TOP > 中国の大学の特許 > 北京大学の特許一覧 > 抗炎症、抗ウイルスおよび抗血栓症活性を有するベンゾイソセレンアゾール誘導体ならびにそれらの使用 > 明細書

明細書 :抗炎症、抗ウイルスおよび抗血栓症活性を有するベンゾイソセレンアゾール誘導体ならびにそれらの使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2005-519991 (P2005-519991A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成17年7月7日(2005.7.7)
特許番号 特許第4500672号 (P4500672)
登録日 平成22年4月23日(2010.4.23)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
発明の名称または考案の名称 抗炎症、抗ウイルスおよび抗血栓症活性を有するベンゾイソセレンアゾール誘導体ならびにそれらの使用
国際特許分類 C07D 293/12        (2006.01)
A61K  31/337       (2006.01)
A61K  31/405       (2006.01)
A61K  31/41        (2006.01)
A61K  31/616       (2006.01)
A61K  31/704       (2006.01)
A61K  31/7056      (2006.01)
A61K  33/24        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P   7/02        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C07H  19/02        (2006.01)
FI C07D 293/12
A61K 31/337
A61K 31/405
A61K 31/41
A61K 31/616
A61K 31/704
A61K 31/7056
A61K 33/24
A61K 45/00
A61P 7/02
A61P 35/00
C07H 19/02
請求項の数または発明の数 22
全頁数 19
出願番号 特願2004-503452 (P2004-503452)
出願日 平成14年6月10日(2002.6.10)
国際出願番号 PCT/CN2002/000412
国際公開番号 WO2003/095436
国際公開日 平成15年11月20日(2003.11.20)
優先権出願番号 01118666.6
優先日 平成13年6月8日(2001.6.8)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成17年6月8日(2005.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503450807
【氏名又は名称】北京大学
発明者または考案者 【氏名】▲曾▼ 慧慧
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】早乙女 智美
参考文献・文献 特開昭63-183528(JP,A)
特開平08-234356(JP,A)
特開昭61-254578(JP,A)
特開昭61-275264(JP,A)
特表平05-509309(JP,A)
MOCHOWSKI, J., et al.,Some Development in the chemistry of selenium heterocycles and related diselenides,Blue Danube Symposium on Heterocyclic Chemistry: Abstracts and Short Papers,1998年,7
OSAJDA, M., et al.,Bisbenzisoselenazol-3(2H)-ones, a New Group of Ebselen Analogues,Polish Journal of Chemistry,2001年,75(6),p. 823-830
DALLACKER, F., et al.,Organic selenium compounds. 1. Preparation of 2-substituted 1,2-benzisoselenazol-3(2H)-ones,Chemiker-Zeitung,1991年,115(5),p. 135-139
鈴木康裕,脳梗塞治療剤の開発状況,日本薬理学雑誌,2000年,116(6),p. 379-384
成冨博章,脳卒中の新しい治療,日本内科学会雑誌,1999年,88(10),p. 2052-2056
調査した分野 C07D 293/12
A61K 31/337-31/4056
A61K 33/24
A61K 45/00
A61P 1/00-43/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩を含む癌の治療用医薬組成物であって、前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が、一般式(I)
【化1】
JP0004500672B2_000021t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物である癌の治療用医薬組成物。
【請求項2】
Rが、C1-6アルキレンである請求項1に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項3】
Rが、エチレンである請求項2に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項4】
Rが、フェニレンまたはビフェニレン基である請求項1に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項5】
Rが、ビフェニレン基である請求項4に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項6】
他の抗腫瘍剤をさらに含む請求項1~5のいずれかに記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項7】
他の抗腫瘍剤が、シスプラチン、アドリアマイシン、タキソールまたはそれらの組み合わせを含む請求項6に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩と、他の抗腫瘍剤とが、同時に投与されることを特徴とする請求項6または7に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項9】
前記一般式(I)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩がまず投与され、その後、他の抗腫瘍剤が投与されることを特徴とする請求項6または7に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項10】
他の抗腫瘍剤がまず投与され、その後、前記一般式(I)で表される化合物またはその医薬的に許容される塩が投与されることを特徴とする請求項6または7に記載の癌の治療用医薬組成物。
【請求項11】
ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩を含む血栓症の治療用医薬組成物であって、
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が、
一般式(I)
【化2】
JP0004500672B2_000022t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物、または一般式(II)
【化3】
JP0004500672B2_000023t.gif
[前記式中、R’は、1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-D-グルコピラノシル基である]
で表される化合物である血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項12】
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が、一般式(I)で表わされる化合物であり、一般式(I)中、Rが、C1-6アルキレンである請求項11に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項13】
一般式(I)中、Rが、エチレンである請求項12に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項14】
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が、一般式(I)で表わされる化合物であり、一般式(I)中、Rが、フェニレンまたはビフェニレン基である請求項11に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項15】
一般式(I)中、Rが、ビフェニレン基である請求項14に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項16】
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が、一般式(II)で表わされる化合物である請求項11に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項17】
他の抗血栓症剤をさらに含む請求項11~16のいずれかに記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項18】
他の抗血栓症剤が、アスピリンを含む請求項17に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項19】
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩と、他の抗血栓症剤とが、同時に投与されることを特徴とする請求項17または18に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項20】
前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩がまず投与され、その後、他の抗血栓症剤が投与されることを特徴とする請求項17または18に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項21】
他の抗血栓症剤がまず投与され、その後、前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩が投与されることを特徴とする請求項17または18に記載の血栓症の治療用医薬組成物。
【請求項22】
一般式(III)
【化4】
JP0004500672B2_000024t.gif
[前記式中、R’’’’が、-Hである]
のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、抗腫瘍、抗炎症および抗血栓症活性を有する新規ベンゾイソセレンアゾロニル誘導体ならびにそれらの使用に関する。また、本発明は、ベンゾイソセレンアゾロニル誘導体を含む医薬組成物、薬物製造におけるそれらの使用、炎症性疾患および癌疾患を治療ならびに血栓症を予防する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
セレン元素が生体において重要な機能を有するので、多くの研究者はセレンを含有する治療薬に集中している。しかし、無機セレンは吸収困難であり、血中に短い時間しか留まらず、活性が低く、毒性が高いという問題がある。無機セレンの特徴と比較して、有機セレン化合物はこれらについて非常に改善されている。
【0003】
セレンは重要な微量元素である。長期にわたるセレンの欠乏(<0.1ppm)により、肝壊死、心筋損傷、癌およびリュウマチ性疾患を含む種々の疾患を引き起こしうる。
【0004】
現在まで、GSH-Px様に機能し、試験管内でミクロソームの脂質過酸化を阻害し、過酸化損傷から身体を予防する効果を有するベンゾイソセレンアゾロン(BISA)が知られている。以下の式の2-フェニル-(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン((Ebselen)エブセレン)が、高抗酸化活性と低毒性(LD50>6810mg/Kg、マウス)を有するGSH-Px様化合物の最も良いものである。
【0005】
【化4】
JP0004500672B2_000002t.gif
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの研究者は、エブセレンを修飾してその抗腫瘍活性を向上させることに専念しているが、今までのところ、それを基にした抗腫瘍活性化合物の成功は報告されていない。従って、本発明の目的はエブセレンを修飾して、より高い抗炎症活性、より広い適合性、より低い毒性を有する新規ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体を作ることである。その間に、「生体応答調整剤」特性を有する抗腫瘍性有機セレン化合物が、エブセレン修飾を通じて得られた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の要旨)
本発明の一観点によれば、
ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩を含む癌の治療用医薬組成物が提供される。前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、一般式(I)
【化6】
JP0004500672B2_000003t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物である。

