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明細書 :薄膜形成装置および薄膜形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4806268号 (P4806268)
公開番号 特開2007-211311 (P2007-211311A)
登録日 平成23年8月19日(2011.8.19)
発行日 平成23年11月2日(2011.11.2)
公開日 平成19年8月23日(2007.8.23)
発明の名称または考案の名称 薄膜形成装置および薄膜形成方法
国際特許分類 C23C  14/54        (2006.01)
C23C  14/34        (2006.01)
FI C23C 14/54 F
C23C 14/34 U
請求項の数または発明の数 12
全頁数 35
出願番号 特願2006-034133 (P2006-034133)
出願日 平成18年2月10日(2006.2.10)
審査請求日 平成21年2月5日(2009.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390007216
【氏名又は名称】株式会社シンクロン
【識別番号】505383316
【氏名又は名称】中国科学技▲術▼大学
発明者または考案者 【氏名】宋 亦周
【氏名】鄭 燕飛
【氏名】王 海千
個別代理人の代理人 【識別番号】100088580、【弁理士】、【氏名又は名称】秋山 敦
【識別番号】100111109、【弁理士】、【氏名又は名称】城田 百合子
審査官 【審査官】鮎沢 輝万
参考文献・文献 特開2000-088531(JP,A)
特開平08-315432(JP,A)
特開2001-133228(JP,A)
特開2006-009099(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00-14/58
特許請求の範囲 【請求項1】
真空容器内に配置された基体に薄膜を形成するカルーセル式の薄膜形成装置であって、
前記基体を保持した状態で回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段と、
前記基体に膜原料物質を供給して薄膜を形成する膜原料物質供給手段と、
前記基体のうち、特定の基体に形成された薄膜の膜厚を測定する膜厚測定手段と、を備え、
該膜厚測定手段は、
前記回転軸線の一方の側から前記基体保持手段の内部に向けて測定光を投光する投光部と、
前記基体保持手段の内部に設けられると共に前記投光部から投光された前記測定光を前記特定の基体へ反射する第一の光反射部材と、
前記基体保持手段の内部に設けられると共に前記特定の基体から反射された反射光を前記回転軸線の他方の側へ向けて反射する第二の光反射部材と、
該第二の光反射部材により反射された前記反射光を受光する受光部と、
該受光部で受光された前記反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を演算する膜厚演算部と、
を具備し、
前記基体保持手段は、
前記回転軸線を中心に回転する中空状の回転軸と、
前記基体を保持する基板保持板と、
前記基板保持板を前記回転軸に固定するフレームと、
を具備し、
前記回転軸の中空内部には、前記第一の光反射部材および前記第二の光反射部材が固定され、
前記回転軸の壁面には、前記第一の光反射部材で反射された前記測定光および前記特定の基体から前記第二の光反射部材に向けて反射された前記反射光が通過する開口が形成され、
該開口は、前記特定の基体に対して常に対向して形成されてなることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記回転軸は、両端の一部が前記真空容器の外部に延出し、
前記投光部は、前記回転軸の一端側の前記真空容器外であって前記第一の反射部材に向けて前記測定光を投光する位置に配置され、
前記受光部は、前記回転軸の他端側の前記真空容器外であって前記第二の反射部材から反射する前記反射光が入射する位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記薄膜形成装置は、一方向または両方向に回転する出力軸を有する基体保持手段駆動源を備え、
前記回転軸は、その一端の外周面に前記基体保持手段駆動源の出力軸の回転を伝達する動力伝達部材が取り付けられると共に、前記一端は自由端とされていることを特徴とする請求項に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記薄膜形成装置は、前記膜厚測定手段により測定された膜厚に基づいて前記基体に形成される薄膜の膜厚を調整する膜厚調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記膜原料物質供給手段は、
ターゲットと、
該ターゲットを保持して電圧を印加するスパッタ電極と、
該スパッタ電極に電力を供給する電力供給手段と、
前記ターゲットに向けてスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段と、を備え、
前記膜厚調整手段は、前記膜厚測定手段により測定した膜厚に基づいて、前記電力供給手段により前記スパッタ電極に供給される電力の量または前記スパッタガス供給手段により前記ターゲットに供給されるスパッタガスの流量のうち少なくともいずれか一方を調整することを特徴とする請求項に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記薄膜形成装置は、
前記膜原料物質供給手段と前記基体保持手段との間に配設される膜厚補正板と、
前記膜原料物質供給手段から前記基体保持手段へ供給される膜原料物質の一部を遮断する第一の位置、および前記第一の位置よりも膜原料物質の遮断量が少ない第二の位置との間で前記膜厚補正板を移動可能な補正板移動手段と、をさらに備え、
前記膜厚調整手段は、前記膜厚測定手段により測定された膜厚に基づいて前記補正板移動手段による前記膜厚補正板の移動位置を調整することを特徴とする請求項またはに記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
真空容器内に配置された基体に薄膜を形成するカルーセル式の薄膜形成装置であって、
前記基体を保持した状態で回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段と、
前記基体に膜原料物質を供給して薄膜を形成する膜原料物質供給手段と、
前記基体保持手段の回転軸線に沿って配置された複数の異なる基体のうち、複数の特定の基体の膜厚を測定する膜厚測定手段と、を備え、
該膜厚測定手段は、
前記回転軸線上の一方の側から複数の測定光を投光する投光部と、
該投光部から投光された前記測定光を前記基体保持手段に配置された前記特定の基体へ向けて反射する第一の光反射部材および前記特定の基体で反射された前記反射光を前記回転軸線の他方の側へ向けて反射する第二の光反射部材からなる一組の光反射ユニットと、
前記第二の光反射部材で反射された前記反射光を受光する受光部と、
該受光部で受光された前記反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を演算する膜厚演算部と、
を具備し、
前記基体保持手段は、
前記回転軸線を中心に回転する中空状の回転軸と、
前記基体を保持する基板保持板と、
前記基板保持板を前記回転軸に固定するフレームと、
を具備し、
前記回転軸の中空内部には、前記第一の光反射部材および前記第二の光反射部材が固定され、
前記回転軸の壁面には、前記第一の光反射部材で反射された前記測定光および前記特定の基体から前記第二の光反射部材に向けて反射された前記反射光が通過する開口が複数形成され、
前記光反射ユニットは、前記基体保持手段の回転軸線方向沿って配置された前記複数の特定の基体に測定光を照射するように、前記回転軸線に沿って複数組配設され
前記複数の開口は、それぞれ前記特定の基体に対して常に対向して形成されてなることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
前記薄膜形成装置は、前記膜厚測定手段により測定された前記複数の特定の基体に形成された膜厚に基づいて膜厚分布を調整する膜厚分布調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記膜原料物質供給手段は、
ターゲットと、
該ターゲットを保持して電圧を印加するスパッタ電極と、
該スパッタ電極に電力を供給する電力供給手段と、
前記ターゲットに向けてスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段と、を備え、
前記スパッタガス供給手段は、
前記複数の基体に対応する位置に配置され前記スパッタガスを前記ターゲットの異なる複数の位置に導入する複数の配管と、
該複数の配管から導入される前記スパッタガスの流量を独立に調整可能なスパッタガス流量調整手段と、備え、
前記膜厚分布調整手段は、前記膜厚測定手段で測定された前記複数の特定の基体の膜厚に基づいて、前記スパッタガス流量調整手段による前記複数の配管から導入されるスパッタガスの流量をそれぞれ独立に調整することを特徴とする請求項に記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記薄膜形成装置は、
前記膜原料物質供給手段と前記基体保持手段との間であって、かつ前記複数の特定の基体に対応する位置に配設される複数の補正小片と、
前記膜原料物質供給手段から前記基体保持手段へ供給される膜原料物質の一部を遮断する第一の位置と、前記第一の位置よりも膜原料物質の遮断量が少ない第二の位置との間で前記複数の補正小片を独立に移動可能な補正小片移動手段と、をさらに備え、
前記膜厚分布調整手段は、前記膜厚測定手段で測定された前記複数の特定の基体の膜厚に基づいて、前記補正小片動手段による前記複数の補正小片の移動位置をそれぞれ独立に調整することを特徴とする請求項またはに記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
カルーセル式の薄膜形成装置を用いて回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段に配置された基体に対して膜原料物質を供給して薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
前記基体保持手段の内部であって特定の基体に対して常に対向して配置された光反射部材を介して前記回転軸線の一方の側から前記特定の基体に測定光を投光する投光工程と、
前記基体保持手段の内部であって前記特定の基体に対して常に対向して配置された第二の光反射部材を介して前記回転軸線の他方の側で前記特定の基体から反射する反射光を受光する受光工程と、
該受光工程で受光した反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を取得する膜厚取得工程と、
該膜厚取得工程で取得した膜厚に基づいて前記基体に形成される薄膜の膜厚を調整する膜厚調整工程と、
を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項12】
カルーセル式の薄膜形成装置を用いて回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段に配置された基体に対して膜原料物質を供給して薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
