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明細書 :グリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼおよびそれらをコードする遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2005-530497 (P2005-530497A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成17年10月13日(2005.10.13)
特許番号 特許第4477489号 (P4477489)
登録日 平成22年3月19日(2010.3.19)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
発明の名称または考案の名称 グリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼおよびそれらをコードする遺伝子
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   9/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C12N 9/10
請求項の数または発明の数 9
微生物の受託番号 CGMCC 0739
全頁数 17
出願番号 特願2004-503640 (P2004-503640)
出願日 平成14年8月5日(2002.8.5)
国際出願番号 PCT/CN2002/000539
国際公開番号 WO2003/095649
国際公開日 平成15年11月20日(2003.11.20)
優先権出願番号 02117647.7
02117991.3
優先日 平成14年5月10日(2002.5.10)
平成14年5月28日(2002.5.28)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成17年5月18日(2005.5.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504415968
【氏名又は名称】北京大学
発明者または考案者 【氏名】サン イェチェン
【氏名】チェン ヤンチェン
【氏名】リー フェンメイ
【氏名】ティエン チェシャン
【氏名】リン ミン
【氏名】ワン イーピン
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 米国特許出願公開第2002/0007053(US,A1)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,2001年 2月13日,Vol.98, No.4,p.1376-1380
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
C12N 1/00 - 1/38
C12N 5/10
C12N 9/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
CAplus(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号:2のヌクレオチド574~1803と少なくとも90%の相同性を有する断片を含む単離された核酸分子であって、該核酸分子をpACYC184に機能的に連結して得た組換え発現ベクターによってaroA欠損大腸菌を形質転換した場合、該大腸菌の5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)の機能を補完し、かつ該大腸菌をグリフォセート耐性の状態にできる、前記単離された核酸分子。
【請求項2】
(i) 配列番号:2 に示すヌクレオチド配列を含む、または
(ii) (i)のヌクレオチド配列の1つもしくは複数のヌクレオチドの置換、または3 つもしくは3 の倍数のヌクレオチドの欠失および/または付加により改変されたヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質がグリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)の活性およびグリフォセート耐性を含むことを特徴とする、
請求項1 記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
グリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)の活性およびグリフォセート耐性を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子によってコードされるタンパク質。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む核酸構築物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む、または請求項記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項6】
請求項記載の核酸構築物または請求項記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子、請求項記載の核酸構築物、または請求項記載のベクターを含む、請求項記載の宿主細胞またはその子孫細胞。
【請求項8】