【0008】
【化5】
JP0004500672B2_000004t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレントリフェニレンまたは以下の基:
【0009】
【化7】
JP0004500672B2_000005t.gif

【0010】
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物、または一般式(II)

【0011】
【化8】
JP0004500672B2_000006t.gif

【0012】
[前記式中、R’は、糖残基である]
で表される化合物である。

【0013】
また、本発明の別の観点によれば、一般式(III)
【化9】
JP0004500672B2_000007t.gif

【0014】
[前記式中、R’’’’が、-Hである]
のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩が提供される。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明によるベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、エブセレンの活性ファーマコアを考慮し、官能基を増強するよう設計された。その構造の特徴ゆえ、本発明の化合物は、生体において多標的であり、従って複合的生物活性を示す。その化合物は、癌への阻害作用の他にも、生体応答調節剤として機能する抗腫瘍剤であるという事実のため、それらは新規な抗腫瘍剤である。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、
ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩を含む癌の治療用医薬組成物が提供される。前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、一般式(I)
【化10】
JP0004500672B2_000008t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物である。

【0017】
本発明の別の観点によれば、
ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩を含む血栓症の治療用医薬組成物が提供される。前記ビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、一般式(I)
【化11】
JP0004500672B2_000009t.gif
[前記式中、
Rは、C1-6アルキレン、フェニレンビフェニレンまたはトリフェニレンである]
で表される化合物、または一般式(II)

【0018】
【化12】
JP0004500672B2_000010t.gif
[前記式中、R’は、1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-D-グルコピラノシル基である]
で表される化合物である。


【0019】
また、本発明の別の観点によれば、一般式(III)
【化13】
JP0004500672B2_000011t.gif
[前記式中、R’’’’が、-Hである]
のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはその医薬的に許容される塩が提供される。
【0020】
この実施態様において、好ましい化合物は、Rが、C1-4アルキレン、フェニレンまたはビフェニレン基である一般式(I)のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体である。特に好ましいのは、RがC2-アルキレンまたはビフェニレン基である化合物である。

