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明細書 :樹脂組成物および成形品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5702385号 (P5702385)
登録日 平成27年2月27日(2015.2.27)
発行日 平成27年4月15日(2015.4.15)
発明の名称または考案の名称 樹脂組成物および成形品
国際特許分類 C08L  71/10        (2006.01)
C08L  27/18        (2006.01)
FI C08L 71/10
C08L 27/18
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2012-523820 (P2012-523820)
出願日 平成23年6月27日(2011.6.27)
国際出願番号 PCT/JP2011/064662
国際公開番号 WO2012/005133
国際公開日 平成24年1月12日(2012.1.12)
優先権出願番号 201010218794.0
優先日 平成22年7月5日(2010.7.5)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成24年9月28日(2012.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】508147717
【氏名又は名称】清華大学
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】謝 続明
【氏名】増田 晴久
個別代理人の代理人 【識別番号】110000914、【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
審査官 【審査官】井津 健太郎
参考文献・文献 特開2006-274073(JP,A)
特開平06-136255(JP,A)
特開2009-052028(JP,A)
特開2009-068390(JP,A)
国際公開第03/044093(WO,A1)
特開平02-212539(JP,A)
特開昭58-176242(JP,A)
調査した分野 C08L 1/00-101/16
特許請求の範囲 【請求項1】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を含む樹脂組成物であって、
フッ素樹脂(II)は、テトラフルオロエチレン及び下記の一般式(1)
CF=CF-R (1)
(式中、Rは、-CFまたは-ORを表す。Rは、炭素数1~5のパーフ
ルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体
であり、
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)とフッ素樹脂(II)との質量比(I):(II)
が95:5~50:50であり、
フッ素樹脂(II)が芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)中に粒子状に分散しており、
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径が2.0μm以下であることを特徴とする樹脂組成
物。
【請求項2】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径が0.30μm以下である請求項1に記載の樹脂組
成物。
【請求項3】
フッ素樹脂(II)は、メルトフローレートが0.1~100g/10分である請求項1
又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)は、ポリエーテルエーテルケトンである請求項1、
2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の樹脂組成物からなる成形品。
【請求項6】
摺動部材として使用される請求項5に記載の成形品。
【請求項7】
シール材、ギア、アクチュエーター、ピストン、ベアリングまたはブッシュである請求項
5又は6に記載の成形品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化や低コスト化を目的に、金属部品を樹脂化する検討が活発に行われ、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の熱可塑性樹脂を使用した自動車部品、工業部品又は電気電子部品が実用化されている。ギア、ベアリングリテーナ等の摺動用途においても、金属製摺動部材から樹脂製摺動部材への置換が進みつつあるが、高加重・高温・高速回転等の条件で使用される摺動部材には上記のような熱可塑性樹脂では摺動性が不充分であり、摩耗、溶融、割れ、欠け等の問題が発生することがあった。
【0003】
一方、フッ素樹脂は、摺動性、耐熱性、耐品性、耐溶剤性、耐候性、柔軟性、電気的性質等の特性に優れ、自動車、産業機械、OA機器、電気電子機器等の幅広い分野で使用されており、とりわけ摺動性に優れており、その低い摩擦係数は樹脂の中でも突出している。しかしながら、結晶性の耐熱性熱可塑性樹脂に比べ、機械的特性や荷重たわみ温度で示されるような物理的な耐熱性に劣る場合が多く、また非晶性の耐熱性熱可塑性樹脂に比べて寸法安定性に劣っている場合があり、使用範囲が限定されているのが実情であった。
【0004】
このような状況下、熱可塑性樹脂の摺動性を改良し、より広範な摺動部材への適用を図るための検討がなされている。例えば、特許文献1には、加熱変形温度が100℃以上の熱可塑性樹脂60~99重量部と炭素繊維40~1重量部からなる樹脂組成物100重量部に対し、フッ素樹脂及び黒鉛の総量1~50重量部を含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、成形温度が300℃以上である熱可塑性耐熱樹脂(A)と、特定の構造を有するα-フルオロアクリル酸フルオロアクリルを必須成分として重合して得られるポリマー(B)を含んでなる樹脂組成物が開示されている。
【0005】
摺動性を改善する目的以外にも、熱可塑性樹脂に対してフッ素樹脂を添加することが知られている。例えば、特許文献3には、エンジニアリングプラスチックの成形加工において、押出圧力及び押出トルクを低下する等の成形加工性を向上させるために、含フッ素重合体をエンジニアリングプラスチックの質量及び含フッ素重合体の質量の合計の0.005~1質量%添加することが開示されている。特許文献4には、PFA樹脂水分散液中にPEEK樹脂の微粉末を、PFA:PEEK重量比で75:25~70:30の比率に混合し、この分散液を常法に従って粗面化した金属表面に直接塗着し、焼成することで、接着耐久性のあるPFA-PEEK複合塗膜を形成することが開示されている。
【0006】
また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)は熱可塑性樹脂の中でも比較的優れた摺動性を示し、ギア、ベアリングリテーナ等の摺動用途で実用化されている。しかし、高荷重等の厳しい摺動条件下では未だ摺動性は十分とは言えず、PEEKの摺動性を改良するためにPTFE粉末を配合したPEEK組成物が開発され市販されている。当該PTFE粉末配合PEEK組成物は確かに動摩擦係数は低減されているが、限界PV値に代表される摺動特性は低いレベルであり、更なる摺動性の改良が求められている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平8-48887号公報
【特許文献2】特開平10-195302号公報
【特許文献3】国際公開第2003/044093号パンフレット
【特許文献4】特開平6-316686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、低い動摩擦係数及び高い限界PV値を兼ね備えた成形品を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、芳香族ポリエーテルケトン樹脂中に分散するフッ素樹脂の平均分散粒子径が数千nmのオーダーで微分散すると、動摩擦係数や限界PV値の摺動性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成することに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を含む樹脂組成物であって、フッ素樹脂(II)は、テトラフルオロエチレン及び下記の一般式(1)
CF=CF-R (1)
(式中、Rは、-CFまたは-ORを表す。Rは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体であり、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)とフッ素樹脂(II)との質量比(I):(II)が95:5~50:50であり、フッ素樹脂(II)が芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)中に粒子状に分散しており、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径が3.0μm以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
【0011】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径は0.30μm以下であることが好ましい。
【0012】
フッ素樹脂(II)は、メルトフローレートが0.1~100g/10分であることが好ましい。
【0013】
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)は、ポリエーテルエーテルケトンであることが好ましい。
【0014】
本発明は、上述の樹脂組成物からなる成形品でもある。
【0015】
上記成形品は、摺動部材として使用することができる。特にシール材、ギア、アクチュエーター、ピストン、ベアリングまたはブッシュとしての使用が例示できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、上記構成からなるので、低い動摩擦係数及び高い限界PV特性を有する成形品を得ることができる。また、得られる成形品は優れた摺動性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳述する。

