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明細書 :液晶素子の駆動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4077384号 (P4077384)
公開番号 特開2005-092009 (P2005-092009A)
登録日 平成20年2月8日(2008.2.8)
発行日 平成20年4月16日(2008.4.16)
公開日 平成17年4月7日(2005.4.7)
発明の名称または考案の名称 液晶素子の駆動装置
国際特許分類 G02F   1/133       (2006.01)
G02F   1/13        (2006.01)
FI G02F 1/133 540
G02F 1/133 570
G02F 1/13 505
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2003-327643 (P2003-327643)
出願日 平成15年9月19日(2003.9.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年春季第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 No.3 第1379頁 29p-c-17に発表
審査請求日 平成16年8月3日(2004.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐藤 進
【氏名】葉 茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100113099、【弁理士】、【氏名又は名称】和田 祐造
【識別番号】100117547、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 浩史
【識別番号】100103034、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信久
審査官 【審査官】金高 敏康
参考文献・文献 特開平11-109304(JP,A)
特開2001-066564(JP,A)
特開2003-029001(JP,A)
調査した分野 G02F 1/133
G02F 1/13
特許請求の範囲 【請求項1】
透明な第1の基板と、この第1の基板上の透明な第1の電極と、この第1の電極上に液晶層を挟んで配置された透明な第2の基板と、前記第2の基板上に設けられ孔を有する第2の電極とからなる液晶レンズを駆動する装置であって、
前記第1、第2の電極間に電圧を与えるときに、前記第1の電極に対して一定時間電位勾配を与えるための手段を有し、
前記第1の電極は、100Ω~1MΩの電気抵抗としたことを特徴とする液晶素子の駆動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液晶レンズとしての液晶素子の駆動方法と装置に関し、特に駆動時の光学特性に現われる液晶特有の問題点を改善し、結果的には応答速度を速くすることができるという技術に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
液晶の特徴を利用した液晶表示素子は、薄型軽量の平板型表示素子として、目覚ましい発展を続けている。液晶分子の配向状態は、液晶表示素子を構成する2枚の透明導電膜を付したガラス基板の表面の処理や、外部印加電圧により容易に制御することができる。
【0003】
ネマティック液晶セルにおいて、液晶分子は電界の方向に配向するという性質を利用すると、軸対称的な不均一電界による液晶分子配向効果により、空間的な屈折率分布特性を有する液晶レンズを得ることができる。例えば、特開平11-109304号公報では、液晶マイクロレンズが開示されており、焦点位置を光軸方向と光軸に垂直な方向とのいずれにも制御できるようにした技術が開示されている。

【特許文献1】特開平11-109304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の文献は、液晶マイクロレンズについて開示されているが、液晶レンズの利用分野としては、レンズ直径1mm以上の液晶レンズを要望する分野もある。例えば、撮像用レンズ、顕微鏡、眼鏡、光ファイバーのスイッチ素子などである。そこでレンズ直径1mm程度の液晶レンズを実現しようとすると、液晶層の厚みが500μm以上となる。しかしこれでは、液晶分子の配向が不十分となり、液晶が白濁するような現象が生じる。
【0005】
