなる粒子を還元剤として消費した後、前記熱処理工程により前記固体炭素からなる粒子を再び形成させることにより繰り返し使用すること、を特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記電極反応層に還元剤を供給することなく、前記固体炭素からなる粒子を還元剤として消費することによって発電すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
アノードの電極反応が下記反応式(I)及び(II)で表される反応を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
C+O2-→CO+2e ・・・(I)
C+2O2-→CO+4e ・・・(II)
【請求項5】
前記有機化合物が、酸素及び/又は硫黄を構成元素として更に含んでいること、を特徴とする請求項1~4のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
前記有機化合物が1atm、25℃の条件下で気体であること、を特徴とする請求項1~5のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項7】
前記有機化合物が1atm、25℃の温度条件下で液体であること、を特徴とする請求項1~5のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項8】
前記有機化合物の炭素数が1~100であること、を特徴とする請求項1~のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項9】
前記有機化合物の炭素数が1~10であること、を特徴とする請求項1~のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項10】
前記有機化合物の炭素数が1~6であること、を特徴とする請求項1~のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項11】
前記熱処理工程の温度が600~900℃であること、を特徴とする請求項1~のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項12】
前記電極反応層が、前記複合金属酸化物材料と金属材料とからなる混合成形体からなること、を特徴とする請求項1~11のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項13】
前記金属材料の構成元素が、Ni、Pt、Au、Cu、Fe、W及びTaからなる群より選択される少なくとも1種であること、を特徴とする請求項12に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項14】
前記金属材料がNiであること、を特徴とする請求項13に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項15】
前記混合成形体における前記金属材料の体積分率V1と、前記複合金属酸化物材料の体積分率V2とが下記(1)で表される条件を満たしていること、
を特徴とする請求項12~14のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
0.2≦{V1/(V1+V2)}≦0.8・・・(1)
【請求項16】
出力が、0.01~500kWであること、を特徴とする請求項1~15のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項17】
前記複合金属酸化物材料がイットリアが添加された安定化ジルコニアからなること、を特徴とする請求項1~16のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項18】
前記イットリアの割合が1~20mol%であること、を特徴とする請求項17に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項19】
前記複合金属酸化物材料がGd、La、Y、Sm、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy及びYbからなる群より選択される少なくとも1種がドープされたCeOからなること、を特徴とする請求項1~16のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項20】
前記複合金属酸化物材料がGdがドープされたCeOからなること、を特徴とする請求項1~17のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項21】
前記Gdの割合が1~40mol%であること、を特徴とする請求項20に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項22】
前記複合金属酸化物材料がSmがドープされたCeOからなること、を特徴とする請求項1~17のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項23】
前記Smの割合が10~30mol%であること、を特徴とする請求項22に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項24】
前記複合金属酸化物材料の導電率が、1000℃において、0.01~10S/cmであること、を特徴とする請求項1~23のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項25】
前記アノードには、該アノードにおける反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスの供給口及び放出口、並びに、前記供給口と前記放出口とに接続された前記キャリアガスの内部流路が設けられており、
前記キャリアガスが、N及び希ガスからなる群より選択される少なくとも1種の成分ガスからなること、を特徴とする請求項1~24のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項26】
前記キャリアガス中には、Oが更に含まれており、かつ、