グリフォセート耐性を有する、請求項または記載の宿主細胞。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の核酸分子を適切な調節配列と機能的に連結する段階、これを適切なベクターに導入する段階、該ベクターを選択した宿主細胞に導入する段階、および請求項1~のいずれか一項に記載の核酸分子によって活性のあるグリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)を発現させる段階を含む、請求項記載の宿主細胞を調製する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規グリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase:EPSPS)、シンターゼをコードする単離された核酸配列、前述の配列またはコード領域を含む核酸構築物、前述の配列もしくはコード領域または前述の核酸構築物を含むベクター、および前述の構築物またはベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)は、植物および細菌の芳香族アミノ酸合成系路に関与する重要な酵素である。グリフォセートはN-ホスフィルメチル(N-phosphylmetyl)グリシンとも称されるが、広域性の高効率出芽後除草剤である。グリフォセートは、EPSPSの基質の1つであるホスホエノールピルビン酸(PEP)の競合阻害剤である。グリフォセートはEPSPSによって触媒されるPEPおよび3-ホスフェート-シキメートから5-エノールピルル3-ホスフェート-シキメートへの変換を遮断し、これにより芳香族アミノ酸の合成の前駆体であるシキミ酸の合成系路が遮断され、植物および細菌が死滅する。
【0003】
植物のグリフォセート耐性は、グリフォセート耐性EPSPSをコードする遺伝子を植物ゲノムに安定に導入することによって達成され得る。既知グリフォセート耐性EPSPS遺伝子には主に2つのクラスのが存在する:クラスI(例えば、米国特許第4,971,908号;第5,310,667号;第5,866,775号を参照のこと)およびクラスII(例えば、米国特許第5,627,061号;第5,633,435号を参照のこと)。これらの遺伝子の植物ゲノムへの導入は成功しており、グリフォセート耐性植物細胞および植物が得られている。
【0004】
本発明は、グリフォセートに耐性である天然配列の新規EPSPSを見出すことを目的とする。
【発明の開示】
【0005】
概要
本発明の目的は、グリフォセート耐性EPSPSタンパク質をコードする新たに単離された核酸配列を提供することにある。
【0006】
本発明のさらなる目的は、新規グリフォセート耐性EPSPSタンパク質を提供することにある。
【0007】
本発明のさらなる目的は、前述の核酸配列を、選択した宿主細胞において前述の核酸配列を発現させるために必須である調節配列に機能的に連結することによって形成した核酸構築物を提供することにある。具体的には、調節配列には、状況に応じてプロモーター、エンハンサー、リーダー配列、ポリアデニル化シグナル、ならびに転写および翻訳のための開始および終結配列が含まれる。
【0008】
本発明のさらなる目的は、前述の核酸配列または核酸構築物を含むベクターを提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、前述の構築物またはベクターで形質転換された宿主細胞を提供することにある。宿主細胞は適切な条件下で前述の核酸配列によってコードされるタンパク質を発現することができ、タンパク質が酵素的EPSPS活性およびグリフォセート耐性を示すことを可能にし、それによって宿主細胞がグリフォセート耐性を獲得する。
【0010】
本発明のさらなる目的は、前述の宿主細胞およびその子孫細胞を提供することにある。この細胞は前記の核酸配列もしくはコード領域、または核酸構築物もしくはベクターを含み、グリフォセート耐性である。
【0011】
本発明の他の目的を、以下の説明および実施例において説明する。
【0012】
発明の説明
本発明は、天然配列を有する新規グリフォセート耐性5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)を提供する。「天然配列」という用語は、突然変異誘発によって、または遺伝子操作等の生物学的もしくは化学的修飾によって改変されていない配列を表す。本発明は、上記EPSPSの単離されたアミノ酸配列(配列番号:3)を提供する。配列番号:3の1つもしくは複数のアミノ酸残基の欠失、付加、および/または置換により改変された任意のアミノ酸配列も、改変された配列がEPSPS活性およびグリフォセート耐性のタンパク質をコードするという条件で、本発明の範囲に含まれる。
【0013】
本発明はさらに、上記EPSPSをコードする単離された核酸配列(配列番号:2、特にコード領域)を提供する。配列番号:2の1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失、付加、および/または置換により改変された任意の核酸配列も、改変された配列がEPSPS活性およびグリフォセート耐性のタンパク質をコードするという条件で、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
本発明の核酸構築物は、本発明のEPSPSコード核酸配列を他の同種または異種の配列に機能的に連結することにより構築される。
【0015】
本発明の方法により、本発明の核酸構築物または単離された核酸配列をベクターに組み入れ、選択した宿主細胞をこのベクターで形質転換する。本発明のEPSPS酵素が発現される。このようにして、組換え宿主細胞にグリフォセート耐性が付与される。または、ベクターで形質転換する代わりに、本発明の単離された核酸配列または核酸構築物を、エレクトロポレーション法等の従来法により宿主細胞内に直接導入する。本発明のEPSPS酵素が発現され、宿主細胞にグリフォセート耐性が付与される。このようにして得られたベクターおよび組換え宿主細胞、ならびに細胞を得るための方法も、本発明の範囲内に含まれる。
【0016】
定義
本明細書で用いる「パーセント(%)配列相同性」という用語は、配列を整列させ必要であればギャップを導入して最大パーセント配列相同性を達成した後の、標的配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合を指し、保存的置換を配列相同性の一部と見なさない。本明細書での配列には、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列が含まれる。パーセント(%)配列相同性の決定は、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、またはMegalign(DNASTAR)等の公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当技術分野の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大アライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0017】
