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明細書 :遠心圧縮機及びその形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5680740号 (P5680740)
登録日 平成27年1月16日(2015.1.16)
発行日 平成27年3月4日(2015.3.4)
発明の名称または考案の名称 遠心圧縮機及びその形成方法
国際特許分類 F04D  29/44        (2006.01)
F04D  29/42        (2006.01)
F04D  29/66        (2006.01)
FI F04D 29/44 R
F04D 29/42 P
F04D 29/44 X
F04D 29/66 H
F04D 29/66 N
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2013-505982 (P2013-505982)
出願日 平成24年3月21日(2012.3.21)
国際出願番号 PCT/JP2012/057136
国際公開番号 WO2012/128277
国際公開日 平成24年9月27日(2012.9.27)
優先権出願番号 201110070488.1
優先日 平成23年3月23日(2011.3.23)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成25年8月20日(2013.8.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【識別番号】512088224
【氏名又は名称】清華大学
発明者または考案者 【氏名】ゼン シンチェン
【氏名】リン ルィン
【氏名】ザン ヤンジウィン
【氏名】ラン チュアンデェ
【氏名】ツーク ウェリン
【氏名】川久保 知己
【氏名】玉木 秀明
個別代理人の代理人 【識別番号】100097515、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 実
審査官 【審査官】田谷 宗隆
参考文献・文献 特開平10-176699(JP,A)
調査した分野 F04D 29/44
F04D 29/42
F04D 29/66
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに結合された第1ケーシング部と第2ケーシング部とを含み、第1ケーシング部内に渦巻室が設けられており、かつ、第2ケーシング部内に羽根車設置スペースが設けられている渦巻ケーシングと、
回転軸の周りを回転可能に、羽根車設置スペース内に設けられている羽根車と、
入口が第2ケーシング部内に連通し、出口が第1ケーシング部内に連通する羽根なしディフューザと、を有し、
前記回転軸を回る方向を周方向として、羽根なしディフューザの幅の周方向分布は、非軸対称であり、
羽根なしディフューザの位置が周方向に移行するに従って、羽根なしディフューザの幅は、次第に増加し、その後、次第に減少するように周方向の全体にわたって変化して、羽根なしディフューザの周方向の位置が周方向に1周し、これにより、羽根なしディフューザの入口の気流角度の非軸対称性が低減されており、
前記気流角度は、羽根なしディフューザの入口の気流速度を前記回転軸に垂直な平面に投影した投影速度と、該投影速度の周方向位置における周方向との間の夾角である、ことを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記羽根なしディフューザの入口の気流角度αがその周方向平均値より小さい周方向位置における前記羽根なしディフューザの幅は、気流角度αがその周方向平均値以上である他の周方向位置における前記羽根なしディフューザの幅より小さ、ことを特徴とする請求項1記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
同一の周方向位置では、前記羽根なしディフューザの幅は径方向において均一である、ことを特徴とする請求項2記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
第1ケーシング部と第2ケーシング部との間には、環状キャップ部と環状ディスク部が設けられ、かつ、前記羽根なしディフューザは、前記環状キャップ部と環状ディスク部との間に区画された流路として形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
第1ケーシング部と第2ケーシング部と前記環状キャップ部とは一体形成されている、ことを特徴とする請求項4記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
互いに結合された第1ケーシング部と第2ケーシング部とを含み、第1ケーシング部内に渦巻室が設けられており、かつ、第2ケーシング部内に羽根車設置スペースが設けられている渦巻ケーシングと、
回転軸の周りを回転可能に、羽根車設置スペース内に設けられている羽根車と、
入口が第2ケーシング部内に連通し、出口が第1ケーシング部内に連通する羽根なしディフューザと、を有し、
羽根なしディフューザの幅の周方向分布が非軸対称である遠心圧縮機の形成方法であって、
前記遠心圧縮機は、羽根なしディフューザの幅が周方向において均一である対称遠心圧縮機の原型を改良したものであり、
(1)周方向の初期位置を設定し、
(2)数値シミュレーション又は実験によって、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyの周方向における分布を取得し、かつ、当該羽根なしディフューザの入口の気流角度αyの周方向平均値αyavgを算出するとともに、当該羽根なしディフューザの幅byを取得し、
(3)対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyがその周方向平均値αyavgより小さい周方向位置において、羽根なしディフューザの前記幅byを減少させることにより該周方向位置における第1幅b1を取得し、
さらに、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyがその周方向平均値αyavgより大きい周方向位置において、羽根なしディフューザの前記幅byを増大させることにより該周方向位置における第1幅b1を取得し、
同時に、第1幅b1の周方向平均値b1yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにし、
