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明細書 :複合軟磁性粉末の製造方法および複合軟磁性粉末コアの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2013-546162 (P2013-546162A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成25年12月26日(2013.12.26)
特許番号 特許第5607833号 (P5607833)
登録日 平成26年9月5日(2014.9.5)
発行日 平成26年10月15日(2014.10.15)
発明の名称または考案の名称 複合軟磁性粉末の製造方法および複合軟磁性粉末コアの製造方法
国際特許分類 H01F   1/33        (2006.01)
H01F   1/26        (2006.01)
B22F   3/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   1/02        (2006.01)
H01F  41/02        (2006.01)
FI H01F 1/33
H01F 1/26
B22F 3/00 B
B22F 1/00 Y
B22F 1/02 G
B22F 1/02 C
H01F 41/02 D
請求項の数または発明の数 10
全頁数 18
出願番号 特願2013-530547 (P2013-530547)
出願日 平成23年9月23日(2011.9.23)
国際出願番号 PCT/CN2011/080085
国際公開番号 WO2012/041189
国際公開日 平成24年4月5日(2012.4.5)
優先権出願番号 201010297482.3
優先日 平成22年9月29日(2010.9.29)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成25年3月27日(2013.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
発明者または考案者 【氏名】ヤン バイ
【氏名】ユ ロンハイ
【氏名】大河内 智
【氏名】岡本 大祐
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100105463、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 三男
【識別番号】100160668、【弁理士】、【氏名又は名称】美馬 保彦
審査官 【審査官】五貫 昭一
参考文献・文献 特開2009-88496(JP,A)
特開2009-84649(JP,A)
特開2009-283774(JP,A)
調査した分野 H01F 1/33
B22F 1/00
B22F 1/02
B22F 3/00
H01F 1/26
H01F 41/02
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄系磁性粉末を構成する鉄系磁性粒子の表面層を酸化することにより、Feからなる酸化鉄層を形成する工程と、
該酸化鉄層の表面に、高分子樹脂からなる絶縁層を被覆する工程と、を少なくとも含み、
前記鉄系磁性粒子は、純鉄粒子であり、
前記酸化鉄層の形成工程において、前記表面層の酸化を、酸素ガスと不活性ガスとを混合した混合ガスの雰囲気下で前記鉄系磁性粒子を加熱処理することにより行うことを特徴とするFe/Fe複合軟磁性粉末の製造方法。
【請求項2】
前記高分子樹脂に、シリコーン樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のFe/Fe複合軟磁性粉末の製造方法。
【請求項3】
前記酸化鉄層の形成工程において、前記混合ガスの酸素ガスの割合を3体積%~30体積%とし、前記加熱処理の加熱温度を100℃~500℃とし、かつ前記加熱処理の加熱時間を5分~90分とした条件で、前記表面層の酸化を行うことを特徴とする請求項に記載のFe/Fe複合軟磁性粉末の製造方法。
【請求項4】
(1)分析用試薬のアセトンおよび分析用試薬のエタノールを採用して、平均粒径が170μm、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末である鉄粉末を洗浄し、鉄粉末の洗浄後に真空乾燥箱中で乾燥するステップと、
(2)1~3Paの低真空下で雰囲気制御可能な酸化炉を400~420℃まで加熱するステップと、
(3)ステップ(1)において洗浄および乾燥した鉄粉末をステップ(2)において予め加熱した雰囲気制御可能な酸化炉中に投入するとともに、雰囲気制御可能な酸化炉中にアルゴンガスと高純度酸素ガスとの混合ガスを充填し、炉温が400~420℃に回復してから、40~50分間保温するステップと、
(4)ステップ(3)で加熱した後の鉄粉末を雰囲気制御可能な酸化炉中から取り出し、速やかに室温の真空炉中に移して、真空条件下で室温まで冷却して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を得るステップと、
(5)ステップ(4)において得られたFe/Fe複合軟磁性粉末をシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末の割合が99.2質量%~99.8質量%、シリコーン樹脂の割合が0.2質量%~0.8質量%であり、混合後の物質を粉末圧密成形工程を採用して緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して真空条件下で焼鈍処理を施して、複合軟磁性粉末コアを作製するステップと、を含む
ことを特徴とする複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、洗浄後の前記鉄粉末を乾燥する際の乾燥温度は30~60℃であり、乾燥時間は20~30分間であることを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、5~30℃/minの昇温速度で昇温することを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項7】
ステップ(3)において、前記混合ガス中で、高純度酸素ガスの割合が15体積%~25体積%であり、アルゴンガスの割合が75体積%~85体積%であることを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項8】
ステップ(4)において、前記真空条件で選択される真空度は3×10-3~5×10-3Paであることを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項9】
ステップ(5)において、環状試料は1200~1800MPaの圧力下でプレスされることを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
【請求項10】
ステップ(5)において、前記環状試料の焼鈍温度は500~700℃であり、焼鈍時間は20~40分間であることを特徴とする請求項に記載の複合軟磁性粉末コアの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は軟磁性材料およびその製造技術分野に属し、特に磁性粉末を構成する磁性粒子の粒子表面に少なくとも高分子樹脂からなる絶縁層が被覆された複合軟磁性粉末、その製造方法、前記複合軟磁性粉末により製造された複合軟磁性粉末コアおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高磁束密度および低損失という使用特性を有する複合軟磁性材料は磁性材料分野における1つの重要な研究方向である。この種の材料は現代的な工業の発展に必須の動力駆動システムにおける電磁部材、例えば高速モータの回転子などを製造可能であり、現在急速に発展している民間のハイテクハイブリッド自動車および電気自動車などの分野において潜在的な応用の展望および巨大な経済的効果を有している。磁性性能において材料は高磁束密度および低損失を同時に有することが要求されるが、従来の金属軟磁性材料および軟磁性フェライトは使用要件にははるかに及ばない。そのため、新たな複合軟磁性材料の研究および開発が人々に重視され続けている。