【0021】
R’として、1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-D-グルコピラノシル基が好ましい。
【0022】
R’’’およびR’’’’として、独立して、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH265、-CH2SHまたは-CH2CH2SCH3を表すのが好ましい。
【0023】
本発明によるベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、当該分野の当業者に知られる方法または、本発明の明細書中に記載の方法のいずれに従っても製造することができる。例えば、2-(クロロセレノ)ベンゾイルクロライドを、冷却下、窒素雰囲気下に、適当な有機溶媒中で対応するジアミンまたはアミノ糖と反応させ、その後当該分野の当業者に公知な標準的処置を用いて単離し、所望の化合物を得る。
【0024】
RまたはR’が金属複合体である本発明によるベンゾイソセレンアゾロニル誘導体は、白金化合物材料を用いることにより、当該分野の当業者に公知の方法に従い、製造することができる。
【0025】
【化11】
JP0004500672B2_000012t.gif
本発明によるベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはそれらの塩は、純粋な物質の形態または適当な医薬組成物の形態で投与することができる。前記医薬組成物は、いずれかの許容される投与経路を経て、他の剤と任意に組み合わせ、活性成分として一般式(I)、(II)または(III)の化合物を含む。従って、本発明はまた、一般式(I)、(II)もしくは(III)のベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはそれらの医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物を含み、その医薬組成物は、炎症性疾患および癌疾患を治療するか、または血栓症を予防するのに用いることができる。
【0026】
発明の化合物または組成物は、固形、半固形、凍結乾燥粉末または液体の形態で、経口、鼻腔内、直腸内、経皮的または非経口を含む多数の経路により投与することができるが、それらには限定されない。例えば、この組成物は、錠剤、座剤、丸剤、軟および硬ゼラチンカプセル剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤またはエアゾールの形態で用いることができる。厳密な投与量の単一形態が好ましい。この医薬組成物は、通常の賦形剤または担体と、1以上の発明の化合物とを含む。この組成物は、さらに他の治療剤等を含んでもよい。
【0027】
一般に、投与方法に応じて、医薬的に許容な組成物は、活性成分として本発明の化合物1~99重量%と、適当な医薬賦形剤99~1重量%とを含んでもよい。好ましい組成物は、約5~75重量%の本発明の化合物を含み、残りは適当な賦形剤または担体である。
【0028】
好ましい投与経路は、疾患の重篤度に応じて調整できる通常の1日投与量プロトコルを用いる、静脈注射によるものである。本発明による化合物またはそれらの医薬的に許容される塩は、注射剤用剤形に調剤されてもよい。例えば、約0.5~50重量%の活性剤としての本発明の化合物を、液状賦形剤または担体(例えば、水、生理食塩水、グルコース水溶液、エタノールおよびグリセロール)中に分散させ、液剤または懸濁剤を形成する。
【0029】
この医薬組成物は、液剤または懸濁剤の形態で投与することができ、例えば、本発明の化合物(例えば、約0.5~20重量%)と任意な他のアジュバントとを、担体(水、生理食塩水、グルコース水溶液、エタノールおよびグリセロールを含むが、これに限定されない)中に溶解または分散させることにより得ることができる。
【0030】
さらに、必要であれば、本発明による医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝液、抗酸化剤等のような補助物質を含んでもよい。詳細な例としては、クエン酸、ソルビタン モノラウリン酸塩、トリエタノールアミン オレイン酸塩、ブチルヒドロキシベンゼン等である。
【0031】
本発明の組成物の製品は、当該分野の当業者によく知られるか、明白な方法のいずれかにより得ることができる(例えば、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、18版、Mack Publishing Company、Easton、ペンシルバニア、1990」参照)。それにはかかわらず、本発明の組成物は、関係する疾患を治療するのに効果的な量の本発明の化合物を含む。
【0032】
本発明の別の観点によれば、ヒトを含む哺乳類の炎症性疾患および癌疾患の治療または血栓症の予防のための方法が提供される。その方法は、一般式(I)、(II)もしくは(III)のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはそれらの医薬的に許容される塩の治療的に効果的な投与量を、治療が必要な患者に投与する工程を含む。
【0033】
本発明のさらに別の観点によれば、ヒトを含む哺乳類の炎症性疾患および癌疾患の治療または血栓症の予防のための方法が提供される。その方法は、一般式(I)、(II)もしくは(III)のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはそれらの医薬的に許容される塩の治療的に効果的な投与量を、他の抗炎症剤、抗腫瘍剤または抗血栓症剤と組み合わせて、治療が必要な患者に投与する工程を含む。