これにより、第1遠心圧縮機の第1羽根なしディフューザの第1幅b1の周方向における分布を取得し、
(4)ステップ(3)の第1幅b1の結果に基づいて、数値シミュレーション又は実験によって、第1遠心圧縮機の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布を得て、かつ、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向平均値α1avgを算出し、
(5)ステップ(4)の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布に基づいて、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより小さい周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を減少させることにより該周方向位置における第2幅b2を取得し、
さらに、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより大きい周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を増大させることにより該周方向位置における第2幅b2を取得し、
同時に、第2幅b2の周方向平均値b2yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにし、
これにより、第2遠心圧縮機の羽根なしディフューザの第2幅b2の周方向における分布を取得し、
(6)羽根なしディフューザの入口の気流角度αの周方向における最小値αminが臨界気流角より大きくなるディフューザの幅bの周方向分布が得られるまで、ステップ(4)とステップ(5)を繰り返し、
(7)ステップ(6)で得られたディフューザの幅bの周方向分布に基づいて遠心圧縮機を得る、ことを特徴とする遠心圧縮機の形成方法。
【請求項7】
前記羽根なしディフューザの入口の気流角度αは、前記羽根なしディフューザの入口の気流速度を回転軸に垂直な平面に投影した投影速度Vと、該当する周方向位置における周方向との間の夾角である、ことを特徴とする請求項6記載の遠心圧縮機の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車を有する流体機械の技術分野、特に、羽根なしディフューザを有する遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機等の羽根車を有する圧縮機は、往復型圧縮機に比べて効率が高く、寸法や重量が小さく、運転が安定している等の長所を有するが、流量に関する稼働条件の範囲が限られている。遠心圧縮機において、低流量の稼働条件では、内部の流れ場において、大きな流体剥離などの現象が生じ、作動が不安定になる現象が現れ、失速ひいてはサージを引き起こし、圧縮機の効率と圧力比の急激な低下を招き、寿命が短縮され、ひいては短期で損傷してしまう。
【0003】
遠心圧縮機の羽根なしディフューザの流路の両側は、固定された環状キャップ部と環状ディスク部が用いられ、その形状は、設計点の稼働条件に応じて確定する。これにより、設計点において最も優れた性能が得られ、羽根車の出口の流体の運動エネルギーを効果的に静圧エネルギーに変換できるようにする。従来の羽根なしディフューザの構成はいずれも軸対称である。すなわち、羽根なしディフューザの幅は、周方向において均一に分布する。低流量の場合、羽根なしディフューザ内には大きな流体剥離が発生し、このような失速現象は流動損失の増加をもたらしてディフューザの効率が低下し、流量が更に減少する場合、流体の径方向の運動エネルギーが足りず、逆圧勾配の作用で流体が逆流し、圧縮機にサージ現象が発生する。
なお、羽根なしディフューザの「羽根なし」とは、流路であるディフューザに羽根(翼)が設けられていないことを意味する。
【0004】
羽根なしディフューザの失速の抑制に関する方法において、流量が少ない場合、流体の径方向の運動エネルギーを増大し、かつ逆流を減少するように、ディフューザの幅を減少させることが従来技術として知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遠心圧縮機の渦巻ケーシングは非軸対称性を有するため、羽根なしディフューザの内部の周方向の流動パラメータが非軸対称性を呈する。すなわち、羽根なしディフューザの内部の流れ場が非軸対称となる。従って、ディフューザの幅を減少させて、流体の径方向の運動エネルギーを増大して逆流を減少する従来の方法には限界があり、羽根なしディフューザの内部の流れ場の非軸対称性の特性が考慮されないため、羽根なしディフューザの失速を最大限に抑制することができないという課題がある。
【0006】
本発明は、少なくとも従来技術に存在する技術課題の1つを解決することを目的とする。
【0007】
そのために、本発明の目的は、遠心圧縮機内部の流体の流れ場の非対称性を低下でき、遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大する遠心圧縮機を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、上記遠心圧縮機の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によると、互いに結合された第1ケーシング部と第2ケーシング部とを含み、第1ケーシング部内に渦巻室が設けられており、かつ、第2ケーシング部内に羽根車設置スペースが設けられている渦巻ケーシングと、
回転軸の周りを回転可能に、羽根車設置スペース内に設けられている羽根車と、
入口が第2ケーシング部内に連通し、出口が第1ケーシング部内に連通する羽根なしディフューザと、を有し、
羽根なしディフューザの幅の周方向分布は、非軸対称である、ことを特徴とする遠心圧縮機が提供される。
【0010】
本発明による遠心圧縮機では、羽根なしディフューザの幅の周方向分布は、非軸対称であるので、遠心圧縮機内部の流体の流れ場の非軸対称性を低下でき、遠心圧縮機の羽根なしディフューザの失速を抑制することによって、遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記羽根なしディフューザの入口の気流角度αがその周方向平均値より小さい周方向位置における前記羽根なしディフューザの幅は、気流角度αがその周方向平均値以上である他の周方向位置における前記羽根なしディフューザの幅より小さく、