前記基体保持手段の内部であって、前記基体保持手段に複数保持された特定の基体に対してそれぞれが常に対向して配置された複数の光反射部材を介して前記回転軸線の一方の側から前記基体保持手段に配置された前記複数の特定の基体のうち異なる位に配置された特定の基体に向けて複数の測定光を投光する投光工程と、
前記基体保持手段の内部であって、前記複数の特定の基体に対してそれぞれが常に対向して配置された複数の第二の光反射部材を介して前記回転軸線の他方の側で前記異なる位に配置された前記特定の基体から反射する複数の反射光を受光する受光工程と、
該受光工程で受光した複数の反射光に基づいて前記異なる位置に配置された前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を取得する膜厚取得工程と、
該膜厚取得工程で取得した複数の膜厚値に基づいて膜厚分布を取得する膜厚分布取得工程と、
該膜厚分布取得工程で取得した膜厚分布に基づいて、前記複数の位置における膜厚分布を調整する膜厚分布調整工程と、
を行うことを特徴とする薄膜形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜形成装置および薄膜形成方法に係り、特にカルーセル式の回転機構を備えた薄膜形成装置および薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングや真空蒸着などの物理蒸着やCVDなどの化学蒸着により基板の表面に光学薄膜を形成させる技術が知られている。この技術を用いて、干渉フィルタ、反射防止フィルタ、ハーフミラー、各種バンドパスフィルタ、ダイクロイックフィルタなどの光学素子やシリコンウェハなどの半導体素子を製造したり、各種装飾品の表面に色付けコートや反射防止層コートを行って特定の光学特性を有する装飾品などを製造したりすることが行われている。
【0003】
このような薄膜形成技術の分野で、基板を保持する基体保持手段の回転機構の一つにカルーセル式の回転機構がある。カルーセル式の回転機構では、横断面形状が円形または多角形の回転ドラム(すなわち、基体保持手段)の外周面に複数の基板が保持されており、この状態で、回転軸を中心に回転ドラムは回転している。このように、カルーセル式の薄膜形成装置では、回転ドラムの外周面に基板が保持されているため、回転ドラムが回転している間は一箇所にとどまった状態の基板が存在せず、すべての基板は回転軸を中心に公転している。
【0004】
このため、光学方式で膜厚等の薄膜の光学特性を測定するには、回転ドラムの回転を一旦停止してから基板に対して光学測定を行う必要があった。このような測定方法では、膜厚測定のたびに薄膜形成工程を停止しなければならないため、薄膜形成工程に時間がかかるという不都合があった。
【0005】
一方、回転ドラムが回転した状態でリアルタイムに膜厚を光学測定するためには、回転ドラムの外側から基板に向けて測定光を投光し、基板から反射する反射光を受光する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、上述したように回転ドラムは回転しているため、基板に入射する光の角度が随時変わってしまい、膜厚の正確な測定が困難であるという不都合があった。
【0006】
このような課題を解決するため、従来、中空軸である回転ドラムの回転軸を介して投光・受光を行う膜厚計測装置を備えた薄膜形成装置が開発されている。この膜厚計側装置は、中空軸である回転軸を備えた回転ドラムと、この回転軸内に配置された全反射ミラーと、回転軸の軸延長上に配置された全反射ミラーと、ハーフミラーを介して回転軸延長上に配置された全反射ミラーに測定光を照射する光源と、回転軸延長上に配置された全反射ミラーからの反射光をこのハーフミラーを介して受光する受光器と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この膜厚計測装置によれば、光源からの測定光は、ハーフミラーを介して回転軸延長上に配置された全反射ミラーに照射する。この回転軸内の全反射ミラーに照射された測定光は回転ドラムに保持された測定用ガラスに反射する。一方、測定用ガラスに照射する測定光は同じく全反射ミラーに反射する。この反射光はハーフミラーを介して受光器に照射する。
【0008】
このように、従来の薄膜形成装置によれば、中空軸である回転ドラムの回転軸を介して測定光や反射光を導いているので、回転ドラムが回転しているにもかかわらずリアルタイムに測定用ガラスの膜厚を測定することが可能となる。
【0009】

【特許文献1】特開2000-088531号公報(第1~5頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この薄膜形成装置では、回転軸内に設けられた単一の全反射ミラーを介して測定用ガラスへの測定光の照射と測定用ガラスからの反射光の反射が行われているため、回転軸の同じ端部から測定光と反射光が導入出される。このため、測定光と反射光が回転軸内で重なりやすく、光の干渉作用により測定光や反射光の強度が変化して、得られる膜厚値に誤差が生じることがある。
【0011】
また、この薄膜形成装置では、回転軸の同じ端部から測定光と反射光が導入出されるため、反射光を測定光から分離して受光器に送るためのハーフミラーが必須となる。ハーフミラーは所定の波長の光を反射光と透過光に分離する部材であり、光がハーフミラーを透過または反射すると、透過または反射された後の光の強度は、いずれもハーフミラーに入射する前の光の強度よりも小さくなる。例えば、ハーフミラーの透過率が50%の場合は、光源からハーフミラーを透過する測定光の強度は1/2に低下し、さらに測定用ガラスで反射されてハーフミラーを透過する反射光の強度も1/2に低下する。すなわち、受光器で受光する反射光の強度は、ハーフミラーを用いずに測定したと仮定した場合に得られる反射光の強度と比較して1/4に低下する。従って、このような低い強度の反射光に基づいて膜厚を演算した場合には、得られる膜厚値の精度が低下する。特に、反射率の低い材料で形成される薄膜の膜厚を測定する場合には、受光器での反射光の検出が非常に困難となる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特にカルーセル式の回転機構を備えた薄膜形成装置において、基板に形成される薄膜の膜厚をリアルタイムに、かつ高い精度で測定することが可能な薄膜形成装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、基板に形成される薄膜の膜厚をリアルタイムに、かつ高い精度で測定することが可能な薄膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の薄膜形成装置は、真空容器内に配置された基体に薄膜を形成するカルーセル式の薄膜形成装置であって、前記基体を保持した状態で回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段と、前記基体に膜原料物質を供給して薄膜を形成する膜原料物質供給手段と、前記基体のうち、特定の基体に形成された薄膜の膜厚を測定する膜厚測定手段と、を備え、該膜厚測定手段は、前記回転軸線の一方の側から前記基体保持手段の内部に向けて測定光を投光する投光部と、前記基体保持手段の内部に設けられると共に前記投光部から投光された前記測定光を前記特定の基体へ反射する第一の光反射部材と、前記基体保持手段の内部に設けられると共に前記特定の基体から反射された反射光を前記回転軸線の他方の側へ向けて反射する第二の光反射部材と、該第二の光反射部材により反射された前記反射光を受光する受光部と、該受光部で受光された前記反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を演算する膜厚演算部と、を具備し、前記基体保持手段は、前記回転軸線を中心に回転する中空状の回転軸と、前記基体を保持する基板保持板と、前記基板保持板を前記回転軸に固定するフレームと、を具備し、前記回転軸の中空内部には、前記第一の光反射部材および前記第二の光反射部材が固定され、前記回転軸の壁面には、前記第一の光反射部材で反射された前記測定光および前記特定の基体から前記第二の光反射部材に向けて反射された前記反射光が通過する開口が形成され、該開口は、前記特定の基体に対して常に対向して形成されてなることを特徴とする。
【0014】
このように、本発明の薄膜形成装置によれば、測定光は、基体保持手段の回転軸線の一方の側から基体保持手段の内部に設けられた第一の光反射部材に向けて投光されたのち基体へ反射される。一方、基体で反射された反射光は、第二の光反射部材により回転軸線の他方の側へ向けて反射されたのち受光される。そして、この受光された反射光に基づいて膜厚の演算が行われる。
すなわち、この薄膜形成装置では、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光が回転軸内で重なることがない。このため、測定光と反射光が重なることによる膜厚値に誤差が生じるといった不都合が生じず、測定される膜厚値の精度を向上させることが可能となる。
さらに、この薄膜形成装置は、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光を分離するためのハーフミラーを用いる必要が無い。このため、ハーフミラーを用いることによる測定値の感度低下が生じず、測定される膜厚値の感度を向上させることが可能となる。
【0016】
この薄膜形成装置によれば、第一の光反射部材および第二の光反射部材は回転軸に固定されているため、基体保持手段の回転に伴ってこれら第一の光反射部材および第二の光反射部材が回転する。すなわち、基体保持手段の回転位置にかかわらず、常に第一の光反射部材と第二の光反射部材が同じ基体の方向を向いている。
このため、第一の光反射部材に向けて測定光を投光する間は、常に継続的に特定の基体の膜厚を測定することが可能となる。
従って、本発明の薄膜形成装置によれば、膜厚の経時的変化に関する情報を取得することが可能となる。
【0017】
さらにこの場合、前記回転軸は、両端の一部が前記真空容器の外部に延出し、前記投光部は、前記回転軸の一端側の前記真空容器外であって前記第一の反射部材に向けて前記測定光を投光する位置に配置され、前記受光部は、前記回転軸の他端側の前記真空容器外であって前記第二の反射部材から反射する前記反射光が入射する位置に配置されていることが好ましい。
【0018】
この薄膜形成装置によれば、回転軸の両端の一部が真空容器の外部に延出しているため、投光部および受光部を真空容器の外部に配置した状態で、測定光の投光および反射光の受光を行うことができる。
一方、基体保持手段の内部に投光部や受光部が設置されている場合には、基体保持手段の回転に伴って投光部や受光部も回転するため、これらに接続された光ファイバなどがねじれたり絡まったりするという不都合がある。また、真空容器内の基体保持手段は成膜の過程で加熱されて高温になるため、この熱による投光部や受光部の熱変性といった不都合が生じることがある。
しかしながら、本発明の薄膜形成装置によれば、このような光ファイバのねじれや絡まりや、成膜の過程で発生する熱による影響を防止して、安定した膜厚測定を行うことが可能となる。
【0019】
さらにまた、前記薄膜形成装置は、一方向または両方向に回転する出力軸を有する基体保持手段駆動源を備え、前記回転軸は、その一端の外周面に前記基体保持手段駆動源の出力軸の回転を伝達する動力伝達部材が取り付けられると共に、前記一端は自由端とされていると好適である。
【0020】
この薄膜形成装置によれば、回転軸の一端側の外周面に取り付けられた動力伝達部材を介して基体保持手段駆動源の回転出力が基体保持手段に伝達される。そして、この一端は自由端とされている。このため、真空容器外に設けられた投光部からの測定光や受光部に入射する反射光が、基体保持手段駆動源の出力軸に遮られることなく回転軸の端部から出射される。