本明細書で用いる「核酸構築物」という用語は、天然遺伝子から単離された、または核酸断片を天然に存在しない形で結合して改変した、一本鎖または二本鎖の核酸分子を指す。核酸構築物が本発明のEPSPSの発現に必要な調節配列を全て含む場合、「核酸構築物」という用語は「発現カセット」という用語と同義である。
【0018】
本明細書で用いる「調節配列」という用語には、本発明のポリペプチドの発現に必要なまたは有利な成分がすべて含まれる。調節配列はそれぞれ、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して固有であってもまたは外来性であってもよい。そのような調節配列には、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、および転写ターミネーターが含まれるが、これらに限定されない。調節配列には、少なくともプロモーターならびに転写および翻訳の終結シグナルが含まれる。調節配列と、異種性ポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域との連結を容易にする特定の制限酵素部位を導入するために、調節配列がリンカーと共に提供される場合もある。
【0019】
「機能的に連結する」という用語は、本発明の単離された核酸配列の、その配列と同種または異種の任意の他の配列への、それらが総合して産物をコードできるような連結を表す。必要に応じて、制限酵素切断等の方法によりそのような配列を分離することができる。本明細書に開示する同種または異種性配列は、選択した宿主において本発明の単離された核酸配列の発現を指示する任意の調節配列、または本発明の単離された核酸配列と共に融合タンパク質をコードする配列等の任意の配列であってよい。
【0020】
本明細書で用いる「宿主細胞」という用語は、本発明の単離された核酸配列を受け取り、またはそのような配列を含む構築物もしくはベクターを受け取り、細胞内にそれらを安定に保持し得る任意の細胞を指す。宿主細胞は、本発明の単離された核酸配列を含む場合、この配列によって決まる特性を獲得すると考えられる。
【0021】
詳細な説明
本発明者は、驚くべきことに新規グリフォセート耐性EPSPSコード遺伝子を発見し単離する。上記遺伝子のコード配列(配列番号:2)およびコード領域(CDS、ヌクレオチド574~1803)を本明細書に開示する。上記CDSによってコードされるアミノ酸配列(配列番号:3)もまた、本明細書に開示する。DNAMANバージョン4.0をCLUSTAL型式と併用し、配列番号:3に示すアミノ酸をEPSPSクラスIおよびIIの既知配列と整列させる。本発明の配列が先行特許によって請求される配列を少しも含まないことが認められる(図2を参照のこと)。GenBankタンパク質配列バンクのBLAST検索から、本発明の配列番号:3は、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のEPSPSアミノ酸配列と37%相同であり、大腸菌由来のEPSPSアミノ酸配列と20%相同であることが示される(図2を参照のこと)。NCBI-BLAST検索により、配列番号:2のヌクレオチド574~1803に示す配列がいずれの既知ヌクレオチド配列とも相同であると認められないことが示される。したがって、本発明に記載する核酸配列およびタンパク質は新規である。
【0022】
したがって本発明の1つの局面は、配列番号:2に示す核酸配列を含みかつグリフォセート耐性EPSPSをコードする、単離された核酸配列に関する。
【0023】
本発明はまた、グリフォセート耐性EPSPSをコードする、配列番号:2のヌクレオチド574~1803に示す単離された核酸配列に関する。
【0024】
本発明はまた、配列番号:2または配列番号:2のヌクレオチド574~1803の配列において1つもしくは複数のヌクレオチドを変更することにより、または3つもしくは3の倍数のヌクレオチドを欠失および/または付加することにより得られ、5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)の活性およびグリフォセート耐性を有するタンパク質をコードし得る核酸配列に関する。ヌクレオチドの変更、欠失、および付加は、当技術分野の技術の範囲内にあって従来通りである。
【0025】
本発明はまた、配列番号:2または配列番号:2のヌクレオチド574~1803によって規定される配列と、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約66%、好ましくは少なくとも約67%、好ましくは少なくとも約68%、好ましくは少なくとも約69%、好ましくは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約71%、好ましくは少なくとも約72%、好ましくは少なくとも約73%、好ましくは少なくとも約74%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約76%、好ましくは少なくとも約77%、好ましくは少なくとも約78%、好ましくは少なくとも約79%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約81%、より好ましくは少なくとも約82%、より好ましくは少なくとも約83%、より好ましくは少なくとも約84%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約86%、より好ましくは少なくとも約87%、より好ましくは少なくとも約88%、より好ましくは少なくとも約89%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、より好ましくは少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約93%、より好ましくは少なくとも約94%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%相同であるような、相同的な核酸配列に関する。そのような配列は、それがグリフォセート耐性EPSPS活性を有するタンパク質をコードするという条件で、本発明の範囲内である。
