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明細書 :多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料、およびそれからなる永久磁石、ならびにそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3741597号 (P3741597)
公開番号 特開2001-093713 (P2001-093713A)
登録日 平成17年11月18日(2005.11.18)
発行日 平成18年2月1日(2006.2.1)
公開日 平成13年4月6日(2001.4.6)
発明の名称または考案の名称 多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料、およびそれからなる永久磁石、ならびにそれらの製造方法
国際特許分類 H01F   1/053       (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   3/00        (2006.01)
B22F   9/04        (2006.01)
B22F   9/08        (2006.01)
C22C  33/02        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
H01F   1/08        (2006.01)
H01F   1/09        (2006.01)
H01F   1/06        (2006.01)
FI H01F 1/04 A
B22F 1/00 Y
B22F 3/00 C
B22F 9/04 C
B22F 9/04 E
B22F 9/08 M
C22C 33/02 K
C22C 38/00 303D
H01F 1/08 A
H01F 1/09 A
H01F 1/04 H
H01F 1/06 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 22
出願番号 特願2000-226783 (P2000-226783)
出願日 平成12年7月27日(2000.7.27)
優先権出願番号 99119076.9
00102967.3
優先日 平成11年9月14日(1999.9.14)
平成12年3月10日(2000.3.10)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成15年9月8日(2003.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】500212103
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称】PEKING UNIVERSITY
発明者または考案者 【氏名】楊応昌
【氏名】程本培
【氏名】葛森林
個別代理人の代理人 【識別番号】100078662、【弁理士】、【氏名又は名称】津国 肇
【識別番号】100113653、【弁理士】、【氏名又は名称】束田 幸四郎
審査官 【審査官】鈴木 匡明
参考文献・文献 特開平06-235051(JP,A)
特開平04-209504(JP,A)
特開平05-101918(JP,A)
特開昭63-226007(JP,A)
特開平11-260612(JP,A)
特開平03-016102(JP,A)
調査した分野 H01F 1/00~1/117
B22F 1/00~9/08
C22C 33/02
C22C 38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(R1-αR′α)(Mo1-ββ)Fe100-x-y-zで表わされるThMn12型正方晶の結晶構造を有する永久磁石材料であって、
RはPr、Nd、Pr-Nd富集物およびPrとNdの混合物からなる群から選択される軽希土類元素、R′はGd、Tb、Dy、Ho、Er、Yおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される重希土類元素、MはB、Ti、V、Cr、Mn、W、Si、Al、Ga、Nb、Taおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、IはH、C、N、Fおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、α、βはそれぞれモル分率で、αは0.01~0.14、βは0.01~0.40、x、y、zはそれぞれ原子%で、xは4~15原子%、yは3~20原子%、zは5~20原子%であることを特徴とする多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料。
【請求項2】
前記xが6~10原子%である請求項1記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料。
【請求項3】
前記yが6~12原子%である請求項1記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料。
【請求項4】
下記工程を備えたことを特徴とする一般式(R1-αR′α)(Mo1-ββ)Fe100-x-y-zで表わされるThMn12型正方晶の結晶構造を有する多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料の製造方法。
(式中RはPr、Nd、Pr-Nd富集物およびPrとNdの混合物からなる群から選択される軽希土類元素、R′はGd、Tb、Dy、Ho、Er、Yおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される重希土類元素、MはB、Ti、V、Cr、Mn、W、Si、Al、Ga、Nb、Taおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、IはH、N、Fおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、α、βはそれぞれモル分率で、αは0.01~0.14、βは0.01~0.40、x、y、zはそれぞれ原子%で、xは4~15原子%、yは3~20原子%、zは5~20原子%である。)