従って、複雑な構成を備えることなく、基体保持手段駆動源により基体保持手段を回転駆動したままの状態で、安定して膜厚測定を行うことが可能となる。
【0021】
また、前記薄膜形成装置は、前記膜厚測定手段により測定された膜厚に基づいて前記基体に形成される薄膜の膜厚を調整する膜厚調整手段をさらに備えることが好ましい。
【0022】
特にこの場合、前記膜原料物質供給手段は、ターゲットと、該ターゲットを保持して電圧を印加するスパッタ電極と、該スパッタ電極に電力を供給する電力供給手段と、前記ターゲットに向けてスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段と、を備え、前記膜厚調整手段は、前記膜厚測定手段により測定した膜厚に基づいて、前記電力供給手段により前記スパッタ電極に供給される電力の量または前記スパッタガス供給手段により前記ターゲットに供給されるスパッタガスの流量のうち少なくともいずれか一方を調整することが好ましい。
【0023】
また、前記薄膜形成装置は、前記膜原料物質供給手段と前記基体保持手段との間に配設される膜厚補正板と、前記膜原料物質供給手段から前記基体保持手段へ供給される膜原料物質の一部を遮断する第一の位置、および前記第一の位置よりも膜原料物質の遮断量が少ない第二の位置との間で前記膜厚補正板を移動可能な補正板移動手段と、をさらに備え、前記膜厚調整手段は、前記膜厚測定手段により測定された膜厚に基づいて前記補正板移動手段による前記膜厚補正板の移動位置を調整することが好ましい。
【0024】
このように、この薄膜形成装置によれば、上記膜厚測定手段により高い精度で膜厚を測定して、この測定した膜厚に基づいて基体に形成される薄膜の膜厚を調整することが可能となる。膜厚の調整は、スパッタ電極に供給される電力の量、ターゲットに供給されるスパッタガスの流量、膜厚補正板の移動位置を調整することで行われる。
このように、この薄膜形成装置によれば、基体に形成される薄膜の膜厚を高い精度で調整することが可能となる。
【0025】
上記課題は、本発明の薄膜形成装置によれば、真空容器内に配置された基体に薄膜を形成するカルーセル式の薄膜形成装置であって、前記基体を保持した状態で回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段と、前記基体に膜原料物質を供給して薄膜を形成する膜原料物質供給手段と、前記基体保持手段の回転軸線に沿って配置された複数の異なる基体のうち、複数の特定の基体の膜厚を測定する膜厚測定手段と、を備え、該膜厚測定手段は、前記回転軸線上の一方の側から複数の測定光を投光する投光部と、該投光部から投光された前記測定光を前記基体保持手段に配置された前記特定の基体へ向けて反射する第一の光反射部材および前記特定の基体で反射された前記反射光を前記回転軸線の他方の側へ向けて反射する第二の光反射部材からなる一組の光反射ユニットと、前記第二の光反射部材で反射された前記反射光を受光する受光部と、該受光部で受光された前記反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を演算する膜厚演算部と、を具備し、前記基体保持手段は、前記回転軸線を中心に回転する中空状の回転軸と、前記基体を保持する基板保持板と、前記基板保持板を前記回転軸に固定するフレームと、を具備し、前記回転軸の中空内部には、前記第一の光反射部材および前記第二の光反射部材が固定され、前記回転軸の壁面には、前記第一の光反射部材で反射された前記測定光および前記特定の基体から前記第二の光反射部材に向けて反射された前記反射光が通過する開口が複数形成され、前記光反射ユニットは、前記基体保持手段の回転軸線方向に沿って配置された前記複数の特定の基体に測定光を照射するように、前記回転軸線に沿って複数組配設され、前記複数の開口は、それぞれ前記特定の基体に対して常に対向して形成されてなることにより解決される。
【0026】
このように、本発明の薄膜形成装置によれば、基体保持手段の回転軸線に沿って複数の光反射ユニットが配設されているため、基体保持手段の回転軸線に沿って配置された複数の異なる基体の膜厚をそれぞれ測定することが可能となっている。すなわち、これら複数の異なる基体間での膜厚分布を測定することが可能となる。
【0027】
さらに、前記薄膜形成装置は、前記膜厚測定手段により測定された前記複数の特定の基体に形成された膜厚に基づいて膜厚分布を調整する膜厚分布調整手段をさらに備えることが好ましい。
【0028】
特にこの場合、前記膜原料物質供給手段は、ターゲットと、該ターゲットを保持して電圧を印加するスパッタ電極と、該スパッタ電極に電力を供給する電力供給手段と、前記ターゲットに向けてスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段と、を備え、前記スパッタガス供給手段は、前記複数の基体に対応する位置に配置され前記スパッタガスを前記ターゲットの異なる複数の位置に導入する複数の配管と、該複数の配管から導入される前記スパッタガスの流量を独立に調整可能なスパッタガス流量調整手段と、備え、前記膜厚分布調整手段は、前記膜厚測定手段で測定された前記複数の特定の基体の膜厚に基づいて、前記スパッタガス流量調整手段による前記複数の配管から導入されるスパッタガスの流量をそれぞれ独立に調整すると好適である。
【0029】
あるいは、前記薄膜形成装置は、前記膜原料物質供給手段と前記基体保持手段との間であって、かつ前記複数の特定の基体に対応する位置に配設される複数の補正小片と、前記膜原料物質供給手段から前記基体保持手段へ供給される膜原料物質の一部を遮断する第一の位置と、前記第一の位置よりも膜原料物質の遮断量が少ない第二の位置との間で前記複数の補正小片を独立に移動可能な補正小片移動手段と、をさらに備え、前記膜厚分布調整手段は、前記膜厚測定手段で測定された前記複数の特定の基体の膜厚に基づいて、前記補正小片動手段による前記複数の補正小片の移動位置をそれぞれ独立に調整することが好ましい。
【0030】
このように、この薄膜形成装置によれば、上記膜厚測定手段により測定された複数の異なる基体に形成された膜厚に基づいて、膜厚分布を調整することができる。この膜厚分布の調整は、複数の配管からターゲットに供給されるスパッタガスの流量の増減、または補正小片の移動位置を調整することで行われる。
このように、この薄膜形成装置によれば、基体に形成される薄膜の膜厚分布を高い精度で調整することが可能となる。
【0031】
上記課題は、本発明の薄膜形成方法によれば、カルーセル式の薄膜形成装置を用いて回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段に配置された基体に対して膜原料物質を供給して薄膜を形成する薄膜形成方法であって、前記基体保持手段の内部であって特定の基体に対して常に対向して配置された光反射部材を介して、前記回転軸線の一方の側から前記特定の基体に測定光を投光する投光工程と、前記基体保持手段の内部であって前記特定の基体に対して常に対向して配置された第二の光反射部材を介して、前記回転軸線の他方の側で前記特定の基体から反射する反射光を受光する受光工程と、該受光工程で受光した反射光に基づいて前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を取得する膜厚取得工程と、該膜厚取得工程で取得した膜厚に基づいて前記基体に形成される薄膜の膜厚を調整する膜厚調整工程と、を行うことにより解決される。
【0032】
このように、本発明の薄膜形成方法によれば、測定光は、基体保持手段の回転軸線の一方の側から基体保持手段の内部に向けて投光されたのち基体へ反射される。そして、基体で反射された反射光は、回転軸線の他方の側へ向けて反射されたのち受光される。この受光された反射光に基づいて膜厚の演算が行われ、この膜厚に基づいて膜厚がフィードバック制御される。
すなわち、この薄膜形成方法では、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光が回転軸内で重なることがない。このため、測定光と反射光が重なることによる膜厚値に誤差が生じるといった不都合が生じず、測定される膜厚値の精度を向上させることが可能となる。
さらに、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光を分離するためのハーフミラーを用いる必要が無い。このため、ハーフミラーを用いることによる測定値の感度低下が生じず、測定される膜厚値の感度を向上させることが可能となる。
そして、このような高い精度の膜厚測定により得られた膜厚値に基づいて膜厚をフィードバック制御により調整することで、得られる光学製品の膜厚を厳密に制御することが可能となる。
【0033】
また、上記課題は、カルーセル式の薄膜形成装置を用いて回転軸線を中心に回転可能な基体保持手段に配置された基体に対して膜原料物質を供給して薄膜を形成する薄膜形成方法であって、前記基体保持手段の内部であって、前記基体保持手段に複数保持された特定の基体に対してそれぞれが常に対向して配置された複数の光反射部材を介して、前記回転軸線の一方の側から前記基体保持手段に配置された前記複数の特定の基体のうち異なる位に配置された特定の基体に向けて複数の測定光を投光する投光工程と、前記基体保持手段の内部であって、前記複数の特定の基体に対してそれぞれが常に対向して配置された複数の第二の光反射部材を介して、前記回転軸線の他方の側で前記異なる位に配置された前記特定の基体から反射する複数の反射光を受光する受光工程と、該受光工程で受光した複数の反射光に基づいて前記異なる位置に配設された前記特定の基体に形成される薄膜の膜厚を取得する膜厚取得工程と、該膜厚取得工程で取得した複数の膜厚値に基づいて膜厚分布を取得する膜厚分布取得工程と、該膜厚分布取得工程で取得した膜厚分布に基づいて、前記複数の位置における膜厚分布を調整する膜厚分布調整工程と、を行うことにより解決される。
【0034】
このように、この薄膜形成方法によれば、基体保持手段の回転軸線の一方の側から基体保持手段の内部に向けて測定光を投光し、この測定光を基体へ反射している。そして、基体から反射した反射光は、回転軸線の他方の側へ向けて反射されたのち受光される。この受光した反射光に基づいて膜厚の演算を行い、この膜厚分布に基づいて膜厚分布をフィードバック制御している。
すなわち、この薄膜形成方法では、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光が回転軸内で重なることがない。このため、測定光と反射光が重なることによる膜厚値に誤差が生じるといった不都合が生じず、測定される膜厚値の精度を向上させることが可能となる。
さらに、この薄膜形成方法は、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、測定光と反射光を分離するためのハーフミラーを用いる必要が無い。このため、ハーフミラーを用いることによる測定値の感度低下が生じず、測定される膜厚値の感度を向上させることが可能となる。
そして、このような高い精度の膜厚測定により得られた膜厚値に基づいて膜厚分布をフィードバック制御により調整することで、得られる光学製品の膜厚分布を厳密に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の薄膜形成装置によれば、回転軸線の異なる方向から測定光と反射光がそれぞれ入射および出射されるため、誤差が少なく精度の高い膜厚値を得ることが可能となる。従って、特に反射率の低い材料からなる薄膜の膜厚を測定するような場合であっても、高い感度で精度の高い膜厚値を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0037】
