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明細書 :ペロブスカイト型酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465461号 (P4465461)
公開番号 特開2005-053755 (P2005-053755A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成17年3月3日(2005.3.3)
発明の名称または考案の名称 ペロブスカイト型酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法
国際特許分類 C30B  29/22        (2006.01)
C23C  14/28        (2006.01)
C23C  14/58        (2006.01)
C30B  23/08        (2006.01)
C30B  29/24        (2006.01)
C30B  33/02        (2006.01)
FI C30B 29/22 501L
C23C 14/28
C23C 14/58 A
C30B 23/08 Z
C30B 29/24
C30B 33/02
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2003-287944 (P2003-287944)
出願日 平成15年8月6日(2003.8.6)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年2月6日 東北大学理学研究科物理学専攻修士論文発表会において文書をもって発表
審査請求日 平成18年7月11日(2006.7.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】佐多 教子
【氏名】服部 武志
【氏名】河村 純一
【氏名】山田 鉄平
個別代理人の代理人 【識別番号】100105647、【弁理士】、【氏名又は名称】小栗 昌平
【識別番号】100105474、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 弘徳
【識別番号】100108589、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 利光
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開2001-220300(JP,A)
特開平08-026888(JP,A)
特開平02-292876(JP,A)
特開2002-083811(JP,A)
調査した分野 C23C14/00-14/58
C30B 1/00-35/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
100℃以下に保持した基板上に、ラジカル酸素を照射しながら、パルスレーザー蒸着法により酸化物膜を蒸着する成膜工程と、酸化物膜を蒸着温度より高温で加熱するポストアニール工程とを有し、
前記成膜工程におけるラジカル酸素の照射量が5×1014~5×1015atomos/cm2/sであり、
ポストアニール工程を1気圧酸素または1気圧空気中で、酸化物膜の加熱温度を600~750℃、加熱時間を1~10時間で行う
ことを特徴とするペロブスカイト型酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザー蒸着法による酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法、およびこの作製方法により得られる酸化物エピタキシャル薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーザー蒸着法(以下、PLD(Pulse Laser Deposition)法という。)は、エネルギー密度の高いパルスレーザー光をターゲット(薄膜の材料となる物質)表面に照射することにより、ターゲット表面の材料を瞬間的に剥離し、放出されるプラズマ化された原子、分子をターゲットと対向して配置された基板上に堆積させて薄膜を作製する方法である。この方法は、レーザー光を吸収する物質であれば高融点のものでも容易に薄膜化が可能であること、ターゲットの元素組成をほぼ反映した薄膜を形成可能であること、膜厚の原子層レベルでの制御が可能であること等から、幅広い範囲の材料の薄膜化に利用されている。また、高い真空度を必要とせず、様々なガス雰囲気下での成膜が可能であることから、特に、酸化物薄膜の成膜法として有効に利用されており、数多くの報告例がある。例えば、数百度の高温で高いプロトン伝導性を示し、プロトン導電性固体電解質としてセンサーデバイスや燃料電池への利用が考えられている、ある種のペロブスカイト型酸化物についての薄膜作製の報告例がある(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0003】