(1)RとR′とFeとMoとMを用いて組成(R1-αR′α)(Mo1-ββ)Fe100-x-yの母合金を溶製し凝固する工程と、
(2)前記凝固した合金を、温度200℃~400℃水素ガス雰囲気中で、2~4時間水素化処理を行い微粉末を形成する工程と、
(3)前記形成した微粉末を、前記Iの雰囲気中で、気相-固相反応を行う工程と、
(4)前記気相-固相反応を終えた微粉末を、ジェット粉砕ミルまたはボール・ミルを用いて粉砕する工程。
【請求項5】
前記(3)の工程が、温度300~650℃、圧力1~10気圧の窒素ガス雰囲気中で1~20時間熱処理して気相-固相反応を行う工程である請求項記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料の製造方法。
【請求項6】
前記(3)の工程が、温度200~500℃、圧力1~4気圧の弗素ガス雰囲気中で1~2時間熱処理をして気相-固相反応を行う工程である請求項記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料の製造方法。
【請求項7】
前記水素ガス雰囲気中で水素化処理を行った後、さらに減圧下で温度500~600℃で脱水素を行う請求項4~6のいずれか1項記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料の製造方法。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項記載の方法で製造した多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料磁性粉を錯化反応させ磁性粉の表面に保護被膜層を形成し、ついで前記保護被覆層を形成した磁性粉に熱硬化性結合剤を添加して磁性粉と熱硬化性結合剤とを含有する混合物を形成し、そして前記混合物を圧縮成形、射出成形、押出成形または圧延成形を用いてボンディング磁石を製造する多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石の製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性結合剤が、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ナイロン等のポリオレフィン系高分子化合物、ポリエーテル、ウレタン、ポリカーボネート等のポリエステル系高分子化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の芳香族ポリエステル系樹脂、天然ゴム、ブタジエン・ゴム、ネオプレン・ゴム、シリコンゴム等の天然ゴムまたは合成ゴムである請求項記載の多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、TMn12型の結晶構造を有する多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料に関し、特に、硬磁性材料、たとえば異方性永久磁石材料および等方性永久磁石材料、およびそれからなる永久磁石、ならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工業的な希土類-鉄系永久磁石材料として、Nd2Fe14Bが実用化されている。Nd2Fe14B系永久磁石は、磁性粉を焼結し、その後急速焼入れ技術またはHDDR技術を用いて製造されている。しかしながら、Nd2Fe14B系永久磁石材料は、一般に等方性磁性材料であることから、その最大磁気エネルギー積は60~110kJ/m3(AT/m)(8~13MGOe)にとどまり、より大きな磁気エネルギー積を有する異方性永久磁石材料の開発が進められている。また、Nd2Fe14B系永久磁石材料は、キューリー温度が比較的低く、また耐酸化性が十分ではないという問題がある。さらに、温度130Kで自発磁化して磁化容易軸がc軸でなくなるため、低温で磁性を失うという問題を有する。
【0003】
一方、特開平3-16102号公報あるいは中国(公開)特許89101552号明細書には、希土類-鉄-窒素系のR2Fe17x系永久磁石材料が開示されている。この発明では、希土類元素RがSm(サマリウム)の場合のみ磁化容易軸が現れる。したがって、高性能の磁性材料を製造するためには、希土類元素Smを必須とするが、Smは、Nd(ネオジム)やPr(プラセオジム)に比較して高価である。
【0004】
また、1990年に、楊応昌等はR(Fe1-αMα)12系金属間化合物において、窒素原子の格子浸入効果を発見した。ここでRは希土類元素、MはTi、V、Mo、Nb、Ga、W、Si、Al、Mn等の元素であり、モル分率αは0.08~0.27である。この発明は、前記組成の母合金を溶製し凝固し、次に、温度350~600℃の窒素ガス雰囲気中で熱処理を行い、R(Fe1-αMα)12x型の格子浸入型窒化物、たとえば組成NdTiFe11xの窒化物を形成するものである。
【0005】
また、中性子回折により、窒素原子がTMn12型結晶構造の2b格子位置に浸入することが確認されている。格子間に浸入する窒素原子は、Fe-Fe交換相互作用を高め、それによりキューリー温度を200℃上昇させ、Feの3d軌道電子の磁気モーメントを10~20%増加させる。窒素原子が結晶格子に浸入すると、Pr、Nd、Tb、Dy、Hoの1:12型窒化物には、磁化容易軸が現われ、非常に強い結晶磁気異方性をもたらす。R(Fe1-αα)12系化合物のうち、特に、N(Fe1-αα)12は、先に述べたNdFe14Bに匹敵する固有磁気特性を有する。この発明以降、Smを使用することなく、Ndを使用する永久磁石材料の開発が促進され、実用的な価値を有する新しい希土類永久磁石材料が開発されてきた。
【0006】
