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明細書 :荒漠ニクジュヨウエキス含有アポトーシス抑制剤、DNA損傷抑制剤、活性酸素(ROS)抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5351543号 (P5351543)
公開番号 特開2010-184901 (P2010-184901A)
登録日 平成25年8月30日(2013.8.30)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
公開日 平成22年8月26日(2010.8.26)
発明の名称または考案の名称 荒漠ニクジュヨウエキス含有アポトーシス抑制剤、DNA損傷抑制剤、活性酸素(ROS)抑制剤
国際特許分類 A61K  36/18        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  39/06        (2006.01)
FI A61K 35/78 C
A61P 43/00 105
A61P 39/06
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2009-030761 (P2009-030761)
出願日 平成21年2月13日(2009.2.13)
審査請求日 平成23年9月29日(2011.9.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
【識別番号】500212103
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称】PEKING UNIVERSITY
発明者または考案者 【氏名】韓 力
【氏名】屠鵬飛
【氏名】馬治中
個別代理人の代理人 【識別番号】100105061、【弁理士】、【氏名又は名称】児玉 喜博
【識別番号】100150681、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 荘助
【識別番号】100122954、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷部 善太郎
審査官 【審査官】鶴見 秀紀
参考文献・文献 特開2005-538131(JP,A)
XIONG Q et al,Acteoside inhibits apoptosis in D-galactosamine and lipopolysaccharide-induced liver injury,Life Sci ,1999年,Vol.65,No.4,Page.421-430
XIONG Q et al,Antioxidative Effects of Phenylethanoids from Cistanche deserticola,Biol Pharm Bull ,1996年,Vol.19,No.12,Page.1580-1585
調査した分野 A61K 36/00-36/9068
A61P 39/06
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
荒漠ニクジュヨウ(学名:Cistanche deserticola Y. C. Ma)エタノール抽出エキスからなる老化に伴う骨髄単核球のアポトーシス抑制剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシスの抑制やDNAの損傷を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは様々な疾患と深い関わりを有する生命現象であり、アルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病、脳虚血等の神経性疾患は神経細胞のアポトーシスにより引起される。エイズなどの疾患において生じる正常細胞(例えば、リンパ球など)の減少もアポトーシスにより生じる。放射線や紫外線、又は抗ガン剤を用いたがん治療において正常細胞にもアポトーシスが誘導される。アポトーシスを抑制することによりこれらの疾患の治療効果を高めるためにBLDを有するペプチドがアポトーシス抑制剤として知られている(特許文献1:特開2006-62981号公報)。アポトーシス起因性疾患の治療、すなわち、アルツハイマー病、老人性神経症、退行性神経変性症、パーキンソン氏病、精神分裂症(破瓜病)、小脳変性症、ウィルキンソン氏病、ダウン症候群、網膜色素変性症及び老化予防等に有効な薬物として当帰芍薬散を含有するアポトーシス抑制剤が知られている(特許文献2:特開平9-87187号公報)。肝機能障害等の改善、回復のための肝臓保護剤としてローヤルゼリーからなるアポトーシス抑制剤が知られている(特許文献3:特開2003-63983号公報)。