さらにまた問題となるのが、応答特性である。応答特性は、液晶層が厚くなるとそれだけ応答時間が長くなる。このために液晶レンズを採用する製品、及び使用個所によっては、不十分である。そこで、応答時間を早くするために高い電圧を与えることが考えられる。しかしさらにここで問題となるのが、液晶分子の配向が不連続となるディスクリネーションラインと呼ばれる欠陥領域が発生する現象が知られている。この現象は、液晶分子が基板面から立ち上がる方向が、セルの中央付近で例えば左右逆方向となり、ここに不連続線が生じるというものである。
【0006】
上記した白濁、ディスクリネーションラインのいずれが発生しても、液晶レンズとしての光学的な機能は果せなくなる。
【0007】
そこで、この発明の目的とするところは、簡単な構成で直径の大きな液晶レンズを容易に実現すること、さらに加えて、このような液晶レンズであってもその応答速度を早くすることができる液晶レンズの駆動方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、不均一な電界分布による分子配向効果を利用した液晶素子において、対向電極間に電圧を印加するとき又は電圧を可変するときに、少なくとも一方の電極に一定時間電位勾配を与えるようにした。
【0009】
また、この発明では、前記一方の電極に一定時間電位勾配を与えるときに前記対向電極間に所定電圧よりも大きい電圧を与え、その後前記所定電圧を与えることで、応答速度を速くしている。
【0010】
特にこの発明は、透明な第1の基板と、この第1の基板上の透明な第1の電極と、この第1の電極上に液晶層を挟んで配置された透明第2の基板と、前記第2の基板上に設けられ孔を有する第2の電極とからなる液晶レンズを駆動する装置であって、前記第1、第2の電極間に電圧を与えるときに、前記第1の電極に対して一定時間電位勾配を与えるための手段を有し、前記第1の電極は、100Ω~1MΩの電気抵抗としたことを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
上記の手段により、対向電極(第1、第2の電極)間に電圧を与えるときに、一方の電極(第1の電極)に対して、一定時間電位勾配を与えるので、電界により液晶分子が基板面から立ち上がる方向が一方向に整列される。このために対向電極間に電圧を与えたときに、液晶レンズの特性悪化となるディスクリネーションラインの発生が抑制される。結果として、対向電極間に印加する電圧を高くすることができ、応答特性、さらには回復特性の改善を得ることが可能となる。勿論光学特性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。先ず、本発明が適用された液晶レンズの構成を説明し、その駆動方法について説明する。この発明が適用された液晶レンズは、透明な第1の基板11と、この第1の基板上の透明な第1の電極12と、この第1の電極12上に液晶層13を挟んで配置された透明第2の基板14と、前記第2の基板14上に設けられ孔20を有する第2の電極17とを基本構成としている。そして、第1、第2の電極12、17間に電圧を与える前に、第1の電極12に対して一定時間電位勾配を与えるための手段を備える。
【0013】
透明な第1の電極12は、ITO(インジウム・スズ酸化物)からなる。一方、第2の電極17は、アルミニウム薄膜で形成されている。したがって、この液晶レンズは、第1の電極12と第2の電極17間に電圧を与えることで、孔20の中心軸を対称とする不均一な電界を得られる。よって、液晶分子配向効果により、液晶層13が、空間的に異なる屈折率の分布特性を示し、液晶レンズとして機能する。また、第1の電極12と、第2の基板14とが、それぞれ液晶層13に対向する面は、それぞれポリイミド膜またはポリビニルアルコール膜等の配向膜15,16で被覆されている。ポリイミド膜またはポリビニルアルコール膜等の配向膜15,16の表面は、液晶分子が均一に配列するように、一方向にラビングされている。
【0014】
上記のようにこの液晶レンズは,第2の基板14の液晶層13に対向する面には、電極は形成されておらず、アルミニウム薄膜である第2の電極17と液晶層13との間に、第2の基板14であるガラス(絶縁層)が介在していることになる。このため液晶層13の厚みが小さく、直径の大きなレンズを得るのに寄与している。つまり、小さな層厚での液晶分子配向が大きなレンズを構築するのに有効となるからである。また、液晶分子を確実に駆動できるため白濁の問題も生じない。また後述する液晶駆動の容易性にも寄与している。
【0015】
本実施形態に係る液晶レンズにおいて、液晶層13の厚さは、130μm、基板11,14の厚さは1.3mm、孔20の径は7.0mmとしたが、これらの値は、種々変えることが可能である。
【0016】