図1~図7は本発明の第一の実施形態に係る薄膜形成装置の説明図であり、図1は第一の実施形態に係る薄膜形成装置を上方から見た説明図、図2は図1の薄膜形成装置を矢視A-A'方向に見た説明図、図3は回転ドラム13を斜め上方から見た斜視部分断面図、図4は第一の実施形態に係る薄膜形成装置の機能的構成を示すブロック図、図5は図1の成膜プロセス領域20Aを拡大して示した説明図、図6は図1の成膜プロセス領域20Aを基板側から見た状態を示す説明図、図7は図1の反応プロセス領域60Aを拡大して示した説明図である。
【0038】
本実施形態では、薄膜形成装置としてスパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う薄膜形成装置を用いているが、本発明の薄膜形成装置としては、このようなマグネトロンスパッタに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等の他の公知のスパッタを行う薄膜形成装置を用いることもできる。
【0039】
また、本実施形態では、成膜プロセス領域として単一の成膜プロセス領域20Aのみを設けて、1種類の材料からなるターゲットをスパッタしているが、成膜プロセス領域20Aとは別の領域にもうひとつの成膜プロセス領域を設けて、それぞれ異なる種類のターゲットをスパッタすることで、2種類の金属材料からなる複合薄膜を形成するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態の薄膜形成装置では、ターゲットをスパッタして膜原料物質を基板表面に付着させることで目的の膜厚よりも相当程度薄い薄膜を基板表面に付着するスパッタ処理工程と、この膜原料物質に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理工程とにより基板表面に中間薄膜を形成し、このスパッタ処理工程とプラズマ処理工程を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数層積層して目的の膜厚を有する最終薄膜を基板表面に形成している。
【0041】
具体的には、スパッタ処理工程とプラズマ処理工程によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01~1.5nm程度の中間薄膜を基板表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより複数の中間薄膜が積層し、目的とする数nm~数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成している。
【0042】
以下、本発明の一実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。図1は本実施形態に係る薄膜形成装置を上方から見た説明図であり、薄膜形成装置を構成する部材等の一部を断面にして模式的に示してある。この図に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、スパッタ手段20と、スパッタガス供給手段30と、プラズマ発生手段60と、反応性ガス供給手段70と、を主要な構成要素としている。なお、図中では、スパッタ手段20は破線、スパッタガス供給手段30は一点鎖線、プラズマ発生手段60は破線、反応性ガス供給手段70は二点鎖線で囲んで表示している。
【0043】
真空容器11は、公知の薄膜形成装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、ほぼ直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、開閉扉としての扉11Cによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する図示しない扉収納室が設けられており、扉11Cは真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
【0044】
真空容器11には、ロードロック室11Bと真空容器11の外部とを仕切るための扉11Dが設けられている。扉11Dはスライドまたは回動することで開閉する。真空容器11の内部の薄膜形成室11Aには、排気用の配管16a-1が接続され、この配管16a-1には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15aが接続されている。
【0045】
配管16a-1の一端は開口しており、この開口は真空容器11内の成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aとの間に位置している。このような配置とすることで、成膜プロセス領域20Aで飛散した膜原料物質を真空ポンプ15aで吸引することが可能となり、成膜プロセス領域20Aから飛散した膜原料物質が反応プロセス領域60Aに侵入して基板の表面やプラズマ発生手段60を汚染することを防止できる。また、真空容器11の内部のロードロック室11Bには、排気用の配管16bが接続され、この配管16bには真空容器11内を排気するための真空ポンプ15bが接続されている。
【0046】
本実施形態の薄膜形成装置は、このようなロードロック室11Bを備えているため、薄膜形成室11A内の真空状態を保持した状態で基板の搬入出を行うことが可能となる。従って、基板を搬出する毎に真空容器内を脱気して真空状態にする手間を省くことが可能となり、高い作業効率で成膜処理を行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態の真空容器11は、ロードロック室11Bを備えるロードロック方式を採用しているが、ロードロック室を設けないシングルチャンバ方式を採用することも可能である。また、複数の真空室を備え、それぞれの真空室で独立に薄膜形成を行うことが可能なマルチチャンバ方式を採用することも可能である。
【0048】
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11内で保持するための筒状の部材であり、本発明の基体保持手段に該当する。図2は図1の薄膜形成装置を矢視A-A'方向に見た説明図である。この図では、部材の配置などの説明を容易にするため薄膜形成装置を構成する部材等の一部を断面にして記載してある。また、図3は回転ドラム13を斜め上方から見た斜視部分断面図である。この図では、各部材の配置などについての理解を容易にするために、回転ドラム13の一部を切り欠いた状態にして図示すると共に、回転軸13d内部に配設されていて本来は視認できない位置にある全反射ミラーを破線で示してある。
【0049】
図2に示すように、回転ドラム13は、複数の基板保持板13aと、これらの基板保持板13aを支持するフレーム13bと、基板保持板13aおよびフレーム13bを締結する締結具13cと、回転ドラム13の中心軸をなす回転軸13dと、回転軸13dの端部側の外周面に取り付けられたギヤ13eと、を主要な構成要素としている。
【0050】
基板保持板13aは、ステンレススチール製の平板状部材であり、複数の基板Sを保持するための複数の基板保持孔が形成されている。この基板保持孔は、基板保持板13aの長手方向に沿って板面中央部に一列に配列されていると共に、板面の片面から裏側の面まで貫通して設けられている。基板Sは、基板保持板13aの基板保持孔に収納された状態で、脱落しないようにネジ部材等を用いて基板保持板13aに固定される。基板保持板13aの長手方向における両端部には、後述する締結具13cを挿通可能なネジ穴が穿設されている。
【0051】
フレーム13bはステンレススチール製の材料で形成されており、上下に配設された2つの環状部材と、これらの環状部材を回転軸13dに連結する梁部材で構成されている。フレーム13bのそれぞれの環状部材には、基板保持板13aを取り付けた時に基板保持板13aのそれぞれのネジ穴と対応する位置にネジ穴が形成されている。締結具13cはボルトおよびナットで構成され、ボルトを基板保持板13aおよびフレーム13bのネジ穴に挿通してナットで固定することにより基板保持板13aはフレーム13bに固定される。なお、本実施形態における回転ドラム13の形状は、平板状の基板保持板13aを複数配置しているため横断面が多角形をした多角柱状をしているが、このような多角柱状に限定されず、中空の円筒状や円錐状であってもよい。
【0052】
回転ドラム13の中心部には、真空容器11の上下に渡って回転軸13dが設けられている。回転軸13dは、薄膜形成装置1内で回転ドラム13を回動するための中心軸であり、フレーム13bの梁部材にネジなどの止着部材を用いて固定されている。この回転軸13dは、基板保持板13aと同様にステンレススチール製の管状部材であり、一端から他端に渡って中空の管路が形成されている。フレーム13bの回転軸13dとの当接面は絶縁部材で形成されている。これにより、基板で異常放電が発生することを防止できる。
【0053】
真空容器11の上壁面と下壁面には真空容器11の外部へ連通する開口が形成されている。回転軸13dの上端は、真空容器11の上壁面に形成された開口から真空容器11の外部へ延出している。一方、回転軸13dの下端は、真空容器11の下壁面に形成された開口から真空容器11の外部へ延出している。これらの開口の内周面には図示しない軸受が設けられており、回転軸13dはこの軸受に軸承されている。これにより、回転ドラム13の回転をスムーズに行うことができる。また、回転軸13dの壁面との間は図示しないOリングにより気密が保たれている。
【0054】
真空容器11外部へ延出した回転軸13dの下端部には、その外周部にギヤ13eが嵌着されている。真空容器11の外部で回転ドラム13の下側の位置には、回転ドラム駆動モータ17が設置されている。この回転ドラム駆動モータ17は、一方向または両方向に回転する出力軸を備えたモータであり、本発明の基体保持手段駆動源に相当する。また、ギヤ13eは本発明の動力伝達部材に相当する。
この回転ドラム駆動モータ17の出力軸にはギヤ17aが嵌着している。このギヤ17aは回転軸13dの下端部に設けられたギヤ13eと噛合している。回転ドラム駆動モータ17は図示しない電源に接続されており、この電源から電力の供給を受けてギヤ17aが回転する。ギヤ17aが回転すると、これに噛合するギヤ13eにギヤ17aの回転動力が伝達されて、ギヤ13eも回転する。ギヤ13eが回転すると、回転ドラム13全体が回転軸13dの回転軸線Z-Z'を中心に回転する。各基板Sは、基板保持板13a上に保持されているため、回転ドラム13が回転することで回転軸線Z-Z'を公転軸として公転する。
【0055】
基板Sは、表面に薄膜が形成される成膜処理対象であり、本発明の基体に該当する。本実施形態では、基板Sはガラス製の円板状部材であるが、本発明の基体としては本実施形態のような円板状に限定されず、レンズ状や管状などの他の形状であってもよい。また、基板Sの材質も本実施形態のようなガラス製に限定されず、プラスチック製や金属製などであってもよい。
【0056】
次に、本発明の特徴的構成である膜厚測定手段について説明する。薄膜形成手段は、基板表面に形成される薄膜の膜厚を測定する手段である。本実施形態では、図2および図3に示すように、膜厚測定手段は、測定光を発する光源41と、この光源41からの測定光を伝送する投光用光ファイバ42と、投光用光ファイバ42で伝送した測定光を全反射ミラー46に照射する投光ヘッド43と、投光ヘッド43からの測定光を収束する投光側集光レンズ44,45と、投光ヘッド43からの測定光をモニタ基板Sへ反射する全反射ミラー46と、モニタ基板から反射する反射光を受光ヘッド54へ反射する全反射ミラー51と、全反射ミラー51で反射した反射光を収束する受光側集光レンズ52,53と、全反射ミラー51で反射した反射光を受光する受光ヘッド54と、受光ヘッド54で受光した反射光を伝送する受光側光ファイバ55と、受光側光ファイバ55で伝送された反射光を分光する分光測定装置56と、を主要な構成要素として備えている。