【0026】
本発明の単離された核酸配列を、本発明の実施例に記載する方法により天然からクローニングすることができる。クローニング法は、関心対照のタンパク質をコードする核酸配列を含む核酸断片を単離して制限酵素で切断する段階、その断片をベクターに導入する段階、およびベクターを宿主細胞内に取り込む段階を含んでもよく、それによって核酸配列のコピーまたはクローンが宿主細胞内で複製される。しかし、本発明に開示するヌクレオチド配列に従って自動化ヌクレオチド合成機(Applied BiosystemsのABI394 DNA合成機等)を用いて配列を合成する、または2000年10月4日に開示された中国特許出願第99103472.4号の方法を用いて、核酸配列の断片を別々に合成し、従来のリガーゼおよびベクターを使用し断片を連結して全長配列にする方が、より容易であるかもしれない。
【0027】
本発明の核酸配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、完全合成配列、またはそれらの任意の混合物であってよい。
【0028】
本発明の別の局面は、配列番号:3に示すアミノ酸配列を含む、EPSPS活性およびグリフォセート耐性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列に関する。
【0029】
本発明はさらに、タンパク質のアミノ酸配列が配列番号:3のアミノ酸配列において1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失、および/または付加を含むが、EPSPS活性およびグリフォセート耐性は残存する、EPSPS活性およびグリフォセート耐性を有するタンパク質をコードする単離された核酸配列に関する。上記の、1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失、および/または付加は、当技術分野の従来技法の範囲内である。そのようなアミノ酸の変化は、タンパク質の折りたたみおよび/または活性に顕著な影響のない保存的アミノ酸置換である、特徴の軽微な変化であることが好ましい;一般に約1~30アミノ酸の軽微な欠失;アミノ末端におけるメチオニン残基1個の伸長等の、アミノ末端またはカルボキシル末端における軽微な伸長;例えば約20~25残基長の軽微なリンカーペプチド。
【0030】
保存的置換の例は、以下のアミノ酸群内に起こる置換である:塩基性アミノ酸(例えば、Arg、Lys、およびHis)、酸性アミノ酸(例えば、GluおよびAsp)、極性アミノ酸(例えば、GlnおよびAsn)、疎水性アミノ酸(例えば、Leu、Ile、およびVal)、芳香族アミノ酸(例えば、Phe、Try、およびTyr)、および小分子アミノ酸(例えば、Gly、Ala、Ser、Thr、およびMet)。通常特定の活性を変更しないアミノ酸の置換は当技術分野で周知であり、1979年にNew York Academic Pressより出版されたN. NeurathおよびR.L. Hill、Proteinによって記載されている。最も一般的な置換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、およびAsp/Gly、ならびにこれらの逆の置換である。
【0031】
当業者にとって、そのような置換は機能に重要な領域以外の領域で起こり、活性のあるポリペプチドが生じ得ることは明白である。本発明の単離された核酸によってコードされるポリペプチドに対して、機能にとって重要でありしたがって置換しないように選択されるアミノ酸残基は、例えば部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャン突然変異誘発法等の当技術分野で周知の方法によって同定され得る(例えば、CunninghamおよびWells、1989, Science 244: 1081-1085を参照のこと)。後者の技法は、分子内の正に荷電した残基それぞれに変異を導入する段階、および変異した分子のグリフォセート耐性EPSPS活性を測定し、それによって活性に重要なアミノ酸残基を決定する段階を含む。基質-酵素が相互作用する部位は3D構造の解析によっても決定することができ、3D構造は、核磁気共鳴、結晶学、または光親和標識等の技法により決定することが可能である(例えば、de Vosら、1992, Science 255: 306-312;Smithら、1992, J. Mol. Biol 224: 899-904;Wlodaverら、1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照のこと)
【0032】
本発明はまた、配列番号:3に示すアミノ酸配列と、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約66%、好ましくは少なくとも約67%、好ましくは少なくとも約68%、好ましくは少なくとも約69%、好ましくは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約71%、好ましくは少なくとも約72%、好ましくは少なくとも約73%、好ましくは少なくとも約74%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約76%、好ましくは少なくとも約77%、好ましくは少なくとも約78%、好ましくは少なくとも約79%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約81%、より好ましくは少なくとも約82%、より好ましくは少なくとも約83%、より好ましくは少なくとも約84%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約86%、より好ましくは少なくとも約87%、より好ましくは少なくとも約88%、より好ましくは少なくとも約89%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、より好ましくは少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約93%、より好ましくは少なくとも約94%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%相同であるような、相同的なアミノ酸配列に関する。そのような配列は、この相同的配列を含むタンパク質がグリフォセート耐性EPSPS活性を有するという条件で、本発明の範囲内である。