前記羽根なしディフューザの入口の気流角度αは、前記羽根なしディフューザの入口の気流速度を回転軸に垂直な平面に投影した投影速度Vと、該当する周方向位置における周方向との間の夾角である。
【0012】
好ましくは、同一の周方向位置において前記羽根なしディフューザの幅は径方向に沿って均一である。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、第1ケーシング部と第2ケーシング部との間には、環状キャップ部と環状ディスク部が設けられ、かつ、前記羽根なしディフューザは、前記環状キャップ部と環状ディスク部との間に区画された流路として形成されている。
【0014】
好ましくは、前記第1ケーシング部と第2ケーシング部と前記環状キャップ部とは一体形成されている。
【0015】
本発明の好ましい実施形態による遠心圧縮機では、周方向に非対称の幅の羽根なしディフューザ構造の作用で、本来の羽根なしディフューザの入口の気流角度αの周方向における非軸対称性が弱くなる。これにより、周方向において最小の気流角度αを効果的に増大し、流量が少ない場合の羽根なしディフューザの失速を抑制できるとともに、遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大できる。
【0016】
本発明の遠心圧縮機の形成方法は、本発明の遠心圧縮機が得られるように、羽根なしディフューザの幅が周方向に均一である対称遠心圧縮機の原型を改良する。
【0017】
すなわち、本発明によると、上述の遠心圧縮機の形成方法であって、
(1)周方向の初期位置を設定し、
(2)数値シミュレーション又は実験によって、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyの周方向における分布を取得し、かつ、当該羽根なしディフューザの入口の気流角度αyの周方向平均値αyavgを算出するとともに、当該羽根なしディフューザの幅byを取得し、
(3)対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyがその周方向平均値αyavgより小さい周方向位置において、羽根なしディフューザの前記幅byを減少させることにより該周方向位置における第1幅b1を取得し、
さらに、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口の気流角度αyがその周方向平均値αyavgより大きい周方向位置において、羽根なしディフューザの前記幅byを増大させることにより該周方向位置における第1幅b1を取得し、
同時に、第1幅b1の周方向平均値b1yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにし、
これにより、第1遠心圧縮機の第1羽根なしディフューザの第1幅b1の周方向における分布を取得し、
(4)ステップ(3)の第1幅b1の結果に基づいて、数値シミュレーション又は実験によって、第1遠心圧縮機の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布を得て、かつ、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向平均値α1avgを算出し、
(5)ステップ(4)の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布に基づいて、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより小さい周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を減少させることにより該周方向位置における第2幅b2を取得し、
さらに、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより大きい周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を増大させることにより該周方向位置における第2幅b2を取得し、
同時に、第2幅b2の周方向平均値b2yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにし、
これにより、第2遠心圧縮機の羽根なしディフューザの第2幅b2の周方向における分布を取得し、
(6)羽根なしディフューザの入口の気流角度αの周方向における最小値αminが臨界気流角より大きくなるディフューザの幅bの周方向分布が得られるまで、ステップ(4)とステップ(5)を繰り返し、
(7)ステップ(6)で得られたディフューザの幅bの周方向分布に基づいて遠心圧縮機を得る、ことを特徴とする遠心圧縮機の形成方法が提供される。
【0018】
ここで、前記羽根なしディフューザの入口の気流角度αは、前記羽根なしディフューザの入口の気流速度を回転軸に垂直な平面に投影した投影速度Vと、該当する周方向位置における周方向との間の夾角である。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によると、羽根なしディフューザの幅の周方向分布は、非軸対称であるので、遠心圧縮機内部の流体の流れ場の非軸対称性を低下でき、遠心圧縮機の羽根なしディフューザの失速を抑制することによって、遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明して、本発明の付加的な態様と利点を明らかにする。
【図1】本発明の実施形態による遠心圧縮機の断面図である。
【図2】遠心圧縮機をその軸方向から見た概略図であり、本発明の実施形態による遠心圧縮機の周方向を定義するための図である。
【図3】遠心圧縮機をその軸方向から見た部分概略図であり、羽根なしディフューザの入口における気流角度αを定義するための図である。
【図4】本発明の実施形態による遠心圧縮機の基礎となる対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの入口における気流角度αyの周方向分布図である。
【図5】本発明の実施形態による遠心圧縮機の羽根なしディフューザの幅bの周方向分布図である。
【図6】本発明の実施形態による遠心圧縮機とそれに対応する従来の対称遠心圧縮機との性能比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。実施形態の例示を図面に示したが、各図において、同一又は類似の符号で、同一又は類似の部分、或いは、同一又は類似の機能を有する部分を示した。以下の図面を参照して説明する実施形態は例示的であり、単に本発明を解釈するためのものであって、本発明に対する制限と理解してはならない。

