TOP > 中国の大学の特許 > 清華大学の特許一覧 > X線源回折格子のステップ撮像システムおよび撮像方法 > 明細書

明細書 :X線源回折格子のステップ撮像システムおよび撮像方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2013-524897 (P2013-524897A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成25年6月20日(2013.6.20)
特許番号 特許第5462408号 (P5462408)
登録日 平成26年1月24日(2014.1.24)
発行日 平成26年4月2日(2014.4.2)
発明の名称または考案の名称 X線源回折格子のステップ撮像システムおよび撮像方法
国際特許分類 A61B   6/00        (2006.01)
A61B   6/06        (2006.01)
FI A61B 6/00 330Z
A61B 6/00 300J
A61B 6/06 333
請求項の数または発明の数 22
全頁数 21
出願番号 特願2013-505291 (P2013-505291)
出願日 平成22年12月27日(2010.12.27)
国際出願番号 PCT/CN2010/002174
国際公開番号 WO2011/130896
国際公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
優先権出願番号 201010149869.4
優先日 平成22年4月19日(2010.4.19)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成25年3月8日(2013.3.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
発明者または考案者 【氏名】黄 志峰
【氏名】陳 志強
【氏名】張 麗
【氏名】李 元景
【氏名】▲シン▼ 宇翔
【氏名】趙 自然
【氏名】肖 永順
【氏名】李 亮
【氏名】丁 飛
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
【識別番号】100142907、【弁理士】、【氏名又は名称】本田 淳
審査官 【審査官】小田倉 直人
参考文献・文献 特開2011-531805(JP,A)
特開2009-150875(JP,A)
特表2009-543080(JP,A)
特表2009-525084(JP,A)
中国特許出願公開第101532969(CN,A)
調査した分野 A61B 6/00
A61B 6/06
特許請求の範囲 【請求項1】
X線を用いて物体を撮像するためのX線撮像のシステムであって、前記システムは、
X線源(S)と;
線源回折格子(G0)と;
固定回折格子モジュール(P)と;
X線検出器(T)と
を備え、
前記X線源(S)、前記線源回折格子(G0)、前記固定回折格子モジュール(P)、および前記X線検出器(T)は、前記X線の伝搬方向に連続して配置され、
検出されるべき物体は、前記線源回折格子と前記固定回折格子モジュールの間に配置され、
前記線源回折格子は、前記X線の光路方向および格子縞に対して垂直な方向にステップ移動することができ、
前記システムはさらに、前記X線源、前記線源回折格子、および前記X線検出器を制御するためのコンピュータ・ワークステーションを備え、前記コンピュータ・ワークステーションは、
前記線源回折格子を、その少なくとも1つの周期でステップ移動させる移動工程と;
各ステップ移動において、前記X線源は、前記検出されるべき物体にX線を放射し、前記X線検出器は、前記X線を同時に受け取って、少なくとも1つの周期のステップおよびデータ収集の後に、前記X線検出器上の各ピクセル点におけるX線の光強度を光強度曲線として表す表示工程と;
前記X線検出器上の各ピクセル点における前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態における光強度曲線と比較して、前記光強度曲線の変化から各ピクセル点のピクセル値を算出する算出工程と;
前記算出されたピクセル値によって検出された前記物体の画像を再構成する再構成工程と
を達成する、システム。
【請求項2】
前記システムはさらに、作動手段を備え、
前記作動手段は、前記線源回折格子がステップ移動することと、前記検出されるべき物体が前記コンピュータ・ワークステーションの制御下で前記システムの他の部分に対してある角度だけ回転することとのうちの少なくとも一方を可能にする、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記線源回折格子の前記移動工程、前記表示工程、および前記算出工程が各回転角で繰り返されることによって、複数の角度におけるX線画像のピクセル値が得られ、次いで、所定のCT画像再構成アルゴリズムにより、前記検出されるべき物体の立体画像が再構成される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータ・ワークステーションは、
データの情報を処理し、そこから、前記検出されるべき物体のそれぞれの点のピクセル値を算出するデータ処理モジュールと;
前記算出されたピクセル値によって、前記検出されるべき物体の画像を再構成するための画像再構成モジュールと;
前記X線源、前記線源回折格子、および前記X線検出器の動作を制御する制御モジュールと
を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記固定回折格子モジュール(P)は、相対的に固定された第1回折格子(G1)と第2回折格子(G2)からなる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンピュータ・ワークステーションはさらに、前記検出されるべき物体の画像を表示する表示装置を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンピュータ・ワークステーションは、前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の屈折情報を算出し、前記屈折情報から対応するピクセル値を算出することができる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピュータ・ワークステーションは、前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の散乱情報を算出し、且つ前記散乱情報から対応するピクセル値を算出することができる、
請求項1または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コンピュータ・ワークステーションは、前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の減衰情報を算出し、且つ前記減衰情報から対応するピクセル値を算出することができる、
請求項1、7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記X線源は、非コヒーレントなX線を放射する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記線源回折格子、前記第1回折格子(G1)、前記第2回折格子(G2)、および前記X線検出器は、次式の関係を有し、
【数1】
JP0005462408B2_000024t.gif
ここで、pは、前記第1回折格子(G1)の周期であり、
は、前記第2回折格子(G2)の周期であり、
Lは、前記X線源から前記第1回折格子(G1)までの距離であり、
Dは、前記第1回折格子から前記第2回折格子までの距離である、
請求項5に記載のシステム。
【請求項12】
前記線源回折格子、前記第1回折格子(G1)、前記第2回折格子(G2)、および前記X線検出器は、次式の関係を有し、
=(p/2)×L/(L-D
ここで、pは、前記第1回折格子(G1)の周期であり、
は、前記第2回折格子(G2)の周期であり、
Lは、前記X線源から前記第1回折格子(G1)までの距離であり、
は、前記第1回折格子から前記第2回折格子までの距離であって、
【数2】
JP0005462408B2_000025t.gif
であり、
λは、X線の波長である、
請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
X線源、線源回折格子、固定回折格子モジュール、X線検出器、およびコンピュータ・ワークステーションを備えるX線撮像システムによって検出されるべき物体を撮像するためのX線撮像方法であって、前記X線撮像方法は、前記コンピュータ・ワークステーションの制御下で、
前記検出されるべき物体にX線を放射する工程と;
前記線源回折格子が、少なくとも1つの周期でステップ移動することを可能にする工程と;