【0018】
本発明は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を含む樹脂組成物である。

【0019】
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエーテルエーテルケトンであることが更に好ましい。

【0020】
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)は、1000sec-1、400℃における溶融粘度が0.05~0.50kNsm-2であることが好ましい。溶融粘度が上記範囲であることにより、加工特性が向上し、低動摩擦係数及び高い限界PV特性を得ることができる。溶融粘度の好ましい下限は0.10kNsm-2である。溶融粘度の好ましい上限は0.45kNsm-2である。

【0021】
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)は、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましい。より好ましくは、135℃以上であり、更に好ましくは、140℃以上である。上記範囲のガラス転移温度であることによって、耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。上記ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定される。

【0022】
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)は、融点が300℃以上であることが好ましい。より好ましくは、320℃以上である。上記範囲の融点であることによって、得られる成形品の耐熱性を向上させることができる。上記融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置によって測定される。

【0023】
上記フッ素樹脂(II)は、テトラフルオロエチレン(TFE)及び下記の一般式(1)
CF=CF-R (1)
(式中、Rは、-CFまたは-ORを表す。Rは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体である。フッ素樹脂(II)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。上記Rが、-ORである場合、上記Rは炭素数が1~3のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。

【0024】
一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物としては、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。

【0025】
フッ素樹脂(II)としては、低い動摩擦係数が得られることからパーフルオロポリマーが好ましい。

【0026】
上記フッ素樹脂(II)は、90~99モル%のTFE及び1~10モル%の上記一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物から構成されることが好ましい。より好ましくは、93~99モル%のTFE及び1~7モル%の上記一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物から構成されるフッ素樹脂である。

【0027】
上記フッ素樹脂(II)は、372℃、5000g荷重の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、10~40g/10分であることがより好ましい。MFRが上記範囲であることにより、本発明の樹脂組成物から製造される成形品の動摩擦係数を低くすることができ、更に限界PV値をも向上させることができる。MFRの更に好ましい下限は12g/10分であり、特に好ましい下限は15g/10分である。動摩擦係数の低減の観点から、MFRの更に好ましい上限は38g/10分であり、特に好ましい上限は35g/10分である。

