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明細書 :単層カーボンナノチューブの製造方法とそれにより得られる単層カーボンナノチューブおよび多孔質体原料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3623732号 (P3623732)
公開番号 特開2002-154813 (P2002-154813A)
登録日 平成16年12月3日(2004.12.3)
発行日 平成17年2月23日(2005.2.23)
公開日 平成14年5月28日(2002.5.28)
発明の名称または考案の名称 単層カーボンナノチューブの製造方法とそれにより得られる単層カーボンナノチューブおよび多孔質体原料
国際特許分類 C01B 31/02      
B82B  1/00      
B82B  3/00      
FI C01B 31/02 101F
B82B 1/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2000-344397 (P2000-344397)
出願日 平成12年11月10日(2000.11.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 CHEM.PHYS.LETT., Vol.323, p.549-553 に発表
審査請求日 平成15年3月4日(2003.3.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
発明者または考案者 【氏名】飯島 澄男
【氏名】湯田坂 雅子
【氏名】張 民芳
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特許第2526782(JP,B2)
特開2000-203819(JP,A)
特開2001-294413(JP,A)
特開2001-520615(JP,A)
特開2000-063112(JP,A)
特開平10-273308(JP,A)
特開平07-061803(JP,A)
調査した分野 C01B 31/02
JICSTファイル(JOIS)
WEB OF SCIENCE
特許請求の範囲 【請求項1】
加熱によりガスを発生する、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの金属化合物と炭素を混合圧縮成形し、ガス発生温度以上の高温で加熱処理した多孔質体原料にアーク放電法またはレーザーアブレーションによりエネルギーを供給することで単層カーボンナノチューブを得ることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
金属化合物が、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの硝酸塩、炭酸塩、酸化物、塩化物、窒化物、硫化物である金属無機化合物、あるいは、フタロシアニン、フェロセン、ニッケロセンである金属有機化合物または錯体のうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
金属化合物が、Ni(NO326(H2O)とCo(NO326(H2O)、あるいはNiOとCo34の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの金属化合物内の金属粒子の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1ないしいずれかに記載の単層カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれかの単層カーボンナノチューブの製造方法で用いる加熱によりガスを発生するFe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの金属化合物と炭素を混合、圧縮成形し、ガス発生温度以上の高温で加熱処理した多孔質体原料。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、単層カーボンナノチューブの製造方法とそれにより得られる単層カーボンナノチューブおよび多孔質体原料に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、より生成効率が高められた単層カーボンナノチューブの製造方法と、その方法により得られる、マイクロ半導体、マイクロカプセルおよびマイクロマシンなどに有用な単層カーボンナノチューブおよびその方法で用いる多孔質体原料に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、マイクロ半導体等の次世代半導体、マイクロカプセル等の次世代医薬品等に代表されるナノオーダ物質の研究および開発が盛んに行われている。そして、ごく最近では、そのナノオーダ物質の基盤材料として、単層カーボンナノチューブに注目が集まっている。
【0003】
単層カーボンナノチューブの製造方法としては、一般的には、アーク放電法やレーザーアブレーション法等が利用されている。アーク放電法は、金属を含む炭素電極間にアーク放電を発生させることで単層カーボンナノチューブを得るものであり、レーザーアブレーション法は、金属を含む炭素ターゲットにレーザーを照射することで単層カーボンナノチューブを得るものである。これらの方法において、単層カーボンナノチューブの原料である炭素電極および炭素ターゲットは、たとえば、2~10μm程度の金属単体粒子と炭素粒子とを混合して圧縮成形して焼結した焼結体として用いられている。
【0004】