各ステップ移動の処理において、前記X線検出器が、X線を受取り、処理可能なデジタル電気信号に変換することであって、少なくとも1つの周期のステップおよびデータ収集の後に、前記X線検出器上の各ピクセル点におけるX線の光強度を光強度曲線として表す表示工程と;
前記X線検出器上の各ピクセル点における前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態での光強度曲線と比較することによって、前記光強度曲線の変化を取得する変化取得工程と;
前記光強度曲線の変化から各ピクセル点のピクセル値を算出する算出工程と;
画像再構成モジュールが、すべてのピクセル値によって前記検出された物体の画像を再構成する再構成工程と
を遂行する、X線撮像方法。
【請求項14】
前記コンピュータ・ワークステーションは、制御モジュール、データ処理モジュール、および画像再構成モジュールを備える、
請求項13に記載のX線撮像方法。
【請求項15】
前記X線撮像方法はさらに、
前記検出されるべき物体を回転する工程と;
前記表示工程、前記変化取得工程、および前記算出工程それぞれを、各回転角において繰り返して、前記検出されるべき物体のそれぞれの点の前記X線検出器上のピクセル値の分布を別々の角度で得る工程と;
前記検出されるべき物体の立体画像を、CT画像の再構成アルゴリズムによって再構成する工程と
を有する、
請求項13に記載のX線撮像方法。
【請求項16】
前記X線撮像方法はさらに、
前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の屈折情報を算出する工程と;
対応するピクセル値を前記屈折情報から算出する工程と
を有する、
請求項13に記載のX線撮像方法。
【請求項17】
前記X線撮像方法はさらに、
前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の散乱情報を算出する工程と;
対応するピクセル値を前記散乱情報から算出する工程と
を有する、
請求項13または16に記載のX線撮像方法。
【請求項18】
前記X線撮像方法はさらに
前記検出されるべき物体が存在する状態での前記光強度曲線を、前記検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線と比較することによって、前記検出されるべき物体の所定の点におけるX線の減衰情報を算出する工程と;
対応するピクセル値を前記減衰情報から算出する工程と
を有する、
請求項13、16または17に記載のX線撮像方法。
【請求項19】
前記コンピュータ・ワークステーションはさらに、前記検出された物体の画像を表示するための表示装置を備え、
前記X線撮像方法はさらに、前記再構成された画像を相補的に表示する工程を有する、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップ移動の処理は、前記線源回折格子の1つの周期において5よりも多いステップ数を含む、
請求項18に記載のX線撮像方法。
【請求項21】
前記ステップ移動の処理は、前記線源回折格子の1つの周期において5未満のステップ数を含む、
請求項18に記載のX線撮像方法。
【請求項22】
請求項13乃至21のいずれか1項に記載のX線撮像方法を達成するためのコンピュータ実行可能命令からなるコンピュータ・プログラム製品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にX線撮像の分野に関し、より具体的には、格子のステップ技術により、X線を用いる、物体の投影撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
CTスキャン・デバイスなどの従来技術では、X線を用いる、物体の走査撮像が広く用いられている。従来のX線走査撮像は、一般に、物体の内部構造を非破壊試験するように、X線に対して検出された材料の減衰特性を利用する。物体内部のそれぞれの部分の構造的構成が、密度において顕著に異なる場合、従来のX線撮像技術の効果は特に重要である。光学素子から成る物質は、X線に対する吸収が弱い物質であり、したがって、従来のX線撮像技術では、内部の具体的な構造をほとんど見ることができない。また生物学的組織への造影剤の注入など、他の補助手段が使用された場合にも、明瞭な画像を取得するのが困難になり、多くの不完全性をもたらす。1990年代に、X線位相コントラスト撮像技術が出現した。前記位相コントラスト撮像は、X線の位相シフト情報を捉えることにより、物体内部の電子密度の変化を観測するためのものであり、それによって物体の内部構造を明らかにする。当初は、現われた位相コントラスト撮像方法は、たいてい、コヒーレントなX線または部分的にコヒーレントなX線の干渉または回折現象を用いることにより、放射された画像の低コントラストの分解能を向上させるものであった。このようなことを基礎として、すべての内容が本願明細書に援用されている、特許文献1の「System
and method for X-ray gratings phase-contrast imaging」および特許文献2の「X ray Phase contrast tomographic imaging」において、ホアン・ジーフォン(HUANG Zhifeng)らは、2つの吸収格子を使用して、1つの格子周期で並行して相対的に数ステップ移動させ、検出器が各ステップで1つの画像を取得し、1つの格子周期における取得工程が終了した後に、各ピクセル点が対応するサンプル光の強度曲線をバックグラウンド光の強度曲線と比較することにより、検出する物体の屈折像の情報を算出することを含む、非コヒーレントな格子の位相コントラスト撮像の斬新な技術的概念および解決策を提案した。これは、優れた位相コントラスト撮像効果をもたらす。前記方法は、多色の非コヒーレントな線源の下で作動され得て、簡単で利用可能な手段を実現する。
【0003】
また、X線撮像技術の発達の間に、暗視野撮像技術も出現した。前記暗視野撮像は、散乱光、回折光、屈折光、蛍光などの非直接光を使用することにより、物質材料を撮像し、また、物質の内部構造の、X線を散乱させる能力の差によって物質の内部構造を撮像する技術である。暗視野撮像に関しては、硬X線の独特な光学的性質のために、必要な光学素子を作製するのが非常に困難であり、したがって、硬X線の暗視野撮像をうまく実現するのは常に困難である。しかし、硬X線の暗視野撮像技術には、物質内部の微細構造を識別したり検出したりする能力において、明視野撮像技術および位相コントラスト撮像技術に対して特別な利点がある。硬X線の散乱がマイクロメートルの大きさどころかナノメートルの大きさであるので、硬X線暗視野撮像技術は、硬X線明視野撮像技術および位相コントラスト撮像技術では識別することができない物質内部の超微細構造を見ることができる。すべての内容が本願明細書に援用されている2009年出願の特許文献3の「X-ray dark-field imaging system and method」で、ホアン・ジーフォン(HUANG Zhifeng)らは、X線を用いることにより、検出されるべき物体にX線を放射し、2つの吸収格子のうちの1つが少なくとも1つの周期でステップすることを可能にし、各ステップの工程で、検出器がX線を受け取って電気信号に変換して、少なくとも1つの周期のステップの後に、検出器上の各ピクセル点にお
けるX線強度を光強度曲線として表し、検出器上の各ピクセルにおける光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しないときの光強度曲線の間のコントラストに従って各ピクセルの散乱角分布の2次モーメントを算出して、別々の角度から物体の画像を得た後に、CT再構成アルゴリズムによる物体の散乱情報の撮像を得ることを含む、物体の暗視野撮像を遂行する技術的解決法を提案した。
【0004】
前述の格子撮像技術は、すべてが、ステップ技術を用いることにより、検出器上の各検出ユニット(ピクセル点)の光強度曲線を測定する必要があり、ステップ技術に関する基本原理は、線源回折格子がX線源装置の近くに固定された後、タルボ・ロー(Talbot-Lau)干渉法に基づく技術では、位相格子または解析格子を、1つの格子周期で並行して、相対的に数ステップ移動させるが、標準的な光学的方法に基づく技術では、2つの吸収格子を、1つの格子周期で並行して、相対的に数ステップ移動させる。検出器は、各ステップで1つの画像を取得する。1つの格子周期の取得工程を終了した後に、各ピクセル点が対応するサンプル光の強度曲線をバックグラウンド光の強度曲線と比較することにより、屈折像情報、減衰像情報および暗視野像情報を算出することができる。位相格子、解析格子または吸収格子が、数マイクロメートルの大きさの周期を有し、1マイクロメートル未満の大きさのステップ精度が必要とされるので、機械的デバイスの精度、一体型デバイスの耐衝撃性および耐環境温度性がきわめて必要とされ、したがって、撮像システムを構成する際の困難さおよびそれによるコストが極端に増大することにより、このような斬新な格子撮像技術の用途および発展が制限されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】中国特許出願第CN200810166472.9号