【0028】
上記フッ素樹脂(II)の融点は特に限定されないが、成形する際に用いる芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)が溶融する温度で既にフッ素樹脂(II)が溶融していることが成形において好ましいため、上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)の融点以下の温度であることが好ましい。例えば、フッ素樹脂(II)の融点は、230~350℃であることが好ましい。

【0029】
上記フッ素樹脂(II)は、公知の方法によりフッ素ガス処理したものであってもよいし、アンモニア処理したものであってもよい。

【0030】
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)とフッ素樹脂(II)との質量比(I):(II)が95:5~50:50である。上記範囲に設定することによって、低い動摩擦係数及び高い限界PV特性を併せ持つ成形品を製造することができる。フッ素樹脂(II)の含有量が芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)との質量比で50を超えると、強度が劣る傾向があり、5未満であると、充分な動摩擦係数がえられない。より好ましい範囲は、90:10~60:40である。

【0031】
本発明の樹脂組成物において、フッ素樹脂(II)は芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)中に粒子状に分散しており、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径が3.0μm以下である。平均分散粒子径が大きすぎると、充分な摺動性が得られない。下限は特に限定されないが0.01μmであってよい。

【0032】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径は、2.0μm以下であることが好ましい。平均分散粒子径が2.0μm以下であると、高い限界PV特性を有する成形品を得ることができる。

【0033】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径は、1.0μm以下であることがより好ましい。

【0034】
従来から、摺動部材の割れや欠けを解消するため、耐衝撃性が改良された芳香族ポリエーテルケトンが要求されてきた。一般に、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良するには、ゴム成分をアロイする手法が採用される。しかし、芳香族ポリエーテルケトンは高耐熱の熱可塑性樹脂であり、その成形加工温度は350℃を超え、通常は400℃近くで成形が行われる。仮に芳香族ポリエーテルケトンにゴム成分をアロイしたとしても、成形加工時にゴム成分が熱劣化して実用的でない。従って、芳香族ポリエーテルケトンの耐衝撃性を改良するための有効な手段は実質上見出されていないのが現状である。

【0035】
このような現状のもと、本発明者らは、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径が1.0μm以下であると、低動摩擦係数及び高い限界PV特性を有する成形品となるばかりか、意外なことに成形品の耐衝撃性が劇的に向上することを見出した。

【0036】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径は、更に優れた耐衝撃性を有する成形品が得られる点で0.30μmであることが更に好ましい。

【0037】
フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径は、本発明の樹脂組成物のプレスシートを透過電子顕微鏡(TEM)にて顕微鏡観察を行い、得られた画像を光学解析装置にて二値化処理することにより求めることができる。

【0038】
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を含むものであるが、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては特に限定されないが、チタン酸カリウム等のウィスカ、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維、その他の高強度繊維等の繊維状の強化材;炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレイ、カーボン粉末、グラファイト、ガラスビーズ等の無機充填材;着色剤;難燃剤等通常使用される無機又は有機の充填材;ミネラル、フレーク等の安定剤;シリコーンオイル、二硫化モリブデン等の潤滑剤;顔料;カーボンブラック等の導電剤;ゴム等の耐衝撃性向上剤;その他の添加剤等を用いることができる。

【0039】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、成形用組成物等の樹脂組成物を混合するために通常用いられる配合ミル、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等の混合機を用いて、通常の条件により行うことができる。混合機としては二軸押出機が好ましく、特にL/Dの大きいスクリュウ構成を有する二軸押出機が好ましい。

【0040】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を、溶融状態で混合する方法が挙げられる。
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)とフッ素樹脂(II)とを充分に混練することによって、所望の分散状態を有する本発明の樹脂組成物を得ることができる。分散状態は成形品の動摩擦係数及び限界PV特性に影響を与えるので、樹脂組成物から得られるプレスシートにおいて所望の分散状態が得られるように、混練方法の選択は適切に行われるべきである。

【0041】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を適切な割合で混合機に投入し、所望により上記他の成分を添加し、樹脂(I)及び(II)の融点以上で溶融混練することにより製造する方法等が挙げられる。

【0042】
上記他の成分は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)に予め添加して混合しておいてもよいし、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)及びフッ素樹脂(II)を配合するときに添加してもよい。