なお、光源41、投光用光ファイバ42、および投光ヘッド43は本発明の投光部に相当する。また、全反射ミラー46は第一の光反射部材に、全反射ミラー51は第二の光反射部材に相当する。また、受光ヘッド54、受光側光ファイバ55、および分光測定装置56は受光部に相当する。
【0057】
光源41は、真空容器11の外部に設置され、膜厚測定用の測定光を発する装置である。この光源41は、図示しない電源から電力の供給を受けて光を発する発光素子と、この発光素子から発する光のうち特定の波長領域の光を透過するフィルタを備えている。光源41には投光用光ファイバ42が接続されている。この投光用光ファイバ42の一端は光源41内に導入され、光源41のフィルタで透過した測定光がその端面に入射するように配置されている。
【0058】
投光用光ファイバ42の他端には投光ヘッド43が取り付けられている。この投光ヘッド43は、投光用光ファイバ42の端面から導出される測定光が後述する全反射ミラー46に指向するように、投光用光ファイバ42の端部を固定するための部材である。投光ヘッド43は、回転軸13dの上側(図中では、回転軸線Z-Z'のうちZ側)の真空容器11外部に配置されており、回転軸13dの内部に配置された全反射ミラー46に指向している。このため、投光用光ファイバ42の一端から入射した測定光は、投光用光ファイバ42内を伝送して投光ヘッド43から出射する。投光ヘッド43から出射した測定光は、回転軸13dの一端から入射して中空軸内を軸線方向に沿って通過して全反射ミラー46に照射される。
【0059】
本実施形態では、投光ヘッド43と全反射ミラー46の間には投光側集光レンズ44,45が配設されており、投光ヘッド43から導出する測定光が投光側集光レンズ44,45で収束されて全反射ミラー46に照射されるように構成されている。これらの集光レンズのうち、投光側集光レンズ44は真空容器11の外部に配置され、投光側集光レンズ45は回転ドラム13の回転軸13d内に配置されている。
【0060】
投光側集光レンズ45で収束された測定光は、全反射ミラー46で反射して基板Sに向けて照射される。全反射ミラー46はガラスなどの基材の表面にアルミなどの薄膜を形成して作成した部材であり、少なくとも測定光の波長ではほぼ100%の高い反射率を有している。本実施形態の全反射ミラー46は、ほぼ正方形の板状部材で構成されている。この全反射ミラー46は、回転軸13dの中空体内部に配設されており、回転軸13dの内壁面に溶接やネジ止めなどにより固定されている。
【0061】
回転軸13dの中央部には、側壁の一部を切り欠いた開口13fが形成されている。全反射ミラー46から反射する測定光は、この開口13fを通過して、回転ドラム13に保持されたモニタ基板Sに照射される。
なお、光源41で発生させた測定光を投光側光ファイバ42で伝送し、投光ヘッド43から全反射ミラー46を介してモニタ基板Sに照射する工程は、本発明の投光工程に相当する。
【0062】
このモニタ基板Sは膜厚測定用のための基板であり、他の基板Sと同様に成膜プロセス領域20Aで表面側(すなわち、回転軸13dと反対側の面)に薄膜が形成される。本実施形態のモニタ基板Sは透明のガラス材料で形成されているが、測定光の波長を高い透過率で透過する材料であればこのようなガラス材料に限定されず、例えばプラスチックなどであってもよい。また、光学製品を作成する基板Sがこのような測定光の波長に対して高い透過率を示す場合は、測定用のモニタ基板Sを設けずに、光学製品作成用の基板Sをモニタ基板として代用することも可能である。
【0063】
モニタ基板Sに照射された測定光は、モニタ基板Sの裏面側(すなわち、回転軸13d側)から入射して、モニタ基板S内部を透過する。モニタ基板Sの表面側には薄膜が形成されているため、測定光のうち一部はこの薄膜で反射する。この反射光は、回転軸13dの開口13fを通過して全反射ミラー51に入射される。
なお、本実施形態では、単一の開口13fを測定光および反射光が通過するように構成されているが、測定光用の開口と反射光用の開口の2つの開口を設ける構成としてもよい。
【0064】
全反射ミラー51は、モニタ基板Sで反射した反射光が回転軸13dの下側の端部から導出するような方向を向いた状態で、回転軸13d内に固定されている。全反射ミラー51は、全反射ミラー46と同様に、測定光の波長ではほぼ100%の高い反射率を有する部材である。全反射ミラー51と受光ヘッド54の間には、受光側集光レンズ52,53が配設されている。これらの受光側集光レンズ52,53も投光側集光レンズ44,45と同様に、反射光を収束する機能を有する。受光側集光レンズ52で収束された反射光は、受光ヘッド54に指向している。
【0065】
受光ヘッド54は、回転軸13dの下側(図中では、回転軸線Z-Z'のうちZ'側)の真空容器11外部に配置されている。受光ヘッド54は、全反射ミラー51で反射した反射光が入射する位置に配置されている。受光ヘッド54には、受光側光ファイバ55の一端が接続されており、他端は分光測定装置56に接続されている。モニタ基板Sから反射した反射光は、全反射ミラー51で反射して、受光側集光レンズ52,53で収束されたのち、受光ヘッド54に入射する。この入射した反射光は、受光側光ファイバ55を伝送して分光測定装置56に導入される。
【0066】
このように投光ヘッド43と受光ヘッド54は、いずれも真空容器11の外部に設けられている。仮に、これらを回転ドラム13の内部に配置したとすると、これらに接続された光ファイバが回転ドラム13の回転によりねじれたり、絡まったりする虞がある。また、回転ドラム13は成膜の過程で加熱されて高温となるため、この熱による投光ヘッドや受光ヘッドが熱変性するといった不都合が生じる虞もある。このため、回転ドラム13が回転しても、光ファイバがねじれたり絡まったりしない特別の構成が必要となる。しかしながら、本発明の膜厚測定装置では、このような光ファイバのねじれや絡まりや、成膜の過程で発生する熱による影響を防止して、安定した膜厚測定を行うことが可能となる。
【0067】
また、この薄膜形成装置1は、回転軸13dの一端側の外周面に取り付けられたギヤ13eを介して、回転ドラム駆動モータ17の回転出力を回転ドラム13に伝達するよう構成されている。
仮に、回転ドラム駆動モータ17の出力軸の端面と回転ドラム13の回転軸13dの端面とを連接して両軸を一軸状とした場合、回転軸13dの端部にはこの出力軸が接合しているため、反射光はこの出力軸に遮られて回転軸13dの一端側から出射することができない。このため、回転軸13d内に更に全反射ミラーを設けると共に、回転軸13dの側面にさらに開口を設けて、この開口を介して反射光を出射させるような複雑な構成を採用する必要がある。
一方で、本発明の薄膜形成装置1では、回転軸13dの端部側は自由端となっているため、この端部から直接反射光が出射できるようになっている。従って、本発明の薄膜形成装置は、回転軸13dの端部外周面に取り付けられたギヤ13eを介して回転ドラム駆動モータ17の回転出力を伝達するという簡単な構成で、回転ドラム13を回転したままの状態で安定して薄膜測定を行うことが可能となっている。
【0068】
分光測定装置56は、反射光のうち所定の波長の光の強度を測定する装置である。分光測定装置56は、膜厚測定で使用される公知の分光測定装置と同様の構成を備えている。すなわち、図4に示すように、分光測定装置56は、反射光のうち所定の波長領域の光を透過する分光素子と、この分光素子を透過した光を受光して光の強度に応じた電流値を出力する受光素子を備えている。
【0069】
分光素子は、例えばグレイティングのような回折格子を備えた部材で構成され、所定の波長領域の光を透過する。本実施形態では、分光素子は測定光の波長を少なくともほぼ100%の透過率で透過する。この分光素子を透過した光は受光素子に照射される。受光素子は、例えばフォトダイオードなどの半導体素子から構成される。フォトダイオードはp型およびn型の半導体を接合した素子で、その接合面に光が当たるとその光の強度に応じた電流が発生する。この電流は、分光測定装置56内のA/D変換器によりデジタル信号化されて、分光測定装置56から後述する膜厚演算コンピュータ57に出力される。
なお、モニタ基板Sで反射した反射光を全反射ミラー51を介して受光ヘッド54で受光し、この受光した反射光を受光側光ファイバ55で伝送して分光測定装置56で分光測定を行う工程は、本発明の受光工程に相当する。
【0070】
膜厚演算コンピュータ57は、分光測定装置56で測定した反射光の強度に基づいて、モニタ基板Sに形成された薄膜の膜厚を演算する手段である。図4に示すように、膜厚演算コンピュータ57は、演算手段としてのCPUと、記憶手段としてのハードディスクおよびメモリ(具体的には、ROM、RAM)と、外部装置等との間で信号を送受信する際の入出力ポートとしてのI/Oポートと、を備えている。
なお、膜厚演算コンピュータ57は本発明の膜厚演算部に相当する。
【0071】
膜厚演算コンピュータ57には、分光測定装置56が電気的に接続されている。分光測定装置56でデジタル化された反射光の強度の信号は、膜厚演算コンピュータ57のI/Oポートに入力される。ハードディスクには、反射光の強度の変化とモニタ基板Sに形成された薄膜の膜厚との相関関係が記憶された膜厚相関関係データと、分光測定装置56から送信される反射光の強度信号とこの膜厚相関関係データに基づいて膜厚を演算する膜厚演算プログラムが記憶されている。
【0072】
以下に、膜厚演算コンピュータ57で膜厚を測定する原理について説明する。モニタ基板Sに照射された測定光は、モニタ基板Sと薄膜の間の境界、および薄膜と真空容器側の間の境界で反射する。この時、これらの反射光が互いに干渉を起こして、反射光の強度に変化が生じる。
【0073】
ここで、薄膜の反射光の強度と膜厚との間には、所定の相関関係がある。より詳細には、薄膜の屈折率n,波長λ,幾何学的膜厚dとすると、光学的膜厚ndがλ/4の整数倍となる毎に周期的に反射光の強度はピークを示すことが知られている。ピークの高さ(ピーク値P)と屈折率には所定の相関関係があるため、ピーク値Pを求めることで屈折率を求めることが可能となる。すなわち、反射光の強度を測定することでピーク値Pが求められ、このピーク値Pの屈折率nと波長λの値に基づいて、光学的膜厚ndから幾何学的膜厚dを算出することが可能となる。
【0074】
膜厚演算コンピュータ57は、測定光の波長λを予め設定値として記憶している。そして、膜厚演算プログラムは、分光測定装置56から送信される反射光の強度信号からピークPの高さを求めて屈折率nを演算する。さらに、この屈折率nと波長λの値に基づいて、幾何学的膜厚dを算出する。
この膜厚演算コンピュータ57で膜厚を算出する工程は、本発明の膜厚取得工程に相当する。
【0075】
膜厚演算コンピュータ57は、膜厚制御装置90と電気的に接続されている。膜厚制御装置90は、MPUなどの演算手段と、ROM,RAMなどの記憶手段と、他の装置と電気信号を送受信する入出力ポートを備えている。膜厚制御装置90には、膜厚演算コンピュータ57で測定した膜厚(すなわち、幾何学的膜厚d)が入力される。膜厚制御装置90は、膜厚制御信号生成部を備えており、この膜厚に基づいて、成膜レートや成膜時間を調整することにより、膜厚を制御する。