しかし、本実施形態に係る液晶レンズにおいて、特に第2の基板14の厚さは、第2の電極17と液晶層13との間の距離を規定するために重要である。基板14の厚さは1μm~5mm、特に数μm~数mm、例えば2μm~3mmであるのが望ましい。即ち、基板14はガラス基板に限らず、それ以外の絶縁層とすることも可能である。この場合、薄い絶縁層を保持するために、別途、基板を用いてもよい。絶縁層としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等を用いることが出来る。なお、孔20の径は、数μm~数10mm程度が望ましいが、特に限定されるものではない。
【0017】
孔20の周辺に、例えば、基板14と電極17との間に、孔20よりもサイズの小さい開口部を有し、孔20を通過する光を制限する光遮断部材、いわゆるブラックマトリクスを設けてもよい。即ち、孔20の周辺部の特性は悪いが、ブラックマトリクスを設けることにより、孔20の周辺部においても、良好な特性を得ることが出来る。ブラックマトリクスとしては、カーボン等を用いることが出来る。
【0018】
以上のように構成される、液晶レンズでは、アルミニウム薄膜である第2の電極17と透明な第1の電極12の間に電圧を印加すると、不均一な電界が、液晶層13の広い領域全体にわたって分布する。このために、屈折率の異なる分子配向領域が液晶層13内に分布して形成される。このようにして、大きなサイズのレンズが実現される。
【0019】
多様な屈折率の分布は、印加される電圧により変化する。そのため、レンズの焦点距離は、外部電圧の関数であり、外部電圧によって、レンズの焦点距離を任意に変えることが可能である。
【0020】
図2には、本発明の特徴を説明するために、第1の電極12と第2の電極17と、その駆動手段21、及び第1の電極に対して電位勾配を与えることができる電位勾配設定手段22を取り出して示している。
【0021】
この発明では、第1の電極12は、比較的高抵抗な材料が用いて構成されており、例えば、酸化亜鉛にインジウム酸化物を添加したもの、又は酸化スズを挙げることが出来る。電気抵抗は、100Ω~1MΩ程度が好ましい。ここでは、約10kΩの抵抗値の電極12を用いた。端子111、112が設けられている。端子111と112が並ぶ方向はラビング方向と平行な方向が好ましい。
【0022】
本発明は、この電気抵抗を有効に活用し、対向電極12、17間に電圧を印加するときに、第1の電極12に電流を流し、電位勾配を与えるのである。このとき第1の電極12の端子111、112間には、例えば図3に示されるように、電圧V1とV2とが一定時間Δt与えられる。一定時間経過後は、両端子111、112はV0となる。
【0023】
一定時間Δtの間は、液晶層内における電界が一定方向へ傾いた状態となり、液晶分子の配向も一定方向へ揃うことになる。この結果、駆動手段21で駆動したとき、液晶分子配向が確実に得られ、ディスクリネーションラインが生じないことが確認された。つまり本発明では、ディスクリネーションラインが生じにくいように改善されたものである。この結果、駆動手段21からは、応答を速くするために、大きな電圧を出力してもよいことになる。
【0024】
つまり、一方の電極12に上記した一定時間の電位勾配を与えるときに前記対向電極11,12間に、所定電圧よりも大きい電圧を与え、その後前記所定電圧を与えるのである。これにより、ディスクリネーションラインが生じることなく、大きな電圧で駆動することができ、応答速度を速くすることができる。
【0025】
実験は、電位勾配を与えるための電圧としては、V1=210Vrms、V2=270Vrms,V0=80rmsで行った。また、Δtを種々選択し、フォーカスの焦点変化を観察した。図4には、その観察結果を示している。図4の横軸はフォーカス応答時間である。縦軸は、フォーカス状態である。この結果から、応答時間は、Δtに依存することが分る。
【0026】
また、図5には、横軸がΔtを示し、縦軸が応答時間(τ)を示している。図3のように電位勾配を第1の電極12に与えることで、応答時間が短くなることが分る。
【0027】
焦点距離は、透明な第1の電極12とアルミニウム薄膜の第2の電極17との間に印加する電圧を変化させることにより変化する。液晶セルの焦点距離は、印加電圧により変化する。つまり光に対する集束力は、電圧により変化することである。最小の焦点距離は約76cmであり、35Vrmsの近傍で得られる。電圧が増加し続けるに従って、中央付近のダイレクタが回転し続け、一方、孔の近傍のダイレクタは飽和する。屈折率のプロファイルは平坦化し、焦点距離はより長くなる。また位相リターデーションのプロファイルは、孔の径と基板の厚さにより調整することが出来る。良好な性能を得るためには、孔のサイズを基板の厚さに従って増加させることが必要である。このような構造では、中間絶縁層として種々の厚さのガラス基板又は薄膜を用いることにより、殆ど任意のサイズの液晶レンズを実現することが出来る。
【0028】