【0003】
複合軟磁性材料の製造工程では、通常、金属(例えばFe粉末)または合金(例えばFe-Ni、Fe-CoまたはFe-Si合金)の磁性粒子表面を有機物および無機物の絶縁層で被覆するか、または磁性粒子基体-高電気抵抗率連続繊維の複合方式を採用して複合軟磁性粉体を形成し、その後、粉末冶金圧密工程を採用して緻密なブロック体の軟磁性材料を作製する。有機物絶縁層の耐熱温度が低く、温度安定性が劣るため、有機被覆の軟磁性複合材料は高温条件に適用しない。また、有機物の被覆により、粉末の圧密密度が比較的低く、材料の磁束密度も透磁率も高くない。現在、化学法が多用されて金属磁性粒子の無機物被覆が実現されており、被覆物の多くはPまたはSを含む金属化合物であるが、PまたはSを含む被覆層の絶縁性は理想的ではなく、かつ、PまたはSを含む被覆液の環境に対する汚染が懸念される。Hoganas社が開発したSomaloyシリーズの複合軟磁性材料はリン酸塩を被覆前駆体として採用し、複雑な化学反応により、Fe粉末粒子の表面上に厚みを制御可能なFeP被覆層を1層形成していることにより、比較的大きい程度で材料の電気抵抗率を高め、材料の交流使用条件下における磁性損失を減少させることが可能である。しかし、Hoganas社が採用している被覆工程は比較的複雑であり、かつ、鉄粉末をリン化処理した後の廃液は環境に対する潜在的な汚染になる可能性を有しており、また、FeP被覆層の絶縁性は高くなく、表面も酸化しやすい。
【0004】
磁性粒子-酸化物コアシェル複合構造磁性材料の研究は、早くにはバイオ医学の応用に由来している。例えば超常磁性を有する超マイクロ磁性粒子(粒子寸法が10nm未満のFe)の表面に1層のナノクラスの酸化ケイ素シェル層を均一に被覆することにより、コアシェル複合構造の磁性粒子を形成可能である。酸化物シェル層の存在により、この種の複合粒子は集塊し易くなく、分散性が良好であり、耐腐食性が強い。薬物をこの種の複合磁性ナノ粒子の表面上に担持し、磁界のターゲット作用により病巣組織まで搬送し、定位置で放出することで、高効率および低毒性の治療効果を発揮できる。軟磁性特性を有する磁性粒子-酸化物コアシェル複合構造について言えば、磁性粒子の化学成分を調整制御することにより材料に優れた固有磁気特性を備えさせ、好適な酸化物をシェル層として選択することにより、材料の電気抵抗率を高めることができる。実際の応用要求を考慮すると、好適な酸化物被覆層を選択して磁性粒子の表面上で完全な被覆を実現することは、解決すべき鍵となる技術的課題である。好適な酸化物被覆層を選択する際の要求は、複合磁性粒子の電気抵抗率を高め、材料の磁性損失を低下させるとともに、材料が大出力の使用特性を有するように、被覆層で材料の飽和磁気誘導度および透磁率を過度に低下させないことである。
【0005】
また、従来から、電動機等に用いる磁心は、Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末を圧粉成形することにより製造される。複合軟磁性粉末コアに用いられるFe/Fe3O4複合軟磁性粉末は、加圧成形後の各磁性粒子間の電気的な絶縁性を確保するために、磁性粉末を構成する磁性粒子の粒子表面に絶縁層が被覆されている。
【0006】
このようなFe/Fe3O4複合軟磁性粉末の製造方法として、例えば、特開2007-194273号公報に示す製造方法が提案されている。具体的には、この製造方法では、まず、鉄系磁性粒子からなる鉄系磁性粉末を準備する。次に、鉄系磁性粒子の表面層を酸化させて、FeO-Fe-Feなどの酸化物層を形成する。次に、この酸化物層の表面に、酸化物層よりも絶縁性の高い絶縁物質からなる層を被覆し、酸化物層と絶縁物質層と加熱して結合強化処理した金属化合物層を形成する。さらに、金属化合物層の表面にシリコーン樹脂を被覆する。このようにして得られたFe/Fe3O4複合軟磁性粉末は、その粒子に絶縁物質からなる金属化合物層が形成されているので、これにより製造された複合軟磁性粉末コアは、より高い絶縁特性を有している。
【0007】
また、この他にも、特開2009-117471号公報には、鉄系磁性粒子の表面に、Al-Si-O系複合酸化物の絶縁層を被覆し、絶縁層の表面にシリコーン樹脂を被覆したFe/Fe3O4複合軟磁性粉末の製造方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2007-194273号公報の如く製造されたFe/Fe3O4複合軟磁性粉末は、金属化合物層が、絶縁層として作用するため、これを用いた複合軟磁性粉末コアの渦損失(渦電流損失)を低減することができるが、その金属化合物層の中には、FeO、Fe等を含むため、複合軟磁性粉末コアのヒステリシス損失が増大し、磁束密度が低下するなど、所望の複合軟磁性粉末コアの磁気特性が得られないおそれがある。
【0009】
このような点を鑑みると、シリコーン樹脂等の高分子樹脂の絶縁層のみを、鉄系磁性粒子の表面に、被覆すればよいとも考えられる。しかしながら、シリコーン樹脂等の高分子樹脂は、鉄系磁性粒子の表面に対して、必ずしも濡れ性及びなじみ性がよいものではない。したがって、濡れ性及びなじみ性を向上させるような下地処理を、粒子表面に対して予め行わなければ、成膜時に全面に高分子樹脂を被覆できない、または圧粉成形時、高分子樹脂が流動してしまい、磁性粉同士の粒界の絶縁性を充分に確保することができない場合がある。
【0010】
本発明の目的とするところは、複合軟磁性粉末コアの絶縁特性を維持することで複合軟磁性粉末コアの渦損失を低減すると共に、複合軟磁性粉末コアの磁束密度の低下等の複合軟磁性粉末コアの磁気特性の低下を抑制することができるFe/Fe3O4複合軟磁性粉末及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、絶縁層の素材である高分子樹脂には、一般的に酸素元素が含まれていることに着眼し、鉄系磁性粒子の表面にも、同様に酸素元素を含有させれば、高分子樹脂に対する鉄系磁性粒子の表面の濡れ性及びなじみ性が向上すると考えた。
【0012】
このような手法として、例えば、強磁性またはフェリ磁性の酸化物を選定して、この酸化物を、鉄系磁性粒子の表面に被覆することも考えられる。しかしながら、このような酸化物を被覆したとしても、粒子表面に対する酸化物の密着強度を確保することができなければ、高分子樹脂の濡れ性及びなじみ性が必要とされる圧粉成形時に、酸化物が粒子表面から脱離するおそれがあると考えた。また、酸化物を、粒子表面に均一に被覆することは容易ではなく、その被覆には手間がかかる。
【0013】
このような観点から、発明者らは、鉄系磁性粒子の表面に酸化物を被覆するのではなく、鉄系磁性粒子の表面層そのものを酸化させることに着想した。そして、FeO、Fe、Feの鉄酸化物の中でも、フェリ磁性であるFeに、その表層を酸化させれば、磁気特性を低下させることなく、高分子樹脂の濡れ性及びなじみ性を向上させることができるとの新たな知見を得た。
【0014】
本発明は、発明者らの上述した新たな知見に基づくものであり、本発明に係る第1実施態様のFe/Fe複合軟磁性粉末の製造方法は、鉄系磁性粉末を構成する鉄系磁性粒子の表面層を酸化することにより、Feからなる酸化鉄層を形成する工程と、該酸化鉄層の表面に、高分子樹脂からなる絶縁層を被覆する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0015】
