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明細書 :5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2009-522211 (P2009-522211A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成21年6月11日(2009.6.11)
特許番号 特許第5280858号 (P5280858)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子及びその製造方法
国際特許分類 C07D 413/14        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07D 413/14 CSP
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 14
全頁数 18
出願番号 特願2008-547838 (P2008-547838)
出願日 平成18年12月29日(2006.12.29)
国際出願番号 PCT/CN2006/003696
国際公開番号 WO2007/073699
国際公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
優先権出願番号 200510112233.1
200510112232.7
優先日 平成17年12月29日(2005.12.29)
平成17年12月29日(2005.12.29)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成21年12月21日(2009.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
発明者または考案者 【氏名】張 万斌
【氏名】張 勇健
【氏名】王 飛軍
個別代理人の代理人 【識別番号】100076532、【弁理士】、【氏名又は名称】羽鳥 修
【識別番号】100101292、【弁理士】、【氏名又は名称】松嶋 善之
審査官 【審査官】坂崎 恵美子
参考文献・文献 特表2003-509513(JP,A)
Imai,Y.,et al,J.Org.Chem.,2000年,Vol.65,pp.3326-3333
調査した分野 C07D 413/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子であって、その構造式が下記一般式(1)の通りであることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子。
【化1】
JP0005280858B2_000011t.gif

【請求項2】
請求項1に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子において、前記ジオキサゾリンビフェニル配位子は、軸が(R)と(S)構造をもつジアステレオマー化合物であり、その構造式が下記(II)及び(III)の通りであることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子。
【化2】
JP0005280858B2_000012t.gif

【請求項3】
下記一般式(I)で表される5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法であって、
【化3】
JP0005280858B2_000013t.gif
下記一般式(IX)と、アルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、五塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤とを塩基の存在下に反応させることを特徴とする5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【化4】
JP0005280858B2_000014t.gif

【請求項4】
下記一般式(II)及び(III)で表される5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法であって、
【化5】
JP0005280858B2_000015t.gif
下記一般式(VII)と、
【化6】
JP0005280858B2_000016t.gif
ジハロゲン化アルカンとを反応させ、5,5’位で連結された(R)と(S)構造を含む下記一般式(VIII)で示される化合物を得、
【化7】
JP0005280858B2_000017t.gif
次いで該一般式(VIII)で表される化合物と、各種のキラリティーアミノアルコールとを反応させ、(R)と(S)構造を含む下記一般式(IX)で表されるアミド類化合物を得、
【化8】
JP0005280858B2_000018t.gif
次いで、アミド類化合物(IX)と、アルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、五塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤とを塩基の存在下に反応させることを特徴とする5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項5】
2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンを原料とし、酸化とエステル化をして2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸メチル(V)を製造し、2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸メチル(V)を銅粉による結合と脱メチル化反応により5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(VII)を得、次に化合物(VII)をジハロゲン化アルカンと反応させ5,5’位で連結された(R)と(S)構造を含む下記の化合物(VIII)を得、