【特許文献2】中国特許出願第CN200810224362.3号
【特許文献3】中国特許出願第CN200910088662.8号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点に関し、X線格子位相コントラスト撮像および暗視野撮像の技術が提案されていることに基づいて、本発明は、X線格子撮像技術に基づくX線源回折格子のステップ撮像システムおよび方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明は、線源回折格子のステップに基づく撮像システムを提供するものであり、低精度の線源回折格子のみを移動することによってステップの工程が達成され、一方、高精度を必要とする格子は、相対的に固定される。
【0008】
本発明の1実施例によれば、X線撮像システムは、X線源、線源の格子、固定回折格子モジュールおよびX線検出器からなり、これらはX線の伝搬方向に連続して配置され、検出されるべき物体は、前記線源回折格子と固定回折格子モジュールの間に配置され、前記線源回折格子は、光路方向および格子縞に対して垂直な方向にステップ移動してよく、前記システムは、コンピュータ・ワークステーションであって、前記X線源、線源回折格子およびX線検出器を制御することにより、前記線源回折格子を、その少なくとも1つの周期でステップ移動させ、各ステップの工程で、X線源で、検出されるべき物体にX線を放射し、同時に検出器でX線を受け取り、少なくとも1つの周期のステップおよびデータ収集の後に、検出器上の各ピクセル点におけるX線の光強度を光強度曲線として表し、検出器上の各ピクセル点における光強度曲線を、検出されるべき物体が存在しない状態における光強度曲線と比較して、前記光強度曲線の変化から各ピクセル点のピクセル値を算出する工程を実施するコンピュータ・ワークステーションをさらに備えてよい。
【0009】
前記システムは、線源回折格子がステップ移動することを可能にする、かつ/または検出されるべき物体がコンピュータ・ワークステーションの制御下でシステムの他の部分に対してある角度だけ回転するのを可能にするための作動手段をさらに備える。線源回折格子のステップ工程は、各回転角で繰り返され、それによって複数の角度でX線画像のピクセル値が得られ、次いで、所定のCT画像再構成アルゴリズムにより、検出された物体の立体画像が再構成される。
【0010】
前記コンピュータ・ワークステーションは、計算でデータの情報を処理して、検出されるべき物体のそれぞれの点のピクセル値を得るためのデータ処理モジュールと、計算で得られたピクセル値によって検出された物体の画像を再構成するための画像再構成モジュールと、X線源、線源回折格子、X線検出器およびデータ処理ユニットの動作を制御するための制御モジュールとからなる。1実施例によれば、前記データ処理モジュールおよび前記制御モジュールは、汎用プロセッサまたは専用プロセッサによって一体化して実施することができる。
【0011】
その上に、前記コンピュータ・ワークステーションは、検出された物体の画像を表示するための表示装置をさらに備える。多くの種類の画像が同時に得られる場合には、これらの画像を相補的に表示することができる。
【0012】
本発明の1実施例によれば、前記コンピュータ・ワークステーションは、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較し、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の屈折情報を算出して、対応するピクセル値をそこから算出することができる。
【0013】
本発明の別の実施例によれば、前記コンピュータ・ワークステーションは、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較し、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の散乱情報を算出して、対応するピクセル値をそこから算出することができる。
【0014】
本発明のさらに別の実施例によれば、前記コンピュータ・ワークステーションは、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較し、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の減衰情報を算出して、対応するピクセル値をそこから算出することができる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、本発明は、前述のX線撮像システムを使用して物体を撮像するためのX線撮像方法に関し、前記方法は、検出されるべき物体にX線を放射する工程と、線源回折格子が少なくとも1つの周期でステップ移動することを可能にする工程と、X線検出器が、各ステップ工程でX線を受け取り、処理可能なデジタル電気信号に変換して、少なくとも1つの周期のステップおよびデータ収集の後に、検出器上の各ピクセル点におけるX線の光強度を光強度曲線として表す工程と、データ処理モジュールが、検出器上の各ピクセル点における光強度曲線を、検出されるべき物体が存在しない状態での光強度曲線と比較することにより、光強度曲線の変化を取得する工程と、光強度曲線の前記変化から、検出器上の各ピクセル点におけるピクセル値を算出する工程と、画像再構成モジュールが、検出された物体のピクセル値を、物体の画像として再構成する工程とからなる。
【0016】
さらに、本発明の方法の実例による、検出されるべき物体が回転される前記方法では、検出されるべき物体のそれぞれの点のX線検出器上のピクセル値の分布を複数の角度で得るために、前記それぞれの工程が各回転角において繰り返され、次いで、検出されるべき
物体の立体画像が、CT画像の再構成アルゴリズムによって再構成される。
【0017】
本発明の方法の1実施例によれば、この方法の実施例は、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較して、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の屈折情報を算出する工程と、対応するピクセル値をそこから算出する工程とからなる。あるいは、本発明の別の実施例によれば、この方法の実施例は、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較して、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の散乱情報を算出する工程と、対応するピクセル値をそこから算出する工程とからなる。あるいは、本発明のさらに別の実施例によれば、この方法の実施例は、検出されるべき物体が存在する状態での光強度曲線と、検出されるべき物体が存在しない状態でのバックグラウンドの光強度曲線の間を比較して、検出されるべき物体の所定の点におけるX線の減衰情報を算出する工程と、対応するピクセル値をそこから算出する工程とからなる。
【0018】
本発明のシステムまたは方法によれば、このシステムまたは方法は、相補的に表示する、減衰撮像、暗視野散乱撮像および位相コントラスト撮像を含む、いくつかの撮像機構と組み合わせることができ、また、材料科学、細胞組織(乳管など)の医用画像などの分野に総合的に適用することができる。
【0019】
高精度の機械的移動デバイス、耐衝撃性デバイスなどに対する既存技術の高度な要件は、本発明が同様の画像品質および効果を同時に得ることでかなり緩和され、それによって、装置の構築コストが大幅に低減され、システムの安定性が向上し、したがって、格子ベースの情報を合成する撮像技術を医療機器などの実際の製品に適用するのが技術的に簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のX線撮像システムの概略図。
【図2】可動線源回折格子に基づく本発明のシステムの撮像原理の概略図。
【図3】X線検出器の特定の検出ユニット(ピクセル点)において測定された光強度曲線(バックグラウンド変位曲線)。
【図4】左に減衰像、中央に位相コントラスト像、右に暗視野像を示す、本発明の撮像システムによって得られた特定の検出された物体の複数の情報画像。
【図5】検出されるべき物体をX線が通過した後に検出器の特定のピクセルで検出されたバックグラウンド変位曲線および試料変位曲線によって具現されたX線の強度、コントラスト、および位相変化の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示されるように、本発明の原理により、X線撮像システムは、基本的には、X線装置S、可動線源回折格子G0、固定回折格子モジュールP(第1回折格子G1および第2回折格子G2を含む)、およびX線検出器Tから成り、これらは放射されるX線の伝搬方向に連続して配置されている。検出されるべき物体は、前記線源回折格子G0と前記固定回折格子モジュールの間に配置される。