前記アノード中の前記キャリアガス中の前記Oの分圧が、前記カソード中のOの分圧よりも低くなるように調節されていること、を特徴とする請求項25に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項27】
前記キャリアガスが空気であること、を特徴とする請求項25に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項28】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質層と、を少なくとも有し、かつ、前記アノードが多孔質の複合金属酸化物材料を含む電極反応層を有する固体酸化物型燃料電池の運転方法であって、
炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を前記電極反応層中に供給し、次いで、前記電極反応層中において、200~1200℃の温度条件下で前記有機化合物の熱分解反応を進行させることにより、前記電極反応層中に、電極活物質として固体炭素からなる粒子を析出させる熱処理工程と、
前記熱処理工程後、前記カソードに酸化剤を含むガスを供給し、前記固体炭素からなる粒子を還元剤として消費することによって発電する発電工程と、
を少なくとも含むこと、
を特徴とする固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項29】
前記熱処理工程及び前記発電工程からなる作業を繰り返して行うこと、
を特徴とする請求項28に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項30】
前記酸化剤が酸素であること、を特徴とする請求項28又は29に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項31】
前記酸化剤を含むガスが空気であること、を特徴とする請求項28又は29に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項32】
発電中において、前記アノードに、該アノードにおける反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスを供給し、
前記キャリアガスとして、N及び希ガスからなる群より選択される少なくとも1種の成分ガスからなるガスを使用すること、を特徴とする請求項28~31のうちの何れか1項に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項33】
前記キャリアガス中には、Oが更に含まれており、かつ、
前記アノード中の前記キャリアガス中の前記Oの分圧が、前記カソード中のOの分圧よりも低くなるように調節すること、を特徴とする請求項32に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
【請求項34】
前記キャリアガスが空気であること、を特徴とする請求項33に記載の固体酸化物型燃料電池の運転方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は固体酸化物型燃料電池(SOFC)及び固体酸化物型燃料電池の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性の固体酸化物(酸化物イオン伝導体)からなる電解質層(固体電解質層)をカソード(空気極)とアノード(燃料極)との間に配置した積層構造を有する固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、第三世代の燃料電池として期待され、その開発が進んでいる。
【0003】
固体酸化物型燃料電池は、アノードに還元剤(例えば、H、CO、メタン等の炭化水素)を含むガス(燃料ガス)を供給し、カソードに酸化剤(例えば、酸素)を含むガス(例えば、空気)を供給することにより発電するデバイスである(例えば、下記特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平9-129256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固体酸化物型燃料電池は、電極活物質がガスであり、これを電極に供給する設備が必要となるため、固体酸化物型燃料電池を含む発電システムのコンパクト化を図るには限界があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることのできる構成を有する固体酸化物型燃料電池及び固体酸化物型燃料電池の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アノード内部で、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物の熱分解反応を進行させることにより得られる固体炭素が、固体の燃料(還元剤)として固体酸化物型燃料電池の発電に利用できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
電極活物質としてガスを使用する構成を有する従来の固体酸化物型燃料電池{アノードに炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物(例えば、メタンなどの炭化水素)のガスを供給するタイプの固体酸化物型燃料電池}の場合、上記の固体炭素がアノード中に生成すると、アノード中のガス拡散パス(ガス拡散ネットワーク)が閉塞する問題が生じるため、固体炭素を極力生成させない反応条件及び装置構成を設計することが重要となることがこれまでの当業者の一般的な認識であり、上記の固体炭素を還元剤(電極活物質)として積極的に利用する試みはこれまでに具体的に行われてこなかった。そして、上記の固体炭素を還元剤(電極活物質)として積極的に利用するという技術思想と、この技術思想に基づいて作動する固体酸化物型燃料電池の具体的構成とは、本発明者らの検討によりはじめて見出されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質層と、を少なくとも有する固体酸化物型燃料電池であって、
