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明細書 :金属酸化物のナノファイバーおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2013-527883 (P2013-527883A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成25年7月4日(2013.7.4)
特許番号 特許第5654115号 (P5654115)
登録日 平成26年11月28日(2014.11.28)
発行日 平成27年1月14日(2015.1.14)
発明の名称または考案の名称 金属酸化物のナノファイバーおよびその製造方法
国際特許分類 D01F   9/08        (2006.01)
C01G  25/00        (2006.01)
C01F  17/00        (2006.01)
FI D01F 9/08 Z
C01G 25/00
C01F 17/00 B
請求項の数または発明の数 10
全頁数 14
出願番号 特願2013-501613 (P2013-501613)
出願日 平成23年3月29日(2011.3.29)
国際出願番号 PCT/CN2011/072249
国際公開番号 WO2011/120420
国際公開日 平成23年10月6日(2011.10.6)
優先権出願番号 PCT/CN2010/071488
201010149735.2
優先日 平成22年3月31日(2010.3.31)
平成22年4月19日(2010.4.19)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成24年11月26日(2012.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
発明者または考案者 【氏名】パン ウェイ
【氏名】リ ビン
【氏名】リュウ イェンイー
【氏名】川井 将司
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100180862、【弁理士】、【氏名又は名称】花井 秀俊
審査官 【審査官】斎藤 克也
参考文献・文献 特開2009-235629(JP,A)
国際公開第2010/014158(WO,A2)
特開2009-197351(JP,A)
特開2007-319839(JP,A)
特開平06-206727(JP,A)
特開2011-213588(JP,A)
特開2006-336121(JP,A)
特開2010-162685(JP,A)
調査した分野 C01F 1/00 - 17/00
C01G 1/00 - 99/00
D01F 9/08 - 9/32
特許請求の範囲 【請求項1】
Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Yb、Zr、Sr、Ba、Fe、Co、MgおよびGaのうちから選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物のナノファイバーの製造方法であって、
a)前記金属の塩及び高分子化合物を含有する前駆体を電界紡糸して、前記金属の塩を含有する前駆体のナノファイバーを製造することと、
b)前記金属の塩及び高分子化合物を含有する前駆体のナノファイバーを550~650℃の温度範囲内で2~4時間焼成し、前記少なくとも1種の金属元素を含有する金属酸化物のナノファイバーを得ることと、を含み、
前記ナノファイバーの平均径が50~100nmの範囲であり、前記ナノファイバー中の結晶体の平均結晶粒が2~20nmの範囲である、金属酸化物のナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、SmおよびGdから選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物が、ガドリニウムドープセリア(GDC)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高分子化合物がポリビニルアルコールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程b)が、前記前駆体のナノファイバーを600℃で2時間焼成することで実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Yb、Zr、Sr、Ba、Fe、Co、MgおよびGaのうちから選択される少なくとも1種の金属元素を含有する金属酸化物のナノファイバーであって、前記ナノファイバーの平均径は50100nmの範囲であり、前記ナノファイバー中の結晶体の平均結晶粒は2~20nmの範囲である、金属酸化物のナノファイバー。
【請求項7】
前記金属酸化物が、ガドリニウムドープセリア(GDC)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)である、請求項6に記載の金属酸化物のナノファイバー。
【請求項8】
請求項6または7記載の金属酸化物のナノファイバーを含む、固体電解質材料。
【請求項9】
請求項記載の固体電解質材料から製造される、燃料電池。
【請求項10】
請求項記載の固体電解質材料から製造される、酸素センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は固体電解質材料およびその製造方法に関するものであり、特に高イオン導電率またはイオン/電子混合導電型電解質材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、理論上では酸素と水素とが反応することのみにより水を生成して電力の出力を伴い、クリーンエネルギであって、環境に負荷はもたらさない。燃料電池に用いる電解質材料には主に固体高分子型(略称PEFC)、リン酸塩型(略称PAFC)、溶融炭酸塩型(略称MCFC)、固体酸化物型(略称SOFC)などがある。そのうちSOFCはイオン導電性の金属酸化物を電解質として採用し、混合導電型の酸化物を(カソード)空気電極として採用する。