【0022】
本発明の説明において、用語「内側」、「外側」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「頂部」、「底部」等の示す方位或いは位置関係は、図面に示す方位或いは位置関係に基づくものであって、単に本発明を説明しやすくするためのものであり、本発明に特定の方位構造と動作を必ずしも要求するものではないので、これらの用語を本発明に対する制限と理解してはならない。

【0023】
以下、図1~図3を参照して本発明の実施形態による遠心圧縮機を説明する。ここで、以下の説明において、回転軸3を回る方向を周方向とし(図2に矢印で示す)、回転軸3に平行な方向を軸方向とし、回転軸3に対する半径方向を径方向とし、周方向の位置を周方向位置とする。本発明の説明において、あるパラメータの「分布が非対称或いは非軸対称」であるとは、周方向位置における該パラメータの分布が非軸対称であり、該パラメータが周方向に均一でないことを意味する。

【0024】
図1に示すように、本発明の実施形態による遠心圧縮機は、渦巻ケーシング1と、羽根車2と、羽根なしディフューザ4とを含む。渦巻ケーシング1は、互いに結合されている第1ケーシング部11と第2ケーシング部12とを含む。第1ケーシング部11内に渦巻室(スクロール流路)Mが設けられており、かつ、第2ケーシング部12内に羽根車設置スペースNが設けられている。羽根車2は、回転軸3の周りを回転可能に羽根車設置スペースN内に設けられている。羽根なしディフューザ4の入口41(図1の下破線部)は第2ケーシング部12内に連通し、羽根なしディフューザ4の出口42(図1の上破線部)は第1ケーシング部11内に連通する。ここで、遠心圧縮機内部の流体の流動の非軸対称性に適応するように、羽根なしディフューザ4の幅の周方向分布は、非軸対称である。

