TOP > 中国の大学の特許 > 大連理工大学の特許一覧 > フォストリシン誘導体及びその医薬用途 > 明細書

明細書 :フォストリシン誘導体及びその医薬用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2011-516431 (P2011-516431A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成23年5月26日(2011.5.26)
特許番号 特許第5595374号 (P5595374)
登録日 平成26年8月15日(2014.8.15)
発行日 平成26年9月24日(2014.9.24)
発明の名称または考案の名称 フォストリシン誘導体及びその医薬用途
国際特許分類 C07D 309/32        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61K  31/366       (2006.01)
C07F   9/655       (2006.01)
FI C07D 309/32 CSP
A61P 35/00
A61P 9/10
A61K 31/366
C07F 9/655
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2011-502214 (P2011-502214)
出願日 平成21年4月3日(2009.4.3)
国際出願番号 PCT/CN2009/000366
国際公開番号 WO2009/121245
国際公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
優先権出願番号 200810091830.4
優先日 平成20年4月3日(2008.4.3)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成23年3月1日(2011.3.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】510262758
【氏名又は名称】ベイジン バイオスター テクノロジーズ,リミテッド
【氏名又は名称】Beijing Biostar Technologies,Ltd.
【識別番号】510262769
【氏名又は名称】大連理工大学
【氏名又は名称】Dalian University of Technology
発明者または考案者 【氏名】唐莉
【氏名】邱榮国
個別代理人の代理人 【識別番号】100147131、【弁理士】、【氏名又は名称】今里 崇之
【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】小川 由美
参考文献・文献 特開昭58-189190(JP,A)
特開昭60-006679(JP,A)
国際公開第98/014606(WO,A1)
米国特許第04578383(US,A)
米国特許第05036008(US,A)
Journal of the American Chemical Society,2003年,Vol.125, No.51,p.15694-15695
Journal of Organic Chemistry,1985年,50(4),462-466
Organic Letters,2006年,8(23),5307-5310
Journal of American Chemical Society,2005年,127(48),17111-17117
Journal of Antibiotics,1992年,45(8),1239-1249
調査した分野 C07D,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式(I)を含む化合物。
【化1】
JP0005595374B2_000018t.gif

[式中、
が、
【化2】
JP0005595374B2_000019t.gif


から選ばれる;
,R及びRは、それぞれ独立して、H,OH,OR,NHR及び炭素数が1-4のアルキル基から選ばれる;
とRは、それぞれH、Na、K、又は未置換の炭素数が1-4のアルキル基、又はヒドロキシ基、炭素数が1-4のアシルオキシ基、炭素数が1-4のアルキルアシル基、炭素数が1-4のアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、炭素数が1-4のアルキルアシルアミノ基、炭素数が1-4のアシルアミノ基により置換された炭素数が1-4のアルキル基である;
Rnは、O、NRj又はSである;
Rjは、H、OH、アルキル基又はハロゲン;
はメチル基又はCFである。]

【請求項2】
一般式(II):
【化3】
JP0005595374B2_000020t.gif


[式中、R、R、R、R及びRに対する定義は、請求項1と同一である。]
で示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。

【請求項3】
下記の一般式(III):
【化4】
JP0005595374B2_000021t.gif


[式中、
,R及びRは、それぞれ独立して、H,OH,OR,NHR及び炭素数が1-4のアルキル基から選ばれる;
とR は、それぞれH、Na、K、又は未置換の炭素数が1-4のアルキル基、又はヒドロキシ基、炭素数が1-4のアシルオキシ基、炭素数が1-4のアルキルアシル基、炭素数が1-4のアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、炭素数が1-4のアルキルアシルアミノ基、炭素数が1-4のアシルアミノ基により置換された炭素数が1-4のアルキル基である;
Rjは、H、OH、アルキル基又はハロゲンであり;
Rj’に対する定義はRjと同一である。]で示される化合物。

【請求項4】
【化5】
JP0005595374B2_000022t.gif


より選択されるいずれか1つの化合物

【請求項5】
下記化合物:
【化6】
JP0005595374B2_000023t.gif


であることを特徴とする、請求項3に記載の化合物。

【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物の、抗腫瘍、細胞の過成長抑制、細胞の成長中止、又は心筋梗塞の予防及び細胞損傷の予防のために用いられる医薬組成物の調製における使用