具体的には、膜厚制御装置90は、膜厚演算コンピュータ57で取得した膜厚に基づいて、後述するスパッタ手段20の交流電源24からターゲット22a,22bに供給される電力の増減、スパッタガス供給手段30により成膜プロセス領域20Aに供給されるスパッタガスや反応性ガスの供給量の増減、後述する図5や図6に示す補正板駆動モータ84a,84bによる膜厚補正板81a,81bの進退移動のいずれか1つ以上の方法により、成膜レートを調整する。この膜厚制御装置90による成膜レートの調整については、後に詳細に説明する。
なお、この膜厚制御装置90は本発明の膜厚調整手段に相当する。また、膜厚制御装置90で膜厚を調整する工程は、本発明の膜厚調整工程に相当する。
【0076】
また、成膜時間を調整することによって膜厚を調整することも可能である。すなわち、膜厚演算コンピュータ57で取得したモニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも小さい場合は、膜厚制御装置90は、所定の成膜終了時間で成膜を終了せずに成膜時間を延長するよう、予め設定した膜厚まで膜厚を増加させる。一方、膜厚演算コンピュータ57で取得したモニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも大きい場合は、膜厚制御装置90は、所定の成膜終了時間よりも前に成膜を終了させることで成膜時間を短縮して、予め設定した膜厚で成膜を終了する。なお、これらの膜厚制御方法は、いずれか1つのみを用いて膜厚を調整してもよいし、複数の方法を組み合わせて膜厚を調整してもよい。
【0077】
次に、基板Sの表面に薄膜を形成する成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aについて説明する。図1に示すように、真空容器11の内壁には、回転ドラム13へ面した位置に仕切壁12と仕切壁14が立設されている。本実施形態における仕切壁12と仕切壁14は、真空容器11と同じくステンレススチール製の部材である。図1および図2に示すように、仕切壁12は、上下左右が回転ドラム13に向けて突出した形状をしており、真空容器11の内壁面から回転ドラム13に向けて四方を囲んだ状態となっている。なお、仕切壁14についても仕切壁12と同様の形状をしている。これにより、成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aがそれぞれ真空容器11内で区画される。
【0078】
図1に示すように、真空容器11の側壁は真空容器11の外方に向けて凹んだ横断面凹状をしており、この凹部底面をなす壁面にはスパッタ手段20が設置されている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁12,および回転ドラム13の外周面に囲繞された領域に形成されている。成膜プロセス領域20Aでは、基板Sの表面に膜原料物質を付着させるためのスパッタ処理がスパッタ手段20により行われる。
【0079】
また、成膜プロセス領域20Aから回転ドラム13の回転軸を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、真空容器11の外方に向けて凹んだ横断面凹状をしており、この凹部底面をなす壁面にはプラズマ発生手段60が設置されている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面,仕切壁14,および回転ドラム13の外周面に囲繞された領域に形成されている。反応プロセス領域60Aでは、基板Sの表面に付着した膜原料物質に対してプラズマ発生手段60によりプラズマ処理が行われて中間薄膜が形成される。
【0080】
回転ドラム駆動モータ17によって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが回転軸線Z-Z'を中心として公転して、成膜プロセス領域20Aに面する位置と、真空容器11内に露出する位置と、反応プロセス領域60Aに面する位置と、真空容器11内に露出する位置との間を繰り返し移動する。そして、このように基板Sが公転する間に、成膜プロセス領域20Aでのスパッタ処理と、反応プロセス領域60Aでのプラズマ処理とが順次繰り返し行われて、基板Sの表面に最終薄膜が形成される。
【0081】
(成膜プロセス領域20A)
以下に、本発明の成膜プロセス領域20Aについて説明する。図5は図1の成膜プロセス領域20Aを拡大して示した説明図、図6は図1の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。なお、図5では、回転ドラム13についてはその一部のみ示しており、その他の部分については省略して記載してある。
【0082】
図5に示すように、本発明の成膜プロセス領域20Aにはスパッタ手段20が設置されている。スパッタ手段20は、一対のターゲット22a,22bと、これらのターゲット22a,22bをそれぞれ保持する一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力を調整するトランス23と、により構成される。成膜プロセス領域20Aでは、スパッタ手段20により、基板に膜原料物質が供給されて、その表面に薄膜が形成される。なお、このスパッタ手段20は本発明の膜原料物質供給手段に相当する。また、マグネトロンスパッタ電極21a,21bは本発明のスパッタ電極に、交流電源24は電力供給手段に相当する。
【0083】
真空容器11の壁面は、真空容器11の外方に向けて凹んだ横断面凹状をしており、この凹部底面の内壁を貫通してマグネトロンスパッタ電極21a,21bが設置されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。
【0084】
本実施形態のターゲット22a,22bは、膜原料物質を平板状に形成した形状をしており、回転ドラム13の側面に対向するようマグネトロンスパッタ電極21a,21bにそれぞれ保持される。ターゲットの材質としては、製造する光学製品の目的にあった任意の材料、例えば、ケイ素,ニオブ,チタン,アルミニウム,ゲルマニウムなどの金属やこれらの酸化物や窒化物などから選択することが可能である。なお、ターゲットの形状としては、このような平板状に限定されず、円板状などの他の形状であってもよい。なお、本実施形態では、ターゲット22a,22bとしてケイ素(Si)を用いている。
【0085】
マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に電気的に接続され、両電極に1k~100kHzの交番電界が印加できるように構成されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット22a,22bがそれぞれ保持されている。本実施形態において、ターゲット22a,22bの形状は平板状であり、図2に示すように、ターゲット22a,22bの長手方向が回転ドラム13の回転軸線Z-Z'(図2参照)と平行となる向きに設置されている。
【0086】
成膜プロセス領域20Aの周辺には、スパッタガスおよび反応性ガスの混合ガスを成膜プロセス領域20A内に供給するためのスパッタガス供給手段30が設けられている。スパッタガス供給手段30は、スパッタガス貯蔵手段としてのスパッタガスボンベ32と、スパッタガスの流量を調整するスパッタガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ31と、反応性ガス貯蔵手段としての反応性ガスボンベ34と、反応性ガスの流量を調整する反応性ガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ33と、スパッタガスおよび反応性ガスを成膜プロセス領域20A内に供給するガス供給路としての配管35と、を主要な構成要素として具備している。なお、スパッタガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。また、反応性ガスとしては、例えば酸素や窒素などが挙げられる。
【0087】
スパッタガスボンベ32、マスフローコントローラ31はいずれも真空容器11の外部に設けられている。マスフローコントローラ31は、スパッタガスを貯蔵する単一のスパッタガスボンベ32に配管を介してそれぞれ接続されている。
【0088】
マスフローコントローラ31は配管35に接続されている。配管35は、真空容器11の側壁を貫通して成膜プロセス領域20A内のターゲット22a,22bの下部に延びている。配管35の端部には導入口35aが形成されており、図6に示すように、この導入口35aはターゲット22a,22bの下部中心付近に配置され、ターゲット22a,22bの前面中心方向に向かって開口している。
【0089】
次に、マスフローコントローラ31,33について説明する。マスフローコントローラ31,33は、いずれもガスの流量を調節する装置であり、ガスボンベからのガスが流入する流入口と、ガスを真空容器11側へ流出させる流出口と、ガスの質量流量を検出するセンサと、ガスの流量を調整するコントロールバルブと、流入口より流入したガスの質量流量を検出するセンサと、センサにより検出された流量に基づいてコントロールバルブの制御を行う電子回路とを主要な構成要素として備えている(いずれも不図示)。電子回路は外部から所望の流量を設定することが可能となっている。
【0090】
スパッタガスボンベ32からのスパッタガスは、マスフローコントローラ31により流量が調節されて配管35内に導入される。同様に、反応性ガスボンベ34からの反応性ガスは、マスフローコントローラ33により流量が調整されて配管35に導入される。配管35内の導入されたスパッタガスおよび反応性ガスは、配管35内で混合されて成膜プロセス領域20A側へ移送され、成膜プロセス領域20Aのターゲット22a,22bの前面に向けて導入口35aから供給される。
【0091】
スパッタガス供給手段30から成膜プロセス領域20A内にスパッタガスが供給されると、ターゲット22a,22bの周辺が不活性ガス雰囲気となる。この状態でマグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交番電圧が印加されると、ターゲット22a,22b周辺のスパッタガスの一部は電子を放出してイオン化する。マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマに向けてスパッタガスのイオンが加速されてターゲット22a,22bに衝突することでターゲット22a,22bの表面の原子や粒子がターゲット22a,22bから叩き出される。
【0092】
この原子や分子は薄膜の原料である膜原料物質であり、ターゲット22a,22bから叩き出された原子や粒子は、ターゲット22a,22bと基板Sの間の空間を飛翔して移動し、その一部が基板Sの表面に付着する。
【0093】
本実施形態では、成膜プロセス領域20Aにスパッタガスのみならず反応性ガスも供給している。このため、ターゲット22a,22bの表面や、ターゲット22a,22bから飛翔する膜原料物質中の原子や粒子、基板Sの表面に付着した膜原料物質中の原子や粒子の一部がこの反応性ガスと反応する。なお、この反応性ガスを供給するための反応性ガスボンベ34およびマスフローコントローラ33については、任意で設けることができる。
【0094】
交流電源24は、膜厚制御装置90に電気的に接続されている。また、マスフローコントローラ31,33についても同様に、膜厚制御装置90と電気的に接続されている。
【0095】