しかしながら、このような原料体を用いる単層カーボンナノチューブの製造方法においては、アーク放電あるいはレーザー照射により供給されたエネルギーが原料体の内部で拡散してしまうため、供給エネルギーの全てを原料の気化に使用できず、効率良く単層カーボンナノチューブを製造することはできなかった。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、効率の良い単層カーボンナノチューブの製造を可能とする方法と、その方法により得られる、マイクロ半導体、マイクロカプセルおよびマイクロマシンなどに有用な単層カーボンナノチューブを提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0007】
すなわち、まず第1には、加熱によりガスを発生する金属化合物と炭素を混合圧縮成形し、ガス発生温度以上の高温で加熱処理した多孔質体原料にアーク放電法またはレーザーアブレーションによりエネルギーを供給することで単層カーボンナノチューブを得ることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0008】
そして第2には、金属化合物がFe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの、硝酸塩、炭酸塩、酸化物、塩化物、窒化物、硫化物である金属無機化合物、あるいは、金属のフタロシアニン、フェロセン、ニッケロセンである金属有機化合物または錯体のうちの1種または2種以上であることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法を、そして、第には、金属化合物が、Ni(NO326(H2O)とCo(NO326(H2O)、あるいはNiOとCo34の組み合わせであることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法を、さらには、第には、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの金属化合物内の金属粒子の平均粒径が20nm以下であることを特徴とする単層カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
また、この出願の発明は、第には、上記いずれかの単層カーボンナノチューブの製造方法で用いる加熱によりガスを発生するFe、Co、Ni、Pt、Pd、Rhの金属化合物と炭素を混合、圧縮成形し、ガス発生温度以上の高温で加熱処理した多孔質体原料を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0011】
まず、この出願の発明が提供する単層カーボンナノチューブの製造方法は、金属と炭素からなる多孔質体原料にエネルギーを供給することで単層カーボンナノチューブを得ることを特徴としている。
【0012】
すなわち、この出願の発明者らは、単層カーボンナノチューブの原料体として従来より広く一般に用いられてきた金属を含む炭素の焼結体を用いる代わりに、多孔質体原料を用いることにより、原料体内での供給エネルギーの拡散を抑制し、原料気化のためのエネルギー効率を劇的に増加できることを見出した。
【0013】
この多孔質体原料は、触媒として、Fe,Co,Ni,Pt,Pd,Rh等の金属を炭素中に混入させ、多孔質体としたものを用いることができる。金属の混合率は必要量でよく、約1原子%程度あれば十分である。
【0014】
このような多孔質体原料にエネルギーを供給することで、供給エネルギーの拡散を抑制し、効率良く単層カーボンナノチューブを製造することができる。エネルギーの供給手段としては、たとえば、アーク放電法レーザーアレーション法等の、一般に利用されている各種の方法を適用することができる
【0015】
この出願の発明における多孔質体原料は、たとえば、加熱によりガスを発生する上記金属の金属化合物と炭素を混合、圧縮成形し、そのガス発生温度以上の高温で加熱処理することで簡便に作製することができる。多孔質体原料の形状等は任意とすることができる。
【0016】
この場合、金属化合物としては、たとえば、上記金属の硝酸塩,炭酸塩,酸化物,塩化物,窒化物,硫化物、あるいは、フタロシアニン,フェロセン,ニッケロセンまたは錯体等のうちの1種または2種以上を用いることができる。さらには、金属化合物としては、NiOとCo、さらには、Ni(NO6(HO)とCo(NO6(HO)を用いることが好適な例として示される。
【0017】
これらの金属化合物、たとえば、Ni(NO6(HO)とCo(NO6(HO)は、加熱されると、水、窒素および酸素に分解されてガスを発生する。そして、たとえば、昇温速度30℃/min、バックグラウンド圧力1×10-5Paで測定したスペクトラム量から、窒化物の分解によるガス生成温度は800K以下と類推され、生成されたガスは1470Kでほぼなくなることが確認されている。
【0018】
すなわち、この出願の発明においては、この様な加熱によるガスの発生により、単層カーボンナノチューブ原料の成形体を多孔質化するようにしている。そして、この多孔質体原料は、従来より一般的に用いられてきた焼結体原料とはその構造を大きく異なるものとする。
【0019】
以上のことからもわかるように、この出願の発明における金属化合物としては、金属の硝酸塩を用いることが好ましい。その化学式からも明らかなように、たとえば、酸化物よりも窒化物の方がその分解過程におけるガス発生量が多く、多孔質体原料の作製に有用である。
【0020】
さらに、この出願の発明において、金属化合物内の金属粒子は、粒径が約20nm以下と小さい方が、より効率良く単層カーボンナノチューブを製造することができる。たとえば、直径20nmの金属粒子を含む多孔質体原料を用いた場合には、直径2~10μmの金属粒子を含む多孔質体原料を用いた場合と比較して、製造される単層カーボンナノチューブの量が約1.4倍にも増加されることが確認されている。
【0021】
これによって、マイクロ半導体、マイクロカプセル等のナノオーダ物質の基盤材料として有用な単層カーボンナノチューブを、効率良く、すなわち低コストで大量に得ることができる。
【0022】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0023】