【化9】
JP0005280858B2_000019t.gif
次に各種のキラリティーアミノアルコールと反応させ(R)と(S)構造を含む下記のアミド類化合物(IX)を得、
【化10】
JP0005280858B2_000020t.gif
次にアルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、五塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤を用いて塩基が存在する条件において構造式が下記の通りである一連の(R)と(S)構造の目的配位子(II)と(III)を製造することを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【化11】
JP0005280858B2_000021t.gif

【請求項6】
請求項5に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、具体的に、
(1)水酸化ナトリウム水溶液に臭素を添加する条件において、2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンと臭素とのモル比が1:4~6で反応を行って2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンを2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸(IV)に転化する、2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンから化合物(IV)を調製するステップと、
(2)アルコール溶液にジクロロスルホキシドが存在する条件において、化合物(IV)とジクロロスルホキシドとのモル比が1:1~10で反応を行って、化合物(IV)を2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸メチル(V)に転化する、化合物(IV)から化合物(V)を調製するステップと、
(3)銅粉が存在する条件において、化合物(V)と銅粉とをモル比が1:2~5で反応させ、化合物(V)を5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(VI)に転化する、化合物(V)から化合物(VI)を調製するステップと、
(4)有機溶媒にエタンチオールが存在する条件において、化合物(VI)と三塩化アルミニウムとをモル比が1:3~6で反応させ、5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(VII)を得る、化合物(VI)から化合物(VII)を調製するステップと、
(5)有機溶剤に塩基が存在する条件において、化合物(VII)の5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチルとジハロゲン化アルカンとをモル比が1:1~1.5で反応させ、5,5’位で連結された(R)と(S)構造が混合する化合物(VIII)を得る、化合物(VII)から(R)と(S)構造の化合物(VIII)を調製するステップと、
(6)塩基が存在する条件において、(R)と(S)構造の混合物(VIII)とキラリティーアミノアルコールとをモル比が1:3~10で反応させ、それぞれ軸が(R)と(S)構造をもつアミド類ジアステレオマー化合物(IX)を得る、(R)又は(S)構造の化合物(VIII)から(R)又は(S)構造の化合物(IX)を調製するステップと、
(7)有機溶媒に塩基とアルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、5塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤が存在する条件において、軸が(R)又は(S)構造をもつアミド類ジアステレオマー化合物(IX)と塩基と活性化剤とのモル比が1:5~25:3~12で反応を行って、軸が(R)又は(S)構造をもつアミド類ジアステレオマー化合物(IX)を、軸が(R)又は(S)構造をもつ化合物(II)又は(III)に転化させる、(R)又は(S)構造の化合物(IX)から(R)又は(S)構造の化合物(II)と(III)を調製するステップと、を含むことを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(1)において、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が5~20%であり、反応温度が20~70℃であり、反応時間が12~20時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(2)において、反応温度が20~80℃であり、反応時間が1~12時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項9】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(3)において、反応温度が150~180℃であり、反応時間が2~24時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項10】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(4)において、反応温度が0~25℃であり、反応時間が2~6時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項11】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(5)において、反応温度が20~100℃で、反応時間が8~72時間で、前記ジハロゲン化アルカンが以下の式で表されることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【化12】