アノードは、多孔質の複合金属酸化物材料を含む電極反応層を有しており、
電極反応層には、電極活物質として、固体炭素からなる粒子が更に担持されており、かつ、
固体炭素からなる粒子は、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を電極反応層中に供給し、次いで、電極反応層中において、200~1200℃の温度条件下で有機化合物の熱分解反応を進行させる熱処理工程を経て形成されていること、
を特徴とする固体酸化物型燃料電池を提供する。
【0009】
上記のように、本発明の固体酸化物型燃料電池では、アノードの電極活物質(還元剤)として、固体炭素を使用する。固体炭素は液体状の電極活物質(還元剤)やガス状の電極活物質(還元剤)に比較してエネルギー密度が非常に高く、液体状やガス状の電極活物質をアノードに供給するための装置構成が不要となり、アノードの側の装置構成を簡素化することができる。従って、本発明によれば、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることのできる構成を有する固体酸化物型燃料電池を提供することができる。
【0010】
また、固体炭素を消費した後においても、例えば、発電システムから固体酸化物型燃料電池又はアノードを取り外し、上記の温度条件で熱分解反応を行いアノード中に固体炭素を再び生成させることにより、固体酸化物型燃料電池を繰り返し使用することも容易にできる。なお、本発明の固体酸化物型燃料電池は、上記のように有機化合物の熱分解反応を行う場合に、固体炭素と共に水素を反応生成物として得ることができる。そのため、本発明の固体酸化物型燃料電池は、水素発生装置としても利用することができる。
【0011】
更に、本発明の固体酸化物型燃料電池は、発電システムに固定し、取り外さないで使用する構成としてもよい。このとき、アノードの固体炭素を消費した後の固体酸化物型燃料電池に固体炭素を再びチャージして使用する場合には、アノードに上述の有機化合物を供給するための装置構成が必要となるが、従来の還元剤を含むガスを供給するための装置構成と比較してシンプルな装置構成とすることが可能となるため、この場合にも発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることができる。また、この場合には、固体酸化物型燃料電池を発電システムに固定するため、固体炭素をより迅速かつより容易にチャージして繰り返し発電することができる。
【0012】
例えば、リチウムイオン2次電池等の2次電池は充電に比較的時間がかかるという問題があった。これに対し、上述の固体炭素は、熱分解反応により速やかに形成することができる。そのため、本発明の固体酸化物型燃料電池は、アノードの電極活物質(固体炭素)のチャージを極めて迅速に行うことができる。従って、本発明の固体酸化物型燃料電池は、発電システムにおいて、リチウムイオン2次電池等の2次電池のかわりに使用することもできる。
【0013】
ここで、本発明において、「固体炭素」とは、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を前記電極反応層中に供給し、次いで、前記電極反応層中において、200~1000℃の温度条件下で前記有機化合物の熱分解反応を進行させる熱処理工程を経て形成される粒子をいう。この「固体炭素」の組成及び構造は十分に解明されていないが、「固体炭素」は上記の熱処理工程を経て形成されいればよく、炭素の他に、水素、酸素、硫黄が含まれていてもよい。
【0014】
また、本発明は、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質層と、を少なくとも有し、かつ、前記アノードが多孔質の複合金属酸化物材料を含む電極反応層を有する固体酸化物型燃料電池の運転方法であって、
炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を前記電極反応層中に供給し、次いで、前記電極反応層中において、200~1200℃の温度条件下で前記有機化合物の熱分解反応を進行させることにより、前記電極反応層中に、電極活物質として固体炭素からなる粒子を析出させる熱処理工程と、
前記熱処理工程後、前記カソードに酸化剤を含むガスを供給し、前記固体炭素からなる粒子を還元剤として発電する発電工程と、
を少なくとも含むこと、
を特徴とする固体酸化物型燃料電池の運転方法を提供する。
【0015】
熱処理工程の後に得られる固体酸化物型燃料電池を発電システムに備え、発電工程において発電させるようにすれば、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることができる。例えば、熱処理工程は、アノードを固体酸化物型燃料電池から取り外した状態、アノードを固体酸化物型燃料電池に装着した状態の何れでも行うことができる。
【0016】
更に、本発明の運転方法は、固体酸化物型燃料電池を発電システムに固定し、取り外さないで熱処理工程を行う構成で行う方法であってもよい。このとき、アノードの固体炭素を消費した後の固体酸化物型燃料電池に固体炭素を再びチャージして使用する場合には、アノードに上述の有機化合物を供給するための装置構成が必要となるが、固体炭素を得るための熱処理工程を行うための装置構成は、従来の還元剤を含むガスを供給するタイプの装置構成に比較してシンプルにすることができる。そのため、この場合にも発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることができる。また、この場合には、固体酸化物型燃料電池を発電システムに固定するため、固体炭素をより迅速かつより容易にチャージして繰り返し発電することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることのできる構成を有する固体酸化物型燃料電池及び固体酸化物型燃料電池の運転方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の固体酸化物型燃料電池の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【0020】
図1に示す固体酸化物型燃料電池1は、主として、アノード2と、カソード3と、アノード2とカソード3との間に配置される電解質層4とから構成されている。