【0022】
X線源として働くX線装置は、現在の医療機器で使用される一般的なX線装置でよく、通常は、乳管の撮像に適している大電流のパルス・モードX線装置であり、対応する補助装置を備えてよい。X線装置は、検出されるべき物体にX線ビームを放射するのに使用される。一般に補助装置は、フィルタを含む。医療X線装置は、通常5~160kVpの間に設定された動作電圧を有する。一般的なX線装置によって放射されるX線ビームは、扇形ビーム、円錐ビームまたは平行ビームでよい。本発明では、円錐ビームが好ましい。

【0023】
X線検出器Tは、X線を受け取って、受け取ったX線信号を光電信号変換技術(デジタル写真技術など)によってデジタル的に処理され得る電気信号に変換するのに使用される。好ましくは、前記検出器は、マトリクス検出器でよく、各検出ユニット(ピクセル)は、前記ユニット上に放射されたX線の強度の変化を検出してよい。好ましくは、前記検出器は、X線を周期的に取得して変換することができる。好ましくは、医用の低ノイズで平面配列の検出器が使用されてよく、12ビットを上回るダイナミック・レンジを有する平面配列の検出器なら、撮像領域全体を対象として含む。数百マイクロメートルの石灰化乳管組織を検出するために、約数百マイクロメートル以下(70~100マイクロメートルなど)の検出器の空間分解能が必要とされる。