癌や種々の老化症状に関与しているDNAの損傷を防ぎ、これらの疾患を未然に防止するDNA損傷保護剤としてハイゴケ属、イトゴケ属、シノブゴケ属の植物抽出物が知られている(特許文献4:特開2006-193472号公報)。DNA損傷抑制剤としてゲンチアナ属植物の花の抽出物が知られている(特許文献5:特開2006-151831号公報)。
本出願は、荒漠ニクジュヨウ(学名:Cistanche deserticola Y. C. Ma)に着目して、新たな作用機序の探索を行った。荒漠ニクジュヨウは、滋養強壮に利くとされ、養命酒などに配合されている生薬である。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-62981号公報
【特許文献2】特開平9-87187号公報
【特許文献3】特開2003-63983号公報
【特許文献4】特開2006-193472号公報
【特許文献5】特開2006-151831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アポトーシスの抑制やDNAの損傷を抑制する剤を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)荒漠ニクジュヨウ(学名:Cistanche deserticola Y. C. Ma)エタノール抽出エキスからなる老化に伴う骨髄単核球のアポトーシス抑制剤。
【発明の効果】
【0006】
アポトーシス抑制、DNA障害抑制あるいは細胞内の活性酸素(ROS)の有効成分として荒漠ニクジュヨウエキスを提供することができる。荒漠ニクジュヨウエキスの有効量は少量でも確認されており、濃度依存性が認められる。老化におけるアポトーシスやDNA障害に対する抑制作用が確認されている。
アポトーシス抑制、DNA障害抑制及び細胞内の活性酸素(ROS)は、荒漠ニクジュヨウエキスおよびその主要成分がSAMマウス由来の培養骨髄単核細胞のアポトーシス、増殖、ミトコンドリアにおけるROS産生およびDNA損傷に及ぼす作用を試験することによって確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】荒漠ニクジュヨウエキスの細胞アポトーシス抑制に及ぼす影響を示すグラフ
【図2】荒漠ニクジュヨウエキス(ECD)の骨髄単核細胞内のROS量に及ぼす影響を示すグラフ
【図3】荒漠ニクジュヨウエキスがSAMマウス由来の骨髄単核細胞内の8-OHdGに及ぼす影響を示すグラフ
【図4】荒漠ニクジュヨウエキスがSAMマウス由来の培養骨髄単核細胞のDNA損傷に及ぼす影響を示す写真

【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、荒漠ニクジュヨウから抽出した抽出物にアポトーシスを抑制する作用及びDNAの障害を抑制する作用があることを究明し完成した発明である。
荒漠ニクジュヨウは、生薬として用いられているので、安全に服用することができる。
【0009】
荒漠ニクジュヨウ(学名:Cistanche deserticola Y. C. Ma)は、中国の西域の乾燥地帯で採取される寄生植物である。
本発明は、荒漠ニクジュヨウの肉質茎、又はそれを、水、低級脂肪族アルコールもしくはその含水物により抽出して得られる抽出液又は抽出エキスを有効成分とするものである。
【0010】
荒漠ニクジュヨウの肉質茎をそのまま、または粉砕、破砕、切断、すりつぶしなどによる形状変化を行ったもの、あるいは乾燥などの調製を実施したものを用いることができる。
抽出液又は抽出エキスの調製には、荒漠ニクジュヨウの肉質茎の乾燥品で、粉砕、破砕、切断、すりつぶしなどによる形状変化を行ったもの(抽出材料)を用いると抽出効率の面で好ましい。抽出液又は抽出エキスを得るために用いられる溶媒は水及び/又はアルコール類が挙げられる。アルコールとしては、炭素数1~4の低級アルコール類が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、nブタノール、イソブタノール、t-ブタノールもしくはこれらの混液またはこれらの水を含有する含水アルコール等が挙げられる。なかでもメタノール又はエタノールが好ましい。これらの抽出溶媒は抽出材料に対して、1~50倍(容量)程度が用いられる。
抽出温度は、室温~溶媒の沸点の間で任意に設定できるが、抽出溶媒を振盪下もしくは非振盪下または還流下に、上記の抽出材料を上記の抽出溶媒に浸漬することによって行うのが適当である。抽出材料を振盪下に浸漬する場合には、30分間~10時間程度行うのが適当であり、非振盪下に浸漬する場合には、1時間~20日間程度行うのが適当である。また、抽出溶媒の還流下に抽出するときは、30分間~数時間加熱還流するのが好ましい。抽出操作は、同一材料について1回だけ行ってもよいが、複数回、例えば2~5回程度繰り返すのが好ましい。