これらの発明は、たとえば、1990年出願の中国登録特許(CNZL)90109166.9号明細書や、Yingchang Yang等が、1990年初めに発表した論文、「新しい硬磁性材料-Nd(Fe,Ti)12x(New Potential Hard Magnetic Materials-Nd (Fe,Ti)12Nx)」:固体物理ニュース(Solid State Communications)、第78巻(1991年)第317~320頁、「YTiFe11x系窒化物の中性子回折研究(Neutron Diffraction Study of the Nitrides YTiFe11Nx)」:固体物理ニュース(Solid State Communications)、第78巻(1991年)、第313~316頁、および「YTiFe11x化合物の結晶磁気異方性(Magnetocrystalline Anisotropy of YTiFe11Nx Compounds)」:応用物理書簡(Applied Physics Letters)、第58巻(1991年)、第2042~2044頁等に開示されている。
【0007】
これ以降、これに類似する希土類系永久磁石材料の発明が開示されている。たとえば、1992年には、RxFey-wCowzLαの組成の永久磁石材料が米国特許5,403,407号明細書に開示されている。ここで、Rは希土類元素、MはCr、Mo、Ti、V等の元素、Lは炭素または窒素であり、xは5~20原子%、yは65~85原子%、zは6~20原子%、wは約20原子%、αは4~15原子%である。前記合金は、10~20原子%のCoを必須の構成成分とする。母合金を溶製し凝固し、インゴットを粗粉砕した後、高エネルギー・ボール・ミルを用いて機械的合金化(メカニカル・アロイング)法により非晶質(アモルファス)相を形成し、結晶化温度を制御して、保磁力160~640kA/m(2~8kOe)を有する磁性粉を得る。しかし、この磁性粉は等方性であり、残留磁束密度Brは0.3~0.4T(3~4kG)、最大磁気エネルギー積(BH)maxは8~16kJ/m3(1~2MGOe)にとどまり、実用的にはいずれも十分な値とはいえなく、課題が残されている。
【0008】
永久磁石材料の磁気特性を判断するのに用いられるパラメータは、残留磁束密度Br、保磁力HcJまたはHcB、および最大磁気エネルギー積(BH)maxであることが知られている。ここで、保磁力HcJとは、磁気分極Jと磁界の強さHの磁化曲線であるJ-H曲線において、J=0となる点をいい、保磁力HcBとは、磁束密度Bと磁界の強さHの磁化曲線であB-H曲線において、B=0となる点をいう。このうち特に、最大磁気エネルギー積は、永久磁石の特性を表わすことができるので、永久磁石の優劣を比較する際に常に使用される。前述した先行技術に開示されたいくつかの発明には、材料固有の磁気特性に関わる発明、たとえば、飽和磁化Ms、キューリー温度Tc、および磁気モーメントの異方性Haに関連する発明が多く、残留磁束密度Brおよび最大磁気エネルギー積(BH)maxなどの永久磁石材料に必要とされる特性に着目した発明は多くない。永久磁石材料の性能を表わすパラメータである残留磁束密度Br、保磁力HcJとHcB、および最大磁気エネルギー積(BH)maxは、いずれも結晶構造に敏感な特性であり、理論的にはこれらの特性は磁区構造およびその反磁気過程に、技術的には材料の微細構造およびその製造方法に依存する。この分野の研究開発は、専門的に進めなければならない一つの課題であるものの、非常に複雑な問題である。楊応昌とその共同発明者らが1:12型合金における格子浸入原子の効果を発見した以降のこの10年間に、この問題が解決されなかったので、これに類する永久磁石材料は、応用可能なレベルまで達していないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、TMn12型の結晶構造を有する多元系希土類-鉄格子 浸入型永久磁石材料、およびそれからなる永久磁石を提供することであり、この永久磁石材料は、高い残留磁束密度、高い保磁力、および高い最大磁気エネルギー積を有する。また、本発明の他の目的は、かかる磁気特性を有する永久磁石材料および永久磁石の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を実現するために、本発明は1:12型窒化物の磁区構造およびその反磁界メカニズムを研究した上で、さらに1:12型窒化物の母合金の成分を変化させて、多元系合金の範囲を拡大した。かかる合金は、均質性が良く、かつ粉砕しやすいという特徴を有し、高性能の永久磁石を製造するための基礎材料となる材料である。また、本発明が提供する永久磁石材料とその製造方法は、合金の活性を高め、低温で気相-固相反応を充分に行わせることが可能である。それにより、希土類元素の含有量を下げ、Coなどの高価な金属の添加を必要とすることなく、材料の磁気性能を大幅に高めることが可能であるという特徴を有する。本発明によれば、高い残留磁束密度、高い保磁力、および高い磁気エネルギー積を有する異方性磁性粉、異方性磁石を製造することができ、これらは、電動機、計算機、家用電気品、自動車、計器等に幅広く利用することができる。
【0011】
本発明は、一般式(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-y-zzで表わされる多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料である。
【0012】
ここで、RはPr、Nd、Pr-Nd富集物およびPrとNdの混合物からなる群から選択される軽希土類元素、R′はGd、Tb、Dy、Ho、Er、Yおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される重希土類元素、MはB、Ti、V、Cr、Mn、W、Si、Al、Ga、Nb、Ta、Zrおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、IはH、C、N、Fおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される元素、α、βはそれぞれモル分率で、αは0.01~0.14、βは0.01~0.98、x、y、zはそれぞれ原子%で、xは4~15原子%、yは3~20原子%、zは5~20原子%である。ここで富集物とは、希土類元素を含む鉱石から希土類元素を精製するときに、その原料鉱石からPd、Nd以外の多数の希土類元素を抽出してPr-Nd含有量を高めていき、PrとNdが主成分となった残留物をいう。