【0025】
作動中において、羽根車2は回転軸3の周りを回転し、図1の矢印方向に沿って流体を遠心圧縮機内に吸入し、かつ流体の運動エネルギーと圧力を増加させる。流体が羽根車2を離れて羽根なしディフューザ4に進入すると、流体の運動エネルギーが更に圧力エネルギーに変換されることによって、流体の圧力が上昇し、流体は、最後に、羽根なしディフューザ4から流出して渦巻室M内に進入する。

【0026】
本発明の実施形態による遠心圧縮機では、羽根なしディフューザ4の幅の周方向分布が、非軸対称になるように設計することによって、遠心圧縮機内部の流体の流れ場の非軸対称性を低下できる。その結果、遠心圧縮機の羽根なしディフューザ4の失速を抑制することによって、遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大できる。

【0027】
図2に示すように、周方向の初期位置(0°)を仮に設定すると、本発明の説明で述べる周方向角度は、該周方向の初期位置から周方向に沿ってずれる角度である。本発明の説明においては、時計回り方向に沿ってずれるのを例として説明する。すなわち、周方向角度は、回転軸3回りの位相(周方向位置)を示し、0°~360°までの値をとる。

【0028】
本発明の1つの実施形態において、羽根なしディフューザの入口の気流角度αがその周方向平均値より小さい周方向位置における羽根なしディフューザ4の幅bは、気流角度αがその周方向平均値(すなわち、周方向における、気流角度αの平均値)以上である他の周方向位置における幅より小さい。ここで、羽根なしディフューザの入口の気流角度αは、図3に示すように、羽根なしディフューザ4の入口41の気流速度を回転軸3に垂直な平面に投影した投影速度Vと、その周方向位置における接線方向(周方向)との間の夾角として定義される。また、同一の周方向位置で羽根なしディフューザ4の幅bは、径方向において大きさが均一である。

【0029】
上記の実施形態では、ある周方向位置で、羽根なしディフューザの入口の気流角度αと対応する位置における羽根なしディフューザの幅bとの間の関係がtanα=c/bであり、cは該周方向に対応する1つの定数であるという原理に基づいて設計を行った。

【0030】
本発明の実施形態による遠心圧縮機では、径方向に関して、第1ケーシング部11と第2ケーシング部12との間には、環状キャップ部5と環状ディスク部6が設けられる。羽根なしディフューザ4は、環状キャップ部5と環状ディスク部6との間に設けられた流路として形成される。ここで、第1ケーシング部11と第2ケーシング部12と環状キャップ部5とは一体形成され、かつ、環状ディスク部6は、第1ケーシング部11に着脱可能に取り付けられ、または、径方向に関して、第1ケーシング部11と第2ケーシング部12との間に着脱可能に設けられる。

【0031】
具体的には、従来の遠心圧縮機では、流量が少ない稼働条件で、図4に示すように、渦巻ケーシングの非軸対称性が、羽根なしディフューザの内部の流体の流れ場の非軸対称性を引き起こす。そのため、羽根なしディフューザの入口の気流角度αの周方向における分布が非軸対称性を有する。一般的に、羽根なしディフューザの入口の気流角度αが所定の臨界気流角より小さい場合、羽根なしディフューザは失速を引き起こす可能性があり、流量が更に減少する場合、流体の径方向の運動エネルギーが足りず、逆圧勾配の作用で、流体が逆流して遠心圧縮機のサージ現象が生じる。

【0032】
そこで、本発明の実施形態による遠心圧縮機では、羽根なしディフューザの幅bの周方向分布を非対称に設計する一方で、同一の周方向位置において、径方向で羽根なしディフューザの幅bを不変にする。具体的には、羽根なしディフューザの入口の気流角度αが小さい周方向位置で、対応する羽根なしディフューザの幅bは小さく設計すべきである。上記周方向位置における羽根なしディフューザの入口の気流角度αと対応する位置における羽根なしディフューザの幅bとの関係、即ち、tanα=c/bは、本来の気流角度αが小さい周方向位置において羽根なしディフューザの幅bの値を減少させて、気流角度αを増大させる。