本実施態様によれば、酸化鉄層の表面は、Feが存在するので、これまでのものに比べて、高分子樹脂に対する粒子表面の濡れ性及びなじみ性が向上する。
【0016】
また、鉄系磁性粒子の表面層を酸化して、Feからなる連続した酸化鉄層を形成するので、酸化鉄層は、鉄系磁性粒子の鉄に由来する酸化鉄層である。従って、複合軟磁性粉末コア成形時において、Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末の粒子が塑性変形した際には、この酸化鉄層は脱離することなく、追従することができる。このような結果、複合軟磁性粉末コアの圧粉成形及び焼鈍時であっても、鉄系磁性粒子間の粒界では、高分子樹脂が保持されやすい。これにより、複合軟磁性粉末コアの絶縁特性は保持され、その結果、渦損失の悪化が低減される。
【0017】
さらに、Feからなる酸化鉄層は、フェリ磁性を有した層であり、この酸化鉄層は、高分子樹脂の濡れ性及びなじみ性の向上を図るために形成したので、この層厚さを、従来の絶縁性を高めることを目的とした被膜のように厚くする必要がない。従って、得られた複合軟磁性粉末コアの磁束密度は、上述した従来のものに比べて向上する。
【0018】
なお、本実施形態にいう「粉末」とは、粒子の集合体のこという。従って「Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末」とは、粒子表面に高分子樹脂からなる絶縁層が被覆された絶縁層被覆粒子の集合体のことをいう。また、本実施形態にいう「絶縁層」とは、成形後の磁性粉末(粒子)間の電気的絶縁性を確保するための層をいう。さらに、本実施形態にいう「表層」とは、鉄系磁性粒子のうち、表面を含む外側に形成された連続した層のことをいう。
【0019】
また、鉄系磁性粒子は、鉄を主材とした磁性粒子であり、Feからなる連続した酸化鉄層を形成することができるのであれば、鉄(Fe)に、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等その他の元素が添加されていてもよい。しかしながら、本実施形態に係る製造方法において、鉄系磁性粒子に、純鉄粒子を用いてもよい。
【0020】
これまでは、純鉄粒子からなる純鉄粉を用いてFe/Fe複合軟磁性粉末を製造する場合には、純鉄粒子の表面に対して高分子樹脂の濡れ性・なじみ性が充分ではないために、これを向上させる例えば、上述の特開2009-117471号公報に記載のAl-Si-O系複合酸化物の絶縁層(Si-Alアルコキシド被膜)などの下地層(下地被膜)を被覆しなければならなかった。しかし、本実施形態によれば、Feからなる酸化鉄層を形成することにより、このような下地層の被覆は不要となる。また、純鉄粉は、鉄合金粉末に比べて、安価であり、軟らかい(成形性が高い)ため、安価に成形密度の高い複合軟磁性粉末コアを容易に製造することができる。さらに、合金粉末による製造されたものに比べて、純鉄粉により製造された複合軟磁性粉末コアの磁束密度を高めることができる。ここで、純鉄粉とは、98%以上、残部は不可避不純物からなる鉄系磁性粉末としてもよい。
【0021】
また、高分子樹脂は、電気的に絶縁性を有する樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、または、シリコーン樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、樹脂に酸素元素を含むので好適である。本実施形態によれば、複合軟磁性粉末コアの成形後に、これを焼鈍(純鉄母材の場合は600℃以上に加熱)した場合であっても、粒界に流れる渦電流をより確実に抑えることができる。
【0022】
また、酸化鉄層の形成方法は、上記所望とする酸化鉄層が形成できるのであれば、気相反応処理、または液相反応処理いずれの処理でおこなってもよい。例えば、液相反応処理としては、化成処理等を挙げることができる。しかしながら、本実施形態では、前記酸化鉄層の形成工程において、前記表面層の酸化を、酸素ガスと不活性ガスとを混合した混合ガスの雰囲気下で前記鉄系磁性粒子を加熱処理することにより行ってもよい。混合ガス中の酸素ガス濃度を調整することにより、安定的かつ簡単にFeからなる酸化鉄層を形成することができる。
【0023】
さらに、前記混合ガスの酸素ガスの割合を3体積%~30体積%とし、前記加熱処理の加熱温度を100℃~500℃とし、かつ前記加熱処理の加熱時間を5分~90分とした条件で、前記表面層の酸化を行ってもよい。
【0024】
この条件下で、表面層の酸化を行うことにより、鉄系磁性粒子の表面層に均一に連続したFeからなる酸化鉄層を形成することができる。酸素ガスの割合が3体積%未満、加熱温度が100℃未満、又は加熱時間が5分未満の場合、鉄系磁性粒子の表面層にFeからなる酸化鉄層が均一に連続して形成され難いことがある。さらには、FeOが生成されるおそれがあり、これにより、複合軟磁性粉末コアの磁気特性の低下を招く可能性もある。
【0025】
一方、酸素ガスの割合が、30体積%を超え、加熱温度が500℃を超え、加熱時間が、90分を超える場合、鉄系磁性粒子の表面層にFeばかりでなく、Feも生成されるおそれがあり、これにより、複合軟磁性粉末コアの磁気特性及び強度の低下を招く可能性もある。
【0026】
さらに、本発明の第2実施態様として、Fe/Fe複合軟磁性粉末をも開示する。第2実施態様に係るFe/Fe複合軟磁性粉末は、鉄系磁性粒子の表面層にFeからなる酸化鉄層が形成され、該酸化鉄層の表面に高分子樹脂からなる絶縁層が被覆された絶縁層被覆粒子からなることを特徴とする。
【0027】
本第2実施態様によれば、酸化鉄層の表面は、Feの酸化物であるので、高分子樹脂に対する酸化鉄層の表面の濡れ性及びなじみ性が向上する。また、鉄系磁性粒子の表面層に、Feからなる連続した酸化鉄層を形成するので、複合軟磁性粉末コア成形時において、Fe/Fe複合軟磁性粉末の粒子が塑性変形した際には、この酸化鉄層は母材の塑性変形に追従する。これにより、複合軟磁性粉末コアの成形及び焼鈍時に、鉄系磁性粒子間の粒界には、高分子樹脂が保持されやすい。また、Feからなる酸化鉄層は、フェリ磁性を有する層であるので、SiO,Fe等の層に比べて透磁率が高い。このような結果、Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末から製造された複合軟磁性粉末コアは、渦損失の低下が低減されると共に、複合軟磁性粉末コアの磁束密度は、上述した従来のものに比べて格段に向上する。
【0028】
前記鉄系磁性粒子は、純鉄粒子であってもよい。この態様によれば、安価に成形密度の高い複合軟磁性粉末コアを容易に製造することができ、さらには、複合軟磁性粉末コアの磁束密度を高めることができる。
【0029】
前記高分子樹脂は、シリコーン樹脂であってもよい。この態様によれば、シリコーン樹脂を被覆することにより、複合軟磁性粉末コアの粒界に流れる渦電流をより抑制することができる。
【0030】
本第2実施態様に係る複合軟磁性粉末コアは、得られたFe/Fe複合軟磁性粉末を加圧成形することにより複合軟磁性粉末コア成形体を成形し、複合軟磁性粉末コア成形体を熱鈍することにより、製造される。Fe/Fe複合軟磁性粉末の絶縁層被覆粒子は、高分子樹脂に対する鉄系磁性粒子の表面の濡れ性及びなじみ性が向上しているので、加圧成形及び焼鈍時には、鉄系磁性粒子間の粒界に高分子樹脂が保持されやすくなり、渦損失が低く、磁気特性の高い複合軟磁性粉末コアを得ることができる。
【0031】
本発明のもう一つの目的は、酸化制御法を採用して鉄粉末粒子の表面上にインサイチュで1層のFeシェル層を生成して、構造が均一なFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を作製し、そしてFe/Fe複合軟磁性粉末と適量のシリコーン樹脂とを混合し、粉末圧密成形工程を採用して、高密度、高透磁率、高磁束密度、低損失および高破断強さを有するFe/Fe複合軟磁性粉末コアを作製することを特徴とする、高磁束密度および低損失という使用特性を有する複合軟磁性材料およびその製造方法を提供することである。