【0013】
【発明の実施の形態】
前記一般式(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-y-zzで表わせる多元系希土類-鉄格子浸入型永久磁石材料は、たとえば、下記の組成の合金:
(Pr0.9Tb0.1)7.0(Mo0.9Nb0.1)7.4Fe77.18.5
(Pr0.9Tb0.1)6.8(Mo0.8Nb0.2)10.0Fe72.910.3
(Pr0.9Tb0.1)6.8(Mo0.7Nb0.3)10.0Fe72.910.3
(Pr0.92Tb0.08)6.6(Mo0.1Ti0.9)6.5Fe73.413.5
(Pr0.92Tb0.08)6.6(Mo0.2Ti0.8)6.5Fe73.413.5
(Pr0.92Tb0.08)6.6(Mo0.3Ti0.7)6.5Fe73.413.5
(Pr0.95Tb0.05)6.5(Mo0.10.9)9.0Fe68.316.2
(Pr0.95Tb0.05)6.5(Mo0.20.8)9.0Fe68.316.2、または
(Pr0.95Tb0.05)6.5(Mo0.30.7)9.0Fe68.316.2
をあげることができる。
【0014】
さらに、上掲の永久磁石材料では、Prに代えて、Nd、Pr-Nd富集物、またはいずれかの割合のPrとNdの混合物を、またTbに代えて、Gd、Dy、Ho、Er、Yもしくはそれらの一種以上またはそれらとTbの混合物を、さらにまた、Nb、TiまたはVに代えて、B、Cr、Mn、W、Si、Al、Ga、Ta、Zrもしくはそれらの一種以上またはそれらとNb、TiまたはVとの混合物を用いることができる。
【0015】
本発明に使用する軽希土類元素は、Pr、Nd、Pr-Nd富集物またはPr、Ndの混合物を主成分とする。1:12型窒化物において、PrとNdはいずれも、結晶磁気異方性の磁化容易軸を変更し得る性質を有するが、これが、高い保磁力を発揮する源である。また、軽希土類元素のPr、Ndは、Feと共有結合(鉄磁性結合)を生ずるので、飽和磁化が高くなり、高い残留磁束密度と高い磁気エネルギー積を有する材料を製造するために好適である。
【0016】
また、本発明者らは、本発明の高性能の永久磁石材料を提供するためには、合金成分中に、一種以上の適切な量の重希土類元素、たとえばGd、Tb、Dy、Ho、Er、Yを同時に含まなければならないことを見出した。重希土類元素は、モル分率αとして0.01~0.14であることが好ましい。これにより、高性能かつ温度に対する安定性が良好な永久磁石材料を製造することができる。さらに、希土類元素RとR′の合計の量(x)が、4~15原子%、好ましくは、6~10原子%含まれていることが望ましい。
【0017】
また、希土類-鉄系永久磁石材料として、1:12型結晶構造を有する永久磁石材料には、Feのほかに、適切な量の第三元素を添加することが必須であることが公知である。しかし、本発明では、単一の第三元素のみを含有するR(FeM)12系の合金では、高性能な永久磁石材料を得ることができないことを見出した。気相-固相反応を進展させて材料の磁性特性を改善し、結晶粒を微細化して微粉末を製造し易くするためには、単一の第三元素のみではなく、第三元素として、MoとMo以外の第三元素Mとを組合わせて使用することが必要である。ここで、Mo以外の第三元素Mは、B、Ti、V、Cr、Mn、W、Si、Al、Ga、Nb、Sr、Ta、Zrがあげられ、これらの元素を2種以上を組み合わせて使用することもできる。すなわち、本発明は、1:12型結晶構造の窒化物からなる高性能の永久磁石材料を製造するために、合金成分として、Moが不可欠であり、さらに、Mo以外の第三元素Mを同時に含有しなければならない。また、MoとMo以外の第三元素Mの合計の量(y)は、合金中に3~20原子%、好ましくは6~12原子%含有されていることが望ましい。
【0018】
MoおよびMo以外の第三元素Mに関して、本発明には、二つの実施態様がある。一つは、第三元素がMoを主成分にする場合は、好ましいモル分率βは、0.01~0.40であり、第三元素がMo以外の元素Mを主成分にする場合は、特に、MがNb、B、Ti、VまたはSiの一種以上の場合は、好ましいモル分率βは、0.80~0.98である。
【0019】
本発明の永久磁石材料の製造方法は次の工程を含む:
(1)前記IがH、NまたはFのときは、軽希土類元素Rと重希土類元素R′とFeと第三元素MoとMo以外の第三元素Mとを用いて組成(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-yの母合金を、一方、IがCの場合は、Cと軽希土類元素Rと重希土類元素R′とFeと第三元素MoとMo以外の第三元素Mとを用いて組成(R1-αR′α)X(Mo1-βMβ)yFe100-x-y-zzの母合金を、それぞれ溶製し凝固する。母合金の溶製は、高周波溶解炉、アーク溶解炉を用いることができ、また、凝固は通常のインゴットを用いて鋳塊にすることができる。不純物の混入を防止できる真空中で凝固が可能な、真空溶解炉を使用することが好ましい。
【0020】
これらの母合金は、TMn12型立方晶構造を有しており、以下では1:12型母合金という。本発明の多元系合金は、均一な1:12相を形成することができるので有利である。こうして得られた組成Nd7.2Dy0.511.0Mo0.5Fe80.8、および組成Pr6.6Dy0.4Mo9.50Ti0.5Fe76の母合金の微粉末のX線回折図を、それぞれ図1および図2に示す。本図から明らかなように、これらの組成物は単純な1:12型化合物の構造を有しており、また、図3に示したNd7.2Dy0.511.0Mo0.5Fe80.8の磁気熱曲線からわかるように、本発明の永久磁石材料はフェライト鉄(α-Fe)を含有していない。