【0003】
固体電解質材料は、自動車などの分野の燃料電池および酸素センサなどの分野に応用される鍵となる材料である。現在、世界的に成熟した固体電解質材料にはイットリア安定化ジルコニア(略称YSZ)などの酸化物材料があり、燃料電池および酸素センサなどに用いられる。その作動温度は一般に1000℃前後であり、優れた性能を有するとともに、価格も比較的低い。しかし、1000℃という高温の作動温度は設備の製造および運転の困難を招き、YSZと部材材料との間の化学反応も、高温下で長期にわたって使用される材料の劣化問題を引き起こし、かつ、材料の接続などの工程を実施することが難しい。他方、自動車排出ガスセンサ用の電解質材料としては熱衝撃破壊、始動時間が長いなどの問題を克服する必要がある。近年、世界各国では比較的低い温度下で高いイオン導電率を有する材料の開発が注目されている。特に比較的低い温度条件下で高いパワー出力を有することが要求される設備では、固体電解質材料が比較的低い温度下で高いイオン導電率、高い安定性を有することが必要とされる。その他、燃料電池の空気側の電極材料は高い混合導電率を有する酸化物材料でなければならない。
【0004】
現在までに、開発公開されている固体電解質材料にはランタンガレート系(特許文献1)、安定酸化ビスマス系および安定ジルコニア混合体系(特許文献2)、セリア系複合酸化物(特許文献3~6)がある。
【0005】
セリア(CeO)、ジルコニア、酸化ビスマスなどはいずれもホタル石構造のイオン導体材料である。低原子価の金属元素をドープすることにより、結晶構造中に酸素の欠陥(空孔)を発生して高い酸素イオン伝導性を形成する。例えば特許文献3においてはセリア中に3価の希土類元素をドープすることが提起されており、セリア中にイットリアをドープした上でさらにその他の1価または2価元素がドープされている。特許文献4においてはセリア中でイオン半径の大きなランタン原子によりセリウム原子を部分的に置換し、かつ、2価のストロンチウム(Sr)またはバリウム(Ba)によりセリウム原子を置換して、材料中の酸素空孔をさらに無秩序化させて、高いイオン導電率を得ている。特許文献5においては比較的大きな2価および3価のカチオンで4価セリウムの位置を置換して、酸素の欠陥を得るとともに、比較的大きな結晶応力をもたらすことにより、高いイオン導電率を得ることが紹介されている。特許文献6においてはセリア中にイッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)およびランタン(La)などの元素をドープして、800℃以下、酸素分圧10-30~10-15気圧(atm)下で高い酸素イオン伝導率を得ることが紹介されている。
【0006】
しかし、金属酸化物を燃料電池(SOFC)のカソードおよび電解質材料として使用する場合においては、往々にして、気体、イオンおよび電子が同時に関与する気体/電極/電解質の三相材料間の化学反応が伴う。上記反応を有利に実施するために、繊維状の金属酸化物を有する固体電解質および電極が発明されており、例えば特許文献7および8に示されている通りである。
【0007】
上記3~5の特許文献において記述されている通り、セリア系複合酸化物がアルカリ土類金属をドープする場合は、環境雰囲気の影響を受けて炭酸塩を発生しやすくて導電率の低下を招き、さらに使用過程においては固体電解質材料としての構造安定問題が発生する。一般に、4価のセリウムの酸化物中に3価の希土類元素または2価のアルカリ土類金属元素を添加すると、どちらも酸素の空孔濃度を増加可能であるが、過量のドープによりその他の化合物が生成されて導電率の低下が引き起こされる。その他、高温還元雰囲気条件下でセリア中の4価セリウムイオンCe4+が3価のセリウムイオンCe3+に還元されて電子導電が引き起こされてイオン導電率が低下し、燃料電池の効率が低下する。また、還元反応によりセリア固体電解質材料の亀裂も生じて、失効する。
【0008】
従って、現在までに各種各様の複合酸化物固体電解質材料が開発されているが、依然として燃料電池(SOFC)の低作動温度条件下における高いイオン導電率、高いパワー出力との要求を満足することは困難である。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2004-339035号公報
【特許文献2】特開昭59-18271号公報
【特許文献3】特開平09-2873号公報
【特許文献4】特開2000-109318号公報
【特許文献5】特開2004-87271号公報
【特許文献6】特開2004-143023号公報
【特許文献7】特開2006-244810号公報
【特許文献8】特開2009-197351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に鑑み、本発明の目的は、低温下で高いイオン導電率を有する金属酸化物のナノファイバーを提供することにある。
【0011】
また、本発明の別の目的は、前記金属酸化物により形成される固体電解質および/または燃料電池を提供することにあり、前記固体電解質材料は低温下で高いイオン導電率およびイオン/電子混合導電性を有し、前記燃料電池は低温下で高いパワー出力を有する。
【0012】