【0011】
本発明は、抽出液をそのまま、また、抽出液を濃縮して抽出エキスにしてもよい。濃縮は、低温で減圧下に行うのが好ましい。なお、濃縮する前にろ過して濾液を濃縮してもよい。また、抽出エキスは、濃縮したままの状態であってもよいし、粉末状又は凍結乾燥品等としてもよい。濃縮する方法、粉末状及び凍結乾燥品とする方法は、当該分野で公知の方法を用いることができる。
【0012】
本発明は、液体又は半固形、固形の製品、具体的には散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又は液剤等のほか、抽出物等を他の剤と混合して用いることができる。
抽出液もしくは抽出エキス使用量は、濃縮、精製の程度、活性の強さ等、使用目的、対象疾患や自覚症状の程度、使用者の体重、年齢等によって適宣調整することができ、例えば、成人1回につき抽出液又は抽出エキスでは精製度や水分含量等に応じて、1mg~20g程度が挙げられ、乾燥エキスでは1mg~10g程度が挙げられる。
荒漠ニクジュヨウエキスが、アポトーシス抑制作用、DNA損傷抑制作用の機序を発揮することは、実施例を通して、いろいろな観点から確認することができた。
【実施例】
【0013】
荒漠ニクジュヨウエキスおよびその主要成分についてSAMマウス由来の培養骨髄単核細胞に及ぼすアポトーシス、増殖、ミトコンドリアにおけるROS産生およびDNA損傷について試験を行った。
【0014】
1.実験動物と飼育条件
老化促進モデルマウスは(Senescence Accelerated Mouse/Prone、SAM-P)免疫機能不全と学習・記憶障害タイプのSAM-P8系、生後8ヵ月齢の雄を選択した。正常マウス(Senescence Accelerated Mouse/Resistance、SAM-R)はSAM-R1系、8ヵ月齢の雄を選択した1)。SAM-P8とSAM-R1マウスは北京大学医学部実験動物センターで購入し、以下に示す条件で飼育した。
動物飼育条件:動物は12時間/12時間の明暗サイクル環境下に置き、自由に食事摂取させた。動物室の温度は25℃、相対湿度は65%に維持した。毎日、床敷材と飲水を交換し、2日おきにマウスケージを取り換え消毒した。
【0015】
2.実験材料
(1)実験サンプル:
○抽出エキスの調製:
中国内モングル産荒漠ニクジュヨウ(Cistanche deserticola Y. C. MA、北京大 学医学部中医薬現代研究センター屠鵬飛氏により鑑定)を使用した。乾燥した荒漠 ニクジュヨウ肉質茎の粉砕又は破砕物1.00kgを5倍量の70%エタノールで1時間還 流抽出を行う。この抽出操作を3回繰り返し行った後、40℃の条件下で各抽出液を 濃縮し、最後真空乾燥を行い、0.35kgの抽出エキスを得た。このエキスを総エキス (ECD)とし、次の各実験に使用した。
○細胞試験用試験サンプルの調製:
上述に得た荒漠ニクジュヨウエキス(Extract of Cistanche deserticola、 ECD)を計量し、無血清のRPMI-1640細胞培養液中に溶解した。溶液は孔径0.22μm のマイクロ・フィルターで濾過滅菌し、-20℃で保存した。以下の試験において、 ECDの用量に応じて、ECD-高用量(High)サンプル、ECD-中用量(Med) サンプル、ECD-低用量(Low)サンプルと表記する。具体的な用量は後述する。
(2)実験試薬:
○RPMI-1640細胞培養基材(Catalog No. 31800-022、GIBCO、Invitrogen社製、 14072、グランドアイランド、 ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
○Annexin V-FITC/Propidium iodide(PI)細胞アポトーシス試験 キット(宝賽生物技術有限公司、北京市、中華人民共和国)
○Dimethyl sulfoxide (DMSO,Sigma-aldrich社製、セントルイス、ミズーリ州、ア メリカ合衆国)
○2,7-dichlorofluorescin dictate(DCF-DA,Molecular Probes社製、ユージーン、 オレゴン州、アメリカ合衆国)
○FITC-Avidin(Sigma-aldrich社製、セントルイス、ミズーリ州、アメリカ合衆国)
○フィコール-ウログラフィン分離液(Ficoll-Urografin、Lot No: 070212、上海華 精高科技、上海市、中華人民共和国)
○その他常用の試薬は中国産の「分析純」グレードのものを使用した。
【0016】
3.実験機器
○クリーンベンチ、Laminar Flow Cabinet(Streamline Laboratory Products社製、 シンガポール)