JP0005280858B2_000022t.gif

【請求項12】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(6)において、反応温度が50~120℃であり、反応時間が4~12時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項13】
請求項6に記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、前記ステップ(7)において、反応温度が室温であり、反応時間が12~36時間であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
【請求項14】
請求項4乃至6のいずれかに記載の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法において、化合物(IV)~(VII)及び軸が(R)と(S)構造をもつ化合物(VIII)と(IX)の構造式が、
【化13】
JP0005280858B2_000023t.gif
であり、
軸が(R)構をもつ化合物(VIII)と(IX)の構造式が、
【化14】
JP0005280858B2_000024t.gif
であり、
軸が(S)構造をもつ化合物(VIII)と(IX)の構造式が、
【化15】
JP0005280858B2_000025t.gif
であることを特徴とする、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業の技術分野における化合物及びその製造方法に関し、特に、5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い選択性と触媒活性をもつキラリティー触媒を設計・合成することは不斉合成の鍵となることであり、そのうち、キラリティー配位子は触媒として不斉誘導と制御を行うもとである。C2型キラリティージオキサゾリン配位子は、その構造の特殊性により、不斉シクロプロパン化反応、分子内Wacker-Type環化反応、オレフィンの不斉酸化反応、分子内[2+1]環付加反応など、不斉反応に広く応用されている。30年間にわたった発展を経て、多くのキラリティーオキサゾリン配位子が現れ、特に各種のキラリティー側鎖を含むキラリティーオキサゾリン配位子が相次いで開発された。そのうち、軸性キラリティー側鎖はその独特な剛性構造により、配位子において広く適用されている。多年にわたった研究を積み重なった結果、ビフェニル構造を含む軸性キラリティー配位子
【0003】
【化1】
JP0005280858B2_000002t.gif

【0004】
(BINAP)は既に光学活性を有する化合物の工業化に成功し、応用されている。BINAPの工業化の応用は、軸性キラリティーの配位子設計の合成における応用を大いに推進した。キラリティー側鎖を含むオキサゾリン配位子も相次いで開発され、各種の不斉反応に応用されている。
【0005】
従来技術の文献を検索した結果、E.J.Coreyらが『Tetrahedron Letters』(四面体通信)VOL.36,No.48,pp.8745-8748において発表した「The First Enantioselective Synthesis of the Chemotactic Factor Sirenin by an Intramolecular [2+1] Cyclization Using a New Chiral Catalyst」(分子内[2+1]環化反応により初めてSireninエナンチオ選択性合成を実現した新型キラリティー触媒)を見つけた。この論文で提案した軸性キラリティー配位子の設計概念はすべてビアリル軸隣接ビットに2つの比較的大きな原子団を加え、それらのビット阻害により安定な軸性キラリティーを得るとされているが、同様にビフェニルの回転可能な角度を制限し、即ち、二面角を制限した。この二面角の大きさは不斉反応の触媒活性と選択性に影響することが既に実証されているので、新型の軸性キラリティー配位子を設計・合成することは有機化学者たちの研究のホットポイントの一つになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の課題に対して、現在の軸性キラリティー配位子の設計概念と異なった5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子及びその製造方法を提供し、それに高い反応活性と立体選択性を持たせ、二面角の変化範囲を大きくすることにより、良好な不斉触媒効果をもつ軸性キラリティー配位子を選出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の技術思想により実現される。本発明による5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子(I)の構造式は下記の通りである。
【0008】
【化2】
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【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式中のR1~R4のアルキル基は、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、アリール基として、フェニル基、トシル基、キシリル基、ナフトイル基が好ましい。また、前記アリール基、ベンジル基はアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子の置換基を有していてもよい。
【0010】