また、本発明のもう1つの目的は、金属酸化物のナノファイバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、発明者らは先人の発明特許を基礎として研究を重ね、上記イオン導電性を有する金属酸化物を対象とし、ナノファイバーの製造技術を採用して、低温合成焼成により結晶粒子の成長を制御することにより、材料の結晶内および結晶粒界におけるインピーダンスが低い高イオン導電率固体電解質材料を得た。当該材料は低温下で非常に高い導電率を有する。
【0014】
具体的に、本発明は主に以下の通りである。
本発明の一観点によると、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Yb、Zr、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、MaおよびGaのうちから選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物のナノファイバーの製造方法が提供されており、
a)上記金属の塩を含有する前駆体を紡糸して、前記金属の塩を含有する前駆体のナノファイバーを得ることが可能であることと、
b)上記金属の塩を含有する前駆体のナノファイバーを500~800℃の温度範囲内で焼成し、金属酸化物のナノファイバーを得ることが可能であることと、を含む。
【0015】
本発明の一観点によると、前記金属酸化物は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、SmおよびGdから選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物であってよい。
本発明の一観点によると、前記前駆体中に、高分子化合物を含んでよい。
本発明の一観点によると、電界紡糸または液中紡糸法を利用して前記金属酸化物の前駆体のナノファイバーを製造してよい。
【0016】
本発明の別の観点によると、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Yb、Zr、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、MaおよびGaのうちから選択される少なくとも1種の金属元素の金属酸化物のナノファイバーが提供されており、前記ナノファイバーの平均径は20~1000nmの範囲でよく、前記ナノファイバー中の結晶体の平均結晶粒は2~20nmの範囲でよい。
【0017】
本発明の一観点によると、上記金属酸化物のナノファイバーを含んでよい固体電解質材料が提供されている。
本発明の一観点によると、上記固体電解質材料により製造されてよい燃料電池が提供されている。
本発明の一観点によると、上記固体電解質材料により製造されてよい酸素センサが提供されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に基づき製造されるセリア系固体電解質ナノファイバーは材料の結晶内および結晶粒界における電気抵抗を顕著に低減可能であるとともに、材料は高い酸素イオンまたは酸素イオン/電子および空孔複合導電特性を有し、従来のブロック体材料または薄膜材料に比べて低温下で著しく高いイオンまたは混合導電率を有するため、新型の高いイオン導電率を有するまたは混合導電型の固体電解質材料とすることができる。
【0019】
本発明の上記および/または付加的な側面ならびに利点は添付図面と合わせた以下の実施例についての記述により明らかとなり、理解は容易となろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1には本発明の一実施例に基づき調製された金属酸化物ナノファイバー固体電解質が構成する燃料電池の概略図が示されている。
【図2】図2には一次元ナノ金属酸化物ナノファイバーの電気的特性を測定する装置の概略図が示されており、図2(a)は一次元ナノファイバーの製造概略図であり、図2(b)はナノファイバーの石英結晶片上における一定方向配列概略図であり、図2(c)は一定方向に配列されたナノファイバーの電気的性能を測定するための装置の概略図である。
【図3】図3には本発明の一実施例に基づくガドリニウムドープセリア(略称GDC)のナノファイバーの電界放出型走査電子顕微鏡(略称FESEM)下で観察された写真が示されており、図3(a)は最初に形成されたGDC/ポリビニルアルコール複合ナノファイバーの電界放出型走査電子顕微鏡下で観察された写真であり、図3(b)は500℃で焼成された後のGDCナノファイバーのFESEM画像である。
【図4】図4には本発明の一実施例の製造方法に基づき製造されたGDCおよびYSZナノファイバーのX線回折スペクトル図が示されている。
【図5】図5には本発明の一実施例の製造方法に基づき得られたGDCナノファイバーの高分解能透過電子顕微鏡画像が示されており、図5(a)は500℃で焼成した後のGDCナノファイバーの高分解能透過型電子顕微鏡画像であり、図5(b)は600℃で焼成した後のGDCナノファイバーの高分解能透過型電子顕微鏡画像であり、図5(c)は仮焼した後のGDCナノファイバーの高分解能透過型電子顕微鏡画像である。
【図6】図6には本発明の一実施例の製造方法に基づき得られるそれぞれ500℃、600℃または750℃で焼成した後のGDCナノファイバーの、空気中で測定された交流インピーダンススペクトル図が示されている。
【図7】図7には本発明の一実施例の製造方法に基づき得られたGDCおよびYSZナノファイバーの導電率と温度との関係図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の付加的な側面および利点は以下の記述中に部分的に示されており、当該部分は以下の記述において明らかとなるか、または本発明の実践により理解可能となる。