○CO2インキュベーター、CO2 incubator(MCO-15AC、三洋電機社製、日本)
○フロー・サイトメーター、Flow Cytometer(FACS CaliburTM、BD Biosciences社 製、サンディエゴ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
【0017】
4.実験第一部:骨髄単核細胞の採取、分離、培養:
(1)マウス骨髄細胞の採取:
速やかに頸椎脱臼法で動物を致死させ、75%アルコールに5分間浸漬した後にパラフィンで固定し、外科用ハサミで大腿部の筋肉を切除して、大腿骨を十分に露出させた。大腿骨を分離した後に無菌ガーゼで筋肉を十分に除去した。次に大腿骨の両端を切除し、1mLのPRMI1640培養液を1mLのディスポーザブルシリンジを用いて大腿骨の一端から注入することにより骨髄をシャーレに採取し、細胞懸濁液を調製した。
(2)骨髄単核細胞の分離:
比重1.077のフィコール-ウログラフィン(Ficoll-Urografin)分離液3mlを試験管中に移し、上述に調整した骨髄細胞懸濁液を分離液表面に静かに加えた。1750rpmで30分間遠心分離した後、単核細胞層は分離液の上層に懸濁され、白色の膜状を呈した。単核細胞層からピペットを用いて細胞を静かに吸引し、別の試験管に移した。こうして得られた単核細胞に適量のRPMI-1640培養液を加え、1000rpmで3~5分間遠心分離した後に上清を除去した。この洗浄操作を計2回行った後、骨髄単核細胞の濃度を調整し、遠心塗抹を行った。ライト・ギムザ染色し、顕微鏡で単核細胞成分を観察した。
(3)培養:
上述に分離した骨髄単核細胞を採取し、10%のウシ胎児血清を含むRPMI-1640液で細胞懸濁液を作成し、培養プレートの中で37℃のインキュベーター内に一晩培養した。基質細胞はプレートの表面に付着するので、付着していない細胞(主に骨髄幹細胞、前駆細胞)を採取し、濃度2×106/mLの細胞懸濁液を調製した。24ウェルのプレートに、各ウェル0.5mLずつ、すなわちそれぞれ1×106の細胞を含む細胞懸濁液を分注し、5%CO2インキュベーター内に37℃で培養した。
【0018】
5.実験第二部:培養骨髄単核細胞のアポトーシス試験
(1)各検体溶液の調整:上述に得たSAM-P8とSAM-R1由来骨髄単核細胞を5%のCO2インキュベーター内(37℃)で2時間培養した後、以下の5群に分け、それぞれの必要な検体溶液を加えた。
(a) SAM-R1群:各ウェルに無血清のRPMI-1640液10μLを加えた。
(b) SAM-P8群:各ウェルに無血清のRPMI-1640液10μLを加えた。
(c) SAM-P8 +ECD-低用量群(Low):各ウェルに試験サンプルを含むRPMI-1640溶 液10μLを加え、細胞培養液中のECD最終濃度を50μg/mLに調整(これを 「ECD-低用量(Low)サンプル」とする)した。
(d) SAM-P8 +ECD-中用量群(Med):各ウェルに試験サンプルを含むRPMI- 1640溶液10μLを加え、細胞培養液中のECD最終濃度を150μg/mLに調整(こ れを「ECD-中用量(Med)サンプル」とする)した。
(e) SAM-P8 +ECD-高用量群(High):各ウェルに試験サンプルを含むRPMI- 1640溶液10μLを加え、細胞培養液中のECD最終濃度を450μg/mLに調整(こ れを「ECD-高用量(High)サンプル」とする)した。
(2)実験用培養細胞の培養:上述調整した各実験用培養細胞を以下の手順で培養した。
(a) 各実験用培養細胞を5%のCO2インキュベーターに入れ、37℃で連続72時間培 養した後、細胞懸濁液をBDフロー・サイトメーターの試験管に入れ、 1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去した。
(b) 冷却したPBS1mLを加えて軽く振とうし、細胞を懸濁した。
(c) 1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去した。(b)(c)の操作を2回繰 り返した。
(d) Binding buffer 200μLを加え、再び細胞を懸濁した。
(3)細胞数の測定:上述培養細胞を用いて、以下の手順で細胞数を測定した。
(a) フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識したAnnexin V10μLを加え て軽く混合し均一にした。遮光下、室温で15分間反応させた。
(b) Binding Bufferを300μLとPIを5μL加えた。遮光下、室温で5分間反応さ せ、直ちに機器にセットし、測定を行った。
【0019】
(4)結果:
各群の測定結果は表-1と図-1に示した。表1、図1に示す群名は、上記(1)(a)~(e)の5種類に対応している。
表-1と図-1に示した様に、SAM-P8マウスの場合、正常なSAM-R1マウスと比べて培養(骨髄単核)細胞のアポトーシスは顕著に高くとなっている現象が分った。これに対して、荒漠ニクジュヨウエキス(ECD)の添加により細胞のアポトーシス頻度を有意に抑制した。しかもこの抑制効力はECDの添加量を依存的に強くなること、特にECD高容量群には正常マウスと同等なレベルのアポトーシス率を有することを示している。従って、荒漠ニクジュヨウエキスには有効な細胞アポトーシス抑制効果を有することが明らかである。
【0020】
【表1】
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【0021】
6.実験第三部:培養骨髄単核細胞のミトコンドリアにおける活性酸素種(Reactive Oxygen Species、ROS)の測定試験
(1)各検体溶液の調整:上述実験第二部の(1)と同様に行った。
(2)実験用培養細胞の培養:上述実験第二部の(2)と同様に行った。
(3)ROSの測定
(a) 正常に培養しアポトーシスを誘導した懸濁細胞(1~5×105)を無血清の培 養液で2回洗浄した。
(b) PBSを400μL加えて混合し、細胞密度を均一にした。
(c) 最終濃度は2.5μMとなる様に2μlの蛍光プロープ(CM-H2DCF-DA)を加え、 37℃で5分間、遮光下で放置した。その後、測定時まで氷浴中に置いた。
(d) FACScanでフロー・サイトメトリー定量測定を行った。
【0022】
(4)結果:
各群の測定結果は表2と図2に示した。表2、図2に示す群名は、上記実験第二部(1)(a)~(e)の5種類に対応している。
表-2と図-2に示した様に、SAM-P8マウスの場合、正常なSAM-R1マウスと比べて培養(骨髄単核)細胞内の活性酸素種(ROS)量は5倍近くも高いことが分った。これに対して、荒漠ニクジュヨウエキス(ECD)の添加により細胞内のROS量を顕著に抑制した。老化促進モデルマウス(SAM-P8)は、正常マウス(SAM-R1)よりROSが著しく増加するが、荒漠ニクジュヨウ総抽出物を低・中・高濃度投与群は、正常マウス(SAM-R1)よりやや高いものの、ROSを老化促進モデルマウス(SAM-P8)の1/3以下に低下させることができる。
従って、荒漠ニクジュヨウエキスには有効な細胞アポトーシス抑制効果を有することが明らかである。
【0023】
【表2】
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【0024】
7.実験第四部:コウバクニクジュヨウエキスの細胞DNA損傷抑制実験
(1)動物実験部分:実験用動物と飼育条件は上述実験動物と飼育条件と同様であった。実験動物は1週間飼育後、ランダムで以下の実験群に割り付けた後、毎日経口で以下の投与量になる様に0.2mLの溶液連続4週間を強制投与した。
(a) SAM-R群:9匹、蒸留水のみ。
(b) SAM-P8群:9匹、蒸留水のみ。
(c) SAM-P8 +ECD-中用量群:9匹、150mg/kg体重/日。
(d) SAM-P8 +ECD-高用量群:8匹、450mg/kg体重/日。
(2)実験動物からの試験検体の採集と調製:上述実験動物を終了後、上述実験第一部記載の骨髄単核細胞の採取、分離、培養の手順に従い、骨髄単核細胞の採集、分離と培養を行った。得られた細胞を48ウェル培養プレートに分注し、5%のCO2インキュベーター内(37℃)で72時間連続培養した後、上記(1)(a)~(d)の4種類の群について以下の条件下でFITC-結合アビジン(FITC conjugated avidin)法により、DNAの損傷産物である8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-Hydroxy-2’-deoxyguanosine、8-OH-dG)を測定した2)
(a) FITC-結合アビジンは、FITC-結合アビジン粉末をPBSに溶解し、1.5mg/mLの原 液を調製した。
(b) メタノール中で、細胞を-20℃で20分間固定した。
(c) Triton 0.1%X-100を含むTBSTバッファー中で、25℃で15分間処理し、細胞膜 の透過性を高めた。
(d) ウシ胎児血清15%を含むTBSTバッファー中で、25℃で2時間インキュベート し、ブロッキングを行った。
(e) FITC-結合アビジン(10μg/mL)により37℃で1~2時間染色した。
(f) PBSで3回洗浄を行い、蛍光強度を測ったうえ、共焦点レーザー顕微鏡下で観 察した。
【0025】
(3)結果:
各群の測定結果は表-3と図-3、4に示した。表3、図3、4に示す群名は、上記(1)(a)~(d)の4種類に対応している。