【0024】
その上に、前記X線撮像システムはさらに、コンピュータ・ワークステーションをに備える。全体の撮像システム、データ伝送、画像再構成、およびデータ処理の制御は、コンピュータ・ワークステーションによって達成されうる。走査制御情報、位置情報、および投影データは、データ収集システムによってコンピュータ・ワークステーションに入力される。このワークステーションは、物体の多種の情報を抽出し、物体のデータを前処理し、画像を再構成して、最後にそれらをディスプレイ上に表示する。

【0025】
コンピュータ・ワークステーションは、検出されるべき物体をX線が通過した後に、検出器から出力された、デジタル的に処理することができる電気信号によって、光強度(曲線)の変化を算出し、前記光強度(曲線)の変化によって、検出されるべき物体上の特定の点におけるX線に対する吸収情報、散乱情報または屈折情報を算出し、前記情報を用いることによって、検出されるべき物体のピクセル情報を算出するように設定されたデータ処理モジュールを備えてよい。これらの機能は、実際には、プログラムされたソフトウェアによって達成される、あるいは専用ハードウェア・チップセットによって理論的には達成され得る。

【0026】
さらに、コンピュータ・ワークステーションは、X線装置、線源回折格子、検出されるべき物体、固定格子、検出器などの、相対的回転、ステップ移動、X線放射および情報取得などの動作を制御するための制御モジュール(図1には示されていない)をさらに備えてよい。好ましくは、前記制御モジュールおよび前記データ処理モジュールは、1つの汎用プロセッサまたは専用プロセッサによって、一体化して実施されうる。

【0027】
さらに、コンピュータ・ワークステーションは、得られたピクセル情報により、検出されるべき物体の画像を再構成し、それを出力し、かつ表示するための撮像モジュール(図1には示されていない)を備えてもよい。前記再構成の機能モジュールは、データ処理モジュールとしても働くプロセッサによって実施されてもよい。

【0028】
前記撮像システムはさらに、線源回折格子がステップ移動することを可能にする、かつ/または検出されるべき物体がコンピュータ・ワークステーションの制御下でシステムの他の部分に対してある角度だけ回転するのを可能にするための作動手段を備えてよい。線源回折格子のステップ移動の処理は、各回転角で繰り返され、それによって複数の角度でX線画像のピクセル値が得られ、次いで、所定のCT画像再構成アルゴリズムによって、検出された物体の立体画像が再構成される。ここで前記作動手段は、検出されるべき物体を相対的に回転させるための手段を有し、且つ線源回折格子のステップ移動を可能にする機能を有する構造体として定義される。これらは、実際には別々に表されることができる。

【0029】
コンピュータ・ワークステーションはさらに、再構成された画像を表示するための表示装置を備えてよく、これは一般的なディスプレイで実現することができる。
以下の本文は、引用された従来技術との差異があって特別な紹介が必要な構成要素をさらに説明する。
「固定回折格子モジュール」
固定回折格子モジュールPは、2つの高精度の回折格子G1およびG2から成る。背景技術の部分で引用された特許出願の格子撮像技術では、使用される2つの高精度の回折格子は、ステップ技術を実現するように相対的にステップ移動する必要があるが、本発明では、それらの相対的な位置は、一定不変である。2つの回折格子G1およびG2の周期は、pおよびpとしてそれぞれ設定され、X線ビームの放射方向に、並行して連続的に配置される。

【0030】
好ましくは、前記2つの回折格子の周期は、通常は0.1~30マイクロメートルの間にある。回折格子は、吸収材料として重金属を用い、例えば金(Au)の場合には、用いられるX線のエネルギーによって金の高さは、10~100マイクロメートルの間に決定される。例えば、20keVのX線に関しては、高さが10マイクロメートルを上回る金は、X線の90%を遮断できる。

【0031】
X線のコヒーレントな状態は、物理的原理によってlcoh=(Lλ/S’)>pと定義される。ここで、lcohは横方向のコヒーレント長であり、Lは固定回折格子モジュールにおける線源回折格子から第1回折格子G1までの距離であり、S’は線光源の幅であり、λはX線の波長であり、pは光線方向における第1回折格子G1の周期である。

【0032】
実際には、以下の2つの環境があり得る。
1)撮像システムが前記コヒーレントな状態を満たすとき、前記第1回折格子G1が位相格子で、入射X線の位相を変化させ、第1回折格子G1の背後にタルボ効果が生じる。第2回折格子G2が、吸収格子として働き、第1回折格子によって回折されるタルボ距離で平行に配置される。第1回折格子と第2回折格子は、相対的に固定される。
2)撮像システムが前記コヒーレントな状態を満たさないとき、2つの回折格子G1およびG2は、どちらも吸収格子である。2つの吸収格子は、互いに距離Dだけ離れて固定して平行に配置される。

【0033】
本発明の好ましい実例の1つでは、撮像システムが前述のコヒーレントな状態を満たさず、すなわち固定回折格子モジュールによって用いられるX線は非コヒーレント光であり、次いで、固定回折格子モジュールPは、前述の第2の環境下の設定を採用し、第1回折格子G1と第2回折格子G2は、互いに距離Dだけ離される。