【0021】
(2)前記(1)の工程を終えた母合金を、温度200℃~400℃の水素ガス雰囲気中で、2~4時間水素化処理を行い、ミクロン級の粒径を有する微粉末を形成する。本発明者らは、この合金中では、水素は窒素と同様に結晶格子の2b浸入位置を占め、窒素と同様の格子浸入原子効果を有し、磁性特性を向上することを発見した(図4および実施例14を参照)。水素化処理は、窒化処理を行う前の予備処理であり、これにより、合金の活性が高くなり、窒化処理を行なう微粉末の粒子サイズを一定にし、また、窒化温度の低温化、窒化時間の短時間化を可能にする。このことはまた、窒化処理に際しての磁性粉の酸化防止にも寄与し、永久磁石材料の磁気性能を向上させるために必要な対策の一つである。特に、合金組成において、原子%yが小さい場合には、実施例15に示すように、水素化処理を行うか否かにより、永久磁石の性能が大きく異なる。
【0022】
(3)前記IがH、N、またはFのときは、前記(2)の工程の処理を終えた微粉末を、前記雰囲気I中で、所定温度のもとで、気相-固相反応を行わせる。たとえば、Iが窒素(N)の場合は、温度300~650℃、圧力1~10気圧の窒素ガス雰囲気中で、1~20時間窒化処理を行う。この気相-固相反応により、組成成分が(R1-αR′α)(Mo-βMβ)Fe100-x-y-zの窒化物が形成される。この窒化物はまた、TMn12型立方晶構造を有することが特徴であり、以下では、1:12型窒化物という。本発明の多元系合金は気相-固相反応が容易に進むという利点を有している。また、合金の酸化が抑制され、α-Feが発生しない条件のもとで、充分に窒化した合金を得ることができるので、本発明の永久磁石材料の窒素含有量は5~20原子%にも達する。1:12型母合金と比較すると、窒化後の1:12型窒化物は、キューリー温度と飽和磁束密度が著しく高くなり、希土類元素の結晶磁気異方性が変化する。特に、Pr、Nd、Tb、Dy、Hoを含有する1:12型窒化物では、絶対温度0Kからキューリー温度までの広い温度範囲で、c軸が磁気容易軸となり、強い異方性を備えることができる。
【0023】
Iが弗素(F)場合は、温度200~500℃、圧力1~4気圧の弗素ガス雰囲気中で、1~2時間弗化処理を行うと、本発明の弗化物を得ることができる。エネルギー・バンド構造の分析から明らかなように、弗素は、最良の格子浸入原子効果を有しており、弗化物の鉄原子の磁気モーメントの増加は、窒化物や炭素化合物におけるそれよりも大きくなる。
【0024】
(4)つぎに、ジェット粉砕機(エア・ミル)またはボール・ミルを用いて、前記(2)の工程および/または(3)の工程で処理された1:12型格子浸入型合金を粉砕し、1~10μmの微粉末を得て、高性能の磁気異方性を有する磁性粉を形成する。この磁性粉は、最大磁気エネルギー積が160kJ/m3(20MGOe)以上に達する特徴を有している。
【0025】
(5)さらに、前記の1:12型構造を有する磁性粉を用いて、錯化反応により、磁性粉の表面に保護皮膜層を形成する。錯化反応は、耐酸化性を高めるが、特に、焼結法を用いてこの磁性粉から焼結磁石を作製する場合は、この保護皮膜層を形成することが非常に重要である。錯化反応のための化合物は、たとえば、クエン酸、酢酸アンモニラム、またはチオシアンカリウム等の化合物を使用することができる。
【0026】
(6)次に、前記保護皮膜層が形成された磁性粉に結合剤を添加し、磁界中で成形し、その後焼結することにより、高性能の磁気異方性焼結磁石を製造することができる。成形方法としては、圧縮成形、射出成形、押出成形または圧延成形があげられ、これらの成形方法によりボンディング磁石を製造することができる。
【0027】
上述した永久磁石の製造方法には、1~10μmの磁性粉を形成した後、工程(5)を経由することなく、磁性粉を直接、ポリマー化合物やゴム中に混入させ、その後射出成形法を利用して、ボンディング磁石を作る方法も含まれる。さらにまた、低融点金属またはその合金(たとえばZn、Sn等)を添加して、再混合後1~10μmの微粉末にし、磁界中で圧縮成形し、液相焼結を行なって磁気異方性焼結磁石が作製することもできる。
【0028】
Iが炭素(C)の場合は、上述した本発明の永久磁石材料の製造方法のうち、工程(2)と(3)を経由する必要がない。これは、Cを含有する母合金を溶製する工程で、Cが直接格子間位置に浸入するので、気相-固相反応を経由する必要がないからである。また、Iが水素(H)の場合は、工程(3)を経由せずに、工程(2)から、直接、工程(4)に移行することができる。
【0029】
なお、本発明に基づく多元系合金を利用すると、上述した方法とは別の方法を用いて、高性能の永久磁石材料を製造することができる。たとえば、機械的合金化法を用いる場合は、以下の工程を含む方法である:
前記IがH、N、Fのときは、
(1)軽希土類元素Rと重希土類元素R′とFeとMoとMo以外の第三元素であるMの金属粉を、(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-yの組成になるように母合金を配合する工程と、
(2)これをアルゴンガス雰囲気中で、高工ネルギー・ボール・ミルを用いて、2~4時間機械的合金化処理を行ない、非晶質の金属微粉末を得る工程と、
(3)次いで、温度700~950℃のアルゴン雰囲気中で結晶化処理をするため、0.5~2時間加熱する工程と、
(4)格子浸入原子雰囲気中で気相-固相反応を行う工程、たとえば窒化処理の場合は、温度400~600℃で、2~4時間加熱する工程である。
これにより高性能な磁性粉を形成することができる。
【0030】
また、前記IがCのときには、
(1)(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-y-zzの組成になるように金属粉とCとを配合する工程と、
(2)ついでアルゴンガス雰囲気中で高エネルギー・ボール・ミルを用いて、2~4時間機械的合金化を行ない、非晶質の金属微粉末を得る工程と、
(3)そして上記(3)の工程である。