液晶層を有する液晶レンズでは、孔の直径に対して相対的に液晶層を薄くすることが出来るので、そのため、動作速度を、従来の液晶レンズよりもはるかに高速にすることが可能である。本発明の液晶レンズのセル構造では、金属のような導電体の近傍では電界は面に垂直であるという事実により、電界と、液晶レンズの任意の位置にあるダイレクタとの間の角度は、殆ど同一であり、すべてのダイレクタは同じ方向に回転する。そのため、電圧を印加した場合でも、ディスクリネーションラインは生じない。このことは、動作速度を速めるために高電圧を印加することが出来ることを示している。特に、図3で説明した電位勾配を与える手法を用いたので、ディスクリネーションラインの発生を確実に抑圧できるというものである。
【0029】
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。上記の実施の形態では、第1の電極12に対して、図3に示したような波形で電圧を印加した。しかしこれに限らず、駆動中においても、第1の電極12に対して電位勾配を与えてもよい。このようにすると、液晶層13の液晶分子が電位勾配の方向に配向する。その結果、第1の電極12に電位勾配がないときに軸対称であった屈折率分布が、電位勾配の方向に非対称な分布となり、入射光が直進する方向から偏向するという機能が得られる。
【0030】
この場合、電極12へ電圧が印加される部分、即ち、電極12の両端に設ける端子の位置を適宜変えることにより、入射光の偏向の方向を変化させることが出来る。これにより電極12と電極17との間に印加する電圧、及び電極12の両端部に印加する電圧を変化させることにより、3次元的な焦点可変特性を得ることが可能である。この液晶レンズは、自由空間での光スイッチや光ファイバー間の切り替えスイッチ等の種々の広範囲の用途への適用が可能である。
【0031】
図6にはさらにこの発明の別の実施の形態を示している。勿論上述した実施の形態と本実施の形態とを組み合せて構成してもよいし、また、一部の実施の形態を削除した状態で実施しても本発明の範疇である。図6は、第2の電極17が分割されて電極171、172とされている。他の構成部分は、図2に示した構成と同じである。図6に示した実施の形態であると、回復時間を短くすることができる。第1と第2の電極12、17間に印加する電圧を除去すると、液晶分子に対する電界による配向効果が消失する。すると、ラビングによる配向効果により、液晶分子はラビングの方向に沿って基板に平行に配向した元の状態に戻る。このときに要する時間が回復時間である。回復時間は、液晶層13の厚みの2乗に近い特性で長くなる。
【0032】
そこでこの実施の形態では、第1と第2の電極12、17間に印加する電圧Va,Vaを除去した後、続いて、電極171、172間に電圧Vbを一定時間印加するようにしている。するとランビング方向に電界が勾配し、これに沿って液晶分子も配列することになる。つまりレンズ状態から非レンズ状態に回復することになる。電圧Vbの印加により、回復時間が大きく短縮される。したがって、先に延べた応答時間の改善と相俟って、本実施例であると、回復時間も改善され、結果として、大型で、高速応答が可能な液晶レンズを提供できるものである。なおこの発明の思想は、液晶レンズのみならず、不均一電界に基く分子配向効果を利用する液晶素子全般に適応できるものである。
【0033】
図6に示した実施の形態では、第2の電極17に対して、孔20及びスリットを形成した。しかしこれに限らず、図7に示すように、第1の電極12を第2の電極17と同様な構造に構成してもよい。この場合は、液晶マイクロレンズを構成する場合に有効となる。またこの場合は、図1の構成と異なり、電極間にあえて絶縁層を設けずともよく、対向基板の対向面に第1と第2の電極12、17を設ける構造となる。第1と第2の電極12、17は、それぞれの分割電極間に電圧Vbが印加される。この電圧Vbの印加タイミングは、駆動開始時、及び回復時である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態の基本構成を示す断面図。
【図2】本発明の一実施の形態における特徴部を示す説明図。
【図3】本発明の一実施の形態の動作を説明するために示した電圧波形の例を示す図。
【図4】本発明による液晶レンズのフォーカス位置の変化の例を示す図。
【図5】本発明のレンズ特性への応答速度を測定した結果を示す図。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す説明図。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0035】
11…第1の基板、12…第1の電極、13…液晶層、14…第2の基板、17…第2の電極、20…穴、21…駆動手段、22…電気勾配設定手段、23…コントロール手段。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6