【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の化合物の1種又は複数と、薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤を含む、医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規フォストリシン誘導体に関し、特に、新規なチオリン酸、リン酸類似体又はリン酸ミミックのフォストリシン誘導体(FST誘導体、FST derivatives)に関し、また、これら化合物の製造方法、当該化合物を含む医薬組成物及び当該化合物の医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フォストリシン(Fostriecin又はFST)は、最初、土壌微生物であるStreptomyces pulveraceusから単離された新規リン酸エステルのポリケチド化合物(1983)であり、且つ2001年に、Bogerにより実験室での化学的全合成に成功していると共に、天然のFST産生菌株からもその他のFST類似構造化合物であるPD113270とPD113271が検出され、その構造式は、以下のように示される(Lewy et al., 2002を参照)。
【化1】
JP0005595374B2_000002t.gif

【0003】
FSTは、体外において白血病、肺癌、乳癌及び卵巣癌などの腫瘍細胞に対し活性を有している(白血病細胞L1210、IC50=0.46 mM)ばかりでなく、体内においても良好な抗腫瘍効果を示していることが知られている。通常、FSTの抗腫瘍活性は、タンパク質フォスファターゼPP2A(IC50=1.5 nM)とPP4(IC50=3 nM)に対する選択的抑制に由来すると考えられる。化学的に合成されたFST類似体と天然産生されたFST類似体が、類似する活性を持っていることが既に報じられており、FST及びその類似体に対する詳しい情報は、Lewy et al., 2002, "Fostriecin: Chemistry and Biology" Current Medicinal Chemistry 9: 2005-2032を参照することができる。尚、本発明は当該文献を参照として引用する。FSTの第I期臨床試験は、製品の異なるバッチ間の純度を制御することが難しく、且つ化合物の体内・体外における安定性が弱いため、停止された(例えば、FSTが脱リン酸化により無活性の脱リン酸FSTになる)。したがって、純度が高く、特に安定性が高いFST誘導体の製造が求められている。
【0004】
FSTは、トポイソメラーゼII(topoisomeraseII)の弱い阻害剤(IC50=50mM)であるが、PP2AとPP4に対する選択性が最も大きい阻害剤である。オカダ酸(okadaic acid)とカリクリンA(calyculin A)のようなその他のタンパク質フォスファターゼ阻害剤は、通常、腫瘍促進活性を有しているが、それは抗腫瘍活性を有していることではない。そのため、人々はFSTの抗腫瘍活性と酵素阻害活性との関係に非常に興味を持っている。また、注意に値するところは、FSTは染色質の緻密化(compaction)を促進することができ、且つ腫瘍細胞の放射線療法に対する感度を向上させることである。したがって、腫瘍又は他の疾患に有効な治療方法を得るために、薬物の単独使用において、又は組合せ使用においても、新規FST類似体の開発が必要である。
【0005】
安定性が更に高いFST誘導体の製造ができれば、このような化合物は臨床において更に有効であり、したがって、更に有効ながん治療手段を得ることができ、新規作用機序を持つ新規抗腫瘍薬物として期待される。
【0006】
発明の開示
本発明の目的は、新規で安定性が更に高いFST化合物を提供し、且つ化学的修飾及び/又は遺伝子操作を採用する方法のような、該化合物の製造方法を提供することにある。更に、本発明は、前記化合物を含む医薬組成物及び前記FST化合物の抗腫瘍、細胞の過増殖抑制と細胞の増殖阻害のために用いられる医薬組成物の調製における使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】FSTがアルカリホスファターゼの酵素分解の下で、次第に脱リン酸FSTを生成することを示す図である。
【図2】本発明のFST誘導体(チオリン酸FST(A)とメチルリン酸FST(B))のアルカリホスファターゼの加水分解に対する耐性を示す図である。