この場合、Cを含有する母合金を機械的合金化する工程で、Cが直接格子間位置に浸入するので、上記工程(4)は割愛することができる。
【0031】
液体超急冷凝固法を利用する場合の製造方法は次の工程を含む:
前記IがH、N、Fのときは、
(1)組成(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-yの母合金を溶製し、減圧中で30m~50m/秒の速度で液体超急冷凝固する工程と、
(2)つぎに、前記急冷凝固した合金を温度700~950℃のアルゴンガス雰囲気中で0.5~2時間加熱して結晶化処理を行う工程と、
(3)そして、格子浸入原子雰囲気で気相-固相反応を行う工程、たとえば窒化処理の場合は、温度400~600℃、2~4時間加熱する工程である。
これにより、高性能の磁性粉を形成することができる。
【0032】
また、前記IがCのときは、
(1)組成(R1-αR′α)x(Mo1-βMβ)yFe100-x-y-zzの母合金を溶製し上記の条件で液体急冷凝固する工程と、
(2)ついで前記(2)の工程である。
そして前記工程(3)を行うことなく、高性能の磁性粉を形成することができる。工程(3)を行なう必要がないのは、Cを含有する母合金を溶製し急冷凝固する工程で、Cが直接格子間位置に浸入するからである。
【0033】
上述した本発明の製造方法において、水素化処理した場合は、その後温度500~600℃で2~4時間真空脱水素処理を行うのが好ましい。
【0034】
本発明の永久磁石材料の磁性粉に、熱硬化性結合剤を添加すると、圧縮成形、射出成形、押出成形、圧延成形によりボンディング磁石を製造することができる。また特に、磁界中で成形すると、磁界方向に磁気特性の優れた異方性ボンディング磁石を製造することができる。
【0035】
熱硬化性結合剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ナイロン等のポリオレフィン系高分子化合物、ポリエーテル、ウレタン、ポリカーボネート等のポリエステル系高分子化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の芳香族ポリエステル系樹脂、天然ゴム、ブタジエン・ゴム、ネオプレン・ゴム、シリコンゴム等の天然ゴムまたは合成ゴムなどを用いることができる。
【0036】
また、本発明の磁性粉とフェライト磁性粉を混合すると、特徴のある複合磁石を形成することができる。この両者の粒子サイズはほぼ近似しているので、上記した成形方法を用いると、均一な複合ボンディング磁石を製造することができる。フェライトとしては、バリウム・フェライト、ストロンチウム・フェライト等があげられる。本発明の永久磁石材料の含有量が多いほど磁気特性が良好になるが、永久磁石の製造コストが上昇するので、本発明の永久磁石材料の磁性粉とフェライト磁性粉との混合割合は、5:95~50:50が好ましい。。このような複合ボンディング磁石は、本発明が有する高い残留磁束密度とフェライトが有する良好な保磁力の正温度係数という双方の特徴を有する磁石であり、磁気特性、温度性能に優れるほか低コストの永久磁石を作ることができる。
【0037】
【実施例】
次に実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下では原子%をat%という。
実施例1
組成が7.2at%Nd、0.5at%Dy、80.8at%Fe、11.0at%Mo、0.5at%Bの母合金を使用し、真空誘導炉でこの母合金を溶製し凝固した後、温度250℃の水素ガス雰囲気中で、2時間水素化処理を行った。その後、圧力1気圧、温度550℃の窒素ガス雰囲気中で2時間加熱して窒化処理を行った。この気相-固相反応により、1:12型窒化物を形成したが、その組成は、6.3at%Nd、0.4at%Dy、75.5at%Fe、10.2at%Mo、0.5at%B、7.1at%Nであった。この窒化物を、ジェット粉砕機(エア・ミル)やボール・ミルで微粉砕して、粒径が2~5μmの微細な異方性磁性粉を形成し、磁界中で着磁した。得られた磁性粉の磁気性能を表1に示す。
【0038】
【表1】
JP0003741597B2_000002t.gif
【0039】
前記実施例1の窒化処理における窒化温度と窒化処理時間を変化させた以外は、実施1と同様にして窒化処理を行い、窒素含有量が異なる窒化物磁性粉を得た。得られた磁性粉の室温での磁気性能を表2に示す。
【0040】
【表2】
JP0003741597B2_000003t.gif
【0041】
実施例2
母合金の組成が7.3at%Pr、0.4at%Dy、80.8at%Fe、11.0at%Mo、0.5at%Nbの合金を使用した以外は、実施例1と同様にして1:12型窒化物を得た。その組成は、6.46Pr、0.34at%Dy、73.7at%Fe、9.6at%Mo、0.43Nb、9.5at%Nであった。得られた磁性粉の磁気性能を表3に示す。
【0042】
【表3】
JP0003741597B2_000004t.gif
【0043】
母合金の組成が7.3at%Pr、0.4at%Dy、80.1at%Fe、11.7at%(Mo1-βNbβ)の合金を使用した以外は、実施例2と同様にして、モル分率βを変化させた組成(Pr0.95Dy0.05)6.8(Mo1-βNbβ)10.0Fe72.910.3の窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表4に示す。
【0044】
【表4】
JP0003741597B2_000005t.gif
【0045】
実施例3
母合金の組成が、7.7at%(Pr1-αDyα)、80.1at%Fe、10.6at%Mo、1.1at%Nbの合金を使用した以外は、実施例2と同様にして、モル分率αを変化させた組成(Pr1-αDyα)6.8(Mo0.9Nb0.1)10.0Fe72.910.3の窒化物磁性粉を得た。αを変化させたことにともなう室温での磁気特性の変化を表5に示す
【0046】
【表5】
JP0003741597B2_000006t.gif
【0047】
実施例4