【0032】
本発明の技術案は以下の通り実現される。
本発明の第3実施態様は、複合軟磁性粉末コアである。この複合軟磁性粉末コアの組成は、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂を粉末圧密成形工程によりプレスしてなる、表面がシリコーン樹脂で被覆されたFe/Fe複合軟磁性粉末であり、そのうち、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の割合が99.2質量%~99.8質量%であり、シリコーン樹脂の割合が0.2質量%~0.8質量%である。酸化制御法を採用して、平均粒径が170μmで、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末粒子の表面上にインサイチュで1層のFeシェル層を生成して上記のFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を構成する。
【0033】
この複合軟磁性粉末コアは、高磁束密度および低損失という使用特性を有する。
平均粒径が170μmの鉄粉末粒子の表面上にインサイチュで1層のFeシェル層を生成して作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末と、シリコーン樹脂とをプレスしてなる複合軟磁性粉末コアであり、かつ、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末が99.5質量%、シリコーン樹脂が0.5質量%である場合に、複合軟磁性粉末コアの効果は最も良好である。
【0034】
本発明の第4実施態様は以下のステップを含む複合軟磁性粉末コアの製造方法である。
(1)分析用試薬のアセトンおよび分析用試薬のエタノールを採用して、平均粒径が170μm、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末である鉄粉末を洗浄し、洗浄後の鉄粉末を真空乾燥箱中で乾燥するステップと、
(2)1~3Paの低真空下で雰囲気制御可能な酸化炉を400~420℃まで加熱するステップと、
(3)ステップ(1)において洗浄および乾燥した鉄粉末をステップ(2)において予め加熱した雰囲気制御可能な酸化炉中に投入するとともに、雰囲気制御可能な酸化炉中にアルゴンガスと高純度酸素ガスとの混合ガスを充填し、炉温が400~420℃に回復してから、40~50分間保温するステップと、
(4)ステップ(3)で加熱した後の鉄粉末を雰囲気制御可能な加熱炉中から取り出し、速やかに室温の真空炉中に移して、真空条件下で室温まで冷却して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を得るステップと、
(5)ステップ(4)において得られたFe/Fe複合軟磁性粉末をシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末の割合が99.2質量%~99.8質量%、シリコーン樹脂の割合が0.2質量%~0.8質量%であり、混合後の物質を粉末圧密成形工程により緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して真空条件下で焼鈍処理を施して、複合軟磁性粉末コアを作製するステップ。
【0035】
製造された複合軟磁性粉末コアは高密度、高透磁率、高磁束密度、低損失および高破断強さという特性を有しており、よって、低損失および大出力という使用特性を有する複合軟磁性材料が得られる。
【0036】
ステップ(1)において、前記乾燥温度を30~60℃、時間を20~30分間としてもよい。
ステップ(2)において、5~30℃/minの昇温速度で昇温してもよい。
ステップ(3)において、前記混合ガス中で、高純度酸素ガスの割合が15体積%~25体積%であり、アルゴンガスの割合が75体積%~85体積%であり、前記アルゴンガスとして高純度アルゴンガスまたは一般用アルゴンガスを選択できる。
ステップ(4)において、前記真空条件で選択される真空度は、最も好ましくは3×10-3~5×10-3Paである。
ステップ(5)において、環状試料は1200~1800MPaの圧力のもとでプレスしてもよい。
ステップ(5)において、前記環状試料の焼鈍温度を500~700℃、焼鈍時間を20~40分間としてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本実施態様では、酸化制御工程を採用して高純度鉄粉末粒子の表面上にインサイチュで1層のFe薄層を生成して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を作製し、適量のシリコーン樹脂と混合、圧密した後、高性能のFe/Fe複合軟磁性粉末コアを作製できる。このような新型の複合磁性粉末コアは高磁束密度、低損失および高破断強さを同時に有し、大出力の使用状況に適用され、現在急速に発展している航空宇宙、原子力工業および民間のハイテク分野、例えば大型航空機やハイブリッド自動車などの分野において潜在的な応用の展望および巨大な経済的効果を有している。本発明は、原料供給源が豊富であり、工程プロセスが簡単であり、環境に優しく、かつ、工業化生産に適しているなどの特徴を有している。
【0038】
また、複合軟磁性粉末コアの絶縁特性を維持することで複合軟磁性粉末コアの渦損失を低減すると共に、複合軟磁性粉末コアの磁束密度の低下等の複合軟磁性粉末コアの磁気特性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の本実施形態に係るFe/Fe3O4複合軟磁性粉末の絶縁層被覆粒子の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(a)は、原材料となる鉄系磁性粒子(純鉄粒子)の断面図であり、(b)は、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の断面図であり、(c)は、絶縁層被覆粒子の断面図。
【図2】図1(c)に示す絶縁層被覆粒子の表層近傍を説明するための概念図。
【図3】実施例の磁性粉末(Fe粉末)を粉末X線回折法(XRD)により分析した分析結果を示した図。
【図4】実施例及び比較例1~5に係る複合軟磁性粉末コアの渦損失と磁束密度の関係を示した図。
【図5】実施例1における原料鉄粉末および鉄粉末の表面にインサイチュでFeを生成した後のFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末のX線回折(XRD)スペクトル線であり、そのうち、スペクトル線(a)は原料鉄粉末のX線回折図を示し、スペクトル線(b)はFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末のX線回折図を示す。
【図6】は実施例1における原料鉄粉末および鉄粉末の表面にインサイチュでFeを生成した後のFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の最大外部印加磁界が15kOeである際に測定された磁気ヒステリシスループであり、そのうち、ループ(a)は原料鉄粉末の磁気ヒステリシスループを示し、ループ(b)はFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の磁気ヒステリシスループを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、図面を参照して、本発明に係るFe/Fe3O4複合軟磁性粉末の一実施形態に基づいて説明する。