【0033】
本発明の単離された核酸配列によってコードされるタンパク質は、配列番号:3に示すアミノ酸配列のEPSPS活性の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも100%を有する。
【0034】
本発明はまた、前述の核酸配列またはそのコード配列(例えば、配列番号:2のヌクレオチド574~1803)を含む核酸構築物に関する。
【0035】
本発明の核酸構築物は、選択した宿主細胞における上記配列の発現に必須の調節配列をさらに含む。核酸構築物において、調節配列は上記の単離された核酸配列に機能的に連結してある。
【0036】
調節配列はプロモーターであってよく、これにはポリペプチドの発現を指示する転写調節配列が含まれる。プロモーターは、変異プロモーター、切断型プロモーター、または異種接合性プロモーター等の、選択した細胞において転写活性を有する任意の核酸配列であってよい。そのようなプロモーターは、細胞外または細胞内ペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。そのようなポリペプチドは、細胞にとって同種であってもなくてもよい。原核細胞において使用される様々なプロモーターが当技術分野において周知である。
【0037】
調節配列はまた、転写を終結するために選択した宿主細胞によって認識される適切な転写ターミネーター配列であってもよい。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3'末端に機能的に連結する。選択した宿主細胞において機能的である任意のターミネーターを、本発明に用いることができる。
【0038】
調節配列はまた、細胞での翻訳に重要なmRNAの非翻訳領域である適切なリーダー配列であってもよい。リーダー配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の5'末端に機能的に連結する。選択した宿主細胞において機能的である任意のリーダー配列を、本発明に用いることができる。
【0039】
調節配列はまた、ポリアデニル化配列であってもよい。この配列を核酸配列の3'末端に機能的に連結すると、転写の際に、この配列が転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するシグナルとして細胞によって認識される。選択した宿主細胞において機能的である任意のポリアデニル化配列を、本発明に用いることができる。
【0040】
核酸構築物は、転写活性化因子(例えば、トランス作用性因子)、パートナータンパク質、およびプロセシングタンパク質等の、外来ポリペプチドの発現を指示するのに有用な1つまたは複数の因子をコードする1つまたは複数の核酸配列をさらに含んでもよい。宿主細胞、特に細菌細胞および植物細胞において効果的な任意の因子を本発明に用いることができる。1つまたは複数のそのような因子をコードする核酸は、必ずしも外来ポリペプチドをコードする核酸と直列に連結するとは限らない。
【0041】
当業者に周知の方法を用いて、プラスミドまたはウイルス等の従来のベクターにおいて上記の核酸および調節配列を結合し、本発明の「組換え発現ベクター」を作製することができる(J. Sambrook、E.F. Fritsch、およびT. Maniatus、1989, Molecullar Cloning, laboratory manual, 第2版、Cold Spring, NYを参照のこと)。ベクターは、1つまたは複数の都合のよい制限酵素部位を含んでよい。ベクターの選択は一般に、用いるベクターと宿主細胞の適合性に依存する。ベクターは線状または閉環状であってよく、例えばプラスミド(染色体外成分)、ミニ染色体、または人工染色体等のように、染色体外物質として染色体の複製から独立して自立的に複製可能であってよい。ベクターは、自己複製を確実にする任意の手段を含み得る。または、ベクターはゲノム内に組み込まれ、細胞内に導入された後には染色体と共に複製する。ベクター系は単一のベクターもしくはプラスミドであっても、または2つもしくはそれ以上のベクターもしくはプラスミド(全体で関心対象の核酸配列を含む)であっても、またはトランスポゾンであってもよい。
【0042】
宿主細胞のゲノムに組み込むには、ベクターは相同的組換えによるベクターのゲノム内への組み込みを指示するさらなる核酸配列を含み得る。さらなる核酸配列により、ベクターのゲノムへの正確な位置での組み込みが可能になる。正確な位置への組み込みの可能性を増すため、組み込みエレメントは好ましくは、相同的組み込みの可能性を増すために相当する標的配列に極めて相同的な十分なヌクレオチド数、例えば100~1500塩基対、好ましくは400~1500塩基対、最も好ましくは800~1500塩基対を含むべきである。組み込みエレメントは、細胞のゲノム内の標的配列に相同的な任意の配列であってよい。さらに、組み込みエレメントは非コード核酸配列であってもコード核酸配列であってもよい。または、ベクターは非相同的組み込みにより細胞のゲノム内に導入されてもよい。
【0043】
自律的複製をする状況では、ベクターはさらに、細菌細胞および植物細胞においてベクターの自律的な複製を可能にする複製開始点を含み得る。
【0044】
本発明はまた、本発明の核酸配列を含む組換え「宿主細胞」に関する。本発明の核酸配列を含む核酸構築物またはベクターを宿主細胞内に導入することが可能であり、その結果本発明の核酸配列が染色体に組み込まれるかまたはベクターが自律的に複製し、それにより本発明の核酸配列が宿主細胞によって安定に発現されて、宿主細胞がグリフォセート耐性になる。
【0045】
宿主細胞は細菌細胞等の原核細胞であってよいが、より好ましくは植物細胞等の真核細胞であってよい。
【0046】
一般的な細菌細胞には、バシラス属等のグラム陽性菌、またはエシェリキア族もしくはシュードモナス属等のグラム陰性細菌が含まれる。好ましい態様において、細菌宿主細胞は大腸菌の細胞である。