【0008】
本発明のFST誘導体は、下記の一般式(I)を有する。
【化2】
JP0005595374B2_000003t.gif

[式中、
R1は、
【化3】
JP0005595374B2_000004t.gif

であって、R1は、リン酸基ではない;
R2、R3、R4は、それぞれ独立して、H、OH、OR5、NHR6及び低級アルキル基から選ばれる;
WはO、O-CRjRj又はNRjである;
GはP、S又はCである;
Xは、SR6、OR5又はNHRjであり、Gが硫黄(S)である場合、X=NRj又はX=Oである;
Yは、OR5、NHRj、非置換の低級アルキル基若しくはヒドロキシ基、低級アシルオキシ基、低級アルキルアシル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、低級アルキルアシルアミノ基又は低級アシルアミノ基により置換された低級アルキル基、又はCF3である;
R5とR6は、それぞれH、Na、K、又は非置換の低級アルキル基若しくはヒドロキシ基、低級アシルオキシ基、低級アルキルアシル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン、低級アルキルアシルアミノ基、低級アシルアミノ基により置換された低級アルキル基である;
GがCである場合、Xは存在しない;
Rjは、H、OH、アルキル基又はハロゲンであり、その中、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素(F)である;
Rnは、O、NRj又はSである。]
前記「低級」とは、炭素数が1-4であることを指す。
【0009】
また、一般式Iの化合物は、FST又はその誘導体、例えば前記PD113270を用い、生物及び/又は化学的修飾により脱リン酸を行い、更にリン酸誘導体の修飾を行なうことで得られる。
【0010】
本発明の化合物は、一般式(II)で示されるFST誘導体を含み、当該FST誘導体はチオリン酸FSTである。
【化4】
JP0005595374B2_000005t.gif

【0011】
まず、脱リン酸FSTは、生物化学的酵素分解(例えば、実施例1)により、又は本発明に記載された遺伝子組み換え工程の菌株の発酵(例えば、実施例2)により得られる。当該遺伝子組み換え工程の菌株は、修飾されたFST生物合成酵素遺伝子を含み、該修飾された遺伝子は、DNA組み換え技術を採用して、FST産生菌におけるFST生物合成酵素遺伝子の中でホモセリンキナーゼ (homoserine kinases )をコードするDNA配列(fosK遺伝子)を、変異、欠損又は置換により失活させることにより得られる。該ホスホリラーゼ (キナーゼ)FosKはFST 生物合成においてFSTのリン酸化に寄与する。
【0012】
脱ヒドロキシ基FSTは、本発明に記載の遺伝子組み換え工程の菌株の発酵により得られる。当該菌株は、修飾されたFST生物合成酵素遺伝子を含み、該修飾された遺伝子は、DNA組換え技術を採用して、FST産生菌におけるFST生物合成酵素遺伝子の中で3つのシトクロムP450ヒドロキシラーゼをコードするDNA配列を、欠損又は置換のような変異によりそれぞれ失活させることにより得られる。FST生物合成酵素にはP450遺伝子によりコードされた3つのヒドロキシラーゼが含まれ、これらは、それぞれFSTの C8位とC18位及びPD 113271のC4 位におけるヒドロキシ化に寄与する。
【0013】
本発明により提供される遺伝子工程菌株は、組み換え技術により得られる。当該技術は、同源組換えの方法により、所要の修飾された遺伝子又は機能性基の隣接する領域を自殺ベクター中にクローニングし、自殺ベクター中の遺伝子と宿主細胞核に含まれるゲノム中のホメオティック遺伝子(homeotic gene)によりツーハイブリッド(two-hybrid)の組み換えを行い、FST生物合成に関与する一つ若しくは複数の遺伝子又は機能性基を失活又は置換させて、組み換えされた遺伝子工程産生菌株が得られる。これらの失活作用は、遺伝子のランダムな突然変異若しくは点突然変異、欠損又は置換により完成される。このようにして得られた組み換え生物合成遺伝子は、天然の生物合成遺伝子とは異なり、組み換え宿主細胞中にてFST誘導体を産生して、主な産物とすることができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態における一般式Iの化合物は、化学反応経路1に記載の通用方法により、脱リン酸FST又はその誘導体から得られる。更に好ましい化合物Aも、実施例3に記載の方法又は化学反応経路1に記載の通用方法により、脱リン酸FSTから得ることができる。
化学反応経路1:
【化5】
JP0005595374B2_000006t.gif