【0022】
1. 金属酸化物ナノファイバー
ここにおいて、“金属酸化物”とは金属元素の酸化物を主な形態とする化合物を指す。前記金属酸化物中には1種または複数種の金属元素が含まれてよく、好適には1種から2種の金属元素が含まれる。前記金属元素は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、イッテルビウムなどの希土類金属、およびジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウムおよびガリウムなどその他金属の少なくとも1種としてよい。好適には、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウムまたはガドリニウム元素の少なくとも1種であり、より好適には、スカンジウム、セリウム、プラセオジム、サマリウムおよびガドリニウム元素の少なくとも1種を含有する。その他、前記金属酸化物中に、その他の金属元素を含有してもよい。しかし、本発明において効果が最良である金属酸化物中の金属元素は、上記金属から選択される。

【0023】
本発明は特定の金属酸化物に限定されず、例えば、ガドリニウムドープセリア(GDC)中に2種類の希土類金属元素を含む金属酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、例えば希土類金属元素とその他金属元素とを含有するペロブスカイト構造酸化物(例えばLSGM、BSCF)またはパイロクロア構造の金属酸化物である。

【0024】
以下において、上記金属酸化物を利用して金属酸化物ナノファイバーを作製して、高イオン導電性または混合導電性の固体電解質材料を得る方法について詳細に説明する。

【0025】
本発明の“ナノファイバー”とは繊維形状の材料であり、ナノファイバーの直径の範囲は広く、平均径は20~1000nmの範囲としてよく、繊維の縦方向平均長さと平均径との比は100よりも大きい。平均径は好適には40~500nmの範囲内であり、より好適には50~100nmの範囲である。上記ナノファイバーの平均長さは、好適には平均径の100000倍、より好適には1000000倍がさらに望ましい。言い換えると、平均長さは好適には0.4cmを超え、より好適には5cmを超える。

【0026】
ナノファイバーの平均長さおよび平均径は、走査型電子顕微鏡(SEM)および高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を利用して10本のナノファイバーを測定した後の平均値であり、X線回折法(XRD)を使用してピーク半値幅法に基づき測定し、ナノファイバーの平均径を算出することもできる。

【0027】
本発明の金属酸化物ナノファイバーは、金属塩を含有するナノファイバーを高温下で焼成することにより得られたものである。焼成温度および時間を制御することにより、適当な長さおよび平均径を有する、少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物ナノファイバーを得ることができる。焼成工程は以下の通りである。