【0034】
本発明のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が他の抗炎症剤、抗腫瘍剤または抗血栓症剤と共に適用される場合には、次々と、または同時に投与されてもよい。例えば、本発明のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体が最初に投与され、次に他の抗炎症剤、抗腫瘍剤または抗血栓症剤が投与される。代わりに、他の抗炎症剤、抗腫瘍剤または抗血栓症剤が最初に投与され、次いで本発明のビスベンゾイソセレンアゾロニル誘導体またはそれらの医薬的に許容される塩が投与される。
【0035】
好ましい実施態様においては、他の抗腫瘍剤は、シスプラチン、タキソール、シクロホスファミド、イソホスファミド、メトトレキセート、フルオロウラシル、エピルビシン(Epirubicin)、ダウノマイシン、アドリアマイシン、マイトマイシン、ピンヤンマイシン(Pingyangmycin)、カーボプラチン(Carboplatin)、ロムスチン、カルムスチンまたはそれらの組み合わせを含む。
【0036】
好ましい実施態様においては、他の抗炎症剤は、アスピリン、インドメタシン、セファロスポリン、マクロライド類またはそれらの組み合わせを含む。
【0037】
好ましい実施態様においては、他の抗血栓症剤は、アスピリンを含む。
【0038】
本発明によるベンゾイソセレンアゾロニル誘導体の投与量は、癌疾患に対しては0.05~250mg/体重kgの範囲であり、炎症性疾患に対しては1~100mg/体重kgの範囲であり、血栓症を予防するためには1~100mg/kgの範囲である。
【0039】
他の抗炎症剤、抗腫瘍剤または抗血栓症剤と併せられる場合、本発明のベンゾイソセレンアゾロニル誘導体の投与量は、著しく、単独で用いられるときの約1/10~半分まで減らされる。
【0040】
本発明に関するより詳細な説明は以下のとおりである。
【実施例1】
【0041】
1,2-ビス[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オンイル]エタン(E003)
テトラヒドロフラン中の2-(クロロセレノ)ベンゾイルクロライド1gを、エチレンジアミン0.14mlとトリエチルアミン1.29mlとの攪拌溶液に、窒素雰囲気下、氷浴中で冷却しながら、滴下して加えた。白色沈殿物が生じた。3時間攪拌後、薄黄色懸濁液が生成した。溶媒を真空下に蒸発させ、薄黄色残渣を吸引し、水で洗浄し、その後、DMSOから再結晶し、表題の化合物を得た。収量:0.1g(11%)、m.p.>320℃。EI-MS:(m/z)(m+)424;1H-NMR(DMSO-d6):7.37-7.98(8H、m、ArH)、4.02(4H、s、-CH2CH2-)。
【実施例2】
【0042】
4,4’-ビス[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オンイル]-ビフェニル(E002)
テトラヒドロフラン中の2-(クロロセレノ)ベンゾイルクロライド0.5gを、ビフェニル-ジアミン0.182gとトリエチルアミン0.62mlとの攪拌溶液に、窒素雰囲気下、氷浴中で冷却しながら、滴下して加えた。3時間攪拌後、白色沈殿物が生成し、それを吸引し、テトラヒドロフランおよびエタノールで洗浄した。DMSOから再結晶した後、薄茶色沈殿物の表題の化合物を得た。収量:0.1g(18.2%)、m.p.>320℃。EI-MS:(m/z)(m+)550;1H-NMR(DMSO-d6):7.48-8.12(m、16H、ArH)。
【実施例3】
【0043】
2-(1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-D-グルコピラノシル)-(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン(E001)
1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコサミン730mgを、窒素雰囲気下、氷浴中で冷却しながら、クロロホルム中に溶解させた。クロロホルム中の2-(クロロセレノ)ベンゾイルクロライド0.551gの溶液を、攪拌下にそこへゆっくりと滴下した。2時間後、反応溶液を、溶離液として石油:酢酸エチル=3:1を用いてシリカゲルカラムで分離した。薄黄色固体として、表題の化合物を得た。収量:200mg(18.0%)、m.p.73-75℃。IR 1745(-CO);UV(CHCl3)320nm、260nm(イソセレンアゾール環)。FAB-MS(m/z)566.3(M+K)。1H NMR:δH(ppm)7.24-8.12(4H、m、ArH)、6.20(1H、d、糖中のアノマーH)、3.97-5.64(m、6H、糖:H)、1.82-2.16(12H、m、-COCH3)。13C NMR:δ(ppm)166.77、168.66、169.29、169.61、170.44(-CO)、124.22、126.28、128.81、132.37、138.30(ベンゼン中の炭素)、91.43、(糖中の炭素、C-1)、60.15、61.35、68.35、71.91、72.35、(糖中の炭素、C-2、3、4、5、6)、20.34、20.48、20.55、20.78(-COCH3)。
【実施例4】
【0044】