【0021】
図1に示すアノード2は、主として、集電体2bと該集電体2bと電解質層4との間に配置される電極反応層2a(以下、必要に応じて「アノード反応層2a」という)とから構成されている。また、図1に示すカソード2は、主として、集電体3bと該集電体3bと電解質層4との間に配置される電極反応層3a(以下、必要に応じて「カソード反応層3a」という)とから構成されている。
【0022】
アノード2のアノード反応層2aは、還元剤となる固体炭素が担持されている多孔質の複合酸化物材料からなる層であり、還元剤となる固体炭素の酸化反応が進行する反応場となるである。このアノード反応層2aの多孔質の複合金属酸化物材料は公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているアノードに使用されているものと同様のものを使用することができる。
【0023】
また、発電の際に、十分な出力特性を得る観点からは、複合金属酸化物材料は、イットリアが添加された安定化ジルコニア(Y-ZrO,以下、必要に応じて「YSZ」という)からなるものであることが好ましく、Gd、La、Y、Sm、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy及びYbからなる群より選択される少なくとも1種がドープされたCeOからなるものも好ましい。
【0024】
更に、発電の際に、十分な出力特性をより確実に得る観点からは、GdがドープされたCeOからなるもの(以下、必要に応じて「GDC」という)、又は、SmがドープされたCeOからなるものであることがより好ましい。
【0025】
ここで、上記YSZの場合、Yの割合(Yの添加量)は、Y-ZrOに対して8~10mol%であることが好ましい。また、上記GDCの場合、Gdの割合(Gdの添加量)は、CeOに対して10~40mol%であることが好ましく、10~30mol%であることがより好ましい。更に、上記SmがドープされたCeOからなるものの場合、Smの割合(Smの添加量)は、CeOに対して10~30mol%であることが好ましい。また、発電の際に、十分な出力特性を得る観点からは、複合金属酸化物材料の導電率は、1000℃において、0.01~10S/cmであることが好ましい。
【0026】
また、熱処理工程において、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物の熱分解反応を十分に進行させて、より容易に十分量の固体酸素をアノードに析出させて本発明の効果をより確実に得るとともに、優れた出力特性をより確実に得る観点から、アノード反応層2a(電極反応層)が、複合金属酸化物材料と金属材料とからなる混合成形体からなることが好ましい。
【0027】
更にこの場合、上記金属材料の構成元素が、Ni、Pt、Au、Cu、Fe、W及びTaからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、Niであることがより好ましい。
【0028】
また、この場合、混合成形体における金属材料の体積分率V1と、複合金属酸化物材料の体積分率V2とが下記(1)で表される条件を満たしていることが好ましい。
0.2≦{V1/(V1+V2)}≦0.8・・・(1)
ここで、{V1/(V1+V2)}が0.2未満となると、アノード反応層2a(電極反応層)中の電子伝導性が十分に確保できなくなり、固体酸化物型燃料電池1の出力特性が不十分となる傾向が大きくなる。また、{V1/(V1+V2)}が0.8を超えると、アノード反応層2a(電極反応層)中のイオン伝導性が十分に確保できなくなり、固体酸化物型燃料電池1の出力特性が不十分となる傾向が大きくなる。アノード反応層2a(電極反応層)中の電子伝導性とイオン伝導性を共に十分に確保する観点から、{V1/(V1+V2)}は0.2~0.8であることが好ましい。
【0029】
上記の混合成形体の好ましい例としては、例えば、Ni/YSZ、Ni/GDC、Ni/SDC(Sm-CeO)が挙げられる。
【0030】
アノード反応層2aは、上述の多孔質の複合酸化物材料からなる層中に、熱処理工程を経て形成される固体炭素からなる粒子が担持された層である。
【0031】
熱処理工程では、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物をアノード反応層2a中に供給し、次いで、電極反応層中において、200~1200℃の温度条件下で有機化合物の熱分解反応を進行させる。これにより、アノード反応層2a中に固体炭素からなる粒子が担持される。
【0032】
そして、この固体炭素を還元剤として使用することにより、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることのできる構成を有する固体酸化物型燃料電池1が提供可能となる。また、固体炭素を消費した後には、例えば、発電システムから固体酸化物型燃料電池又はアノードを取り外すか、又は、取付けたままで、上記の温度条件で熱分解反応を行いアノード中に固体炭素を迅速に再生成させることにより、固体酸化物型燃料電池1を繰り返し使用することも容易にできるようになる。
【0033】
上記のように本発明の固体酸化物型燃料電池は、従来のもののように反応ガスをアノードに供給するためのボンベ、改質器等の大きな設置スペースを必要とする設備が不要となるため、容易にコンパクト化を図ることができるので、本発明の固体酸化物型燃料電池はその大きさが、0.5~10cmであること、より好ましくは1~2000cmであることを特徴としていてもよい。また、上記の大きさの場合、出力が、0.01~500kW、好ましくは30~100Wであることを特徴としていてもよい。
【0034】
熱処理工程において、有機化合物の熱分解反応の温度条件が200℃未満であると、該有機化合物の熱分解反応(例えば、メタンの場合には、CH→C+H)が十分に進行せず、十分量の固体炭素を得ることができなくなる。また、1200℃を超える場合、アノード反応層2aの熱劣化が激しくなり、電池を構成することができなくなる。上記と同様の観点から、熱処理工程の温度は600~900℃であることがより好ましく、800~900℃であることが更に好ましい。
【0035】