本実施形態の薄膜形成装置1では、ターゲット22a,22bと基板Sとの間に可動式の膜厚補正板81a,81bと固定式の膜厚補正板81cが配設されている。膜厚補正板81a,81bは、ターゲット22a,22bから基板Sに飛翔する膜原料物質のうち一部の膜原料物質の移動を阻止して基板Sに形成される薄膜の膜厚を調整する部材である。ターゲット22aの前面右側には膜厚補正板81aが、ターゲット22bの前面左側には膜厚補正板81bが設けられている。膜厚補正板81a,81bは、後述する補正部材移動手段によりターゲット22a,22bの中心方向に向けて進退することで、ターゲット22a,22bから基板Sへ移動する膜原料物質の一部を遮断して膜厚を調整する。
【0096】
膜厚補正板81aは、ターゲット22aの長手方向に沿ってターゲット22aの前面右側に配置され、主にターゲット22aから飛翔する膜原料物質の一部を遮断する。この図に示すように、膜厚補正板81aは、膜原料物質の一部を遮断する遮断面と、この遮断面の端部から約90℃に屈曲した屈曲部により構成された、横断面形状がほぼL字型の部材である。また、本実施形態では遮断面は円弧状をしているが、遮断面の形状としてはこのような円弧状に限定されず、ターゲットのエロージョン領域などの特性や成膜条件などに応じて適宜決定することができる。また、屈曲部には螺旋状のネジ溝が遮断面と平行方向に形成されている。
【0097】
真空容器11の壁面には、シールド85a,85bが設けられている。膜厚補正板81a,81bの屈曲部の端面は、それぞれシールド85a,85bの板面と当接しており、膜厚補正板81a,81bはそれぞれのシールド85a,85bの板面に沿って移動する。シールド85a,85bのターゲット側の端部は回転ドラム13方向に向けてほぼ垂直に屈曲した屈曲部が形成されている。膜厚補正板がターゲットの中心方向へ移動しすぎても、シールド85a,85bの屈曲部が膜厚補正板81a,81bと衝突して移動を阻止するため、後述する螺旋棒82a,82bから膜厚補正板81a,81bが脱落しないようになっている。
【0098】
本発明の補正部材移動手段は、一端に傘歯車を備えた螺旋棒82a,82bと、同じく一端に傘歯車を備えた原動軸83a,83bと、これらの原動軸83a,83bをそれぞれ出力軸とする補正板駆動モータ84a,84bと、により構成され、膜厚補正板81a,81bをそれぞれ独立に進退自在に移動する機能を有している。
【0099】
補正板駆動モータ84aは、ステッピングモータ等の公知のモータで構成され、原動軸83aを出力軸とするモータである。補正板駆動モータ84aは、真空容器11の外部に設けられており、図示しない電源からの電力の供給を受けて原動軸83aが時計回り・反時計回り(図中では、d、d'方向)に回動する。
【0100】
原動軸83aは、剛性金属などで形成された棒状部材であり、その端部には放射状に切れ込みが形成された傘歯車が固定されている。また、螺旋棒82aもまた剛性金属などで形成された棒状部材であり、その一端には傘歯車が固定されている。螺旋棒82aの傘歯車は、原動軸83aの傘歯車と噛合している。螺旋棒82aの側面には、螺旋状のネジ溝が形成されており、このネジ溝は膜厚補正板81aの屈曲部に形成されたネジ溝と螺合している。
【0101】
補正部材移動手段は、このような構成となっているため、補正板駆動モータ84aの原動軸83aが回動すると螺旋棒82aも回動して、膜厚補正板81aがターゲット22a,22bの中心方向に向けて進退する。同様に、補正板駆動モータ84bの原動軸83bが回動すると螺旋棒82bも回動して、膜厚補正板81bがターゲット22a,22bの中心方向に向けて進退する。図中では、原動軸83aがd方向に回転すると、螺旋棒82aがd方向に回転して、膜厚補正板81aがd方向に移動する。逆に、原動軸がd'方向に回転すると、螺旋棒82aがd'方向に回転して、膜厚補正板81aがd'方向に移動する。補正板駆動モータ84b、原動軸83b、螺旋棒82b、膜厚補正板81bについても同様である。
【0102】
なお、本実施形態では、補正部材移動手段としてモータを用いているが、本発明の補正部材移動手段としては、このようなモータを用いるものに限定されず、例えば油圧シリンダなどにより膜厚補正板を移動するようにしてもよい。
【0103】
次に、膜厚制御装置90により成膜レートを調整する方法について詳細に説明する。上述したように、膜厚制御装置90は、交流電源24、マスフローコントローラ31,33、および補正板駆動モータ84a,84bと電気的に接続されている。また、膜厚制御装置90は、膜厚演算コンピュータ57と電気的に接続されており、膜厚演算コンピュータ57で取得したモニタ基板Sの膜厚に基づいて、上記接続された各装置を制御して、成膜レートを調整することで、基板Sに形成される膜厚を調整する。具体的には、交流電源24からマグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力の量、マスフローコントローラ31,33を通過するスパッタガスの流量、膜厚補正板81a,81bの移動位置のいずれか少なくとも1つを増減することで成膜レートを調整して、膜厚の調整を行っている。
【0104】
(交流電源24による膜厚調整)
まず、交流電源24を制御することによって膜厚を調整する方法について説明する。膜厚制御装置90は、交流電源24と電気的に接続されており、交流電源24からマグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力の量を増減することで、成膜レートを調整する。
【0105】
具体的には、モニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも小さい場合は、成膜レートを上げるべく、膜厚制御装置90の膜厚制御信号生成部で、交流電源24の出力電圧を上昇させる信号を生成して交流電源24に送信する。これにより、交流電源24からマグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力が増加して、単位時間あたりにスパッタされる量が増加する。
【0106】
逆に、モニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも大きい場合は、成膜レートを下げるべく、膜厚制御装置90の膜厚制御信号生成部で、交流電源24の出力電圧を低下させる信号を生成して交流電源24に送信する。これにより、交流電源24からマグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力が減少して、単位時間あたりにスパッタされる量が減少する。
【0107】
(マスフローコントローラ31,33による膜厚調整)
次に、マスフローコントローラ31,33を制御することによって膜厚を調整する方法について説明する。膜厚制御装置90は、マスフローコントローラ31,33と電気的に接続されており、マスフローコントローラ31,33を通過するスパッタガスや反応性ガスの流量を増減することで、成膜レートを調整する。
【0108】
具体的には、モニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも小さい場合は、成膜レートを上げるべく、膜厚制御装置90の膜厚制御信号生成部で、マスフローコントローラ31,33を通過するスパッタガスの流量および反応性ガスの流量を増加させる信号を生成して、マスフローコントローラ31,33に送信する。これにより、マスフローコントローラ31,33をそれぞれ通過するスパッタガスおよび反応性ガスの流量が増加して、単位時間あたりにターゲットがスパッタされる量や反応後の膜原料物質の供給量が増加する。
【0109】
逆に、モニタ基板Sの膜厚が予め設定した膜厚よりも大きい場合は、成膜レートを下げるべく、膜厚制御装置90の膜厚制御信号生成部で、マスフローコントローラ31,33を通過するスパッタガスの流量および反応性ガスの流量を減少させる信号を生成してマスフローコントローラ31,33に送信する。これにより、マスフローコントローラ31,33をそれぞれ通過するスパッタガスおよび反応性ガスの流量が増加して、単位時間あたりにターゲットがスパッタされる量が減少する。
なお、本実施形態では、マスフローコントローラ31,33の両方を制御して膜厚を調整しているが、いずれか一方のみを調整することで膜厚調整を行ってもよい。
【0110】
(膜厚補正板81a,81bによる膜厚調整)
次に、膜厚補正板81a,81bの位置を移動することによって膜厚を調整する方法について説明する。補正板駆動モータ84a,84bは、膜厚制御装置90と電気的に接続されており、この膜厚制御装置90により駆動制御される。膜厚制御装置90は、膜厚演算コンピュータ57と電気的に接続されており、膜厚演算コンピュータ57により演算された膜厚に基づいて膜厚補正板81a,81bの移動量を決定して、この移動量に基づいて補正板駆動モータ84a,84bの駆動制御を行う。
【0111】
具体的には、膜厚演算コンピュータ57で演算した膜厚が予め設定された膜厚よりも小さい場合は、成膜レートを上昇すべく、膜厚制御装置90は膜厚補正板81a,81bをターゲット22a,22bの中心方向と反対方向に向けて所定の移動量だけ移動させる。これにより、ターゲット22a,22bの前面を膜厚補正板81a,81bで遮断する面積が大きくなるため、基板Sに到達する膜原料物質の量が減少して、成膜レートが低下する。
【0112】
逆に、膜厚演算コンピュータ57で演算した膜厚が予め設定された膜厚よりも大きい場合は、成膜レートを低下すべく、膜厚制御装置90は膜厚補正板81a,81bをターゲット22a,22bの前面中心方向へ向けて所定の移動量だけ移動させる。これにより、ターゲット22a,22bの前面を膜厚補正板81a,81bで遮断する面積が小さくなるため、基板Sに到達する膜原料物質の量が増加して、成膜レートが増加する。
【0113】
このように、本実施形態の薄膜形成装置では、交流電源24による膜厚調整、マスフローコントローラ31,33による膜厚調整、膜厚補正板81a,81bの3種類の方法によって膜厚を調整している。しかしながら、膜厚調整は、上記3種類のうちいずれか1種類の方法のみにより膜厚調整を行ってもよいし、あるいは2種類の方法を組み合わせて膜厚調整を行ってもよい。
【0114】
なお、本実施形態では、膜厚演算コンピュータ57と膜厚制御装置90を別々の装置としているが、どちらか一方の装置に他方の装置の機能を搭載することでいずれか一方の装置のみを備えるようにしてもよい。例えば、膜厚演算コンピュータ57に膜厚制御プログラムを記憶させておいて、取得した膜厚情報に基づいてこの膜厚制御プログラムにより膜厚補正板81a,81bの移動量を決定して、補正板駆動モータ84a,84bの制御を行うようにしてもよい。
【0115】
(反応プロセス領域60A)
続いて、図7を用いて反応プロセス領域60Aについて説明する。上述したように、反応プロセス領域60Aでは、成膜プロセス領域20Aで基板Sの表面に付着した膜原料物質をプラズマ発生手段60でプラズマ処理して、膜原料物質の完全反応物や不完全反応物からなる中間薄膜を形成している。
【0116】
反応プロセス領域60Aに面する側の仕切壁14の壁面には、熱分解窒化硼素(Pyrolytic Boron Nitride)からなる図示しない保護層が被覆されている。さらに、真空容器11の内壁面の反応プロセス領域60Aに面する部分にも熱分解窒化硼素からなる保護層が被覆されている。熱分解窒化硼素は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)を利用した熱分解法によって仕切壁14や真空容器11の内壁面へ被覆される。
【0117】
プラズマ発生手段60は、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65と、を有して構成されている。ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、図示しないボルト等により真空容器11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。本実施形態において、ケース体61はステンレスで形成されているが、このような材料に限定されるものではない。