この配位子は例えば軸に(R)と(S)構造をもつジアステレオマーであっても構わないが、その構造式はそれぞれ下記の通りである。
【0011】
【化3】
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【0012】
本発明の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子の合成方法としては、下記一般式(IX)の化合物とアルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、5塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤とを塩基の存在下に反応させることにより合成することができ(以下、(7)の工程で詳細に説明する)、また、下記一般式(IX)の化合物は、後述する(1)~(6)の工程を実施して得られるものを使用することが好ましい。
【0013】
【化4】
JP0005280858B2_000005t.gif

【0014】
なお、本発明の方法における化合物IV-VIIの構造式は下記の通りである。

【0015】
【化5】
JP0005280858B2_000006t.gif

【0016】
軸に(R)構造をもつ化合物VIIIとIXの構造式は下記の通りである。
【0017】
【化6】
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【0018】
軸に(S)構造をもつ化合物VIIIとIXの構造式は下記の通りである。
【0019】
【化7】
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【0020】
上記の構造において、n、R1、R2、R3、R4は前述した通りである。
【0021】
(1)の工程;2-臭化-4-メトキシベンズケトンから化合物(IV)を調製する。
臭素を水酸化ナトリウム水溶液に添加し、さらに2-臭素—4-メトキシベンゼンケトンを添加して2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸(IV)を得る。
【0022】
反応条件は水酸化ナトリウム水溶液の濃度が5~20重量%であり、2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンと臭素とのモル比が1:4~6であり、反応温度が20~70℃であり、反応時間が12~20時間である。
【0023】
(2)の工程;化合物(IV)から化合物(V)を調製する。
【0024】
ジクロロスルホキシドと2-臭素-メトキシベンゼンカルボン酸(IV)をメタノール等のアルコール溶媒中で反応して2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸メチル(V)を調製する。
【0025】
反応条件は、化合物(IV)とジクロロスルホキシドとのモル比が1:1~10であり、反応温度が20~80℃であり、反応時間が1~12時間である。
【0026】
(3)の工程;化合物(V)から化合物(VI)を調製する。
【0027】
銅粉と化合物(V)とを接触させ、5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(IV)を調製する。
【0028】
反応条件は、化合物(V)と銅粉とのモル比が1:2~5であり、反応温度が150~180℃であり、反応時間が2~24時間である。
【0029】
(4)の工程;化合物(VI)から化合物(VII)を調製する。
【0030】
エタンチオールと三塩化アルミニウムを含む有機溶媒に、化合物(VI)を添加し反応を行って5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(VII)を調製する。
【0031】
反応条件は化合物(VI)と三塩化アルミニウムとのモル比が1:3~6であり、反応温度が0~25℃であり、反応時間が2~6時間である。
【0032】
有機溶媒として、例えばギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いることができる。
【0033】
(5)の工程;化合物(VII)から(R)と(S)構造を含む化合物(VIII)を調製する。
【0034】
化合物(VII)と、ジハロゲン化アルカンとを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させ、5,5’位で連結された(R)と(S)構造を含む5,5’-アルキルジオキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチル(VIII)を得る。
【0035】
反応条件は、5,5’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-二蟻酸メチルとジハロゲン化アルカンとのモル比が1:1~1.5であり、反応温度が20~100℃であり、反応時間が8~72時間であり、有機溶剤は例えば、ジメチルホルムアミド、アセトン、アセトニトリル等であっても構わない。
【0036】
ジハロゲン化アルカンは以下の式で表される。
【0037】
【化8】
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【0038】
塩基としては特に制限はないが、例えば水素化ナトリウム等の金属水素化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシド、ピペリジン、ピリジン、カリウムクレゾラート、アルキルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エン、リチウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。
【0039】
(6)の工程;(R)と(S)構造を含む化合物(VIII)から(R)と(S)構造を含む化合物(IX)を調製する。
【0040】