従来、PLD法による酸化物薄膜の成膜は、一般に、基板の温度を700℃程度の高温に保って、行われている。これは、成膜時の基板の温度が室温程度の低温では、一般に得られる酸化物膜が非晶質となってしまうためであり、また、非晶質の酸化物膜を酸素中または空気中にて加熱(アニール)することで結晶化することは可能であるが、非常に高い温度が必要であり、700℃程度の温度のアニールでは、多結晶質または配向性の低い結晶質の膜しか得ることができないためである。
一方、高温での成膜では酸化物結晶から酸素が欠損しやすいので、それを防ぐために一般には~1Pa程度の酸素雰囲気で成膜は行われる。
【0004】
薄膜作製において、ラジカル酸素やラジカル窒素など反応性の高いガスを利用した方法も知られている。しかし、酸化物膜の成膜においては、基板温度を高温にして成膜する場合のラジカル酸素利用の有効性は見出されていない。
【0005】
ところで、酸化物薄膜は、デバイスへの利用を念頭に、その物性を改善する方法が種々試みられている。その一つとして、2種類以上の異なる材料からなるエピタキシャル薄膜を原子層レベルで繰り返し積層させた超格子が挙げられる。超格子では、積層界面に生じる格子不整合(格子定数のミスマッチ)による応力を利用して酸化物薄膜に格子歪(格子定数の変化)を導入し、酸化物薄膜の物性を変化させることができる。このような超格子の応用例は、磁性体、強誘電体など様々な酸化物材料であり、先に述べたプロトン導電性のペロブスカイト型酸化物でも超格子は作製され、超格子にすることでプロトン導電性が変化することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
単層膜においても、基板によっては基板と膜との界面で格子不整合が生じる。数百ナノメートル程度の膜厚の単層膜では、応力緩和が起きるので、基板との格子不整合による格子歪が現れる報告例は知られていない。

【非特許文献1】佐多、外4名,ソリッド・ステート・イオニクス(Solid State Ionics),第136-137巻,2000年,197-200頁
【非特許文献2】佐多、外5名,ソリッド・ステート・イオニクス(Solid State Ionics),第121巻,1999年,321-327頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、従来、PLD法により酸化物のエピタキシャル薄膜、すなわち配向性が良く結晶質な酸化物薄膜を得るためには、基板の温度を高温に保ち、酸素雰囲気中で成膜を行う必要があり、そのため、成膜装置には、成膜中に基板を高温に保持し、しかもおよそ~1Pa程度の酸素雰囲気中で高温に耐え得る特別な加熱機構を必要とし、装置が複雑になってしまっていた。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明は、PLD法による酸化物エピタキシャル薄膜の作製において、成膜条件を容易なものとし、成膜装置の構造を簡素化することのできる、酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、格子歪を含んだ単層の酸化物エピタキシャル薄膜を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、10~100℃に保持した基板上に、ラジカル酸素を照射しながら、パルスレーザー蒸着法により酸化物膜を蒸着する成膜工程と、酸化物膜を蒸着温度より高温で加熱するポストアニール工程とを有することを特徴とする酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法を提供する。
【0009】