【実施例】
単層カーボンナノチューブの原料としてのターゲット材を様々に変化させ、レーザーアレーション法を利用して単層カーボンナノチューブを製造した。なお、レーザーにはNd:YAGレーザー(波長532nm、パルス長さ6~7ナノ秒、周波数10Hz、ビーム直径3mm、アブレーション時間60秒)を用い、アルゴンガス600Torr、温度1470Kの条件で行なった。
【0024】
ターゲット材としては、表1に示した6種類のターゲットを用いた。
【0025】
【表1】
JP0003623732B2_000002t.gif
【0026】
ターゲット1~4は、この出願の発明によるものであり、原料の金属化合物として、ターゲット1および2は、硝酸塩であるNi(NO6(HO),Co(NO6(HO)を、ターゲット3および4は、酸化物であるNiO,Coを用いて作成した多孔質体ターゲットである。なお、ターゲット1~4に含まれる金属粒子の大きさは、~10μm程度であった。
【0027】
一方の、ターゲット5、6は、従来より一般に使用されているものであり、5~10μmのグラファイト粉末と、2~7μmのNiおよびCo粒子を配合して焼結させた、焼結体ターゲットである。
<A> ターゲット1~6を用い、レーザー強度を変化させて単層カーボンナノチューブを製造した。その結果、レーザーアレーション装置のチャンバー出口付近に、単層カーボンナノチューブが堆積物として生成しているのが確認された。
【0028】
図1に、ターゲット1~6を用いた場合の、レーザー強度と単層カーボンナノチューブの堆積量との関係を示した。図1より、単層カーボンナノチューブの堆積量はレーザー強度と金属含有率に依存することが分かった。
【0029】
金属含有率が同程度のターゲット1,3,5とターゲット2,4,6を比較すると、この出願の発明であるターゲット1~4を用いた場合には、従来のターゲット5,6を用いた場合よりも、より多くの単層カーボンナノチューブが得られることが示された。
【0030】
さらに、硝酸塩を用いて作製したこの出願の発明のターゲット1、2は、酸化物を用いて作製したターゲット3、4よりも1.7~2.4倍程度多くの単層カーボンナノチューブを生成できることが確認された。
<B> 上記<A>で得られた堆積物が単層カーボンナノチューブであることを確認するために、堆積物のラマンスペクトラムを測定した。ターゲット2、4、6についてのラマンスペクトラムの測定結果を図2に示した。
【0031】
これらのラマンスペクトラムには、165cm-1,1565cm-1および1592cm-1付近に吸収ピークが見られた。さらに、C60に特有の1470cm-1と、アモルファスカーボンに特有の1350cm-1にも小さいピークが見られた。
【0032】
このことから、それぞれのターゲットから生成された堆積物が単層カーボンナノチューブであることが確認された。
【0033】
また、この出願の発明におけるターゲットは、その構造は異なるものの、本質的な構成は従来のものと同じであることもわかった。
<C> 各ターゲットの微細構造を詳細に観察するために、ターゲットの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。ターゲット1、3、5のSEM像を、それぞれ図3~図5に示した。
【0034】
この出願の発明のターゲット1および3は、従来のターゲット5に比べ、非常に大きな孔を有する多孔質構造からなることが確認された。さらには、ターゲット1の方がターゲット3よりも、より大きな孔からなる多孔質構造であることが示された。
<D> ターゲットの原料として用いた金属化合物内の金属粒子の大きさが、単層カーボンナノチューブ生成量に及ぼす影響を調べた。
【0035】
前記表1に示した、この出願の発明のターゲット材1、2、3について、金属化合物内の金属粒子の粒径を(a)20nm,(b)10μm程度としたものを用意し、それぞれ、ターゲット1a、ターゲット1b、ターゲット2a、…とした。また、従来のターゲット材5についても、原料の金属粒子の粒径を20nmとしたものを用意し、ターゲット5aとした。
【0036】
これら7種類のターゲットを用い、レーザー強度を変化させて単層カーボンナノチューブを製造した。その結果を図6に示した。
【0037】
ターゲット1a~ターゲット3bについては、粒径20nmの金属粒子を用いたものの方が、粒径10μmの金属粒子を用いたものよりも、多量の単層カーボンナノチューブを製造できることが確認された。
【0038】
また、粒径20nmの金属粒子を用いたターゲット1a、ターゲット2a、ターゲット3aおよびターゲット5aを比較すると、この出願の発明のターゲットターゲット1a、ターゲット2a、ターゲット3aの方が、従来のターゲット5aよりも単層カーボンナノチューブの生成効率がよいことが示された。
【0039】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、生成効率がより高められた単層カーボンナノチューブの製造方法と、その方法により得られ、マイクロ半導体、マイクロカプセルおよびマイクロマシンなどに有用な単層カーボンナノチューブ、およびその方法に用いる多孔質原料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における各種ターゲットの、レーザー強度と単層カーボンナノチューブの堆積量との関係を例示した図である。
【図2】実施例における各種ターゲットの、ラマンシフトとその強度との関係を例示した図である。
【図3】実施例におけるターゲット1の断面のSEM像を例示した図である。
【図4】実施例におけるターゲット3の断面のSEM像を例示した図である。
【図5】実施例におけるターゲット5の断面のSEM像を例示した図である。
【図6】実施例における各種ターゲットの、レーザー強度と単層カーボンナノチューブの堆積量との関係を例示した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5