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明細書 :2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子及びその合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2010-500295 (P2010-500295A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成22年1月7日(2010.1.7)
特許番号 特許第5208939号 (P5208939)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
発明の名称または考案の名称 2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子及びその合成方法
国際特許分類 C07F   9/50        (2006.01)
FI C07F 9/50 CSP
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2009-523140 (P2009-523140)
出願日 平成19年8月10日(2007.8.10)
国際出願番号 PCT/CN2007/002407
国際公開番号 WO2008/019598
国際公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
優先権出願番号 200610029881.5
優先日 平成18年8月10日(2006.8.10)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成22年7月14日(2010.7.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
発明者または考案者 【氏名】張 万斌
【氏名】謝 芳
【氏名】房 芳
個別代理人の代理人 【識別番号】100076532、【弁理士】、【氏名又は名称】羽鳥 修
【識別番号】100101292、【弁理士】、【氏名又は名称】松嶋 善之
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 中国特許出願公開第1911940(CN,A)
特表2004-513950(JP,A)
米国特許第05919981(US,A)
調査した分野 C07F 9/50
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
JP0005208939B2_000004t.gif
で示されることを特徴とする2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子。
【請求項2】
2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルと、一般式;(R)2PX(式中、Rは前記と同義。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるホスフィンハライドを反応させることを特徴とする請求項1に記載の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法。
【請求項3】
2,6-ジニトロクロロベンゼンを出発原料として用い、これをカップリングして2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルを得る第一ステップと、
パラジウム/炭素の存在下に2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルに水素を加えることによって、2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルを得られる第二ステップと、
2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルと、一般式;(R)2PX(式中、Rは前記と同義。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるホスフィンハライドを反応させる第三ステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法。
【請求項4】
前記第一ステップの反応は、固相反応法で2,6-ジニトロクロロベンゼンと銅粉を混和し、反応させることを特徴とする請求項に記載の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法。
【請求項5】
前記第二ステップの反応は、パラジウム/炭素を触媒として、2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルに加え、水素の存在下に反応を行うことを特徴とする請求項に記載の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法。
【請求項6】
前記第三ステップの反応は、ホスフィンハライドを2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルに加え、アルカリの条件下に反応させることを特徴とする請求項に記載の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アキラルな配位子及びその合成方法に関わり、具体的には不斉触媒反応における2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子及びその合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不斉触媒の反応方式は単一の鏡像体のキラル薬物を得る優れた手段である。少量のキラル触媒から多量のキラル化合物を得ることができ、有用でない化合物生成を低下させることができるか、又は防ぐことができるため、環境保護に有利であるうえ、高い「原子利用率」を達成することもでき、更にラセミ体の煩雑な分割を避けることもできる。