このように、PLD法による酸化物薄膜の作製において、成膜時にラジカル酸素を照射し、さらに成膜後に高温でアニールすることにより、成膜時の基板温度が100℃以下の低温であっても、エピタキシャルな薄膜が作製できるので、基板の加熱機構に高い耐久性が要求されず、加熱機構及び成膜装置を簡素化することができる。
成膜時の基板温度は、好ましくは10~50℃であり、より好ましくは15~25℃である。特に、基板加熱を必要としない室温付近とするのが、成膜装置に加熱機構を設ける必要がなく装置を極めて簡素化でき、また基板温度の上昇・降下する工程がなくなり薄膜作製プロセスも簡略化できるので、望ましい。
【0010】
成膜工程におけるラジカル酸素の照射は、5×1014~5×1015atomos/cm2/sの照射量で行うことができる。また、ラジカル酸素は、ビーム状で基板の成膜面に向けて行う。
ラジカル酸素は、原子状酸素(atomic oxygen)とも呼ばれ、酸素分子よりも反応性が高い。本発明においてラジカル酸素は、PLD法による成膜工程においてレーザーによりプラズマ化された原子、分子の酸化反応を促進させ、さらに結合した酸素が、酸素雰囲気中で成膜された膜の場合と異なり、ポストアニールにより膜の配向性を上げ得る状態になるように作用していると推定している。
【0011】
成膜後のポストアニール工程は、酸素雰囲気、空気雰囲気などで行うことができる。あるいは、真空中でラジカル酸素を照射しながら行うこともできる。配向性が良く結晶質な膜を得る上ではラジカル酸素を照射しながら行うことが好ましいが、装置及びポストアニール工程の簡素化の点で、1気圧酸素雰囲気または1気圧空気中で行う方がより好ましく、1気圧酸素雰囲気で行うのが特に好ましい。
【0012】
ポストアニール工程における酸化物膜の加熱温度と加熱時間は、膜の配向性が十分に上がり、設備的にも作業効率的にも負担のない範囲で設定する。加熱温度としては600~750℃が好ましく、加熱時間としては1~10時間が好ましい。
【0013】
本発明の酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法は、酸化物のなかでもペロブスカイト型酸化物の薄膜作製に特に有効である。
また、本発明の作製方法により、基板との間に格子不整合が生じていても、基板の格子に揃った酸化物薄膜を得ることができる。すなわち、バルクより格子定数が小さい、または大きい状態で薄膜化された、格子歪を含んだ酸化物単層膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PLD法による酸化物薄膜の成膜を100℃以下の低温で行ってもエピタキシャルな薄膜が作製可能となるので、成膜装置において従来必要とされていた高温・酸素雰囲気下の使用に耐え得る基板加熱機構を必要とせず、PLDシステムを簡素化することができる。
特に、室温付近での成膜が可能なので、この場合、成膜装置には基板加熱機構そのものを必要としないので、基板加熱機構からの不純物による薄膜汚染がなくなる。また基板温度の上昇・降下が不要になるので、薄膜作製プロセスも簡略化することができる上に、バッチ処理によってエピタキシャル薄膜の作製に必要な時間も短縮できる。
【0015】
また、本発明によれば、格子歪を含んだ単層膜の作製が容易になる。単層の酸化物薄膜においても、格子歪を導入することによりその物性を各種デバイスに適するように改善することが可能となる。例えば、強誘電体や磁性体でペロブスカイト型構造を持つ酸化物が
あるが、本発明により単層膜であっても格子歪を導入するにとによりその誘電率や磁気的性質を調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
前述した通り、本発明の酸化物エピタキシャル薄膜の作製方法は、(1)100℃以下に保持した基板上に、ラジカル酸素を照射しながら、PLD法により酸化物膜を蒸着する成膜工程と、(2)酸化物膜を蒸着温度より高温で加熱するポストアニール工程とを有する。
【0017】
上記(1)の成膜工程では、真空容器中で、作製する薄膜と同一組成の酸化物の焼結体等のターゲットに高エネルギー密度のレーザー光をパルス状に照射し、ターゲット表面から原子、分子をプラズマ化して瞬間的に剥離して対向する基板上に蒸着させて、酸化物膜の成膜を行う。
ターゲットには作製する酸化物薄膜と同一組成の焼結体や圧粉体などを用いることができる。特に、焼結体は真空容器を汚しにくい点で好ましい。相対密度99%以上、純度99.99%程度の各種酸化物の焼結体が市販されているので、作製したい酸化物薄膜に応じてそれらを用いることができる。
【0018】