【0047】
細菌宿主細胞への発現ベクターの導入は、プロトプラスト形質転換法(ChangおよびCohen、1979, General Molecular Genetics 168: 111-115を参照のこと)、コンピテント細胞の使用(YoungおよびSpizizin、1961, J Bacteriol. 81 : 823-829、またはDubnauおよびDavidoff-Abelson、1971, J. Mol. Biol. 56 : 209-221を参照のこと)、エレクトロポレーション法(ShigekawaおよびDower、1988, Biotech. 6 :742-751を参照のこと)、または接合(KoehlerおよびThorne、1987, J. Bacteriol. 169 : 5771-5278を参照のこと)によって達成することができる。
【0048】
実施例
実施例1 グリフォセート耐性株の単離
中国、河北省のグリフォセート生産工場の近隣から試料を採取し、希釈してグリフォセートを含む培地に塗布した。グリフォセートに対する高い耐性およびグリフォセート分解能を有する全部で48株を単離する。そのうちの1株、4G-1は400 mMグリフォセートを含む培地上で増殖可能であり、100 mg/Lアンピシリンに耐性である。さらなる研究のためにこの菌株を選択する。
【0049】
実施例2 グリフォセート耐性株の同定
a) 菌株4G-1の全DNAの少量調製
菌株4G-1を100 mg/Lアンピシリンを含むLB液体培地3 mlに播種し、振盪しながら28℃で一晩培養する。培養物を12000 rpmで遠心分離し、ペレットを0.5 mlの溶液I(10 mM NaCl、20 mM Tris-HCl pH 8.0、1 mM EDTA)に再懸濁する。プロテアーゼK(Merck、ドイツ)およびSDSを、それぞれ最終濃度10μg/mlおよび0.5%になるように添加する。次に、慎重に反転させながら懸濁液を混合し、6時間を超える期間50℃に置く。等量のフェノールを添加する。混合液を慎重に反転し、室温に10分間置く。混合物を、室温にて12000 rpmで5分間遠心分離する。チップ(AxyGen、米国)を用いて上清の水層を回収し、等量のフェノール/クロロホルムでペレットを再抽出する。沈殿させるため、上清に10% 3M NaACおよび2.3倍量のエタノールを添加する。混合物を、12000 rpmで-10℃で25分間遠心分離する。上清を除去した後、70%エタノール500μlで沈殿を洗浄し、12000 rpmで1分間遠心分離する。上清を完全に除去した後、沈殿をサーバント(Savant)内で20分間、または37℃のインキュベーター内で1時間乾燥させる。溶解させるため、沈殿に100μlのTE溶液(10 mM Tris-Cl、1 mM EDTA、pH 8.0)を添加し、さらなる研究のために-20℃で凍結する。
【0050】
b) 菌株4G-1の16S rRNAのクローニング
16S rRNAの一対のユニバーサルプライマー(プライマー1: 5’AGA GTT TGA TCA TGG CTC AG 3’、およびプライマー2: 5’TAC GGT TAC CTT GTT ACG ACT T 3’)を合成する。このプライマーを用いて、ロボサイクラー(Robocycler)40(Stratagene)でPCR増幅を行う。反応系は、鋳型としての菌株4G-1の全DNA 1μl、緩衝液5μl、10μmol dNTP 4μl、20 pmol/μlプライマー1 1μl、20 pmol/μlプライマー2 1μl、および脱イオン水37μlである。反応条件は以下の通りである:5U Pyrobest Taq DNAポリメラーゼ1μlを添加して94℃で10分間、次に94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で2分間の30サイクル、および72℃でさらに10分間最終的に伸長させる。約1.5 kbの断片が得られる。PCR産物精製キットの製造業者、Boehringerの提供する方法に従って、PCR産物を精製する。
【0051】
精製したPCR産物をポリA(デオキシアデノシン)反応に供する。反応系は以下の通りである:精製PCR産物20μl(2μg)、緩衝液5μl、Taq DNAポリメラーゼ(DinGuo Ltd、北京)1μl(5U)、5μmol dATP 4μl、および脱イオン水20μl。
【0052】
得られた産物をPCR産物の精製法により精製し、製造業者Takaraの説明に従ってTベクター(Takara、大連)に連結し、プラスミドpKU2000を得る。配列決定の結果を配列番号:1に示す。米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の配列アラインメント用BLASTソフトウェアおよびBLASTP 2.2.2[2001年12月14日]データベースを用いて、上記の配列がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の16S rRNAのヌクレオチド配列と99%相同であることが見出される。したがって、菌株4G-1はP. プチダであると考えられ、P. プチダ4G-1(P. P4G-1と略す)と命名する。上記の株は、2002年4月30日に中国普通微生物保存管理中心(Chinese General Microbiological Culture Centre:CGMCC)(中国、北京、中関村)にアクセッション番号CGMCC 0739として寄託した。
【0053】
実施例3 菌株4G-1のゲノムライブラリーの作製
a) 菌株4G-1の全DNAの大量調製
菌株P.P4G-1を250 mlフラスコ中のLB培地100 ml(100 mg/Lアンピシリンを添加)に播種し、200 rpmで振盪しながら28℃で一晩培養する。培養物を8000 rpmで5分間遠心分離した後、ペレットを溶液I 14 mlに再懸濁する。プロテアーゼK(Merck、ドイツ)およびSDSを、それぞれ最終濃度10μg/mlおよび0.5%になるように添加する。慎重に反転させて懸濁液を混合し、6時間を超える期間50℃に置く。等量のフェノールを添加する。混合液を慎重に反転して混合し、室温に10分間置く。混合液を、室温で4000 rpmにて20分間遠心分離する。末端の幅が広いチップを用いて上清の水層を回収し、等量のフェノール/クロロホルムで再抽出する。沈殿させるため、上清に10% 3M NaAC(pH 5.5)および2.3倍量のエタノールを添加する。ガラス棒を用いてDNAを慎重に抽出し、70%エタノールで洗浄する。エタノールを除去した後、DNAを乾燥させる。溶解させるために4℃のTE溶液(pH 8.0)2 mlを添加して24時間置き、約1 mgの全DNAが得られる。0.3%アガロースゲル電気泳動により、DNA断片は80 Kbを超えることが同定される。