【0003】
高選択性と高触媒性を持つキラル触媒の設計と合成は、不斉触媒合成の肝心な部分である。遷移金属を用いた触媒の不斉反応において、金属と配位するキラル配位子は反応活性と鏡像体選択性に決定的な役割を果たす。
【0004】
キラル軸を持つ配位子BINAPが誕生以来、ビフェニル或はビナフチルアルカンの骨格を持つ配位子が注目を集めている。その主たる理由は、柔軟な結合を持つビフェニル或はビナフチルアルカンの骨格が軸方向に沿って自在的に回転できるため、それから誘導される触媒系が、その分野においてもかなり良い結果を得ているからである。
【0005】
一方、多くの不斉触媒反応系は一つの触媒中心だけを有し、基質と試薬をそれと配位させることにより活性化する。配位子がキラル環境の影響を受けて、熱力学的に安定的な遷移状態が形成され、最終的に不斉の誘導を実現することになる。最近、ビメタルの配位子に多大な注目が集られている。ビメタルの配位子は、有機金属の新しい骨格であり、二つ金属の協調によって機能を発揮し、多くの反応に優れた化学的な選択性と鏡像体選択性を提供している。従って、軸性キラリティを有するビメタル配位子を開発することは、既に学術界と産業界から関心を集める重点開発分野となっている。
【0006】
従来の技術に関する文献を検索した結果、今まで、本発明のテーマと同じ又は類似の文献又は関連記事はまだ発見されていない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、2,2’,6,6’-四置換アミノ窒素ホスフィン配位子及びその合成方法を提供することを目的とする。当該配位子は金属触媒を用いた多くの種類の不斉反応に用いることができ、高い反応活性と立体選択性を備えている。この種の配位子が他のビメタル配位子と違う点は、配位子そのものがアキラルの化合物であり、調製方法が簡素化でき、かつ最終的に外部からキラルを導入することによって単一のコンフィグレーションのビメタルキラル触媒を得ることができる点にある。
【0008】
本発明は、下記の手段によって実現されたものである。本発明の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子は下記一般式(1)で示される。
【0009】
【化1】
JP0005208939B2_000002t.gif

【0010】
前記一般式(1)の式中のRはフェニル基が特に好ましい。

【0011】
本発明は、前記2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法をも提供する。本発明の合成方法は2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルと一般式;(R)2PX(式中、Rは前記と同義。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるホスフィンハライドを反応させ2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子を製造することを特徴とする。
【0012】
前記ホスフィンハライドの式中のRは前記一般式(1)で表される2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の式中のRに相当する基である。また、前記ホスフィンハライドの式中のXは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示し、この中、好ましくは塩素原子である。
【0013】
本発明の2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子の合成方法は、下記の第一~第三ステップを含むことが好ましい。
【0014】
2,6-ジニトロクロロベンゼンを出発原料として用い、これをカップリングして2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルを得る第一ステップと、
パラジウム/炭素の存在下に2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルに水素を加えることによって、2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルを得る第二ステップと、
2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルと、一般式;(R)2PX(式中、Rは前記と同義。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるホスフィンハライドを反応させ2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子を得る第三ステップとを含む。
【0015】
本発明方法の反応式は以下の通りである。
【0016】
【化2】
JP0005208939B2_000003t.gif

【0017】
前記第一ステップの反応は具体的に、固相反応法で1当量の2,6-ジニトロクロロベンゼンを2~4当量、好ましくは3当量の銅粉と混合し、150~250℃、好ましくは180℃程度にて激しく攪拌しながら反応させて、例えば酢酸エチルで洗い、沈殿物を濾過し、濾液を濃縮させて、例えば酢酸エチルと石油エーテルの混和溶液により、再結晶させることである。
【0018】