表-3と図-3に示した様に、SAM-P8マウスの場合、正常なSAM-R1マウスと比べて(骨髄単核)細胞のDNA損傷程度の評価対象となる酸化物質の量(8-OH-dG)は2.5倍も高いことが分った。これに対して、荒漠ニクジュヨウエキス(ECD)の投与により細胞内の8-OH-dG量を顕著に抑制した。老化促進モデルマウス(SAM-P8)は、正常マウス(SAM-R1)より酸化物質の量(8-OH-dG)が著しく増加するが、荒漠ニクジュヨウ総抽出物を中・高濃度投与群は、酸化物質の量(8-OH-dG)を老化促進モデルマウス(SAM-P8)半減程度に低下させることができる。荒漠ニクジュヨウ抽出物がDNAの損傷を抑制していることを抑制することを確認することができる。
このことは図-4に示した各群の細胞DNA損傷状況を表す蛍光強度の写真からもリアルに確認できる。従って、荒漠ニクジュヨウエキスには有効な細胞のDNA損傷抑制効果を有することが明らかである。即ち、老化促進モデルマウス(SAM-P8)は、輝度が高い部分が多く観察されるが、荒漠ニクジュヨウ総抽出物を中濃度投与群(ECD Med.)は少し観察される程度に少なくなり、荒漠ニクジュヨウ総抽出物を高濃度投与群(ECD High)では、正常マウス(SAM-R1)程度に低い輝度となっている。
【0026】
【表3】
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【0027】
8.まとめ
細胞のアポトーシス、DNA損傷は様々な疾患と深く関りを有する生命現象である。
正常なアポトーシスは細胞の再生サイクル、機能の維持などにとって不可欠的な条件であるが、異常な或いは過剰なアポトーシスの発生によりこの細胞の再生や機能維持などのバランスを崩し、色んな疾患や老化などを引起す原因となる。
今回、本出願の試験において、老化促進モデルマウスSAM-P8は、正常モデルマウスSAM-R1と比べて過剰なアポトーシスの発生が観察できるが、この過剰なアポトーシスを有効に抑制する素材として荒漠ニクジュヨウエキスを見出すことができた。
細胞の過剰なアポトーシスを引起す原因は内源性原因と外源性原因の2つに大別できる。今回、本出願は細胞内源性原因の1つであると考えられるエネルギー代謝の副産物として知られる細胞内に蓄積される活性酸素種(ROS)3)に着目して実験を行った。その結果、SAM-P8由来細胞の中には、SAM-R1由来細胞よりROSの量が5倍近くも高いことを確認できた。ここで荒漠ニクジュヨウエキス(ECD)を添加したところ、この細胞内のROS量を顕著に抑制することができた。このことにより、荒漠ニクジュヨウエキスが持つ有効な細胞アポトーシス抑制作用は、少なくともこの細胞内ROS量を抑制する事実と相関すると考えられる。
細胞内ROS量の蓄積は細胞内DNA損傷の一内因であるとも考えられる4)。上述の様なSAM-P8由来細胞内のROS量の異常的な増加は、細胞DNAに何らかの損傷を与えてしまい、そして細胞内ROS量を顕著に抑えた荒漠ニクジュヨウエキスにはこのDNA損傷を抑制する可能性も予測できる。そこで本出願は荒漠ニクジュヨウエキスを連続摂取させたSAM-P8の細胞からDNA損傷程度の判断指標となる酸化物質8-OH-dGの量を測定し、この推測を検証した。
以上のことより荒漠ニクジュヨウエキスは細胞のアポトーシスとDNA損傷を抑制する効果を有することが明らかとなった。これらの効果は少なくとも荒漠ニクジュヨウエキスの細胞内活性酸素種の量を抑えた事実によるものであると考えられる。
【0028】
[実施例において参照した文献]
1.竹田俊男、 老化促進モデルマウス(SAM)、日衛誌 51、569-578 (1996)
2.Kasai H, Analysis of a form of oxidative DNA damage, 8-hydroxy-2'- deoxyguanosine, as a marker of cellular oxidative stress during carcinogenesis, Mutation Research, 387 (3), 147-63 (1997)
3.Giorgio M, Trinei M, Migliaccio E, et al., Hydrogen peroxide: a metabolic by-product or a common mediator of ageing signals,. Nat Rev Mol Cell Biol., 8 (9), 722-728 (2007)
4.Balaban RS, Nemoto S, Finkel T, Mitochondria, Oxidants, and Aging., Cell. 120(4), 483-495 (2005)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3