【0043】
上記溶融混練時の温度としては、用いる芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)、フッ素樹脂(II)の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、360~400℃であることが好ましい。混練時間としては、通常、1分~1時間である。

【0044】
上記樹脂組成物は、該樹脂組成物から得られる成形体の動摩擦係数を0.21以下とすることができる。上記範囲の動摩擦係数であることによって、摺動部材用成形品としてより好適に用いることができる。

【0045】
上記樹脂組成物は、該樹脂組成物から得られる成形体の限界PV値を800以上とすることができる。より好ましくは1300以上であり、更に好ましくは1500以上である。

【0046】
上記樹脂組成物は、該樹脂組成物から得られる成形体のノッチ付きアイゾット強度を30kJ/m以上とすることができる。より好ましくは40kJ/m以上である。高いアイゾット強度を得るためには、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径を1.0μm以下に制御する必要がある。

【0047】
本発明の樹脂組成物から形成される成形品も本発明の1つである。

【0048】
本発明の樹脂組成物から形成される成形品は、摺動性と耐衝撃性と共に、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、強度、剛性、薬品低透過性、寸法安定性、難燃性、電気特性および耐久性を兼ね備える成形品であり、電気電子・半導体分野においては、CMPリテーナリング、エッチングリング、シリコンウエハキャリア、ICチップトレイ等の半導体・液晶製造装置部品、絶縁フィルム、小型ボタン電池、ケーブルコネクタ、アルミ電解コンデンサー本体ケース; 自動車分野においては、スラストワッシャー、オイルフィルター、オートエアコンコントロールユニットのギア、スロットルボディのギア、ABSパーツ、ATシールリング、MTシフトフォークパット、ベアリング、シール、クラッチリング; 産業分野においては、コンプレッサ部品、大量輸送システムのケーブル、コンベアベルトチェーン、油田開発機械用コネクタ、水圧駆動システムのポンプ部品(軸受け、ポートプレート、ピストンの玉継ぎ手);航空宇宙分野においては、航空機のキャビン内装部品、電線被覆、ケーブル保護、燃料パイプ保護材;および食品・飲料製造設備部品や医療器具部品(滅菌器具、ガス・液体クロマトグラフ)などに使用することができる。
上記成形品の形状としては特に限定されず、例えば、被覆材;シート状;フィルム状;ロッド状;パイプ状等の種々の形状にすることができる。

【0049】
本発明は、上記樹脂組成物からなる摺動部材用成形品でもある。上記樹脂組成物を用いて成形された摺動部材用成形品は動摩擦係数が低いため、摺動部材として好適に利用することができる。また、フッ素樹脂を含有するものであるため、耐薬品性、耐候性、非粘着性、撥水性、電気特性等にも優れる。
上記摺動部材用成形品としては、特に限定されないが、例えば、シール材、ギア、アクチュエーター、ピストン、ベアリング、ベアリングリテーナ、ブッシュ、スイッチ、ベルト、軸受け、カム、ローラー、ソケット等が挙げられる。

【0050】
上記成形品の製造方法における成形機に関する各種条件としては特に限定されず、例えば、従来公知のように行うことができる。成形温度は、通常、用いる上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)の融点以上の温度であることが好ましい。また、成形温度は、上記フッ素樹脂(II)の分解温度と上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)の分解温度のうち低い方の温度未満の温度であることが好ましい。このような成形温度としては、例えば250~400℃であってよい。