母合金の組成が7.2at%Nd、0.5at%Tb、80.8at%Fe、11.0at%Mo、0.5at%Tiの合金を使用し、温度200℃の水素ガス中で4時間水素化処理し、その後、圧力5気圧、温度500℃の窒素ガス雰囲気中で、10時間窒化処理した以外は、実施例1と同様にして1:12型窒化物磁性粉を得た。その組成は、6.3at%Nd、0.4at%Tb、69.9at%Fe、9.5at%Mo、0.4at%Ti、13.5at%Nの窒化物であり、得られた磁性粉の磁気性能を表6に示す。
【0048】
【表6】
JP0003741597B2_000007t.gif
【0049】
母合金の組成が7.2at%Nd、0.5at%Tb、80.8at%Fe、11.5at%(Mo1-βTiβ)の合金を使用した以外は、実施例4と同様にして、モル分率βを変化させた組成Nd6.3Tb0.4Fe69.9(Mo1-βTiβ)9.513.5の窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表7に示す。
【0050】
【表7】
JP0003741597B2_000008t.gif
【0051】
実施例5
母合金の組成が7.7at%(Nd1-αTbα)、80.8at%Fe、9.2at%Mo、2.3at%Tiの合金を使用した以外は、実施例4と同様にして、モル分率αを変化させた組成(Nd1-αTbα)6.7Fe69.9Mo7.6Ti1.913.5の窒化物磁性粉を得た。αを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表8に示す。
【0052】
【表8】
JP0003741597B2_000009t.gif
【0053】
実施例6
母合金の組成が7.2at%Nd、0.7at%Dy、83.8at%Fe、8.3at%(Mo1-βTiβ)の合金を使用し、温度200℃の水素ガス中で4時間水素化処理し、その後、圧力10気圧、温度350℃の窒素ガス雰囲気中で、10時間窒化処理し、クエン酸を添加した以外は実施例1と同様にして、モル分率βを変化させたNd6.0Dy0.6Fe73.1(Mo1-βTiβ)6.813.5の窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表9に示す。
【0054】
【表9】
JP0003741597B2_000010t.gif
【0055】
実施例7
Pr-Nd富集物を用いて、組成が2.0at%Pr、6.5at%Nd、0.5at%Dy、79.5at%Fe、10.5at%Mo、1.0at%Vの母合金を溶製し凝固した以外は、実施例1と同様にして窒化物磁性粉を得た。その組成はPr1.9Nd6.0Dy0.5Fe73.0Mo9.70.98.0であり、その磁気性能を表10に示す。
【0056】
【表10】
JP0003741597B2_000011t.gif
【0057】
母合金の組成が2.0at%Pr、6.5at%Nd、0.5at%Dy、79.5at%Fe、11.5at%(Mo1-βVβ)の合金を使用した以外は、実施例7と同様にして、モル分率βを変化させた組成Pr1.9Nd6.0Dy0.5Fe73.0(Mo1-βVβ)10.68.0の1:12型窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表11に示す。
【0058】
【表11】
JP0003741597B2_000012t.gif
【0059】
実施例8
母合金の組成がNd8.0Tb0.5Fe79.0(Mo1-βVβ)11.5の合金を使用し、温度250℃の水素ガス中で2時間水素化処理し、その後、圧力1気圧、温度400℃の窒素ガス雰囲気中で、4時間窒化処理した以外は、実施例1と同様にして、モル分率βを変化させた組成Nd7.2Tb0.5Fe69.3(Mo1-βVβ)9.514.0の窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表12に示す。
【0060】
【表12】
JP0003741597B2_000013t.gif
【0061】
実施例9
窒化処理における温度と時間を変化させた以外は、実施例8と同様にして窒素含有量が異なる窒化物磁性粉を得た。窒化温度と窒化処理時間を変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表13に示す。
【0062】
【表13】
JP0003741597B2_000014t.gif
【0063】
実施例10
母合金の組成が7.2at%Nd、0.5at%Gd、80.8at%Fe、11.5at%(Mo1-βTaβ)の合金を使用し、圧力8気圧の窒素ガス雰囲気中で窒化処理した以外は、実施例8と同様にして、モル分率βを変化させた組成Nd6.6Gd0.5Fe74.4(Mo1-βTaβ)11.17.7の窒化物磁性粉を得た。βを変化させたことにともなう室温での磁気性能の変化を表14に示す。
【0064】
【表14】
JP0003741597B2_000015t.gif
【0065】
実施例11
母合金の組成が5.0at%C、7.0at%Nd、0.4at%Tb、76.1at%Fe、11.0at%Mo、0.5at%Nbの合金を溶製し凝固し、製造工程中に気相-固相反応を行わなかった以外は、実施例1と同様にして1:12型炭化物磁性粉を得た。得られた磁性粉の磁気性能を表15に示す。
【0066】
【表15】
JP0003741597B2_000016t.gif
【0067】
組成比がNd0.9Tb0.1Fe10.5Mo1.4Si0.1zである1:12型母合金において炭素含有量z(at%)を変化させた合金を溶製し凝固した以外は、実施例11と同様にして1:12型炭化物磁性粉を得た。この炭素含有量を変化させた場合の室温での磁気性能の変化を表16に示す。
【0068】
【表16】
JP0003741597B2_000017t.gif
【0069】
実施例12
母合金の組成が6.6at%Nd、0.5at%Gd、74.4at%Fe、10.0at%Mo、0.8at%Taの合金を使用し、弗素ガス雰囲気中で気相-固相反応を行った。気相-固相反応は、温度300℃、圧力1気圧の弗素ガス雰囲気中で2時間加熱した以外は、実施例1と同様であった。得られた弗化物磁性粉の磁気性能を表17に示す。