1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金-2-グリシン-[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン]の合成
1)K2PtCl4の合成
10%ヒドラジン水溶液を、80℃で、徹底的に攪拌しながら、7mlのH2O中の0.7g(1.44mmol)のK2PtCl6攪拌溶液に滴下して加えた。反応が続き、暗赤色溶液が生成した。残存K2PtCl6および金属白金をろ過し、廃棄した。ろ液を濃縮して、赤色針状結晶としてK2PtCl4を得た。収量:0.5g(84%)。
【0045】
2)1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金(II)の合成
2ml H2O中のK2PtCl4(0.2g、0.48mmol)の溶液を、沸騰水浴上で、光照射を避けながら、0.6g H2O中のKI(0.8g)の溶液と混合した。温度をすばやく80℃に上昇させ、暗所中で30分保持した。0.05gの1,2-ジアミノシクロヘキサン固体をその溶液に加えると、黄色沈殿物が生成した。その沈殿物を吸引し、少量の氷水、エタノールおよびジエチルエーテルで洗浄した。収量:0.21g(78%)。
【0046】
3)1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金-2-グリシン-[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン]
0.02gの2-グリシンエチルエステル-[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン]を、0.5mlのクロロホルムに溶解させた。その後、15mlのNaOH溶液(1mol/L)をそこへ加えた。その溶液を10時間50~60℃で保温した。黄色水層を集めた後、15mlのNaOH溶液(1mol/L)を再度加えて、そのエステルを完全に加水分解した。HCl(1mol/L)を合わせた水層に加えて酸性にし、その結果、2-グリシン-[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン]の不溶性生成物が沈殿した。不溶性固体を吸引して乾燥させた。収量:0.025g。
【0047】
0.015gの1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金を0.15mlの水中に溶解させ、黄色ペーストを形成した。0.5mlのH2O中のAgNO3(0.009g)の溶液を、攪拌しながら4時間にわたって、光照射を避けながら、そのペーストに加えた。形成したAgI黄色沈殿物を廃棄し、残渣を少量の氷水で洗浄した。このとき、ろ液の1滴に1M KClの1滴を混合しても、白色濁りは生じなかった。
【0048】
0.015gの2-グリシン-[(1,2)-ベンゾイソセレンアゾール-3(2H)-オン]に、0.0036gのKOHと2mlの水を加えて、黄色懸濁液を得た。その黄色懸濁液を、90分間暗所で1,2-ジアミノシクロヘキサノ白金の攪拌溶液と混合し、ろ過し、減圧下に乾燥させて黄色結晶を得た。収量:25mg(50%)。FAB:m/z(M+1)566、Far-IR 340cm-1(Pt-O)、IR 420cm-1(Pt-N)。
【実施例5】
【0049】
化合物による癌細胞の成長阻害実験
SRBアッセイ(付着細胞)を実施例で適用した。癌細胞(3~5×104セル/ml)を、5%CO2と飽和湿度の空気中、37℃で24時間、96ウェルプレート(180μl/ウェル)中に接種した。異なる濃度の試験化合物の溶液20μlを各ウェルに接種し、5%CO2と飽和湿度の空気中、37℃で、指示された時間の間、培養を続けた。指示された時間の後、培養溶液を廃棄し、その後100μlの10%トリクロロ酢酸(TCA)を加え、4℃の冷蔵庫内に1時間置いて細胞を固定化させた。その溶液を廃棄し、そのプレートを蒸留水で洗浄した。遠心分離により乾燥した後、50μlのSRB溶液(1%HAcを含む0.4%)を各ウェルに加え、10分間周囲温度で置いた。過剰のSRB溶液を廃棄した後、96ウェルプレートを1%酢酸塩溶液で5回洗浄し、結合していないSRBを除去した。遠心分離により乾燥した後、そのプレートをさらに空気中で乾燥させた。100μlの10mmol/Lトリス溶液(pH10.5、塩基性、緩衝溶液なし)を各ウェルに加え、細胞と結合しているSRBを完全に溶解させた。均質化の後、各ウェルのOD値を96ウェルマイクロプレートリーダー(TECAN SUNRISE Magellan米国)により540nmで測定した。ここで、OD値のデータ=OD値(MTTまたはSRB+細胞)-OD値(MTTまたはSRB、遊離セル)。OD±SDは、平行な群に対してである。細胞生存率および薬物阻害率を以下の式に従い、算出した。
細胞生存率%=(処理した群のOD/コントロールのOD値)×100%
薬物阻害率%=[1-(処理した群のOD値)/コントロールのOD値]×100%
上記SRB方法に従い、E003をBel-7402(ヒト肝臓癌細胞)、KB(ヒト鼻咽頭癌細胞)およびHela(ヒト子宮頚癌細胞)中でスクリーニングした。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
JP0004500672B2_000013t.gif
さらに、E003のIC50を、上記と同じ方法を用いて9種類のヒト癌細胞ラインについて異なるときに測定した。癌細胞ラインの成長に対するE003の阻害効果は、表2に挙げた。
【0051】
【表2】
JP0004500672B2_000014t.gif