【0028】
ここにおいて、“焼成工程”とは、金属の塩が酸化されて金属酸化物を形成し、金属酸化物の融点を下回る温度以下で金属酸化物が結晶化し、小さな金属酸化物の結晶が徐々に凝集して比較的大きな結晶に成長する過程を指す。すなわち“焼成工程”には金属酸化物の形成、金属酸化物の結晶化および結晶粒子の成長過程が含まれる。本発明の金属酸化物ナノファイバーは三次元結晶構造を有する金属酸化物結晶により構成される。本発明の金属酸化物ナノファイバーは隣り合う金属酸化物結晶粒子が接続してなる結晶粒界ネットワーク構造であるため、比較的高いイオン導電性を得ることができる。ここにおいて、金属酸化物ナノファイバーの平均結晶粒子寸法範囲は好適には2~20nmであり、より好適には4~10nmである。その場合、焼成後の金属酸化物ナノファイバーの密度は理論密度の90%以上であるべきであり、好適には95%以上またはそれを上回る。上記性能を有するナノファイバーを使用することにより高性能の固体電解質材料を得ることができ、それは固体電解質燃料電池の小型化応用を満足するとともに促進することができる。本発明中のナノファイバー材料の結晶相および平均結晶粒子寸法はSEMおよびHRTEMにより、10以上の結晶粒の長軸方向の長さを測定した後に平均値を取って得ることができ、XRD測定法により確定することもできる。焼成密度はアルキメデス法に基づき算出して得られる。X線回折法(XRD)を利用して結晶格子定数を得て、結晶格子定数に基づき理論密度を算出することができる。

【0029】
本発明において、“固体電解質”とはイオン導電性を有する固体材料を指す。上記のような本発明の金属酸化物ナノファイバー固体電解質は、低温下で非常に高い導電性能を有する(図7)。本発明の金属酸化物ナノファイバーは従来の発明に比べて、従来のナノファイバーおよびブロック体材料よりも小さい結晶粒子寸法を有するとともに、三次元で結晶配列される(特許文献8参照)。本発明の金属酸化物ナノファイバーの結晶粒子電気抵抗および結晶粒界電気抵抗は顕著に低下している。そのため、本発明の金属酸化物ナノファイバー固体電解質の導電率は、作動温度400~600℃の範囲において、同様の化学的組成を有する従来のブロック体金属酸化物固体電解質よりも100~1000倍高い。かつ、本発明の金属酸化物ナノファイバー固体電解質は、同一の導電率である場合は、従来の固体電解質材料の使用温度範囲よりも数百度低い。

【0030】
上記導電率の測定は、等価回路モデルを利用し、交流インピーダンススペクトル測定法を採用し、Cole-Cole図を使用してナノファイバーの全電気抵抗、結晶粒子電気抵抗および結晶粒界電気抵抗を算出することにより、相応の導電率を算出することができる。

【0031】
本発明の金属酸化物ナノファイバー固体電解質は低温範囲内において高いイオン導電率を有するので、好適には固体電解質燃料電池または酸素センサに用いることができる。図1に示されているのは本発明の金属酸化物ナノファイバーを含む固体電解質燃料電池セルの概略図である。但し、本発明の実際の燃料電池への応用面はこれに限るものではない。図内の101は上記本発明の金属酸化物ナノファイバーを含む固体電解質燃料電池であり、本発明の金属酸化物ナノファイバー固体電解質102と、103カソードおよび104アノードの一対の電極とからなる。ここにおいて、空気はカソード103端から導入され、水素ガスおよびその他燃料はアノード104端から提供され、外部回路負荷110上で起電力が発生する。上記金属酸化物ナノファイバーからなる燃料電池は優れた性能を有し、特に作動温度400~600℃の比較的低い温度領域において安定した電力出力を有することができる。

【0032】
2. 金属酸化物ナノファイバーの製造方法
本発明の金属酸化物ナノファイバーの製造方法には、ナノファイバーの調製工程および焼成工程が含まれる。各工程について、以下の通り説明する。