【0054】
b) 全DNAの切断産物の回収
全DNA200μl(100μg)を、5Uの制限エンドヌクレアーゼSau3AIを用いて室温でそれぞれ20分間、30分間、および45分間切断する。産物を混同し、最終濃度0.25 mMになるようにEDTAを添加し、等量のフェノール/クロロホルムで抽出する。沈殿させるため、上清に10% 3M NaACおよび2.3倍量のエタノールを添加する。沈殿を70%エタノールで洗浄し、上記のように乾燥させる。次に沈殿をTE 200μlに溶解し、Beckman sw28超遠心チューブ中の10~40%ショ糖密度勾配12 mlに重層する。試料を20℃のBeckman sw28ローターに設置し、120000gで18時間遠心分離する。上層から各画分(0.5 ml)を回収し、15μl量を0.3%アガロースゲル電気泳動で解析する。30~40 kbのDNAを含むバンドを混同し、2倍量の脱イオン水および7倍量のエタノールを添加して-20℃で一晩沈殿させ、70%エタノールで洗浄し、乾燥させ、TE 50μlに溶解する。
【0055】
c) 4G-1のゲノムライブラリーの作製
Stratageneの方法を用いて、SuperCos1コスミドベクターをXba I、アルカリホスファターゼ、およびBamHIで切断した後、これを上記の単離した全DNA断片と連結する。
【0056】
Gigapack III Goldのパッケージング抽出物を用いて、連結産物をインビトロでパッケージングする。Stratageneの方法により、Stratageneキットを用いて大腸菌XL1-Blue MR(Stratagene)でライブラリーの力価を測定する。次に、同製造業者の説明に従い、得られたライブラリーを増幅して保存する。
【0057】
実施例4 グリフォセート耐性EPSPS遺伝子の単離、スクリーニング、配列決定、および解析
a) グリフォセート耐性遺伝子ライブラリーのスクリーニング
上記のライブラリーの1 ml保存溶液を遠心分離し、上清を除去し、ペレットを無菌の生理食塩水1 mlに再懸濁する。遠心分離を再度繰り返し、上清を除去し、ペレットを無菌の生理食塩水1 mlに再懸濁する。約103細菌/プレートの密度で、懸濁液を10 mMグリフォセート-50 mg/Lアンピシリンプレート(20 mM硫酸アンモニウム;0.4%グルコース;10 mMグリフォセート;0.5 mMリン酸水素二カリウム;0.1mg/L硫酸第二鉄;0.5g/L硫酸マグネシウム;0.5g/L塩化カルシウム;2.1 g/L塩化ナトリウム;50 mM Tris (pH 7.2);5 mg/LビタミンB1;15g/Lアガロース)に塗布する。プレートを37℃で一晩培養する。1つの株が得られ、これをBDSと命名する。この菌株の保有するコスミドをpKU2001と命名する。
【0058】
b) グリフォセート耐性遺伝子の単離
菌株BDSを50 mlフラスコ中のLB 20 ml(50 mg/Lアンピシリンを添加)に播種し、300 rpmで振盪しながら37℃で一晩培養する。遠心分離して菌株を回収する。Molecullar cloning, laboratory manual、前記のアルカリ法により、プラスミドpKU2001を抽出する。次に、このプラスミドをコスミドベクターと同様に大腸菌XL1-Blue MR(Stratagene)に形質転換する。菌株を10 mMグリフォセートプレートに画線する。空のコスミドベクターのみを保有する菌株はグリフォセート培地上で増殖できないが、pKU2001を保有する菌株は十分に増殖し、このことからpKU2001がグリフォセート耐性遺伝子を有することが示唆される。
【0059】
pKU2001をSau3AIで切断する。0.7%アガロースゲル電気泳動により2~4 kbのDNA断片を回収し、BamH Iで切断し脱リン酸したpUC18ベクターに連結する(Yanisch-Perron, C.、Vieria, J.、およびMessing, J. 1985, Gene 33:103-119)。連結産物を大腸菌XL1-Blue MR(Stratagene)に形質転換し、菌株を50 mg/lアンピシリンを添加した10 mMグリフォセートプレートに画線する。プレートを37℃で一晩培養すると、多数のクローンが得られる。クローンを拾い上げ、プラスミドを抽出する。約2 kbの外因性断片を有するプラスミドを選別し、これをpKU2002と命名する。プラスミドpKU2002および空のベクターpUC18を、それぞれ大腸菌XL1-Blue MR(Stratagene)に形質転換する。菌株を50 μg/lアンピシリンを添加した10 mMグリフォセートプレートに画線する。空のpUC18ベクターを保有する菌株はグリフォセートプレート上で増殖できないのに対し、pKU2002プラスミドを保有する菌株は十分に増殖し、このことからpKU2002がグリフォセート耐性遺伝子を有することが示唆される。
【0060】
c) pKU2002を配列決定し、配列番号:2に示す1914 bpの全長配列が得られる。
【0061】
d) pKU2002を、DNASISソフトウェアを用いる配列解析に供する。ユニークなオープンリーディングフレーム(ORF、配列番号:2のヌクレオチド574~1803)と考えられる配列が決定される。コードされるアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
【0062】
e) タンパク質配列を、米国国立バイオテクノロジー情報センター(American National Center for Biotechnology Information :NCBI)のGenBankタンパク質配列データベースのBLAST検索にかける。このタンパク質の配列がクロストリジウム・アセトブチリカムのEPSPSのアミノ酸配列と37%相同であり、大腸菌のEPSPSのアミノ酸配列と20%相同であることが見出される。1230 bpの配列がEPSPシンターゼをコードすると考えられ、この遺伝子をpparoAと命名する。解析から、上記の遺伝子はどのクラスのEPSPSにも属さず、新規EPSPS遺伝子(クラスIII)であることが示される。大腸菌、クロストリジウム・アセトブチリカム、およびP. P4G-1のEPSPSアミノ酸配列アラインメントを図2に示す。