【実施例6】
【0052】
腫瘍重量に対する化合物の効果
ルイス肺癌組織を蘇生させ、通常の手法に従い二次培養させた。一片のルイス肺癌を、接種および成長のため、各C57マウス背中の皮下の位置に移植した。ルイス肺癌細胞を生理食塩水中に分散させ、106/mlの細胞懸濁液を形成した。0.2~0.3mlの懸濁駅を、各C57マウスに接種した。
【0053】
マウスを無作為に各群10匹ずつの3つの群に分けた。処理群において、マウスには50mg/kgの量のE003を腹腔内注射した。参照群においては、DDp、2mg/kg。負のコントロール群(溶媒群)においては、0.5% CMC-Na。各群の全体体積は、同じである。マウスが死ぬまで、移植の第2日めから3日間、E003を腹腔内により投与した。C57マウスを70%アルコールで殺菌した。ルイス肺癌組織を除去し、写真を撮影して、重量を測定した。その後、皮下腫瘍を更なる分析のためホルムアルデヒドで固定した。
【0054】
DDPおよびE003の腫瘍体積に対する効果を表3に示す。
【0055】
【表3】
JP0004500672B2_000015t.gif
表3の結果から、ルイス肺癌細胞におけるE003の阻害効果がDDPの効果より強いことが分る。
【実施例7】
【0056】
他の抗腫瘍剤と組み合わせた本発明の共同作用
この実施例において、他の抗腫瘍剤としてのタキソール、アドリアマイシンおよびシスプラチンのそれぞれと組み合わせた化合物E003の癌細胞の成長に対する効果を、実施例6に説明した方法と同様にして測定した。化合物003を、抗腫瘍剤と共に、後に、または前に、4.0時間の間隔をおいて投与した。
【0057】
【表4】
JP0004500672B2_000016t.gif