【0033】
ナノファイバーの調製
この工程について、その目的は金属塩を含有する前駆体に対してナノファイバー紡糸過程を実施して、金属塩を含有するナノファイバーを形成することにある。ここにおいて、“前駆体”とは金属塩を含有するナノファイバーを形成するための物質を指す。ナノファイバーの形成過程において、前駆体の化学成分内には最終的に金属酸化物ナノファイバーを形成するために必須の金属塩が含まれていなければならず、さらに溶媒および複数種の化合物も含まれる。当該前駆体は通常はゾル状である。その場合、溶媒としての組成は特に限定されるわけではなく、有機溶媒としてよく、水またはアルコールとしてもよく、好適には水である。金属塩は前述の金属カチオンの塩としてよく、その組成は具体的に限定されず、具体的な金属カチオンによる塩の種類は、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物など各種の無機塩類、および当該カチオンを含む有機塩類としてよく、本発明において好適には硝酸イオンを含有する塩である。前駆体中の金属塩の濃度は、好適にはその質量百分率濃度が2~10wt%の間である。

【0034】
ナノファイバーに平滑かつ均一な直径を形成させるため、前駆体の化学成分中に一般には高分子ポリマーが含まれ、その他化合物も含まれる可能性がある。この種の前駆体の組成を選択する目的は高粘度のゾル状物質を得ることである。前駆体中に用いる高分子化合物は、具体的に限定されず、複数種の選択が可能であり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコールなどである。本発明において好適にはポリビニルアルコールであり、ポリマー平均分子量(Mw)は好適には1000~100000の範囲内である。ポリマー濃度は一般に質量百分率が5wt%~15wt%である。金属塩、溶媒、高分子化合物を含む前駆体ゾル状物質を形成する過程において、工程の順序は特に限定されず、先ず高分子化合物を溶媒中に溶解してよく、先ず金属塩を溶媒中に溶解してよく、金属塩と高分子化合物とを同時に溶媒中に溶解することもできる。好適には先ず高分子化合物を溶媒中に溶解してから、さらに金属塩を高分子化合物が先に溶解された溶媒中に溶解してもよい。上記方法によりナノファイバーの調製に適したゾル状の前駆体溶液を得ることができる。本発明のナノファイバーの紡糸工程においては、特定の工程に限定されず、例えば、電気紡糸法以外に、ゾルスピニング法、メルトブロー法、またはナノポリマーの混合溶融紡糸法などその他の方法を採用してもよい。但し、本発明において好適には電気紡糸法を採用する。各種紡糸法はすべて公開されている技術である。例えば、電気紡糸法は、上記方法により調製された前駆体溶液をノズルを介してノズルとの間に一定の電圧電界が印加された基板上に噴射し、金属塩を含有するナノファイバーを形成する。その場合、ノズルの直径は0.5~4mmの範囲で選択され、電界印加の電圧は10~30kVの範囲で選択される。ノズルと基板との間の距離は10~30cmの範囲で選択される。

【0035】
溶液高圧噴射法を採用する場合は、スリットを有する容器中に上記方法により調製された前駆体溶液を注入し、容器中に高圧を印加して、その金属塩前駆体溶液をスリット中から噴出させてファイバーを形成する。その場合、スリットの幅は好適には0.1~0.5mmの範囲内である。印加される圧力は好適には1~10メガパスカル(MPa)の範囲内である。

【0036】
このようにして、金属塩を含有する前駆体のナノファイバーを得ることができる。次いで、下記の焼成過程により形状および長さが好適な金属酸化物ナノファイバーを得ることができるだろう。

【0037】
焼成工程
この過程は、上記工程で得られた金属塩を含有するナノファイバーを焼成することにより金属酸化物の焼成体形式のナノファイバーを得るものである。この工程により、金属は酸化されて金属酸化物を形成し、金属酸化物は結晶化し、凝集して、結晶体が長くなり、結晶粒寸法が比較的大きな金属酸化物結晶体を形成する。この過程において、焼成温度の範囲は500~800℃であり、好適には550~650℃の範囲内である。焼成時間は一般には2~10時間以上であり、好適には2~4時間である。この焼成過程は空気雰囲気中で実施してよいが、焼成を加速させるため、雰囲気中の酸素分圧を低下させ、例えば水素ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気、真空または水素ガスとアルゴンガスとの混合雰囲気中で焼成してもよい。