【0041】
図1は、本発明の本実施形態に係るFe/Fe3O4複合軟磁性粉末の絶縁層被覆粒子の製造方法を説明するための模式的断面図であり、(a)は、原材料となる鉄系磁性粒子(純鉄粒子)の断面図であり、(b)は、Fe層形成粒子の断面図であり、(c)は、絶縁層被覆粒子の断面図を示している。まず、Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末の製造方法を、以下に、説明する。なお、本実施形態に係るFe/Fe3O4複合軟磁性粉末は、絶縁層被覆粒子1(図1(c)参照)の集合体である。

【0042】
<Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末の製造方法>
[鉄系磁性粉末の準備]
まず、図1(a)に示すように、鉄系磁性粉末を構成する鉄系磁性粒子11Aとして、ガスアトマイズにより製造された純鉄からなる粒子(純鉄粒子)を準備する。ここでは、鉄系磁性粒子(純鉄粒子)11Aは、平均粒径が450μm以下の軟磁性金属粒子であることが好ましい。

【0043】
[酸化鉄層の形成工程]
次に、鉄系磁性粒子(純鉄粒子)11Aからなる磁性粉末(純鉄粉)を、熱処理炉内に投入し、アルゴンガス及び酸素ガスの混合比を調整した混合ガスを熱処理炉内に導入し、所定温度で、所定時間加熱して、図1(a)の純鉄粒子11Aの表面層を酸化することによりに、Feからなる酸化鉄層を形成する。