【0058】
【表5】
JP0004500672B2_000017t.gif

【0059】
【表6】
JP0004500672B2_000018t.gif
注記:
(1)記号および濃度
E:Eb、μmol/Lで;A:アドリアマイシン、mg/Lで;DDP:シスプラチン、μmol/Lで;T:タキソール、mg/Lで。
(2)投与方法
EおよびAは、例えば、投与方法を説明するための例である。E+Aは、EとAが表に挙げる異なる濃度で同時に投与されることを表す。E-Aは、Eの投与がAより4時間先に行われることを表す。A-Eは、Aの投与がEより4時間先に行われることを表す。他は、前記説明と同様である。
【実施例8】
【0060】
抗炎症活性
試験化合物E001、E002およびE003の抗炎症活性を、マウスのキシレン誘導耳水腫において測定した。マウスを1つの非処理コントロール群、3つの参照群および3つの処理群に無作為に分けた。各群には10匹の動物がいる。試験化合物、生理食塩水および参照薬物(インドメタシン、アスピリンおよびエブセレン)をそれぞれ経口で投与した。耳水腫を、投与の1時間後にキシレン(耳毎に0.5ml)を右耳の内表面に局所投与することにより誘導した。2時間後、マウスを殺した。直径8mmの耳重量における変化を正確なマイクロメーターで測定した。各化合物のキシレン誘導耳水腫に対する阻害率を、耳重量に従い算出し、その結果を表7に挙げた。
【0061】
【表7】
JP0004500672B2_000019t.gif
本発明の化合物は、アスピリンやインドメタシンよりも高い抗炎症活性を示したと結論づけられる。
【実施例9】
【0062】
血栓症に対する本発明の化合物の効果
オスSDラット(300~400g)を無作為に1つの非処理コントロール群(0.25%CMC)、1つのASA参照群(0.25%CMC、2、3のトゥイーン-80)および3つの処理群(化合物E001、E002およびE003)に分けた。各群には5匹の動物がいる。本発明の化合物および参照薬物を、それぞれ経口で30mg/kgの量で投与した。投与の1時間後に、それら動物にウレタンで麻酔をかけた。首動脈を手術して分離し、OT値を測定した(刺激条件:電気、3mA;時間、180秒)。この結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
JP0004500672B2_000020t.gif