Alkaline phosphatase:アルカリホスファターゼ;
2, 6-lutidine:2, 6-ジメチルピリジン;
imidazole:イミダゾール。
【0015】
1.FSTから、例えば生物化学的酵素分解を経て、脱リン酸FSTを得る。
【0016】
2.保護基は、FST化合物中に存在することができ、不必要な副反応を防止するように、関係する官能基を保護すべきであり、前記副反応としては、アシル化、エーテル化、酸化、加溶媒分解及び類似の反応が挙げられる。保護基の特徴は、それら自身が加溶煤分解、還元、光分解又は酵素活性により除去されやすく、そして最終の産物中に存在しないことである。例えば、まずTBDPS保護基でFST中の11-位と18-位の主な遊離ヒドロキシ基を保護し、更にTES又はTBS保護基により、選択的にFST中の8-位の遊離ヒドロキシ基を保護して、保護された脱リン酸FST中間体(P-S)を得る。
【0017】
3.保護された脱リン酸FST中間体(P-S)を、ビス(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(bis-(2-cyanoethyle)-N,N- diisopropylphosphoramidite)とテトラゾールと反応させ、その後、再加硫して、保護されたチオリン酸FST中間体を得る。
【0018】
4.保護されたチオリン酸FST中間体は、メタノール中の水酸化カリウムと反応させることにより、チオリン酸上の保護されたビス(2-シアノエチル)基を除去し、更に当該分野の公知方法を用いてヒドロキシ保護基の脱保護を行なうことができ、例えば、HF-MeCN中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行うことにより、チオリン酸FST誘導体Aを得る。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態における一般式Iの化合物は、化学反応経路2に記載の通用方法により、脱リン酸FST又はその誘導体から得ることができ、例えば、更に好ましい化合物B、C及びDを得ることができる。当該化合物Bは、実施例4に記載の方法を参照して、脱リン酸FSTから得られる。
化学反応経路2:
【化6】
JP0005595374B2_000007t.gif

【0020】
1.トルエン中で、リン酸ジエチル、パラホルムアルデヒド及びトリエチルアミンの混合物を87℃まで加熱し、2時間反応させて、Ps-3化合物を得る。
【0021】
2.THF中で、2Mのtert-ブトキシリチウム溶液を保護された脱リン酸FST中間体(P-S)に添加して、Ps-3と反応させ、P-S2を得る。
【0022】
3.ブロモトリメチルシランを用いて、アセトニトリル中のP-S2のメトキシリン酸上の二つのエチル基を除去する。
【0023】
4.更に、当該分野の公知方法を用いて、ヒドロキシ保護基の脱保護を行なうことができ、例えば、HF-MeCN中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行うことで、メトキシリン酸FST誘導体Bを得る。
【0024】
5.P-S2化合物は、THF中のナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(sodium bis(trimethylsilyl)amide)とフッ化剤、例えばSELECTFLUOR(Air Products & Chemicals、Inc.製)又は固形のN-フルオロベンゼンスルホンイミド(NSFI)と反応させて、α-フルオロメトキシリン酸FST誘導体の中間体を得る。
【0025】
6.α-フルオロメトキシリン酸FST誘導体の中間体を、引き続きナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド及びフッ化剤によりフッ化して、ジフルオロメトキシリン酸FST誘導体の中間体を得ることができる。
【0026】
7.α-フルオロメトキシリン酸FST誘導体とジフルオロメトキシリン酸FST誘導体の中間体は、上記ステップ3と4を経て、それぞれ脱保護された化合物CとDを得ることができる。
【0027】
P-S2も、化学反応経路2Bに記載の通用方法により、P-Sから製造することができる。
【0028】
塩酸の存在下で、パラホルムアルデヒドを用いて保護された脱リン酸FST中間体を処理することにより、クロロメタン誘導体を得、トリエチルホスフィンと反応することによってもP-S2を得ることができる。P-S2化合物をDMF中のブロモトリメチルシランと反応させた後、NH4OHで処理することにより、保護されたB-2中間体を得ることができ、脱保護を行なって化合物B-2を得る。
【化7】
JP0005595374B2_000008t.gif