【0033】
このような周方向の非対称幅の羽根なしディフューザの構成の作用で、本来の羽根なしディフューザの入口の気流角度αの周方向における非軸対称性が弱くなる。これにより、周方向における最小の気流角度αを効果的に増大し、流量が少ない場合の羽根なしディフューザの失速を抑制でき、そのうえ遠心圧縮機の安定した作動範囲を拡大できる。

【0034】
以下、図2~図6を参照して本発明の1つの実施形態による遠心圧縮機の形成方法を説明する。該遠心圧縮機の設計は対称遠心圧縮機の原型を改良することで実現され、該対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅は周方向に対称(一定)である。

【0035】
本発明の実施形態の遠心圧縮機の形成方法は、以下のステップを含む。

【0036】
(1)図2に示すように、周方向の初期位置(0°の位置)を設定する。

【0037】
(2)図4に示すように、数値シミュレーション又は実験によって、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザ入口における気流角度αyの周方向における分布を得て、かつ、当該羽根なしディフューザの入口における気流角度αyの周方向平均値αyavgを算出する。これと同時に、当該対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザが有する幅byを得る。また、遠心圧縮機の性能テストによって当該対称遠心圧縮機の原型の性能を得る。

【0038】
ここで、羽根なしディフューザの入口の気流角度αyは、羽根なしディフューザの入口の気流速度(即ち、3次元ベクトルで表わされる3次元気流速度)を回転軸に垂直な平面に投影した投影速度V(即ち、当該3次元気流速度を当該平面に垂直投影した速度)と、該当する周方向位置における接線方向(即ち、周方向)との間の夾角として定義される(気流角度α、α1も同様である)。

【0039】
(3)対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザ入口における気流角度αyがその周方向平均値αyavgより小さい各周方向位置において、上記実施形態で説明した設計原理、即ちtanα=c/bに基づいて、羽根なしディフューザの幅byを適切に減少させて該周方向位置における第1幅b1を得る。
同様に、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザ入口における気流角度αyがその周方向平均値αyavgより大きい各周方向位置において、tanα=c/bに基づいて、羽根なしディフューザの幅byを適切に増大させて該周方向位置における第1幅b1を得る。
このような第1幅b1の設定において、第1幅b1の周方向平均値b1yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにする。

【0040】
その結果、第1遠心圧縮機の羽根なしディフューザ(以下、第1羽根なしディフューザという)の第1幅b1の周方向における分布が得られる。また、第1幅b1の周方向平均値b1yと、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byとをほぼ等しくすることによって、第1遠心圧縮機の各性能の安定を保証する。

【0041】
(4)ステップ(3)の第1幅b1(即ち、第1幅b1の周方向分布)の結果に基づいて、数値シミュレーション又は実験によって、第1遠心圧縮機の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布を得て、かつ、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向平均値α1avgを算出し、かつ、遠心圧縮機の性能テストによって第1遠心圧縮機の性能を得て、得られた第1遠心圧縮機の性能とステップ(2)で得られた対称遠心圧縮機の原型との性能を比較する。

【0042】
(5)ステップ(4)の第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1の周方向における分布に基づいて、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより小さい各周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を適切に減少させて該周方向位置における第2幅b2を得る。
同様に、第1羽根なしディフューザの入口の気流角度α1がその周方向平均値α1avgより大きい各周方向位置において、第1羽根なしディフューザの第1幅b1を適切に増大させて該周方向位置における第2幅b2を得る。
このような第2幅b2の設定において、第2幅b2の周方向平均値b2yが、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byと同じ値、または、当該幅byの近傍の値になるようにする。

【0043】
これによって、第2遠心圧縮機の羽根なしディフューザの第2幅b2の周方向における分布を得る。また、第2幅b2の周方向平均値b2yと、対称遠心圧縮機の原型の羽根なしディフューザの幅byとをほぼ等しくすることによって、第2遠心圧縮機の各性能の安定を保証する。