【0051】
本発明の成形品は、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形等の一般に熱可塑性樹脂組成物に対して用いられている成形方法によって成形することができる。また上記成形方法を組み合わせた成形方法を採用することもできる。更に、本発明の樹脂組成物と他のポリマーとを複合成形して成形してもよい。
【実施例】
【0052】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
<MFRの測定>
ASTM D3307-01に従って、メルトインデクサー(東洋精機製作所製)を用いて、372℃、5000g荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【実施例】
【0054】
<プレスシート成形品の作製>
実施例、比較例で製造した樹脂組成物を用いて、熱プレス機により380℃、5MPaの条件下で圧縮成形し、厚さ3mmのシートを作製した。
【実施例】
【0055】
<限界PV値の測定>
上述した方法で作成したプレスシートから、縦3cm・横3cm・厚み3mmの試験片を切り出し、JIS K7218のA法に準じて、摩擦摩耗試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を使用して、鋼材S45C(#240サンドペーパー仕上げ)を相手材に、速度3m/秒一定、面圧を20Nから10分毎に20Nずつ上昇させることにより、限界PV値を測定した。
【実施例】
【0056】
<動摩擦係数の測定>
上述した方法で作製したプレスシートを用いて、ボールオンディスク型のSRV摩擦磨耗試験機(OPTIMOL社製)により、室温、50Hzの条件で、動摩擦係数を求めた。
【実施例】
【0057】
<ノッチ付きアイゾッド強度の測定>
上述した方法で作成したプレスシートから、JIS K7110に準じて、ノッチ付きアイゾッド強度測定用の試験片を切り出し、アイゾッド衝撃試験機(東洋精機製作所製)を使用して、室温にてノッチ付きアイゾッド強度を測定した。
【実施例】
【0058】
<平均分散粒子径の算出>
上述した方法で作成したプレスシートを用いて、先端部分が1mm四方になるようトリミング用剃刀でトリミングを行い、その後、ウルトラミクロトーム(ライカ製ULTRACUT S)の試料ホルダーに固定、チャンバー内を液体窒素で-80℃まで冷却し、厚さ90nmの超薄切片を切り出した。
得られた超薄切片を20%エタノール溶液を付着させた白金リングにて回収し、銅製シートメッシュ(応研商事製200A、φ3.0mm)に付着させた。
その後、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H7100FA)を用いて、銅製シートメッシュに付着させた超薄切片の観察を行った。
顕微鏡観察により得られたネガフィルムをスキャナー(EPSON製GT-9400UF)にて電子画像化し、光学解析装置(ニレコ製LUZEX AP)を用いて電子像の二値化処理を行い、分散相の平均分散粒子径を求めた。
【実施例】
【0059】
実施例および比較例では、下記の材料を用いた。
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I):ポリエーテルエーテルケトン(商品名:450G、ビクトレックスジャパン製)
フッ素樹脂(II-1): テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(組成重量比;テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=87.5/11.5/1.0。MFR;27g/10分。)
フッ素樹脂(II-2): テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(組成重量比;テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=94.5/5.5。MFR;23g/10分。)
フッ素樹脂(III): ポリテトラフルオロエチレン(商品名:ルブロンL5、ダイキン工業製)
フッ素樹脂(IV): エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(商品名:ネオフロンEP541、ダイキン工業製)
【実施例】
【0060】
<実施例1および2>
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)およびフッ素樹脂(II)を表1に示す割合(質量部)で、溶融混練装置(商品名:ラボプラストミル、東洋精機製作所製)に投入し、温度380℃、スクリュウ回転数80rpmの条件下で10分間、溶融混練し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用いて、上記した方法でプレスシートを作製し、限界PV値、動摩擦係数、ノッチ付きアイゾッド強度の測定を行った。また、プレスシートから超薄切片を切り出し、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径を算出した。
【実施例】
【0061】
<実施例3~6>
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)およびフッ素樹脂(II)を表1に示す割合(質量部)で予備混合を行い、二軸押出機(φ15mm、L/D=60)を使用して、シリンダー温度380℃、スクリュウ回転数350rpmの条件下で溶融混練し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用いて、上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、ノッチ付きアイゾッド強度の測定を行った。また、当該試験片にてフッ素樹脂(II)の平均分散粒子径を算出した。
【実施例】
【0062】
<比較例1>
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)のみを使用して、上記した方法で試験片を作製し、限界PV値、動摩擦係数、ノッチ付きアイゾッド強度の測定を行った。
<比較例2および3>
芳香族ポリエーテルケトン樹脂(I)、フッ素樹脂(III)またはフッ素樹脂(IV)を表1に示す割合(質量部)で予備混合を行い、二軸押出機(φ15mm、L/D=60)を使用して、シリンダー温度380℃、スクリュウ回転数350rpmの条件下で溶融混練し、樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を用いて、上記した方法でプレスシートを作製し、限界PV値、動摩擦係数、ノッチ付きアイゾッド強度の測定を行った。また、プレスシートから超薄切片を切り出し、フッ素樹脂(II)の平均分散粒子径を算出した。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0005702385B2_000002t.gif
【実施例】
【0064】
比較例3の結果は、フッ素樹脂としてエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体を使用しても、動摩擦係数及び耐磨耗性のいずれも改善しないことを示す。比較例2の結果が示すとおり、ポリテトラフルオロエチレンを添加すると動摩擦係数は低下したが、耐磨耗性には変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の樹脂組成物は、高い摺動性が要求される自動車部品、工業部品、電気電子部品等に使用する成形材料として好適に利用可能である。