【0044】
具体的には、混合ガスの酸素ガスの割合を3体積%~30体積%の範囲の混合ガスを熱処理炉に導入し、炉内における純鉄粉の加熱温度を100℃~500℃の範囲、かつ前記加熱処理の加熱時間を5分~90分の範囲で、純鉄粉を構成する純鉄粒子11Aの表面層の酸化を行う。

【0045】
このような条件で処理を行うことにより、図1(b)に示すように、純鉄母材11aの表面に均一に連続したFeからなる酸化鉄層11bを形成したFe/Fe3O4コアシェル複合軟磁性粉末11Bが得られる。すなわち、Fe/Fe3O4コアシェル複合軟磁性粉末11Bは、純鉄母材11aの表面に、Feからなる酸化鉄層11bが被覆されることになる。

【0046】
また、上述した条件では、酸化鉄層11bの層厚さは、5~1000nmの範囲にすることができる。この範囲とすることで、シリコーン樹脂の濡れ性及びなじみ性を確保すると共に、複合軟磁性粉末コアの磁気特性を確保することができる。

【0047】
酸素ガスの割合が3体積%未満、加熱温度が100℃未満、又は加熱時間が5分未満の場合、鉄系磁性粒子11Aの表面層にFeからなる酸化鉄層11bが均一に連続して形成され難いことがある。さらには、FeOが生成されるおそれがあり、これにより、複合軟磁性粉末コアの磁気特性の低下を招く可能性もある。

【0048】
一方、酸素ガスの割合が、30体積%を超え、加熱温度が500℃を超え、加熱時間が、90分を超える場合、鉄系磁性粒子の表面層にFeばかりでなく、Feも生成されるおそれがあり、これにより、複合軟磁性粉末コアの磁気特性及び強度の低下を招く可能性もある。

【0049】
[絶縁層の被覆工程]
図1(b)に示すFe/Fe3O4コアシェル複合軟磁性粉末11Bの表面にシリコーン樹脂の絶縁層12を被覆する。まず、アルコール等の有機溶媒に、シリコーン樹脂を溶解したシリコーン樹脂含有溶液を作製する。シリコーン樹脂としては、メチル系ストレートシリコーン樹脂などを挙げることができ、Si,Oの含有量が多いシリコーン樹脂を選定することが好ましく、シリコーン樹脂の側鎖にメチル基やエチル基などを含んでいてもよい。

【0050】
具体的には、シリコーン樹脂含有溶液に、Fe/Fe3O4コアシェル複合軟磁性粉末11Bからなる粉末を含浸し、その後有機溶媒を100℃以下で加熱しながら除去し、さらに100℃~150℃の温度範囲で加熱する。これにより、酸化鉄層11bの表面に、シリコーン樹脂からなる絶縁層12を被覆することができる。

【0051】
このようにして得られた、Fe/Fe複合軟磁性粉末を構成する絶縁層被覆粒子1は、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末11Bの表面に、シリコーン樹脂からなる絶縁層12が被覆された粒子となる。さらに、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末11Bは、鉄系磁性粒子11A(図1(a)参照)の表面層に、Feからなる酸化鉄層11bが形成され、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末11Bの純鉄母材11aは、純鉄からなる。

【0052】
また、絶縁層被覆粒子1には、図2に示すように、鉄系磁性粒子11Aの表面層を酸化したFeからなる酸化鉄層11bが形成され、酸化鉄層11bの表面には、-Si-O-Si-の骨格を有するシリコーン樹脂が配置される。この双方材料に含まれるO(酸素)により、シリコーン樹脂に対する酸化鉄層11bの濡れ性及びなじみ性が向上するものと考えられる。

【0053】
<複合軟磁性粉末コアの製造方法>
このようにして製造された絶縁層被覆粒子1の集合体であるFe/Fe3O4複合軟磁性粉末を用いて、以下に示すように複合軟磁性粉末コアを製造する。

【0054】
[複合軟磁性粉末コアの成形工程]
まず、成形型の内面に、高級脂肪酸系潤滑剤を塗布し、前述したFe/Fe3O4複合軟磁性粉末を成形型内に充填し、加圧成形して、複合軟磁性粉末コア成形体を得る。ここでは、金型潤滑温間成形法をすべく金型を加熱する。この場合、加圧力は、500~2000MPaで行うことが好ましい。潤滑剤を用いることにより、複合軟磁性粉末コアと金型とのかじり等の発生を防止し、より高圧で成形が可能となり、脱型も容易に行なうことができる。