【0063】
f) 下線で示したBamH I部位を含む一対のプライマーを設計する:
プライマー3:5’-CGG GAT CCT AAG TAA GTG AAA GTA ACA ATA CAG C-3’
プライマー4:5’-CGG GAT CCC TTC TTC GGA CAA TGA CAG AC-3’
pKU2001を鋳型として用いてPCR増幅を行う。増幅された断片をBamH Iで切断し、pUC18に挿入してpKU2003を得る。配列決定により、ミスマッチ塩基が導入されていないことが示される。pKU2003をBamH Iで切断し、pACYC184のBamH I部位にフォワード方向に挿入して(Chang, A.C.Y.およびCohen, S.N.、1978, J. Bacteriol. 134: 1141-1156)プラスミドpKU2004を得るが、このマップを図1に示す。このプラスミド内のpparoA遺伝子の転写は、pACYC184由来のプロモーターTcrによって、開始される。


【0064】
実施例5 大腸菌aroA遺伝子のクローニングおよびそのグリフォセート耐性の部位特異的突然変異誘発(対照試験)
15 mlチューブ中のLB液体培地3 mlに大腸菌ET8000(MacNeil, T.、MacNeil D.、およびTyler, B. 1982 J. Bacteriol. 150: 1302-1313)を播種し、37℃で振盪しながら一晩培養する。菌株を遠心分離し、上記の方法に従って全DNAを抽出する。
【0065】
下線で示したBamH I部位を含む一対のプライマーを設計する:
プライマー5:5’-CGG GAT CCG TTA ATG CCG AAA TTT TGC TTA ATC-3’
プライマー6:5’-CGG GAT CCA GGT CCG AAA AAA AAC GCC GAC-3’
【0066】
大腸菌の全DNAを鋳型として用いて増幅することにより、大腸菌においてEPSPSタンパク質をコードする大腸菌aroA遺伝子を得る。この遺伝子ををBamH Iで切断し、pUC18に挿入してpKU2005を得る。プラスミドの配列を解析し、配列番号:10を得る。NCBIのGenBankデータの大腸菌の既知のEPSPS遺伝子配列とのアライメントから、この配列が正しいことがわかる。プラスミドpKU2005をBamH Iで切断した後、小さい断片を回収してpACYC184のBamH I部位のフォワード方向に挿入してプラスミドpKU2006を得る。
【0067】
大腸菌のaroA遺伝子に部位突然変異を起こす。287位のグアニンをシトシンに変異させる。次に、大腸菌EPSPSタンパク質の96位のグアニンをアラニンに変異させる。同様に、この遺伝子断片をpACYC184のBamH I部位に挿入してプラスミドpKU2007を得る。
【0068】
実施例6 大腸菌aroA-株のEPSPS機能相補実験
pACYC184、pKU2004、pKU2006、およびpKU2007を、それぞれ大腸菌AB2889(大腸菌aroA-株、エール大学による)に形質転換する。これらを、最終濃度25 mg/Lのクロラムフェニコールを含むM63培地(13.6 g/L KH2PO4、0.5 mg/L FeSO4-7H2O、20 mM (NH4)2SO4、0.4%グルコース、1 mM硫酸マグネシウム、0.5 mg/LビタミンB1)に画線して培養する。結果を表1に示す。
【0069】
以下のようにaAAS成分を添加する:
100 mg/L フェニルアラニン
100 mg/L チロシン
100 mg/L トリプトファン
5 mg/L p-アミノ安息香酸
5 mg/L 2, 3-ジヒドロキシ安息香酸
5 mg/L ヒドロキシ安息香酸。
【0070】
(表1)aroA欠損大腸菌株のEPSPS機能相補およびグリフォセート耐性実験
JP0004477489B2_000002t.gif
【0071】
同時に、液体培養条件で菌株の増殖曲線を測定する。結果から、大腸菌の対照aroA遺伝子(pKU2006)と同様に、pKU2004の有する遺伝子もaroA欠損大腸菌AB2899のEPSPS機能を完全に相補し得ることから、このプラスミドの有する1230 bp核酸配列がEPSPSコード遺伝子であり、この遺伝子によってコードされるEPSPSがグリフォセート耐性を有することが示される。
【0072】
実施例7 新規EPSPS遺伝子のグリフォセート耐性
プラスミドpKU2004、pKU2006、およびpKU2007を、それぞれ大腸菌XL1-Blue MRに形質転換する。菌株をM63培地に別々に播種して一晩培養し、その後様々な濃度のグリフォセートを添加したM63培地に移す。増殖曲線を測定する。結果から、pKU2006で形質転換された大腸菌は5 mMグリフォセート培地で培養すると有意に阻害され、40 mMグリフォセート培地では増殖しないことが示される。これとは対照的に、pKU2004およびpKU2006で形質転換された大腸菌は、40 mMグリフォセート培地で培養する場合に明らかに阻害されず、pKU2004で形質転換された大腸菌は120 mMグリフォセート培地で十分に増殖する(図3:増殖曲線)。
JP0004477489B2_000003t.gif
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】プラスミドpKU2004のマップを示す。
【図2】シュードモナス・プチダ P. P4G-1のEPSPSと様々な既知EPSPSとのアミノ酸配列アラインメントを示す。四角内および陰影部分に示す配列は、先行特許で特許請求されている。
【図3】様々なグリフォセート濃度での大腸菌XL1-BLUE MRの増殖曲線を示す。大腸菌XL1-BLUE MRは異なるEPSPS遺伝子を保有する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図2a】
2
【図2b】
3
【図2c】
4
【図2d】
5
【図2e】
6
【図3】
7