【0034】
あるいは、本発明の別の実例では、撮像システムが前述のコヒーレントな状態を満たし、すなわち固定回折格子モジュールによって用いられるX線は、コヒーレント光または部分的コヒーレント光であり、次いで、固定回折格子モジュールPは、前述の第1の環境下の設定を採用し、第2回折格子G2と第1回折格子G1は、タルボ距離Dの距離を有し、D=p/(8λ)である。
「線源回折格子およびそのステップ技術」
線源回折格子G0は、マルチスリット吸収格子であり、X線装置を複数の狭ビーム線光源に分割する機能を有する。図1に示されるように、本発明では、線源回折格子は、少なくとも1つの格子周期pで、光路方向(Z軸)および格子縞方向(Y方向)に対して垂直なX方向に、平行移動を達成する、すなわちステップ技術を達成することになる。それとは対照的に、既存の格子撮像技術では、線源回折格子の位置は、固定され、あるいはX線装置のターゲット材に直接エッチングされる。結果として、本発明を、引用された従来技術と区別するのは線源回折格子のステップである。線源回折格子の周期pは、一般に約12マイクロメートルまたは数十マイクロメートルであり、したがって、ステップ長は
、数マイクロメートルもしくは12マイクロメートル、または数十マイクロメートルの大きさでさえよく、そのとき、並進移動装置は、約数マイクロメートルまたは12マイクロメートルの精度を有する。線源回折格子のステップ技術の成果が従来技術の格子モジュールPの2つの格子の相対的ステップと同等の結果を達成し得ることは、証明されうる。

【0035】
検出器上の特定のピクセル点で受け取るX線の強度変化の曲線は、線源回折格子の相対的ステップ移動によって得られてもよい。図1に示されたシステムに関して、固定回折格子モジュールの2つの回折格子(G1、G2)は相対的に固定され、線源回折格子はX方向に沿ってステップ移動する。線源回折格子G0が1ステップ移動すると、検出器が1回データを取得することができ、N個の画像が並進移動の距離の範囲内で取得された後に、1つの格子周期における検出器上の各ピクセル(検出器の検出表面上の各点)に関する光強度の変化の曲線の分布を得ることができる。図3に示されるように、光強度の変化の関数の形は、正弦波関数または余弦波関数に類似であり、ここではシミュレートされた連続的な曲線によって表されており、実際に複数の点でシミュレートされ得る。
「線源回折格子のステップ移動工程」
図2に示されるように、理想的な状態では計算は、簡単になるはずである。すなわち、示されるように、3つの格子はすべて、X方向に十分に大きな寸法を有する。線源回折格子G0は、大きな焦点のX装置(X-machine)を線光源の行に分割し、その分布は関数T(x)によって表される。一方、回折格子G1およびG2は、それぞれT(x)およびT(x)によって表される。回折格子G0、G1およびG2の周期は、p、pおよびpである。

【0036】
次に、線源回折格子ステップの撮像原理が、第1回折格子G1から第2回折格子G2までの距離がDである非コヒーレントなX線撮像を例として、説明される。
検出されるべき物体が光路に配置されていないとき、X線照射下の回折格子G1によって回折格子G2の位置に形成される画像は、関数I(x)によって表される。すなわち、
(x)=I(x)×S(x) (1)
であり、I(x)は点の線源の照射下の回折格子G1によって回折格子G2の位置に形成された画像であり、S(x)は回折格子G2の位置における線源回折格子G0の投影像であって、次式で表される。

【0037】
【数1】
JP0005462408B2_000002t.gif

【0038】
【数2】
JP0005462408B2_000003t.gif
この式で、S(x)は、回折格子G0の背後の光強度分布であり、X線源の分布関数S(x)および回折格子G0の透過関数T(x)の両方の影響を受け、すなわち次式で表される。
(x)=S(x)T(x)
G2の位置におけるI(x)およびS(x)の周期は、回折格子の周期T(x)と
等しく、すべてpであって、便宜上pと印を付けられていることが注目される。

【0039】
検出器によって検出される光強度の分布関数は、I(x)として設定され、次式となる。
(x)=I(x)T(x) (2)
検出器ユニット(ピクセル)の寸法が回折格子G2の周期よりはるかに大きいので、特定のピクセルが受け取る光強度値は、回折格子周期の数倍または数十倍といった範囲の光強度の蓄積であり、したがって普遍性を失うことなく、次のように設定される。

【0040】
【数3】
JP0005462408B2_000004t.gif

【0041】
【数4】
JP0005462408B2_000005t.gif

【0042】
【数5】
JP0005462408B2_000006t.gif
この式で、

【0043】
【数6】
JP0005462408B2_000007t.gif
であり、すなわち、

【0044】
【数7】
JP0005462408B2_000008t.gif
となり、a、tおよびfはフーリエ係数である。

【0045】
【数8】
JP0005462408B2_000009t.gif
は、光源の分布を考慮したフーリエ係数である。

【0046】
線源回折格子がステップ移動するとき、変位距離はχに設定され、検出器ユニットで得られる光強度曲線の関数(バックグラウンド変位曲線と名付ける)は次式となる。

【0047】
【数9】
JP0005462408B2_000010t.gif
検出されるべき物体が光路に配置されると、X線の位相シフト

【0048】
【数10】
JP0005462408B2_000011t.gif
がもたらされ、X線の照射下で物体および回折格子G1によって回折格子G2の位置に形成される画像は、関数J(x)、すなわち次式で表される。
(x)=J(x)×S(x) (4)
この式で、J(x)は、点の線源の状態での回折格子G2の位置における、物体および回折格子G1の画像であり、すなわち次式で表される。