(R)と(S)構造を含む化合物(VIII)とキラリティーアミノアルコールとを塩基の存在下にメタノール等のアルコール溶媒中で反応させ、それぞれ軸が(R)と(S)構造をもつアミド類ジアステレオマー化合物(IX)を得る。
【0041】
反応条件は、化合物(VIII)とキラリティーアミノアルコールとのモル比が1:3~10であり、反応温度が50~120℃であり、反応時間が4~12時間である。
【0042】
キラリティーアミノアルコールは以下の式で表される。
【0043】
【化9】
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【0044】
塩基としては特に制限はないが、例えば水素化ナトリウム等の金属水素化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシド、ピペリジン、ピリジン、カリウムクレゾラート、アルキルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エン、リチウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。
【0045】
(7)の工程;(R)と(S)構造を含む化合物(IX)から(R)と(S)構造を含む化合物(II)と(III)を調製する。
【0046】
化合物(IX)と、アルキルスルホニウムハライド、アリールスルホニルハライド、燐オキシクロリド、オキシ塩化燐、5塩化燐、塩化チオニル及びトリフェニルホスフィンの群から選ばれるヒドロキシル基を活性化することのできる活性化剤とを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させる。
【0047】
反応条件は、化合物(IX)と塩基と活性化剤とのモル比が1:5~25:3~12であり、反応温度が室温であり、反応時間が13~36時間である。
【0048】
塩基としては特に制限はないが、例えば、水素化ナトリウム等の金属水素化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルコキシド、ピペリジン、ピリジン、カリウムクレゾラート、アルキルリチウム、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エン、リチウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。
【0049】
また、活性化剤は、メチルスルホニルクロリド等のアルキルスルホニルハライド、ベンゼンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド等のアリールスルホニルハライド、オキシ塩化燐、5塩化燐、塩化チオニル又はトリフェニルホスフィンを使用することができる。
【0050】
有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、クロロベンゼン、酢酸エチル、ギ酸エチル、ジクロロエタン、エトキシアセテート等を使用することができ、これらの有機溶媒は1種又は2種以上で用いることができる。
【0051】
本発明の配位子はオキサゾリンの中心性キラリティーを含むだけでなく、ビフェニル類の軸性キラリティーも同時に含んでいる。このような配位子は不斉シクロプロパン化反応、分子内Wacker-Type環化反応、オレフィンの不斉酸化反応、分子内[2+1]環付加反応など、各種の不斉反応に用いることができ、高い反応活性と立体選択性をもち、応用の範囲が比較的広い。
【0052】
また、本発明の5,5’位で連結された1,1’-ビフェニル類軸性キラリティー配位子は、(R)と(S)構造を含むものであってもよいが、カラムクロマトグラフィー等で光学分割して(R)構造あるいは構造として単離して用いてもよい。
【実施例】
【0053】
下記の実施例は本発明の理解に資することができるが、本発明の内容を限定することはない。
【0054】
(1)2-臭素-4-メトキシベンゼンケトンから化合物IVを調製した。
氷浴において、臭素(2.8mL,35.1mmol)をNaOH(4.5g,111.4mmol)水溶液(10mL)にゆっくり滴加し、10min撹拌して、さらに2-臭素-4-メトキシベンゼンケトン(2.1g,9.2mmol)を上記の反応液に滴加し、室温において15h撹拌した。反応が終わった後、亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて未反応の次亜臭素酸ナトリウムをなくした。酢酸エチルで抽出し、中性化合物を分離した。さらに6N塩酸を用いて氷浴において水相を酸化し、大量な白い固体が現れた。抽出濾過して白い固体IVを得た(2.0g,95%)。
【0055】
1H NMR(CDCl3,300MHz)8.05(d,J=8.7Hz,1H,Ar-H),7.23(d,J=2.7Hz,1H,Ar-H),6.91(dd,J=8.7,2.7Hz,1H,Ar-H),3.87(s,3H,OCH3)。
【0056】
(2)化合物IVから化合物Vを調製した。
氷浴において、ジクロロスルホキシド(2.9mL,38.7mmol)を2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸IV(4.5g,19.3mmol)のメタノール(10mL)溶液にゆっくり滴加し、温度を室温まで上昇させて加熱還流し、TLCで反応をモニタリングした。2hで反応が終わり、過量のジクロロスルホキシドとメタノールを蒸発除去し、酢酸エチルで希釈し、水洗して、さらに飽和炭酸ナトリウムで洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥して生成物Vを得た(4.3g,91%)。
【0057】
1H NMR(CDCl3,400MHz)7.87(d,J=9.2Hz,1H,Ar-H),7.19(d,J=2.0Hz,1H,Ar-H),6.87(dd,J=9.2,2.0Hz,1H,Ar-H),3.90(s,3H,OCH3),3.84(s,3H,OCH3)。