【0029】
本発明のいくつかの実施形態における一般式Iの化合物は、化学反応経路3に記載の通用のアシル化方法により製造され、例えば、脱リン酸FST誘導体から、更に好ましい一般式E又はFの化合物を得る。
化学反応経路3:
【化8】
JP0005595374B2_000009t.gif

【0030】
P-Sとクロリドを、ピリジン、塩化メチレンの存在下で反応させることにより、保護されたアシル化FST誘導体を得、更にアセトニトリル中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行なうことで化合物Eを得る。化合物E中の更に好ましい化合物Fも、P-Sのアミド化により製造することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、一般式Iの化合物中の更に好ましい一般式Gの化合物は、化学反応経路4に記載の通用方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから得ることができる。
化学反応経路4:
【化9】
JP0005595374B2_000010t.gif

【0032】
1.保護形式のFST誘導体P-Sを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを用いることにより、アリルパラジウムπ錯体を形成し、次いで、アジ化ナトリウムで処理する。更にトリメチルホスフィンで還元して、アミノ-FST誘導体P-S3を得る。
【0033】
2.標準アミド結合カップリング剤、例えば、ジフェニルホスホリルアジド(diphenylphosphoryl azid)/NaHCO3、又はEDC/HOBT(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-hydroxybenzotriazole))、又はブロモトリスピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)を用いることにより、P-S3を酸と対応するアミド化して、保護された中間体を得る。
【0034】
3.アセトニトリル中のHF-ピリジンで処理し脱保護を行なうことにより、化合物Gを得る。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態における一般式Iの化合物中、更に好ましい一般式Hの化合物は、化学反応経路5に記載の通用方法により、アミノ-FST誘導体P-S3から得ることができる。(前記一般式E、F、G及びHにおけるRnに対する定義は、式Iにおける定義と同一である。RjはH、OH、アルキル基、ハロゲン又はNHRmであり、Rmは、H又は置換若しくは非置換のC1-4低級アルキル基である。)
化学反応経路5:
【0036】
【化10】
JP0005595374B2_000011t.gif

P-S3と硫酸クロロメチル(又はクロロリン酸)誘導体を、Et3N(トリエチルアミン)、塩化メチレンの下で反応させ、保護された硫酸メチルアミノFST誘導体H (その中、R7は好ましくはメチル基である)又はリン酸クロロアミノFST誘導体を得、更にアセトニトリル中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行なうことにより化合物を得る。
【0037】
化合物G又はHも、化学反応経路6に記載の通用方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから得ることができる。
化学反応経路6:
【化11】
JP0005595374B2_000012t.gif

【0038】
保護形式のFST誘導体P-Sを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを用いることにより、アリルパラジウムπ錯体を形成させ、次いで、アミン(例えば、アミド又は硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム)で処理して、保護された中間体を得、更にアセトニトリル中のHF-ピリジンで処理し、脱保護を行なうことで、化合物を得る。
【0039】
その他の実施形態において、本発明は、好ましくは一般式(I)に下記構造を有する化合物を提供し、本分野の公知方法及び本明細書に記載の方法により製造することができる。
【化12】
JP0005595374B2_000013t.gif