【0049】
【数11】
JP0005462408B2_000012t.gif
したがって、検出器ユニットで得られる光強度曲線の関数(試料変位曲線と名付ける)は、次式となる。

【0050】
【数12】
JP0005462408B2_000013t.gif
以下の内容は、線源回折格子のステップ技術と2つの吸収格子の相対的ステップの技術とが、同等な結果をもたらすことを証明する。

【0051】
第2回折格子G2が第1回折格子G1に対してステップ移動し、変位距離がχであると想定すると、検出器ユニットで得られた光強度曲線関数は、以下の通りである。検出されるべき物体が光路に存在しない状態でのバックグラウンド変位曲線は、次式となる。

【0052】
【数13】
JP0005462408B2_000014t.gif
検出されるべき物体が光路に存在する状態での試料変位曲線は、次式となる。

【0053】
【数14】
JP0005462408B2_000015t.gif
比較することにより、式(3)と式(6)が等価であり、式(5)と式(7)が等価であることが判明し得る。

【0054】
第1回折格子G1から第2回折格子G2までの距離がDであるコヒーレントなX線撮像の1実施例に基づき推定すれば、式中のDをDで置換するだけで結果は、同一になるはずである。また、コヒーレントな状態でタルボ・ロー(Talbot-Lau)干渉法を用いる場合には、次のような関係が存在する。
=(p/2)×L/(L-D
したがって、線源回折格子のステップ技術は、第1と第2回折格子の相対的ステップ技
術と実質的に同一の結果を得る、と要約することができる。その一方で、線源回折格子のステップ技術は、高精度の要件およびステップの困難さを大幅に緩和し、システムの安定性を著しく向上する。
「CT情報の抽出およびCT画像の再構成」
線源回折格子ステップのX線撮像工程中に、線源回折格子のステップにより、各検出器ユニット(ピクセル)に関してバックグラウンド変位曲線および試料変位曲線を得ることができる。実際のシステムにおける3つの回折格子の限定された寸法を考慮して、バックグラウンド変位曲線および試料変位曲線は、正弦波の曲線に類似であり、すなわち次式で表される。
(k)≒a+bcos(kΔx+φ) (8)
(k)≒a+bcos(kΔx+φ) (9)
ここで、I(k)は試料が存在する状態でステップkにおいて測定された光強度の値であり、I(k)は試料が存在しない状態でステップkにおいて測定された光強度の値であり、Δχはステップ長であり、曲線の位相変化はΔφ=(φ-φ)であって、a、b、a、bは正弦波曲線の係数である。図3には、実際のシステムで測定されたバックグラウンド変位曲線が示されている。試料が検出されない状態での光強度曲線がバックグラウンド情報として役立ち得ると予測することが可能で、前記情報は、システムの記憶装置に事前に蓄積することができ、あるいは、装置が始動するとき一時的に自動取得される。

【0055】
バックグラウンド変位曲線を試料変位曲線と比較することによって、図5に示されるように、ステップ数が相対的に大きければ(例えば5以上であり、ステップ数がより多ければ、画像形成の効果はより優れたものになるはずであって)、減衰値P(減衰像に対応する)、屈折角値Δθ(位相コントラスト像に対応する)、および検出器ユニットの散乱角分布の2次モーメントσ(暗視野像に対応する)を算出するのに以下の式を用いることができる。

【0056】
【数15】
JP0005462408B2_000016t.gif

【0057】
【数16】
JP0005462408B2_000017t.gif

【0058】
【数17】
JP0005462408B2_000018t.gif
ここで、μは線減衰係数であり、δは屈折率の位相係数であり、fは一般的な散乱パラメータであって、lは光伝搬経路である。Vは試料変位曲線の可視度であり、Vはバックグラウンド変位曲線の可視度である。ImaxおよびIminは、それぞれ光強度
曲線の最大値および最小値を表し、次式の関係を有する。

【0059】
【数18】
JP0005462408B2_000019t.gif
もちろん、ステップ数も、設定を簡単にするために相対的に少なくしてもよい。具体的には、線源回折格子のステップ技術では、ステップ数が5未満であるとき、式の解法は、様々な情報の値を算出するのに用いられ得る。一般技術には一般的な推論手順が既に存在しており、その画像効果は、相対的にステップが多数の場合よりも常に劣る。Iは物体を通過した後のX線の強度であり、Iは回折格子を通過した後のX線の強度であり、R(x)は正規化されたバックグラウンド変位曲線の関数であって、f(θ)はX線が物体によって散乱された後の確率密度の分布関数を表すものとすると、これらは以下の関係を有する。

【0060】
【数19】
JP0005462408B2_000020t.gif
ここで、

【0061】
【数20】
JP0005462408B2_000021t.gif
である。

【0062】
ステップ数が、それぞれ2、3または4であるとき、すなわち、ステップ点が、それぞれ2つ、3つまたは4つの特別な位置点であるとき、R(x)に対して、それぞれ1次、2次または3次のテイラー展開近似を行なうことができ、次いで、式(13)に入れて、2つ、3つまたは4つのステップ数に関する近似式をそれぞれ取得し、次いで、対応する位置で取得された画像をこれらの近似式に入れて、様々な情報を算出する。

【0063】
具体的には、例えばステップ数が2であるときには、2つの特別な位置点kx=0、πが選択され、2つの位置における画像(例えばI、Iによって表される)を、見かけの吸収情報Iおよび位相コントラスト情報(すなわち屈折角情報)Δθを算出するために用いることができる。

【0064】
【数21】
JP0005462408B2_000022t.gif

【0065】
【数22】
JP0005462408B2_000023t.gif
より具体的には、例えば、ステップ数が3であるとき、3つの特別な位置点が選択され、見かけの吸収情報I、位相コントラスト情報Δθ、および散乱情報σは、変位曲線に対してこれらの3つの位置の画像を用いて2次のテイラー展開を行なうことによって得られる。