酸化物膜を蒸着させる基板は、単結晶基板を用いる。単結晶基板は、薄膜を作製しようとする酸化物の結晶と、格子不整合が小さく、対称性が合うものを選択することが好ましい。単結晶基板は、成膜工程に先立ち、高温における熱処理、酸によるエッチング処理などにより表面処理をしておくことが好ましい。
【0019】
これらターゲット及び基板は、真空容器中では、互いに対向するように配置する。ターゲットと基板との間の距離は、通常、数cmから10cm程度である。
ターゲット及び基板を配置後、一端、真空容器を真空度が少なくとも10-5Pa程度まで真空引きすることが、ターゲットや基板の表面に付着しているH2O等のガスを排気することができるので、好ましい。
成膜時には、ラジカル酸素を照射しながら酸化物膜の蒸着を行うので、真空容器中の真空度はおよそ10-2Pa程度まで低下する。
【0020】
成膜の際には、ターゲットは自転させることが、レーザー光の照射によるターゲット表面の形状変化の影響を抑えるためには、好ましい。
また、基板も回転させることが好ましい。これは、レーザー光の照射によってターゲット表面から剥離される原子、分子のプラズマの基板上に達する径には限りがあり、その範囲内で物質が基板上に蒸着するため、より広い面積に均一に成膜するためである。
【0021】
成膜に用いるレーザー光は、通常、紫外領域の波長のものを選ぶ。紫外レーザーとしては、XeCl、KrF、ArF等のエキシマーレーザーが挙げられる。また、Nd:YAGレーザーの4倍波などを用いることもできる。
レーザー光は、エネルギー密度を高めるためにターゲット表面に焦点を絞って照射する。焦点の面積とレーザー光のエネルギー値とから決まる、ターゲットに入射するレーザー光のパワー密度により、ターゲット表面から剥離する原子、分子の状態や成膜速度が変化するので、良好な膜質を得るため適当に調整する。
【0022】
上記(2)のポストアニール工程は、上記(1)の成膜工程で得られた酸化物膜に対して行う。
ポストアニール工程は、成膜装置(成膜を行った真空容器)内で成膜後引き続いて行うこともできるが、成膜装置の簡略化を図る意味で、成膜装置から専用のアニール処理装置に移して行うことが好ましい。ここで言うアニール処理装置とは、酸化物膜が蒸着された基板を収納し所望の雰囲気及び温度に保てる容器と、加熱機構とを備え、さらにその他の必要な機能を備えた装置であり、その具体的な仕様は特に制限はない。
【0023】
本発明の方法によりエピタキシャル薄膜を作製できる酸化物の一例として、ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物が挙げられる。
ペロブスカイト型酸化物としては例えば高温超電導体、強誘電体、磁性体などがあるが、他の例として、数百度の高温でプロトン導電性を示すプロトン導電体がある。ペロブスカイト型酸化物のプロトン導電体としては、SrZrO3、SrCeO3、SrTiO3、BaZrO3、BaCeO3、BaTiO3、CaZrO3等においてZr、Ce、TiなどABO3のBサイトの4価イオンを一部3価の陽イオン(Y3+、Yb3+、Sc3+、Er3+など)に置き換えたものが挙げられる。これらのプロトン導電体においても、本発明の方法によりMgOやSiなどの単結晶基板上にエピタキシャル薄膜を作製することができる。
【実施例】
【0024】
<1>(株)アルバック製レーザーアブレーション用超高真空容器にMgO単結晶基板(001)面(フルウチ化学(株)製)を設置した。室温にて、基板上にラジカル酸素を2×1015atomos/cm2/sで照射しながら、ラムダフィジックス製ArFエキシマーレーザーのレーザー光を高純度のBaZr0.950.053(以下、BZYという。)ターゲットに入射、ターゲットから30mm離して対向させた基板上にBZYの単層膜を蒸着させた。膜厚はおよそ200nmとした。
同様に、ターゲットをSrZr0.950.053(以下、SZYという。)に換えてSZYの単層膜(膜厚およそ200nm)をMgO基板上に蒸着した。
なお、ターゲットは、99.9~99.99%の純度のBaCO3、SrCO3、ZrO2、Y23を原料として固相反応で作製した。
このようにして、基板上に酸化物膜を蒸着した2つの試料を、次に空気中で750℃に保持し10時間アニールした。
【0025】
また、ラジカル酸素の照射を行わず、室温、10-1Paの酸素雰囲気下でMgO基板上に単層膜を蒸着させ、その後、空気中で750℃に保持し10時間アニールした比較用の試料をBZY、SZYのそれぞれについて作製した。