【0055】
複合軟磁性粉末コア成形時において、Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末の鉄系磁性粒子が塑性変形した際には、鉄系磁性粒子の鉄に由来する酸化鉄層であるので、酸化鉄層は剥離することなく追従することができる。さらに、上述したように、酸化鉄層の表面は、Feの酸化物であるので、これまでのものに比べて、シリコーン樹脂に対する鉄系磁性粒子の表面の濡れ性及びなじみ性が向上している。このような結果、複合軟磁性粉末コアの成形時に、鉄系磁性粒子間の粒界には、シリコーン樹脂の層がほとんど途切れることなく存在することになる。

【0056】
[複合軟磁性粉末コアの焼鈍工程]
このようにして得られた、複合軟磁性粉末コア成形体を550℃~1000℃の温度範囲内の温度条件で加熱することにより複合軟磁性粉末コア成形体を焼鈍し、複合軟磁性粉末コアを得る。これにより、塑性変形した鉄の残留歪みを除去し、複合軟磁性粉末コアのヒステリシス損失を低減する。

【0057】
また、シリコーン樹脂に対する鉄系磁性粒子の表面の濡れ性及びなじみ性が向上しているので、焼鈍時の加熱によりシリコーン樹脂が軟化しても、シリコーン樹脂は、鉄系磁性粒子間において保持されやすい。この結果、複合軟磁性粉末コアの絶縁特性が向上し、渦損失を低減することができる。
【実施例】
【0058】
本発明を以下の実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
<Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末の作製>
[酸化鉄層の形成工程]
鉄系磁性粉末として、粒径が150μm~212μmの純鉄粒子(純度99%)からなるガスアトマイズ粉末(純鉄粉)を100g準備した。次に、この純鉄粉を、熱処理炉内に投入し、すぐに炉内を真空引きした。この状態で、アルゴンガス85体積%、酸素ガス15体積%で混合したガスを大気圧になるまで、熱処理炉内に導入した。その後、熱処理炉内を300℃まで加熱し、20分間保持し、純鉄粒子の表面層を酸化させた。その後、粉末を炉から取り出し、粉末が余分に酸化しないよう、アルゴンガスを流した容器中で粉末が室温になるまで冷却した。
【実施例】
【0060】
このようにして、得られた酸化鉄層が形成された磁性粒子からなる粉末(Fe/Fe3O4コアシェル複合軟磁性粉末)を粉末X線回折法(XRD)により分析した。この分析結果を図3に示す。なお、図3には、参考例として純鉄粉の分析結果も合わせて示した。図3に示すように、分析結果として、酸化鉄としては、Feのみが確認され、酸化鉄層は、Feからなる酸化鉄層であることが確認できた。
【実施例】
【0061】
[絶縁層の被覆工程]
Fe層形成粉末に対して、0.2質量%となるようにシリコーン樹脂を混合した。具体的には、0.2gのメチル系ストレートシリコーン樹脂を50ccのイソプロパノール(IPA)中に溶解し、得られたコーティング液中に、先に作製したFe層形成粉末100gを投入した。その後、80℃で加熱しながらIPA溶媒を除去後,130℃にて20分間加熱した。これにより、酸化鉄層の表面にシリコーン樹脂の絶縁層が被覆された。
【実施例】
【0062】
<リング試験片(複合軟磁性粉末コア)の作製>
Fe/Fe3O4複合軟磁性粉末を金型に投入し、金型温度130℃、成形圧力1600MPaの金型潤滑温間成形法で、外径39mm、内径30mm、厚さ5mmのリング形状の複合軟磁性粉末コアを作製した。そして、成形後、窒素雰囲気下で、600℃、30分の熱処理(焼鈍)を行なった。
【実施例】
【0063】
(比較例1~3)
実施例と同じようにして、複合軟磁性粉末コア(リング試験片)を作製した。実施例と相違する点は、比較例1~3は、酸化鉄層の形成工程を行わずに、絶縁層の被覆工程のみを行った点である。すなわち、比較例1~3では、純鉄粉に直接的にシリコーン樹脂を被覆した。さらに、比較例1~3の順に、純鉄粉に対してのシリコーン樹脂の混合量を、0.6質量%,0.4質量%,0.2質量%とした。
【実施例】
【0064】
(比較例4)
実施例と同じようにして、複合軟磁性粉末コア(リング試験片)を作製した。実施例と相違する点は、酸化鉄層の形成処理を行う代わりに、以下に示すSiO皮膜の成膜処理を行った点である。
【実施例】
【0065】
具体的には、100gの純鉄粉と1000mlのエタノールと7.5gのオレイン酸をビーカーに秤量し、超音波にて分散させながら1時間撹拌した。次に、攪拌後、125mlのアンモニア水(25wt%)と1500mlのエタノールを加え、さらにこれを撹拌し、50mlのTEOSを3時間かけて少量ずつ添加し、撹拌を継続した。3時間後、鉄粉を回収した。回収した鉄粉を純水およびエタノールにて数回洗浄し、80℃、30分間乾燥し、SiO皮膜を成膜した。
【実施例】
【0066】
(比較例5)
実施例と同じようにして、複合軟磁性粉末コア(リング試験片)を作製した。実施例と相違する点は、酸化鉄層の形成処理を行う代わりに、以下に示すアルコキシド皮膜の成膜処理を行った点である。
【実施例】
【0067】
具体的には、水分を除去した窒素雰囲気グローブボックス中で、500mlフラスコに純鉄粉100gと脱水テトラヒドロフラン(THF)100mlと、Siアルコキシドとしてのアミノプロピルトリエトキシシランを0.6g、Alアルコキシドとしてのアルミニウムトリブトキシドを0.6g投入した。フラスコをロータリーエバポレータにセットして、15分間の還流後、減圧蒸留によりTHFを除去し,100Torr,80℃で乾燥した。その後、粉末を取り出し、窒素雰囲気下で190℃、2h乾燥した。こうして、純鉄粉の表面に、Al-Si-O系複合酸化物からなる厚さ30~100nmのアルコキシド皮膜を形成した。
【実施例】
【0068】
<リング試験片の評価>
リング試験片にコイルを巻き、直流磁気磁束計で磁束密度を評価し、交流BHアナライザーで渦損失を評価した。この結果を、図4に示す。なお、図4に示す磁束密度及び渦損失は、比較例1における磁束密度及び渦損失の平均値を100とした点である。また、図4に示す、質量%の値は、実施例及び比較例1~5の純鉄粉に対するシリコーン樹脂の含有割合を示している。
【実施例】
【0069】
(結果)
図4に示すように、実施例の複合軟磁性粉末コアは、比較例1~5のものに比べて、渦損失は小さく、磁束密度は高いものとなった。また、比較例1~3の結果から、シリコーン樹脂の含有量が増加するに従って、渦損失は低減されたが、これに反して、磁束密度も低下した。比較例4及び5の複合軟磁性粉末コアの渦損失は、実施例と同程度であったが、磁束密度は、実施例よりも低くなった。
【実施例】
【0070】
(考察)
実施例の渦損失が、比較例1~3に比べて小さかったのは、Feからなる酸化鉄層を形成したことにより、シリコーン樹脂の鉄系磁性粒子の表面の濡れ性及びなじみ性が向上したことによると考えられる。
【実施例】
【0071】
比較例1の渦損失は、実施例のものに比べて、シリコーン樹脂の含有率が高いにも拘らず、大きくなった。これは、複合軟磁性粉末コアの作製時の加圧成形及び焼鈍を行うことにより、鉄粒子間の粒界に存在すべきシリコーン樹脂が流動し、鉄粒子同士が直接接触していることや、そもそもシリコーン樹脂をコーティングする際に全面にシリコーン樹脂が被覆されていなかったことが考えられる。
【実施例】
【0072】
また、実施例と比較例1~3の結果からわかるように、実施例の如くFeからなる酸化鉄層を設ければ、複合軟磁性粉末コアの絶縁を確保するためのシリコーン樹脂の含有量を低減することがきると考えられる。これにより、複合軟磁性粉末コアの磁束密度を向上させることができると考えられる。
【実施例】
【0073】
実施例と比較例4及び5の渦損失は略同程度であった。このことから、比較例4及び5の如き、下地作製の煩雑なプロセスを行わなくても、実施例の如く磁性粒子の表面層を酸化することにより、Feからなる酸化鉄層を形成することさえ行えば、シリコーン樹脂による絶縁性がより確実に確保することができると考えられる。
【実施例】
【0074】
また、実施例の磁束密度は、比較例4及び5の磁束密度に比べて高かった。この理由は、実施例は、Feからなる酸化鉄層は、フェリ磁性を有する層であることが起因していることや、純鉄粒子の最表面をFeに変化(酸化)させて、Feからなる層としたことから、純鉄母材の表面に形成される下地層(Feからなる酸化鉄層)の膜厚そのものが薄く抑えられたことが考えられる。
【実施例】
【0075】
以下、添付図に基づき本発明についてさらに説明する。
(実施例2)
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアであって、その組成は表面がシリコーン樹脂で被覆されたFe/Fe複合軟磁性粉末であり、粉末圧密工程を採用して緻密な磁気粉末コアを作製し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末の割合が99.5質量%、シリコーン樹脂の割合が0.5質量%である。Fe/Fe複合軟磁性粉末については、酸化制御法を採用して、平均粒径が170μmで、Fe元素が99%を超える高純度鉄粉末の表面上にインサイチュでFeを生成した。
【実施例】
【0076】
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアの製造方法であって、
(1)25gの平均粒径が170μmで、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末を取り、分析用試薬のアセトンおよび分析用試薬のエタノールを用いて相前後してそれぞれ2回洗浄し、その後、40℃の真空乾燥箱中で30分間乾燥するステップと、
(2)2Paの低真空および10℃/minの昇温速度下で雰囲気制御可能な酸化炉を400℃まで加熱するステップと、
(3)ステップ(1)において洗浄および乾燥した鉄粉末をステップ(2)において予め加熱した雰囲気制御可能な酸化炉中に投入するとともに、雰囲気制御可能な酸化炉中に高純度酸素ガスと高純度アルゴンガスとの混合ガスを充填し、そのうち、高純度酸素ガスの割合が20体積%、高純度アルゴンガスの割合が80体積%であり、炉温が400℃に回復してから、50分間保温するステップと、
(4)ステップ(3)で加熱した後の鉄粉末を雰囲気制御可能な加熱炉中から取り出し、速やかに室温の真空炉中に移して、4×10-3Paの真空条件下で室温まで冷却して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を得るステップと、
(5)ステップ(4)において得られたFe/Fe複合軟磁性粉末をシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末とシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.5質量%と0.5質量%であり、混合後の粉末を1600MPa下で緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して600℃および真空条件下で30分間の焼鈍処理を施し、最終的に高密度、高透磁率、低損失および高破断強さを有するFe/Fe複合軟磁性粉末コア、すなわち高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性材料を作製するステップと、を含む。
【実施例】
【0077】