【0038】
本発明においては、従来の工程よりも非常に低い温度下で焼成が行われて、結晶化が良好な金属酸化物ナノファイバーが得られた。比較的低い温度での焼成を採用することにより、ナノ結晶粒子の金属酸化物が三次元で結晶配列したナノファイバーが得られた。この種の金属酸化物ナノファイバーは、その三次元結晶配列の隣り合う金属酸化物結晶粒子間が接続されて結晶粒界ネットワーク構造が構成されて、最終的に結晶粒界および結晶内におけるインピーダンスが大幅に低下する。そのため、本発明の技術によれば、比較的低い温度領域においてイオン導電率が高い金属酸化物のナノファイバーを得ることができる。

【0039】
また、前駆体中に高分子化合物を含有する場合は、焼成過程において、金属塩のナノファイバー中の高分子化合物は燃焼によりナノファイバー中から除去される。高分子化合物が除去されることによりナノファイバーの直径は収縮し、最終的に適当な直径の金属酸化物のナノファイバーが得られる。

【0040】
このようにして得られたイオン伝導性が高い金属酸化物のナノファイバーは小型の固体電解質材料として用いることができる。

【0041】
以上の説明に基づき、本発明の製造方法により、比較的低い温度範囲内でイオン伝導性が高い金属酸化物のナノファイバーを得ることができる。

【0042】
従って、本発明の製造方法により得られた金属酸化物ナノファイバー固体電解質は、例えば携帯電話、ノートパソコンもしくはその他の携帯型電子機器の動力源である小型燃料電池、または酸素センサの製作に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下において添付図面を参照して記述する実施例は例示的なものであり、本発明の解釈のみに用い、本発明を制限するものと解釈することはできない。
【実施例】
【0044】
原料:
Ce(NO・6HO(純度99.9%以上)
Gd(NO・6HO(純度99.9%以上)
Y(NO・6HO(純度99.9%以上)
ZrO(NO・2HO(純度99.9%以上)
ポリビニルアルコール(PVA、MW=80000)
【実施例】
【0045】
金属酸化物ナノファイバーの製造:
以下の方法に基づき、Ce0.9Gd0.11.95(GDC)の前駆体溶液を調製した。
0.6gのPVA粒子を5.4gの脱イオン水中に溶解し、温度60℃下で加熱しながら3時間撹拌してPVA水溶液を得た。その後、0.48gのセリウムおよびガドリニウムを含有する金属硝酸塩(モル比はCe:Gd=9:1)を上記PVA水溶液に加えた。室温下で2時間撹拌した後に、ガドリニウムを含有する硝酸セリウム/PVAの透明ゾル状の前駆体溶液が得られた。
【実施例】
【0046】
同様に、8mol%のY-ZrO(YSZ)の前駆体溶液を調製した。上記と同一の方法でPVA水溶液を調製した。その後、0.36gのイットリウムを含有するジルコニウム硝酸塩(Zr:Yのモル比=23:4)を上記PVA水溶液中に加えた。室温下で2時間撹拌した後に硝酸ジルコニウム(イットリウム)/PVAの透明ゾル状の前駆体溶液が得られた。
【実施例】
【0047】
上記で得られた透明ゾル状の前駆体溶液を、皮下注射用の注射器中に加え、注射器の針とファイバー受入基板電極との間に16kVの電圧を印加するとともに、注射器の針とファイバー受入基板電極との間の距離を16cmとした。その際、前駆体のナノファイバーは注射器針から噴出され、基板上に収集された。電気紡糸の詳細装置は図2に示されている通りである。
【実施例】
【0048】
図2は特別に設計された一次元一定方向配列のナノ前駆体ファイバーを製造する装置の概略図である。この種の一次元一定方向配列のナノ前駆体ファイバー装置を利用して一次元一定方向配列のナノ前駆体ファイバーを得ることができ、さらに焼成後のナノファイバーの電気的性能の測定試験を簡便に実施することができるとともに、燃料電池または酸素センサ用の固体電解質材料の調製も簡便となる。図2(a)に示されている通り、ナノ前駆体ファイバー受入基板としてのカソードは、幅1cmの2つの接地された導電が良好な平行銅板を採用して構成され、電界作用下で紡出された金属塩を含有する前駆体ナノファイバーは2つの銅板電極の間に平行に配列され、その後、厚み1mmの石英ガラス基板上に直接移行した。