【0026】
上記のように作製した試料をX線回折装置により、X線回折パターンを測定した。測定結果を図1及び図2に示す。
X線回折パターンにより、酸素雰囲気中で成膜した膜はポストアニール後もほとんど配向性のない多結晶質の膜で有るのに対し、ラジカル酸素照射下で成膜した膜はポストアニール後に配向性の高い膜となっていることが分かった。なお、図1及び図2において、as grownとは、成膜後ポストアニール前の状態を指し、この状態では、ラジカル酸素照射下で成膜した膜と酸素雰囲気中で成膜した膜とで、X線回折パターンに大きな違いは見られなかった。
【0027】
また、ラジカル酸素照射下で成膜して試料については、X線回折極点図の測定を行い、面内方向(基板と平行な面内)の配向性を調べた。図3にSZYの単層膜の(110)面極点図を、図4にSZY単層膜及びBZY単層膜それぞれの(110)面に対するφスキャンスペクトルを示す。
図3及び図4に示されるように、SZY、BZYの薄膜は、MgO基板に揃ってエピタキシャル成長していることが分かった。
【0028】
<2>次に、BZY、SZYそれぞれについて、上記<1>と同様にしてラジカル酸素照射下で単層膜をMgO基板上に蒸着させた後、ポストアニールの温度及び時間をそれぞれ600~750℃、1~10時間の範囲で変化させた試料を作製した。作製した試料のX線回折パターン及びX線回折極点図を測定したところ、配向性の高いエピタキシャルな膜となっていることが確認された。
BZYの単層膜について、図5及び図6に、ポストアニールの条件によるX線回折パターンのピーク強度及び(110)面φスキャンスペクトルのピーク幅の違いを示す。この結果より、ポストアニールの条件により膜の結晶性に違いがあることが分かった。加熱温度650~700℃で5~10時間アニールした場合に特に結晶性の良い膜が得られる。なお、このポストアニールの条件による膜の結晶性の違いは、ラマン散乱スペクトルの測定結果からSZYの単層膜でも確認できた(図7参照)。
【0029】
また、SZYの単層膜について、図8に、ポストアニールの条件によるX線回折パターンのピーク位置の違いを示す。同様な変化はBZYの単層膜についても確認された。この結果より、ポストアニールの条件により積層方向で膜の格子面間隔が異なることが分かった。これはエピタキシーの差により格子歪が変化していると推定される。
【0030】
<3>さらに、BZY、SZYそれぞれについて、基板温度を650℃に保持したMgO基板上に単層膜を蒸着させた以外は、上記<1>と同様にして、高温成膜の試料を作製した。
高温成膜の試料、及び上記<1>でラジカル酸素の照射下の室温で作製した低温成膜の試料のそれぞれについて、X線回折パターンの測定結果から(100)面間隔を求めた。その結果を、参照用のバルク結晶の値を含めて、表1に示す。
【0031】
【表1】
JP0004465461B2_000002t.gif

【0032】
表1に示すように、高温成膜で得られる薄膜の(100)面間隔はバルク結晶に近い値となる。これはラジカル参照の照射下で成膜しても、酸素雰囲気中で成膜しても同様な結果が得られる。
一方、低温成膜で得られる薄膜の(100)面間隔は、BZY、SZYいずれの薄膜においてもバルク結晶の値より小さい。BZY、SZYのいずれもMgO基板と界面で格子不整合が生じるが、本発明の方法により作製した薄膜はポストアニールにより基板に揃うことで、格子が歪み、(100)面間隔が小さくなると推定される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】BaZr0.950.053(BZY)単層膜のX線回折パターンを示す。
【図2】SrZr0.950.053(SZY)単層膜のX線回折パターンを示す。
【図3】SZY単層膜のX線回折(110)面極点図を示す。
【図4】SZY、BZY単層膜それぞれの(110)面φスキャンスペクトルを示す。
【図5】様々なポストアニール条件で作製したBZY単層膜の(001)反射付近のX線回折パターンを示す。
【図6】様々なポストアニール条件で作製したBZY単層膜の(110)φスキャンスペクトルを示す。
【図7】様々なポストアニール条件で作製したSZY単層膜のラマン散乱スペクトルを示す。
【図8】様々なポストアニール条件で作製したBZY単層膜の(002)反射付近のX線回折パターンを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7