熱処理工程に使用される有機化合物は、酸素及び/又は硫黄を構成元素として更に含んでいてもよい。また、有機化合物は1atm、25℃の条件下で気体であってもよく、1atm、25℃の温度条件下で液体であってもよい。更に、還元剤として十分に機能する固体炭素をより容易かつ十分に得る観点から、有機化合物の炭素数は、1~100であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることが更に好ましい。
【0036】
上記のような有機化合物の好ましい例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが挙げられる。中でも、取り扱い性や入手の容易性などの観点から、メタン、プロパン、ブタン、メタノール、がより好ましい。
【0037】
アノード2の集電体2bの構成材料は電子伝導性を有しかつ固体酸化物燃料電池1の作動温度領域(600~1200℃)において化学的及び物理的に安定であるものであればその形状及び構成材料は特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているものと同様のものを使用することができる。集電体2bには、熱処理工程を行う際に、固体炭素の原料となる炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物の供給路(図示せず)が形成されている。また、この集電体2bは、固体酸化物型燃料電池を複数積層して使用する場合には、各単位セル間に配置されるセパレータとしての機能果たすものである。
【0038】
また、アノード2には、該アノード2における反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスの供給口(図示せず)及び放出口(図示せず)、並びに、これらの供給口と放出口とに接続されたキャリアガスの内部流路(図示せず)が設けられている。
【0039】
発電中に、このキャリアガスをアノード2に供給し、固体炭素から生成する反応生成ガスをアノード2の外部に放出することにより、発電中における燃料電池1の起電力の低下がより確実に防止され、十分な出力での発電が可能となる。なお、この場合、キャリアガスをアノード2に供給するためのボンベ等の装置構成が必要となるが、従来の還元剤を含むガスを供給するための装置構成と比較してシンプルな装置構成とすることが可能となるため、この場合にも発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることができる。
【0040】
上記のキャリアガスとしては、N及び希ガスからなる群より選択される少なくとも1種の成分ガスからなることが好ましい。また、このキャリアガス中には、Oが更に含まれていてもよい。但し、この場合、発電中における燃料電池1の起電力を十分に保つ観点から、アノード2中のキャリアガス中のOの分圧が、カソード3中のOの分圧よりも低くなるように調節されていることが必要となる。このようなOを含むキャリアガスとしては、コストパフォーマンス及び入手容易性の観点から、空気が好ましい。
【0041】
カソード2のカソード反応層3aは、酸化剤を含むガス(例えば空気)が供給され、酸化剤の還元反応が進行する反応場となる多孔質の層である。このカソード反応層3bの構成材料及び形状については特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているカソードに使用されているものと同様のものを使用することができる。例えば、(LaSr)MnO系、(LaSr)CoO系の複合金属酸化物からなる材料などを使用することができる。例えば、La0.85Sr0.15MnO等が挙げられる。
【0042】
カソードの集電体3bの構成は先に述べたアノード2の集電体2bと同様であり、構成材料及び形状については特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているものと同様のものを使用することができる。なお、集電体3bには、空気等の酸化剤を含むガスをカソード反応層3aに供給するためのガス流路(図示せず)が形成されている。また、この集電体3bは、固体酸化物型燃料電池を複数積層して使用する場合には、各単位セル間に配置されるセパレータとしての機能果たすものである。
【0043】
電解質層4は、イオン伝導性の固体酸化物からなる層である。電解質層4は、酸化物イオン(O2-)の移動媒体であると同時に、還元剤(先に述べた固体炭素)と酸化剤を含むガス(例えば、空気)を直接接触させないための隔壁としても機能する層であり、ガス不透過性の緻密な構造を有している。この電解質層4の構成材料は特に限定されず公知の固体酸化物型燃料電池に用いられる材料を使用することができるが、酸化物イオン伝導性が高く、カソード3側の酸化性雰囲気からアノード2側の還元性雰囲気までの条件下で化学的に安定で、熱衝撃に強い材料から構成することが好ましい。
【0044】
かかる要件を満たす材料としては、例えば、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)が挙げられる。
【0045】
次に、図1に示した固体酸化物型燃料電池1の製造方法は、先にアノード反応層2aの説明において述べた熱処理工程以外の製造工程は特に限定されず、公知の固体酸化物燃料電池の製造に適用されている公知の薄膜製造技術を使用することができる。例えば、アノード反応層2a、電解質層4及びカソード反応層3aからなる積層体を、集電体2b又は集電体3b上に順次形成する方法としては、スキージ法、スクリーンプリンティング法、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法などのCVD法、溶射法などが挙げられる。
【0046】
例えば、電解質層4をアノード反応層2a又はカソード反応層3a上に形成する方法としては、例えば、公知のセラミックプロセスであるシート成形焼結法を例示することができる。より具体的には、原料および溶媒を混合することによって得たスラリーをシート状に延ばし、乾燥させた後に、必要に応じてカッターナイフなどを用いて成形し、焼成する。スラリーには、必要に応じて、バインダー、可塑剤、分散剤などの公知の添加剤を添加してもよい。成形、焼成などの条件は、原料の組成に応じて適宜設定することができる。また、先に述べたPVD法、CVD法、溶射法などの薄膜形成法により、例えば、アノード反応層2a又はカソード反応層3a上に電解質層を形成することもできる。