【0044】
(6)第1羽根なしディフューザの入口の前記気流角度α1の周方向における最小値αminが所定の臨界気流角より大きくなるディフューザの幅bの周方向分布が得られるまで、ステップ(4)とステップ(5)を繰り返して、羽根なしディフューザの幅に対して修正を繰り返すとともに、遠心圧縮機の性能テストによって対応する新たに修正された遠心圧縮機の性能を得て、かつ、ステップ(2)で得られた対称遠心圧縮機の原型の性能と比較し続け、上記の毎回の修正により、遠心圧縮機の性能に対してプラス効果が得られることを確認する。
なお、ステップ(4)とステップ(5)の繰り返しにおいて、ステップ(4)は、上述の第1幅b1の周方向分布に基づいて行われる代わりに、直前のステップ(5)で得た第2幅b2の周方向分布に基づいて行われる。

【0045】
ここで、前記所定の臨界気流角は、異なるタイプの遠心圧縮機に応じて具体的に定められる。

【0046】
(7)ステップ(6)で得られた、図5に示す羽根なしディフューザ4の幅bの周方向分布に基づいて、最終的に最適化した遠心圧縮機を得る。該遠心圧縮機の性能は最適化されている。

【0047】
なお、上記実施形態の遠心圧縮機及びその形成方法は、一つのタイプの対称遠心圧縮機の原型に基づいているが、これに限られるものではない。本技術分野の一般的な当業者であれば、異なるタイプの対称遠心圧縮機の原型に基づいて、相応する異なるタイプの羽根なしディフューザの幅bが非軸対称である遠心圧縮機が得られるものと理解できる。上記原理と同一又は類似の方法を用いて、対称遠心圧縮機の原型を改良して得られた遠心圧縮機及びその形成方法は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。

【0048】
図6は、遠心圧縮機の性能テストによって得られた本発明の実施形態による遠心圧縮機と、それに相応する従来の対称遠心圧縮機の原型との性能比較を示す。ここで、本発明の実施形態による遠心圧縮機は非軸対称の羽根なしディフューザを採用し、対称遠心圧縮機の原型は従来の対称羽根なしディフューザを採用している。図6において、三角形マークのデータは、本発明の実施形態による遠心圧縮機の性能特性を示し、正方形マークのデータは、従来の対称羽根なしディフューザを採用した遠心圧縮機の性能特性を示す。図6において、横軸は、遠心圧縮機の吸入流量を、基準流量で無次元した修正流量を示し、縦軸は、圧力比を示す。図6から分かるように、本発明の実施形態による遠心圧縮機では、より広い安定した作動範囲が得られ、少ない流量でも減速効果が得られる。

【0049】
本発明の実施形態による遠心圧縮機の他の構成及び動作は、本技術分野の一般的な当業者にとってはすべて公知のものであり、ここでは詳細な説明は省略する。本明細書の説明において、参考用語の「1つの実施形態」、「一部の実施形態」、「概念的実施形態」、「例示」、「具体的な例示」或いは「一部の例示」等の説明は、該実施形態又は例示で説明した具体的な特徴、構成、材料又は特性を示し、少なくとも本発明の1つの実施形態又は例示に含まれていることを意味する。本明細書において、上記用語は、必ずしも同じ実施形態又は例示を示すものではない。また、説明した具体的な特徴、構成、材料又は特性は、いずれかの1つ又は複数の実施形態又は例示において適切な形態で組み合わされてよい。

【0050】
以上、本発明について説明したが、本技術分野の当業者は、本発明の原理及び技術的思想を逸脱しない範囲で、上述の実施形態に対して様々な変化、変更、置換え及び変形を行ってもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲とその均等物によって定められる。
【符号の説明】
【0051】
1 渦巻ケーシング、2 羽根車、3 回転軸、4 羽根なしディフューザ、5 環状キャップ部、6 環状ディスク部、11 第1ケーシング部、12 第2ケーシング部、41 羽根なしディフューザの入口、42 羽根なしディフューザの出口
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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