【0040】
当業者であれば、公知の通常の解析方法により、本発明の化合物をスクリーニングすることができ、例えば、化合物の細胞毒性、薬物の体内・体外の安定性を測定することができる。更に本発明は、一般式(I)を有するFST誘導体の、抗腫瘍、細胞の過増殖抑制と細胞の増殖阻害、又は心筋梗塞の予防及び細胞損傷の予防のために用いられる医薬組成物の調製における使用を提供する。
【0041】
本発明の化合物は、遊離形態、又はその誘導体(例えば、その塩又はそのエステル)、その結合体又はそのプロドラッグである。化合物は、例えば固体、半固体又は液体などの任意の形態であってもよい。本発明の前記化合物は、薬学的に許容される担体、又は希釈剤と共に、経口投与、静脈投与又は皮下投与のための製剤に調製されることができ、標準方法により、所望の投与方式に適用の固体又は液体担体、希釈剤及び添加剤を用いて、医薬組成物を調製することができる。経口投与用の製剤として、本発明の化合物は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末などの剤形で投与してもよく、本発明の化合物の用量範囲は、約0.05~200mg/kg/日であり、1回量又は3~10分の1量形式で投与してもよい。
【実施例】
【0042】
[実施例1]:アルカリホスファターゼの加水分解による脱リン酸FSTの調製
【化13】
JP0005595374B2_000014t.gif

反応条件:FSTを、pH 8.3、濃度が75 mMであるトリスバッファー(Tris Buffer)と5 mMのMgCl2溶液に溶解させ(FSTの濃度は20 mMである)、フォストリシン1mgあたり1~1.5単位のアルカリホスファターゼを添加し、37℃で2-5時間の酵素分解を行なった。
【0043】
得られた脱リン酸FST(C19H26O6)のMS(ESI+):351 [M+H]+
図1は、FSTがアルカリホスファターゼの酵素分解の下で、次第に脱リン酸FST(dephosphofostriecin)を生成することを示している。
【0044】
[実施例2]:遺伝子組み換えによる脱リン酸FSTの産生
本実施例の方法では、FST産生可能な宿主菌を用いて遺伝子操作を行った。本発明のFST生物合成に用いられる遺伝子とDNA配列は、天然の資源、例えばFSTの天然産生菌株から調製することができる。
【0045】
FST 生物合成酵素遺伝子中のホモセリンキナーゼ (a homoserine kinases )をコードする DNA配列(即ち、FosK遺伝子)を、ネオマイシン耐性遺伝子を挿入することで失活させ、これによりFST産生菌から脱リン酸FSTを産生させるが、FSTは産生しない。更に、天然の類似のFST発酵プロセスで工程中の菌株の発酵を行わせ、発酵液から本発明の化合物である脱リン酸FSTを単離抽出した。
【0046】
[実施例3]:チオリン酸FSTの調製
【化14】
JP0005595374B2_000015t.gif

【0047】
1.脱リン酸FSTは、実施例1におけるFSTの生物化学的酵素分解により得ることができる。
【0048】
2.前記ステップ1の産品に対しTBDPS保護(TBDPSCl、イミダゾール)を行い、且つBogerらに記載の方法(J. Am. Chem. Soc., 2001)を用い、TESで選択的保護(TBSOTf、2,6-lutidine)を行い、25℃で10分処理した後、混合物を蒸発・乾燥させ、SiO2クロマトグラフィーで精製して、保護された脱リン酸FST中間体(P-S)を得た。保護された脱リン酸FST中間体(12mg)を塩化メチレン(3ml)に溶解し、MeCN中のビス(2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホラミダイト(0.1ml)とテトラゾール(1M、0.7ml)溶液を添加し、反応混合物を室温の下で一晩攪拌した後、更に75mgの硫黄を添加して、室温の下で引き続き4時間攪拌して、混合物を蒸発・乾燥させ、SiO2クロマトグラフィーで精製して、保護されたチオリン酸FST中間体を得た。
【0049】
3.保護されたチオリン酸FST中間体(4.9mg)を2ml、1NのKOHのメタノール溶液に溶解し、室温下で2時間攪拌し、更に本分野の公知方法によりヒドロキシ保護基の脱保護を行なった。例えば、HF-MeCN中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行なって、チオリン酸FST誘導体Aを得た。逆相クロマトグラフィーのC18カラムを用いて精製した。
チオリン酸FST(C19H27O8PS)のMS(ESI+):447 [M+H]+
【0050】
[実施例4]:メチルリン酸FSTの調製
【化15】
JP0005595374B2_000016t.gif