【0047】
固体酸化物型燃料電池1の運転方法は、先に述べた熱処理工程と、熱処理工程後、カソードに酸化剤を含むガスを供給し、固体炭素からなる粒子を還元剤として発電する発電工程とを少なくとも含む方法であれば特に限定されない。例えば、熱処理工程及び発電工程からなる作業を繰り返して行ってもよい。
【0048】
発電工程において固体酸化物型燃料電池1を発電させる場合にカソードに供給する酸化剤を含むガスは、入手容易性から空気であることが好ましい。また、同様の観点から、酸化剤は酸素であることが好ましい。
【0049】
また、発電中における燃料電池1の起電力の低下がより確実に防止する観点から、先にものべたように、アノード2に、該アノード2における反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスの供給口及び放出口、並びに、これらの供給口と放出口とに接続されたキャリアガスの内部流路を設けて、発電中において、アノード2に、該アノード2における反応生成ガスを外部に放出させるための先に述べたキャリアガスを供給する。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、本発明の固体酸化物型燃料電池は、例えば、図1に示した固体酸化物型燃料電池1を複数積層した形態を有していてもよい。
【0052】
本発明の固体酸化物型燃料電池は、アノードのアノード反応層(電極反応層)に固体炭素からなる粒子を析出させていればその他の構造は特に限定されるものではなく、例えば、平板状の電解質層の両面の一方にアノード、他方にカソードを形成した構造を有し、セパレータを介して順次積層したスタックからなる平板型固体酸化物型燃料電池の構成を有しているものであてもよく、円筒状の支持管の円筒面上にカソード、電解質層およびアノードを順次形成し、積層させた構造を有する円筒型固体酸化物型燃料電池の構成を有しているものであってもよい。
【実施例1】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
固体酸素を析出させたアノード反応層(電極反応層)として、Ni/YSZ(Yの添加量:Y-ZrOに対して8mol%)からなる層(厚さ:20μm)が集電体上に形成された構成を有するアノードと、YSZ(8mol%のYが添加されたY-ZrO)からなる電解質層(厚さ:0.3mm)と、カソード反応層として、La0.85Sr0.15MnOからなる層(厚さ:20μm)が集電体上に形成された構成を有するカソードとからなる固体酸化物型燃料電池を作成した。
【0055】
なお、熱処理工程を以下の条件で行い、アノード反応層にメタンガスを供給し、900℃の温度条件でメタンの熱分解反応(CH→ C+2H)を進行させて固体酸素を析出させた。すなわち、熱処理工程の条件は、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:100%、熱分解反応時間:10分とした。
【0056】
(実施例2)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:100%、熱分解反応時間:5分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0057】
(実施例3)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:6時間に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0058】
(実施例4)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:20分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0059】
(実施例5)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:10分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0060】
(実施例6)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:5分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0061】
(実施例7)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:5%、熱分解反応時間:12時間に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0062】
(実施例8)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:5%、熱分解反応時間:75分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0063】
(実施例9)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:5%、熱分解反応時間:10分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0064】
(実施例10)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:5%、熱分解反応時間:5分に変更した以外は、実施例1と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0065】
(実施例11)
アノード反応層を、Ni/GDC(Gdのドープ量:CeOに対して20mol%)からなる層(厚さ:30μm)に変更し、熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:1時間に変更した以外は、実施例11と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。なお、Ni/GDCからなる層において、GDC{V1/(V1+V2)}=1とした。
【0066】