図5は実施例2における原料鉄粉末および鉄粉末の表面にインサイチュでFeを生成した後のFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末のX線回折(XRD)スペクトル線であり、鉄粉末に酸化制御を施した後に表面上にインサイチュでFeを生成可能であることが読み取られる。鉄粉末の表面にFeが生成された後、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の色は濃い灰色から濃い青色に突然変化する。Fe/Feコアシェル複合粉末生成後の色の突然変化を利用することにより、酸化工程の精度をより良好に把握することができ、材料の実際の生産プロセスに対して重要な指導的意味を有し、材料に対する更なる開発および応用の推進に有利である。
【実施例】
【0078】
振動試料型磁力計(VSM)を採用して本実施例において作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の最大外部印加磁界が15kOeである場合の磁気ヒステリシスループを測定した。図6に示されている通り、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の固有保磁力は原料鉄粉末と比べてもほぼ同一であり、飽和磁化強度Msは207.6emu/gにも達し、純粋鉄粉末の相応の値(217.1emu/g)より少し低下していることが読み取られる。これにより、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末は比較的良好な固有磁気特性を有していることが示されている。
【実施例】
【0079】
本実施例で作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を適量のシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.5質量%および0.5質量%であり、混合後の粉末を1600MPaの圧力のもとで緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して600℃および真空条件下で30分間の焼鈍処理を施した。本実施例における環状試料の密度は7.5g/cmであった。交流B-H軟磁性磁気ヒステリシスループ測定計を採用して環状試料の交流磁気特性を測定した。本実施例において作製されたFe/Fe複合軟磁性粉末コアは低磁気損失、高磁束密度、高透磁率および高破断強さを有し、モータ回転子などの大出力および低損失での使用状況に適している。
【実施例】
【0080】
(実施例3)
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアであって、その組成は表面がシリコーン樹脂で被覆されたFe/Fe複合軟磁性粉末であり、粉末圧密工程を採用して緻密な磁気粉末コアを作製し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末の割合が99.8質量%、シリコーン樹脂の割合が0.2質量%である。Fe/Fe複合軟磁性粉末については、酸化制御法を採用して平均粒径が170μmで、Fe元素の質量分率が99%を超える高純度鉄粉末の表面上にインサイチュでFeを生成した。
【実施例】
【0081】
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアの製造方法であって、
(1)25gの平均粒径が170μmで、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末を取り、分析用試薬のアセトンおよび分析用試薬のエタノールを用いて相前後してそれぞれ3回洗浄し、その後、60℃の真空乾燥箱中で20分間乾燥するステップと、
(2)1Paの低真空および5℃/minの昇温速度下で雰囲気制御可能な酸化炉を420℃まで加熱するステップと、
(3)ステップ(1)において洗浄および乾燥した鉄粉末をステップ(2)において予め加熱した雰囲気制御可能な酸化炉中に投入するとともに、雰囲気制御可能な酸化炉中に高純度酸素ガスと高純度アルゴンガスとの混合ガスを充填し、そのうち、高純度酸素ガスの割合が15体積%、高純度アルゴンガスの割合が85体積%であり、炉温が420℃に回復してから、40分間保温するステップと、
(4)ステップ(3)で加熱した後の鉄粉末を雰囲気制御可能な加熱炉中から取り出し、速やかに室温の真空炉中に移して、5×10-3Paの真空条件下で室温まで冷却して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を得るステップと、
(5)ステップ(4)において得られたFe/Fe複合軟磁性粉末をシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.8質量%および0.2質量%であり、混合後の粉末を1200MPaの圧力のもとで緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して500℃および真空条件下で40分間の焼鈍処理を施し、最終的に高密度、高透磁率、低損失および高破断強さを有するFe/Fe複合軟磁性粉末コア、すなわち高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性材料を作製するステップと、を含む。
【実施例】
【0082】
実施例2における試料に比べ、酸化制御温度が上昇し、鉄粉末表面においてインサイチュで生成されるFe被覆層が厚くなっているため、Fe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の色が薄い青色に変化している。振動試料型磁力計(VSM)を採用して本実施例において作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の最大外部印加磁界が15kOeである場合の磁気ヒステリシスループを測定した。その結果によれば、本実施例におけるFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の飽和磁化強度Msは実施例2に比べて少し低下しているが、依然として211.6emu/gにも達し、純粋鉄粉末の相応の値(217.1emu/g)より少し低下している。これにより、本実施例の試料は比較的良好な固有磁気特性を有していることが示されている。
【実施例】
【0083】
本実施例で作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を適量のシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.8質量%および0.2質量%であり、混合後の粉末を1200MPaの圧力のもとで緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して500℃および真空条件下で40分間の焼鈍処理を施した。本実施例における環状試料の密度は7.6g/cmであり、実施例2に比べて、シリコーン樹脂の質量比が幾分低下しているため、本実施例における環状試料の密度が幾分上昇している。交流B-H軟磁性磁気ヒステリシスループ測定計を採用して環状試料の交流磁気特性を測定した。本実施例において作製されたFe/Fe複合軟磁性粉末コアは低磁気損失、高磁束密度、高透磁率および高破断強さを有し、モータ回転子などの大出力および低損失での使用状況に適している。
【実施例】
【0084】
(実施例4)
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアであって、その組成は表面がシリコーン樹脂で被覆されたFe/Fe複合軟磁性粉末であり、粉末圧密工程を採用して密実な磁気粉末コアを作製し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末の割合が99.2質量%、シリコーン樹脂の割合が0.8質量%である。Fe/Fe複合軟磁性粉末については、酸化制御法を採用して、平均粒径が170μmで、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末の表面上にインサイチュでFeを生成した。
【実施例】
【0085】
高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性粉末コアの製造方法であって、
(1)25gの平均粒径が170μmで、Fe元素が99質量%を超える高純度鉄粉末を取り、分析用試薬のアセトンおよび分析用試薬のエタノールを用いて相前後してそれぞれ2回洗浄し、その後、40℃の真空乾燥箱中で20分間乾燥するステップと、
(2)3Paの低真空および15℃/minの昇温速度下で雰囲気制御可能な酸化炉を420℃まで加熱するステップと、
(3)ステップ(1)において洗浄および乾燥した鉄粉末をステップ(2)において予め加熱した雰囲気制御可能な酸化炉中に投入するとともに、雰囲気制御可能な酸化炉中に高純度酸素ガスと一般用アルゴンガスとの混合ガスを充填し、そのうち、高純度酸素ガスの割合が25体積%、一般用アルゴンガスの割合が75体積%であり、炉温が420℃に回復してから、50分間保温するステップと、
(4)ステップ(3)で加熱した後の鉄粉末を雰囲気制御可能な加熱炉中から取り出し、速やかに室温の真空炉中に移して、3×10-3Paの真空条件下で室温まで冷却して、Fe/Fe複合軟磁性粉末を得るステップと、
(5)ステップ(4)において得られたFe/Fe複合軟磁性粉末をシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.2質量%および0.8質量%であり、混合後の粉末を1800MPaの圧力のもとで緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して700℃および真空条件下で20分間の焼鈍処理を施し、最終的に高密度、高透磁率、低損失および高破断強さのFe/Fe複合磁性粉末コア、すなわち高磁束密度及び低損失を有する複合軟磁性材料を作製するステップと、を含む。
【実施例】
【0086】
本実施例においては高純度アルゴンガスを一般用アルゴンガスの替りに酸化制御雰囲気として採用しているが、実施例2および実施例3と類似したFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を作製することも可能である。本実施例におけるFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の飽和磁化強度Msは200.6emu/gにも達し、純粋鉄粉末の相応の値(217.1emu/g)より少し低下している。これにより、本実施例の試料は比較的良好な固有磁気特性を有していることが示されている。実施例3に比べて、本実施例においては、鉄粉末の酸化時間がさらに増加し、鉄粉末表面においてインサイチュで生成されるFe被覆層が厚くなっているため、本実施例におけるFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末の飽和磁化強度Ms値が幾分低下している。本実施例で作製されたFe/Feコアシェル複合軟磁性粉末を適量のシリコーン樹脂と混合し、そのうち、Fe/Fe複合軟磁性粉末およびシリコーン樹脂の割合がそれぞれ99.2質量%および0.8質量%であり、混合後の粉末を1800MPaの圧力のもとで緻密な環状試料となるようにプレスし、環状試料に対して700℃および真空条件下で20分間の焼鈍処理を施した。本実施例における環状試料の密度は7.4g/cmであり、シリコーン樹脂の質量比が増加し、鉄粉末の表面においてインサイチュで生成されるFe被覆層が厚くなっているため、試料密度が低下している。交流B-H軟磁性磁気ヒステリシスループ測定計を採用して環状試料の交流磁気特性を測定した。本実施例において作製されたFe/Fe複合軟磁性粉末コアは低磁気損失、高磁束密度、高透磁率および高破断強さを有し、モータ回転子などの大出力および低損失での使用状況に適している。
【実施例】
【0087】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5