【0051】
1. 150mlのCH2Cl2中の0.22mol P-S化合物にパラホルムアルデヒド(0.23mol)を添加し、5℃の下で気体状塩酸の気泡を上記溶液に2時間通過させ、MgSO4で乾燥し、ろ過後ろ液を蒸発・乾燥して、クロロFST中間体を得た。
【0052】
2.ステップ1で得られた産物(0.1mol)とトリエチルホスフィンとを共に110℃まで加熱して、3時間維持し、真空乾燥してから、SiO2クロマトグラフィーで精製して、産品P-S2を得た。
【0053】
3.保護された脱リン酸FST中間体を処理して、メチルクロロ誘導体を得、リン酸トリエチルと反応させることによりP-S2を得ることもできる。
【0054】
4.ブロモトリメチルシラン(1.56g)を1gの P-S2と0.9gのアセトニトリルの混合物に添加し、温度が50℃を超えないように維持し、更に0.3g アセトニトリルで洗浄し、混合物を70℃程度の温度で3時間還流し、真空乾燥してから、SiO2クロマトグラフィーで精製して産品を得た。
【0055】
5.更に、本分野の公知方法によりヒドロキシ保護基の脱保護を行なうことができ、例えばHF-MeCN中のHF-ピリジンで処理して脱保護を行なうことにより、メトキシリン酸FST誘導体Bを得ることができる。
メチルリン酸FST(C20H29O9P)のMS(ESI+):445[M+H]+
【0056】
[実施例5]:チオリン酸FST及びメチルリン酸FSTのアルカリホスファターゼの加水分解に対する耐性
実施例1に記載の反応条件に従い、チオリン酸FST(A)及びメチルリン酸FST(B)に対しアルカリホスファターゼの加水分解を行った。図2に示す通り、チオリン酸FST及びメチルリン酸FSTは、アルカリホスファターゼの作用下で、比較的に安定しており、脱リン酸FSTは生成していなかった。
【0057】
[実施例6]:その他のFST誘導体の調製
化学反応経路2に記載の通用方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから化合物Dを調製することができる。分子式はC20H27O9PF2であり、MS(ESI+):481[M+H]+;化学反応経路3に記載の通用方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから化合物F(即ち、一般式Eにおいて、Rmがアリルアミンである化合物、又は一般式Fにおいて、Rjがプロペニルである化合物)を調製することができる。化合物Fの分子式はC23H31O7Nであり、MS(ESI+):434[M+H]+;化学反応経路4又は6に記載の方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから化合物G(即ち、一般式GにおいてRjがNH2である化合物)を調製することができる。化合物Gの分子式は C20H28O6N2であり、MS(ESI+):393[M+H]+;化学反応経路5又は6に記載の方法により、脱リン酸FST誘導体P-Sから化合物H(即ち、一般式H2においてRnがO(酸素)、R7がCH3である化合物)を調製することができる。化合物Hの分子式はC20H29O7SNであり、MS(ESI+):4428[M+H]+
【0058】
[実施例7]:チオリン酸FST及びメチルリン酸FSTの体外抗腫瘍活性
Promega社のCelltiter 96細胞繁殖定量キット(改良されたMTT法)を採用して、本発明の選択性化合物であるチオリン酸FST(A)及びメチルリン酸FST(B)の異なる腫瘍細胞系HL-60、CCRD-CEM及びNCI-H460に対する抗腫瘍活性を測定した。約5~7.5×103細胞/ウェルで96ウェルプレートに添加した。体積としては、50μl/ウェルになる。24時間の培養を行い、更に濃度が0.001nM ~1000nMの薬物50μlを各ウェルに添加して、72時間の培養を行なった。その後、15μlのMTT染色液を各ウェルに添加して、温度を引き続き4時間維持した後、この間に形成された沈殿物を100μlの溶解液/停止液で溶解させた。1時間後、ウェル内の物質をオシレータにて均一に混合し、その後、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices社)で各ウェルのOD570nmの吸収値を測定した。得られたデータをKaleidaGraphプログラムで解析し且つIC50値(50%の細胞成長を抑制した化合物の濃度)を算出した。表1は、化合物AとB及びFSTのこれら腫瘍細胞に対する成長抑制IC50である。その中で、IC50値の単位はMである。
【0059】
【表1】
JP0005595374B2_000017t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1