【0066】
相対的に少数のステップの場合には、ステップ数よりも多くの画像データを得ることは、画像データの離散的歪みをもたらすが、演算が簡単になるという利点もある。
式(10)および式(12)によれば、物体の内部の線減衰係数μおよび一般的な散乱パラメータfの3次元分布を再構成するために、従来のフィルタリングされた逆投影アルゴリズム(RLフィルタリング、SLフィルタリングなど)が用いられてよい。式(10)は、特定の点を通過するX線の光強度の変化を測定することによって、検出された物体の吸収情報および減衰情報を得ることができることを示す。式(12)は、X線強度曲線のコントラストの変化を測定することによって、検出された物体の散乱情報を間接的に測定することができることを示す。

【0067】
式(11)によれば、屈折率(またはその勾配)の3次元分布を再構成するために、ヒルベルト・フィルタに基づくフィルタリングされた逆投影アルゴリズムが用いられてよい。式(11)は、変位曲線の位相変化△φを測定して算出することによって、検出された物体の屈折情報を間接的に得ることができることを示す。

【0068】
前述のフィルタリングされた逆投影アルゴリズムは、例えば当業者に周知であり、その内容はかなり多くの文献で詳述されており、したがって、ここでは詳細に説明することなく、その技術的な効果だけを述べることにする。実際に、他の類似のアルゴリズムも採用されてよい。図4が示すように、4a、4bおよび4cはそれぞれ、検出された物体の減衰像、位相コントラスト画像および暗視野像であり、線源回折格子は、110マイクロメートルの周期を有し、ステップ長は10マイクロメートルであり、11点でデータを取得し、固定回折格子モジュールの2つの吸収格子の周期は、11点における画像データに応じて、それぞれ10マイクロメートルおよび11マイクロメートルである。

【0069】
検出されるべき物体に対してCTデータ収集が行なわれ、すなわち、検出されるべき物体は、撮像システムに対して様々な角度で撮像され、減衰像、位相コントラスト像および暗視野像は、それぞれ別々の角度で得られる。人体などの検出されるべき物体は、例えば360°回転することができる。このようにして、検出されるべき物体が全体のシステムに対して回転することを可能にするために作動手段が必要とされ、これは、通常は電気機械の回転動作構造であって、制御モジュールによって制御される。
「撮像工程」
X線源は、物体に対して各角度でX線を放射する。一方、本発明の撮像システムの線源回折格子G0は、少なくとも1つの周期のステップ移動を達成する。前記処理を通じて、検出器は、光強度信号を、デジタル的に処理することができる電気信号に変換し、電気信号は、データ処理ユニットによってデータ処理される。検出器上の各ピクセル点における光強度曲線の変化を比較することによって、検出されるべき物体を通過するX線の減衰値、散乱値、および屈折値の1または複数を、検出器上のピクセル・ユニットにおいて得ることができる。次いで、物体を、ある角度だけ相対的に回転し、上記の回折格子のステップ移動を繰り返して、検出されるべき物体を通過するX線の減衰値、散乱値および屈折値
の1または複数を前記別の角度で得る。上記の処理を繰り返して、検出されるべき物体を通過するX線の減衰値、散乱値および屈折値の1または複数を複数の角度で得る。減衰値、散乱値および屈折値の1または複数を、検出された物体のCT画像に構成するのに、CT再構成アルゴリズムが用いられる。

【0070】
精密な画像を抽出するために、X線源から機構の回転中心までの距離、線源回折格子から固定回折格子モジュールまでの距離、固定回折格子モジュールの2つの回折格子の間の距離、線源から検出器までの距離、回折格子の周期などといったシステム・パラメータは、正確に測定される、または較正される。検出されるべき物体および/または装置システムを支持するための機構は、従来技術で一般に使用され、本発明でも必要に応じて確かに使用されるが、ここでは、その内容は詳細には説明されず、当業者なら、周知の事実および本発明の教示に基づいて適切な機構を採用することができる。

【0071】
本発明は、好ましくは非コヒーレントなX線源の説明に基づくものであるが、本発明の概念および斬新な原理は、コヒーレントなX線源を使用する回折格子撮像にも適切である。

【0072】
本発明のX線撮像方法は、回折格子ステップの精度を大幅に引き下げ、撮像システムを構築する上での困難さやそのコストを緩和することができるように、回折格子撮像技術をさらに改善し、それによって、斬新な回折格子撮像技術の適用および普及を容易にする。本発明は、既存の回折格子合成撮像技術における高精度な回折格子に基づくステップ技術を変化させ、低精度な長周期の線源回折格子に基づくステップ技術を必要とするだけで、同じ画像品質および効果を達成するものである。

【0073】
X線の吸収、位相コントラスト、および暗視野の3つの撮像方法のうち1または複数を、システムの同一の組に対して(図4に示されるように)、互いに補足する画像を得ることができるように遂行することができる。複数のデータ処理機能は、上記撮像方法の1または複数を達成するように、コンピュータ・ワークステーションにおいて一体化され得る。非コヒーレントなX線源に基づく回折格子暗視野撮像は、材料科学、組織(乳管など)の医用画像などの分野に適用されうる。

【0074】
当業者なら、同封の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの任意選択の実例を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、いくつかの手段が列挙されている場合には、手段のいくつかは同一のハードウェアによって実施することができる。いくつかの手段が、互いに異なる従属請求項においてのみ明示されるという事実は、これらの手段の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。
図面
【図3】
0
【図5】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図4】
4