前記第二ステップの反応は具体的に、基質の質量の5~15%、好ましくは10%のパラジウム/炭素を触媒として用い、これを2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルに加え、オートクレーブに5~20気圧、好ましくは10気圧の水素を入れ反応させた後、固体を分離させ、濾液を濃縮させて、2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルを得ることである。
【0019】
前記第三ステップの反応は具体的に、例えばメチレンクロリドとテトラヒドロフランを溶剤として用い、また例えばトリエチルアミン或はブチルリチウムをアルカリとして用い、3~7当量、好ましくは5当量の前記ホスフィンハライドを1当量の2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルに加え、反応させることによって2,2’,6,6’-四置換アミノホスフィン配位子を得ることである。
【0020】
本発明の2,2’,6,6’-四置換アミノ窒素ホスフィン配位子には四つの配位中心が含まれる。この種の配位子は各種の金属触媒を用いた不斉反応に用いることができ、例えば、ケトンの不斉水素化、不斉シクロプロパン化反応、分子内のWacker-Type環化反応、オレフィンの不斉酸化反応と分子内[2+1]環の付加反応などにおいて、高い反応活性と立体選択性を備え、将来的な応用に大きな可能性を秘めている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の技術的内容に基づいて実施例を提供する。
【0022】
〔実施例1〕
1. 2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルの調製
銅粉の前処理:銅粉(5.0g,78mmol)を量って、2%のヨウ素/アセトン溶液20mlを加え、10分間攪拌し、吸引濾過して、アセトン/塩酸=1:1の混和溶液20mlを再び加え、10分間攪拌し,吸引濾過し,真空で乾燥した。250mlの丸底フラスコに2,6-ジニトロクロロベンゼン(3.04g,15mmol)と銅粉(2.88g,45mmol)を加え均一に混合し、窒素ガス雰囲気に保持して、油浴で180℃まで加熱して2時間攪拌した。反応が終了した後、フラスコの中の固体を粉砕して、20mlのエチルエステルに溶解し、固体を濾出して、濾液を集め、ロータリーエバポレータで蒸発留去させた。残渣を酢酸エチル/石油エーテル=10:1の混合混和溶液で再結晶させて、薄黄色の針状結晶を沈殿させた結晶を吸引濾過して集め、生成物を得た。その収率は63.9%であった。
【0023】
1HNMR(400MHz,CDCl3):7.89(t,2H,J=8.0Hz,ArH),8.51(d,4H,J=8.0Hz,ArH)。
融点:217℃~218℃。
【0024】
2. 2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルの調製
窒素ガス雰囲気を保持し、100mLの水素化用フラスコに2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニル(1.00g,3mmol)と100mg、10%のPd/Cを加え、更に20mlメタノールを加え、窒素ガスにてバブリングした。水素化用フラスコをオートクレーブに入れて、10atmの水素を加えた。6時間後に反応を終了させた。濾過によってPd/Cを取り除いて、メタノールをロータリーエバポレータで蒸発させ、酢酸エチルと水で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレータで蒸発留去した。その収率は88%であった。
【0025】
1HNMR(400MHz、CDCl3):6.99(t,2H,J=8.0Hz,ArH)、6.25(d,4H、J=8.0Hz,ArH)、3.3~3.8(brs,8H,NH)
融点:204℃。
【0026】
3. 2,2’,6,6’-テトラ(ジフェニルホスフィノ)アミノビフェニルの調製
2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニル(107.90mg,0.5mmol)を10mlのメチレンクロリドに溶解させて、更にその中にトリエチルアミン(0.56ml,4mmol)及びジフェニルホスフィノクロライド(0.45ml,2.5mmol)をこの順に1滴ずつ加えた。50℃で、攪拌しながら24時間還流した。溶液を冷却して濃縮させた。5ml無水ジエチルエーテルを加え、沈殿物を濾過し、5mlの無水ジエチルエーテルで洗った。酢酸エチル/石油エーテル=1:5を溶離液として用い、カラムクロマトグラフィで精製し、目的とする生成物を得た。その収率は76%であった。
【0027】
1HNMR(400MHz,CDCl3):7.09~7.21(m,44H,ArH),6.87(d,2H,J=2.8Hz,ArH),6.86(d,2H,J=2.8Hz,ArH),4.53(d,4H,J=5.2Hz,NH)
【0028】
〔実施例2〕
【0029】
1. 2,2’,6,6’-テトラニトロビフェニルの調製(実施例1と同じ)
【0030】
2. 2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニルの調製(実施例1と同じ)
【0031】
3. 2,2’,6,6’-テトラ(ジフェニルホスフィノ)アミノビフェニルの調製
2,2’,6,6’-テトラアミノビフェニル(107.90mg,0.5mmol)を10mlのテトラヒドロフランに溶解し、反応系を-30℃まで冷却させて、系に1滴ずつn-ブチルリチウムを含むn-へキサン溶液(2.57M,0.78ml)を加える。この温度で2時間攪拌した後、さらに1滴ずつジフェニルホスフィノクロライド(0.45ml,2.5mmol)を加えた。温度を25℃にして、更に5時間攪拌してから、沈殿物を濾過し、テトラヒドロフランを蒸発留去させた。酢酸エチル/石油エーテル=1:5を溶離液として用い、カラムクロマトグラフィで残渣を精製し、目的とする生成物を得た。その収率は83%であった。