(実施例12)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:50%、熱分解反応時間:2時間に変更した以外は、実施例11と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0067】
(実施例13)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:100%、熱分解反応時間:1時間に変更した以外は、実施例11と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0068】
(実施例14)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:100%、熱分解反応時間:2時間に変更した以外は、実施例11と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0069】
(実施例15)
熱処理工程でアノードに固体炭素を析出させる条件を、アノードに供給するメタンガス中のメタン分圧:100%、熱分解反応時間:3時間に変更した以外は、実施例11と同様の手順及び条件で固体酸化物型燃料電池を作製した。
【0070】
[電池出力特性評価試験]
以下の手順及び測定条件により、実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池の出力特性を評価した。
【0071】
先ず、熱処理工程終了後の実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池のそれぞれについて、アノードにArガスを供給しながらアノード反応層から排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィーを用いて分析し、排出ガス中に、CO、H等の反応生成物、未反応のメタンが検出されなくなったことを確認した。また、発電中もArガスの供給を継続し、アノードで生成する反応生成ガスをアノード外部に放出させた。
【0072】
次に、熱処理工程終了後の実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池のそれぞれについて、放電電流密度を一定に調節した場合の発電を行い、それぞれの出力密度の経時変化を観察した。なお、放電電流密度は、実施例1~実施例5及び実施例10:5.6mA/cm,実施例6:3.7mA/cm及び9.3mA/cm,実施例7:9.3mA/cm,実施例8:9.3mA/cm及び27.8mA/cm,実施例9:3.7mA/cm及び18.5mA/cm,実施例11:4.4mA/cm,実施例12:4.4mA/cm及び5.9mA/cm,実施例13:4.4mA/cm、5.9mA/cm及び14.7,実施例14:4.4mA/cm、7.4mA/cm、14.7mA/cm及び44.1mA/cm,実施例15:4.4mA/cm、7.4mA/cm、14.7mA/cm、44.1mA/cm及び88.2mA/cmとした。
【0073】
また、カソードには、空気(1atm)を供給した。更に、発電時においてアノードから排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。得られた結果を図1及び図2に示す。
【0074】
図1及び図2に示した結果から明らかなように、実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池は、固体炭素をアノードにおける電極活物質として作動することが確認された。特に、アノード反応層にNi/GDCを使用した実施例11~実施例15の固体酸化物型燃料電池は、アノード反応層にNi/YSZを使用した実施例1~実施例10の固体酸化物型燃料電池に比較して出力密度と発電時間において非常に優れていることが確認された。例えば、実施例15の固体酸化物型燃料電池の最大出力密度は66.5mW/cmであり、実施例8の固体酸化物型燃料電池に比較して8.6倍となった。
【0075】
また、実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池アノードの排出ガスの分析により、主な生成ガスがCOであることと、微量のCOも生成していることが確認された。更に、実施例1~実施例15の固体酸化物型燃料電池について、アノードの生成ガス組成から計算される電荷移動速度(アノードの生成ガスであるCOが、「C+O2- → CO+2e」であらわされる電極反応により生成し、COが、「C+2O2-→CO+4e」であらわされる電極反応により生成していると仮定した場合)は、放電電流値とほぼ一致することが確認された。
【0076】
また、アノードの電極反応がC+O2- → CO+2eのみであると仮定した場合の、反応に使用された有効炭素質量を計算した場合、アノード反応層にNi/GDCを使用した実施例15の固体酸化物型燃料電池のアノードにおける有効炭素質量が最大であり、約8mgであった。この値は、アノード反応層にNi/GDCを使用したNi/YSZを使用した実施例8における値よりも29倍も大きな値であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
固体酸化物型燃料電池は、携帯機器(小型電子機器)等の電源、そのバックアップ用電源、ハイブリッド車向けの補助電源として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の固体酸化物型燃料電池の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の固体酸化物型燃料電池の実施例の発電特性(出力密度の経時変化)を示すグラフである。
【図3】本発明の固体酸化物型燃料電池の実施例の発電特性(出力密度の経時変化)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0079】
1…固体酸化物型燃料電池、2…アノード(燃料極)、3…カソード(空気極)、2a・・・電極反応層(アノード反応層)、2b・・・集電体、3a・・・電極反応層(カソード反応層)、3b・・・集電体、4・・・電解質層。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2