【0058】
(3)化合物Vから化合物VIを調製した。
窒素雰囲気において、2-臭素-4-メトキシベンゼンカルボン酸メチルV(7.3g,29.6mmol)と活性化銅粉(7.0g,0.1mol)を160~170℃に加熱し、15h撹拌反応させた。冷却した後、酢酸エチルを加え、濾過して、熱いジクロロメタンで銅粉を洗浄し、溶剤を蒸発除去し、酢酸エチルと石油エーテルで再結晶して生成物VIを得た(3.0g,61%)。
【0059】
1H NMR(CDCl3,400MHz)8.02(d,J=8.8Hz,2H,Ar-H),6.92(dd,J=8.8,2.8Hz,2H,Ar-H),6.69(d,J=2.8Hz,2H,Ar-H),3.85(s,6H,OCH3),3.61(s,6H,OCH3)。
【0060】
(4)化合物VIから化合物VIIを調製した。
氷浴において、エタンチオール(3mL)を三塩化アルミニウム(0.8g,6.0mmol)のジクロロメタン溶液(3mL)に滴加し、撹拌して溶解した。また、氷浴において、化合物VI(0.3g,1.0mmol)のジクロロメタン溶液(5mL)を上記の溶液に滴加し、0℃にて2h反応させ、さらに室温まで加熱して0.5h反応させた。氷水で急冷し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去し、石油エーテルと酢酸エチルでコラム分離を行い、目的生成物VIIを得た(0.1g,33%)。
【0061】
1H NMR(CD3COCD3,400MHz)7.87(d,J=8.8Hz,2H,Ar-H),6.88(dd,J=8.8,2.4Hz,2H,Ar-H),6.64(d,2H,J=2.4Hz,Ar-H),3.52(s,6H,OCH3)。
【0062】
(5)化合物VIIから化合物VIIIを調製した。
化合物VII(1.0g,3.3mmol)、無水炭酸カリウム(1.4g,9.9mmol)及び1,8-ジブロモオクタン(0.6mL,3.3mmol)をDMF溶液(200mL)に加え、室温において72h撹拌した。反応液を濾過し、減圧してDMFを蒸発除去し、酢酸エチルと石油エーテルでコラム分離を行い、目的生成物VIIIを得た(0.8g,55%)。
【0063】
1H NMR(CDCl3,400MHz)7.94(d,J=8.4Hz,2H,Ar-H),6.91(dd,J=8.4,2.4Hz,2H,Ar-H),6.76(d,J=2.4Hz,2H,Ar-H),4.40(t,J=7.6Hz,2H,OCH),4.37(t,J=7.6Hz,2H,OCH),3.62(s,6H,OCH3),1.89-2.01(m,2H,CH2),1.55-1.67(m,2H,CH2),1.20-1.53(m,8H,CH2)。
【0064】
(6)化合物VIIIから化合物IXを調製した(R1=i-Pr,R2=R3=R4=H)。
化合物VIII(0.3g,0.7mmol)、無水炭酸カリウム(0.4g,2.9mmol)、L-バリノール(0.7mL,6.5mmol)及びメタノール(2mL)を5mLの二口フラスコに加え、50℃まで加熱し、TLCで反応を追跡した。反応が終わった後、ジクロロメタンで希釈し、有機相を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、生成物IXを得た(0.24g,60%)。
【0065】
(7)化合物IXから化合物IIとIIIを調製した(R1=i-Pr,R2=R3=R4=H)。
上記の粗生成物IX(0.16g,0.3mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶かし、トリエチルアミン(1.0mL,7.2mmol)を加えた。氷浴において塩化メチレンスルホニル(0.3mL,3.4mmol)を加え、室温において18h反応させ、TLCはほとんど変わらなかった。ジクロロメタンを加えて希釈し、水洗、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶剤を蒸発除去し、酢酸エチルと石油エーテルでコラム分離を行い、2つの生成物II(15.1mg)とIIIを得た(45.5mg)。
【0066】
II:1H NMR(CDCl3,400MHz)7.76(s,J=8.4Hz,2H,Ar-H),6.86(dd,J=8.4,2.4Hz,2H,Ar-H),6.83(d,J=2.4Hz,2H,Ar-H),4.40(t,J=7.6Hz,2H,OCH),4.37(t,J=7.6Hz,2H,OCH),4.03-4.15(m,4H,OCH and NCH),3.65-3.75(m,4H,OCH2),1.87-1.97(m,4H,CH),1.55-1.68(m,4H,CH),1.43-1.54(m,2H,CH),1.37(m,4H,CH2),1.20-1.32(m,2H,CH),0.93(d,J=6.8Hz,6H,CH3),0.79(d,J=6.8Hz,6H,CH3)。
【0067】
III:1H NMR(CDCl3,400MHz)7.71(s,2H,Ar-H),6.85-6.93(m,4H,Ar-H),4.43(t,J=7.6Hz,2H,OCH),4.30(t,J=7.6Hz,2H,OCH),4.03-4.20(m,4H,OCH and NCH),3.75-3.90(m,4H,OCH2),1.90-2.01(m,4H,CH2),1.48-1.80(m,6H,CH),1.42(m,4H,CH2),1.20-1.35(m,2H,CH),0.81(d,J=6.8Hz,6H,CH3),0.80(d,J=6.8Hz,6H,CH3)。
【0068】
この実施例は、合成方法が簡単であり、収率が比較的高い。ステップ5はその他の大環状化合物の合成に有効な合成方法を提供することができる。調製した軸性キラリティー配位子は銅、パラジウムなどの金属イオンと配位し、不斉シクロプロパン化反応、分子内Wacker-Type環化反応、オレフィンの不斉酸化反応、分子内[2+1]環付加反応などを行うことができる。