【0070】
【表17】
JP0003741597B2_000018t.gif
【0071】
実施例13
実施例1、11、または12と同様にして、本発明の窒化物、弗化物、または炭化物格子侵入型合金を得た。これら合金の固有磁気特性を表18に示す。
【0072】
【表18】
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【0073】
実施例14
組成比がNd0.90.1Fe10.0Mo1.8Ti0.2、およびNd0.90.1Fe10.5Mo0.21.3の1:12型母合金を溶製し凝固し、温度200~300℃の水素ガス中で2~4時間水素化処理を行い、水素化物磁性粉を形成した。水素化処理前後の磁気特性の変化を対比して表19に示す。
【0074】
【表19】
JP0003741597B2_000020t.gif
【0075】
実施例15
実施例1と同様にして、組成比が(Nd0.9 Dy0.1)1Fe11.0Mo0.9Ti0.1zの1:12型窒化物磁性粉サンプルAとBを得た。サンプルAは製造工程中に水素化処理を行わず直接窒化処理を行い、一方サンプルBは水素化処理を行い、ついで窒化処理を行ったものである。これらの磁気特性を対比して表20に示す。
【0076】
【表20】
JP0003741597B2_000021t.gif
【0077】
実施例16
機械的合金化法を用いて本発明の磁性粉を製造した。(Nd0.9Dy0.1)8(Mo0.8Nb0.2)12Fe80の組成となるように金属粉末を配合し、アルゴンガス雰囲気中で、高エネルギー・ボール・ミルを用いて4時間機械的合金化処理したのち、温度700℃のアルゴンガス雰囲気中で1時間加熱して結晶化処理を行い、その後、温度600℃で2時間、窒化処理を行って、高性能の磁性粉サンプルAを得た。また、これと同じ工程を用いて、Nd7Mo10Fe77の配合組成を満たす金属粉末を、同様に、ボール・ミルで機械的合金化処理を行い、アルゴンガス雰囲気中での結晶化処理を行うことなく窒化処理を行い、組成Nd7Mo10Fe767のサンプルB磁性粉を得た。サンプルAとサンプルBの磁気性能を表21に示す。
【0078】
【表21】
JP0003741597B2_000022t.gif
【0079】
実施例17
液体急冷凝固法を用いて本発明の磁性粉を製造した。Nd4.1Dy0.5Fe83.0Mo9.6Nb2.5の組成の母合金を溶製した。その後、液体急冷凝固法を用いて、40m/秒の速度で液体急速凝固した後、温度700℃のアルゴンガス雰囲気中で1時間加熱して結晶化処理を行い、その後温度500℃の窒素ガス雰囲気中で4時間気相-固相反応を行って、高性能の磁磁性粉サンプルAを得た。また、これと同じ工程を用いて、Nd4.6Fe83.0Mo12.1の組成の母合金を溶製した以外は、本実施例と同様にしてサンプルBを得た。サンプルAとサンプルBの磁気特性を表22に示す。
【0080】
【表22】
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【0081】
実施例18
実施例1と同様にして得られた1:12型窒化物磁性粉に、3重量%のゴム樹脂を結合剤として添加し、この混合物を1200kA・m-1の磁界中で圧縮成形した。加圧力は8.0トン/cm2であり、その後、温度200℃で硬化させたボンディング磁石は、HcB=440kA・m-1、Br=0.72T、(BH)max=960kJ・m-3の性能を示した。
【0082】
実施例19
実施例1と同様にして得られた1:12型窒化物磁性粉に、ナイロンを結合剤として添加し、温度200℃で射出成形し、800kA・m-1の磁界中で着磁したボンディング磁石は、Br=0.6T、(BH)max=72kA・m-3であった。
【0083】
実施例20
実施例1で得られた本発明の磁性粉とバリウム・フェライト磁性粉を混合して、複合永久磁石を作製した。本発明の磁性粉が20%、フェライト磁性粉が80%の複合磁石の組成のとき、低コストの複合磁石を作製することができる。このときの、磁気性能および保磁力の温度係数を表23に示す。
【0084】
【表23】
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【0085】
以上の実施例と比較例を対比したの結果から明らかなように、本発明が提供する永久磁石材料およびそれを用いて製造した焼結永久磁石は、従来のNd2Fe14B合金磁石またはSm-Fe-N系合金磁石に比べて、特有な長所を備えている。第1の長所は、最大磁気エネルギー積が高いことであり、常温ではもちろんのこと、低温においても非常に優れた永久磁石性能を有する。たとえば温度Tが4.2Kのとき、残留磁束密度Brは1.2T以上、保磁力HcJは240kA・m-1以上、最大磁気エネルギー積(BH)maxは320kA・m-3に達する。第2の長所は、図5に示したように、Nd-Fe-B系磁石に比較して、使用温度の範囲において酸化物生成に伴う重量増加が認められず、優れた耐酸化性を有する点である。第3の長所は、コストが低いことである。本発明は、希土類金属の含有量が低いことを特徴とし、また安価な希土類元素、すなわち、Pr、Nd、Pr-Nd富集物またはPr-Nd混合物を原料にするとともに、コバルトなどの高価な金属を使用する必要がないからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Nd7.2Dy0.511.0Mo0.5Fe80.8のX線回折図である。
【図2】 Pr6.6Dy0.4Mo9.5Fe76.07.0XのX線回折図である。
【図3】 Pr7.2Dy0.511.0Mo0.50Fe80.8の磁気熱曲線である。
【図4】 TMn12型水素化物の結晶構造を示す図である。
【図5】 多元系TMn12型窒化物の酸化現象にともなう経時的な重量変化を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4