【実施例】
【0049】
このようにして得られたナノ前駆体ファイバーをそれぞれ500℃、600℃または750℃下で2時間焼成すると、金属酸化物のナノファイバーが得られた(図2(b))。
【実施例】
【0050】
良好な電気的接続を確保するため、一定方向配列の金属酸化物ナノファイバーと垂直な方向に互いに70μmの間隔をあけた2つの白金電極を作製した。導電性能を測定するための装置は図2(c)に示されている通りである。1対の平行な電極間に、平均で約75本のナノファイバーが存在していた。
【実施例】
【0051】
ナノファイバーの電気的性能の測定
電気化学ワークステーション(Zahner、IM6、Germany)を採用し、空気雰囲気中でGDCおよびYSZナノファイバーの400~650℃の温度範囲内における交流インピーダンススペクトルを測定して、GDCおよびYSZナノファイバーの結晶粒界、結晶粒子および総導電率を算出した。
【実施例】
【0052】
図6は空気中において500℃下で測定されたそれぞれ500℃、600℃または750℃で焼成したGDCナノファイバーの交流インピーダンススペクトルの測定結果である。過去の大多数の研究報告結果と一致して、結晶粒子の直径が30nm未満であると、交流インピーダンススペクトル曲線中には単一の円弧のみを有する。
【実施例】
【0053】
測定試料のインピーダンス値は、交流インピーダンススペクトル測定曲線の結果からRQ等価回路に基づきフィッティングさせて得られたものである。ここにおいて、Rは電気抵抗を示し、QはコンスタントフェーズエレメントCPE(constant phase element)を示す。その後、実数軸の半円接線により総インピーダンス(結晶内+結晶粒界)を確定した。図6に示されている通り、金属酸化物ナノファイバーの仮焼温度が500℃から750℃まで上昇するに伴い、GDC試料のインピーダンス値は先ず低下してその後上昇に転じている。600℃で焼成された試料が最小値を得ている。そのため、600℃で焼結されたGDCナノファイバーの導電率が最高となっている。
【実施例】
【0054】
GDCおよびYSZナノファイバーの導電率は、公式4L/(nπRd)により算出することができる。ここにおいて、Rは交流インピーダンススペクトルの測定結果から得られたナノファイバーの電気抵抗であり、Lはナノファイバー上における白金電極間の距離(L=70μm)であり、dは1本のナノファイバーの直径(d=50nm)であり、nはナノファイバーの本数(n=75)である。
【実施例】
【0055】
図7に示されているのは上記により算出された導電率データである。対比として、すでに公開報告されているGDCおよびYSZブロック体セラミック(平均結晶粒径は500nm超)の導電性能も図7中に列記されている。異なる焼成温度下で得られたGDCまたはYSZナノファイバーの導電率は、いずれもすでに公開報告されているGDCまたはYSZブロック体セラミックの導電率を大きく上回っていた。具体的には、GDCナノファイバーの測定温度が500℃時である場合の導電率は4.00S/cmであり、温度が210℃である場合の導電率は0.01S/cmであり、過去に報告されている同一組成のブロック体材料の性能を大きく上回っていた。
【実施例】
【0056】
本発明の複数の例示的な実施例を参照して本発明の具体的な実施形態について詳細に記述してきたが、当業者であれば多様なその他の改良および実施例を設計することが可能であり、それら改良および実施例は本発明原理の精神及び範囲の内にあることは理解すべきである。具体的に言えば、上記で開示された、添付図面および特許請求の範囲内において、通常の技術に基づき合理的な変型および改良を施しても、本発明の精神は逸脱していない。本発明の範囲は添付されている特許請求の範囲およびその均等物により限定される。
【符号の説明】
【0057】
101:燃料電池
102:固体電解質
103:カソード
104:アノード
110:外部回路
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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