【0118】
誘電体板62は、石英などの板状の誘電体で形成された部材である。本実施形態では、誘電体板62は石英で形成されているが、誘電体板62の材質としては石英に限定されず、Al等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62は、図示しない固定枠でケース体61に固定されている。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲繞された領域にアンテナ収容室61Aが形成されている。
【0119】
ケース体61に固定された誘電体板62は、開口11aを介して真空容器11の内部の反応プロセス領域60Aに臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室61Aは、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室61Aと真空容器11の内部とは、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室61Aと真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。本実施形態では、このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室61Aの中にアンテナ63が設置されている。なお、真空容器11の内部とアンテナ収容室61A、真空容器11の外部とアンテナ収容室61Aの間は、それぞれOリングで気密が保たれている。
【0120】
真空容器11内を排気する配管16a-1は、途中から配管16a-2が分岐している。この配管16a-2は、アンテナ収容室61Aに接続されており、アンテナ収容室61Aの内部を排気して真空状態にする際の排気管としての役割を備えている。
【0121】
配管16a-1には、配管16a-2の分岐部を隔てて2つのバルブV1、V2が設けられている。これらのバルブのうち、バルブV1は真空ポンプ15aの側に位置している。また、配管16a-2には、真空ポンプ15aからアンテナ収容室61Aの内部に連通する位置にバルブV3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室61Aの内部と真空容器11の内部との間での気体の移動が阻止される。真空容器11の内部の圧力や、アンテナ収容室61Aの内部の圧力は、図示しない真空計で測定される。
【0122】
本実施形態の薄膜形成装置1は、図示しない圧力制御装置を備えており、この圧力制御装置には真空計の出力が入力される。圧力制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15aによる排気を制御して、真空容器11の内部やアンテナ収容室61Aの内部の真空度を調整する機能を備える。本実施形態では、圧力制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空容器11の内部とアンテナ収容室61Aの内部を同時に、または独立して排気できる。
【0123】
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて、真空容器11の内部の反応プロセス領域60A内に誘導電界を発生させることでプラズマを発生させるための手段である。本実施形態のアンテナ63は、銅で形成された円管状の本体部と、銀で形成され本体部の表面を被覆する被覆層を備えている。アンテナ63のインピーダンスを低減してプラズマ発生の効率を上げるためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ63を形成することが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、アンテナ63の本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ63の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。
【0124】
このように構成することで、高周波に対するアンテナ63のインピーダンスを低減して、アンテナ63に電流を効率よく流すことによりプラズマを発生させる効率を高めている。本実施形態では、高周波電源65からアンテナ63に周波数1~27MHzの交流電圧を印加して、反応プロセス領域60Aに反応性ガスのプラズマを発生させるように構成されている。
【0125】
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられている。また、アンテナ63は、導線部を介してマッチングボックス64に接続されている。導線部はアンテナ63と同様の素材からなる。ケース体61には、導線部を挿通するための挿通孔が形成されており、アンテナ収容室61A内側のアンテナ63と、アンテナ収容室61A外側のマッチングボックス64、およびマッチングボックス64と高周波電源65とは、挿通孔に挿通される導線部を介して接続される。導線部と挿通孔との間にはシール部材が設けられ、アンテナ収容室61Aの内外で気密が保たれる。
【0126】
また、反応プロセス領域60Aの周辺には反応性ガス供給手段70が設けられている。反応性ガス供給手段70は、酸素ガスを貯蔵する酸素ガスボンベ71と、この酸素ガスボンベ71より供給される酸素ガスの流量を調整するマスフローコントローラ72と、アルゴンガスを貯蔵するアルゴンガスボンベ73と、アルゴンガスボンベ73より供給されるアルゴンガスの流量を調整するマスフローコントローラ74と、酸素ガスおよびアルゴンガスからなる混合ガスを反応プロセス領域60Aに導入する配管75を主要な構成要素として具備している。
【0127】
なお、酸素ガスボンベ71およびアルゴンガスボンベ73は成膜プロセス領域20Aの反応性ガスボンベ34およびスパッタガスボンベ32と同様の装置とすることが可能である。また、マスフローコントローラ72およびマスフローコントローラ74は、成膜プロセス領域20Aのマスフローコントローラ31,33と同様の装置を採用することが可能である。
【0128】
酸素ガスボンベ71およびアルゴンガスボンベ73から配管75の導入口75aを通じて酸素ガスが反応プロセス領域60Aに導入された状態で、アンテナ63に高周波電源65から電力が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。このプラズマにより、基板Sの表面に形成された膜原料物質中のケイ素(Si)やケイ素の不完全酸化物(SiO(ここで、0<x<2))が酸化されて、ケイ素の完全酸化物(SiO)や不完全酸化物(SiO(ここで、0<x<2))から形成される中間薄膜となる。
【0129】
本発明の薄膜形成装置は、上述した成膜プロセス領域20Aでターゲットをスパッタして基板Sの表面に膜原料物質を付着させるスパッタ工程を行った後、回転ドラム13を回転させて基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送する基体搬送工程を行う。そして、反応プロセス領域60Aには、少なくとも酸素ガスを含む反応性ガスを供給する反応性ガス供給工程が行われ、この供給された反応性ガスにより反応プロセス領域60A内に反応性ガスのプラズマを発生させて基板Sの表面に付着した膜原料物質の反応物を生成させるプラズマ処理工程を行うことで、基板Sの表面に中間薄膜を形成する。そして、回転ドラム13を連続して回転することで、上記一連の工程を複数回行い、基板Sの表面に薄膜を積層させて、最終的に所望の光学的・物理的特性を有する最終薄膜が形成された光学製品を得ることが可能となる。
【0130】
次に、本発明の第二の実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。この実施形態の薄膜形成装置は、回転ドラム13の長手方向に沿って配設された複数の基板に対して光学測定を行うための構成を備えた点を特徴とする。このような構成を備えることで、回転ドラム13の長手方向に沿った複数の位置での膜厚分布を測定することが可能となる。以下、この第二の実施形態について詳細に説明する。
【0131】
図8および図9は本発明の第二の実施形態に係る薄膜形成装置の説明図であり、図8は本発明の第二の実施形態に係る薄膜形成装置の回転ドラム13を斜め上方から見た斜視部分断面図、図9は第二の実施形態に係る薄膜形成装置の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。なお、図8では、各部材の配置などについての理解を容易にするために、回転ドラム13の一部を切り欠いた状態にして図示すると共に、回転軸13d内部に配設されていて本来は視認できない位置にある全反射ミラーを破線で示してある。
【0132】
図8に示すように、回転軸13dの内部には、回転軸線Z-Z'に沿って上下方向に配設された3対の全反射ミラー46-1~46-3,51-1~51-3が配設されている。これらの全反射ミラー46-1~46-3,51-1~51-3により、回転ドラム13の長手方向に沿って配設された複数のモニタ基板S~Sに対して照射された測定光をそれぞれ照射し、それぞれのモニタ基板から反射する反射光を受光ヘッド54-1~54-3へ向けて反射することが可能となっている。投光ヘッド43-1~43-3には、それぞれ投光用光ファイバ42-1~42-3が接続されている。これらの投光用光ファイバ42-1~42-3は、図示しない光源に接続されている。これにより、光源からの光をそれぞれの投光ヘッド43-1~43-3へ伝送することが可能となっている。
【0133】
全反射ミラー46-1~46-3,51-1~51-3は、いずれも中心角120°の扇形部材で構成され、上記第一の実施形態と同様に測定光の波長ではほぼ100%の反射率を有している。これらの全反射ミラー46-1~46-3,51-1~51-3は、回転軸13dの中空部を構成する内壁面に溶接やネジ止めなどにより固定されている。
【0134】
これらの全反射ミラー46-1~46-3,51-1~51-3のうち、全反射ミラー46-1は回転軸13dの上部側に固定されている。全反射ミラー46-1は、投光ヘッド43-1から照射される測定光をモニタ基板Sに向けて反射するように、回転軸13dの回転軸線Z-Z'に対して所定の角度だけ傾いた状態に位置決めされている。
【0135】
全反射ミラー51-1は、回転軸線Z-Z'と垂直な平面を基準として全反射ミラー46-1と対称となるように、全反射ミラー46-1の下側の回転軸13d内に固定されている。モニタ基板Sで反射された反射光は、全反射ミラー51-1で反射されて受光ヘッド54-1に入射される。
【0136】
また、全反射ミラー46-2は、投光ヘッド43-2から照射される測定光をモニタ基板Sに向けて反射するように、回転軸13dの回転軸線Z-Z'に対して所定の角度だけ傾いた状態に位置決めされている。
【0137】
全反射ミラー51-2は、回転軸線Z-Z'と垂直な平面を基準として全反射ミラー46-2と対称となるように、全反射ミラー46-2の下側の回転軸13d内に固定されている。モニタ基板Sで反射された反射光は、全反射ミラー51-2で反射されて受光ヘッド54-2に入射される。
【0138】
また、全反射ミラー46-3は、投光ヘッド43-3から照射される測定光をモニタ基板Sに向けて反射するように、回転軸13dの回転軸線Z-Z'に対して所定の角度だけ傾いた状態に位置決めされている。
【0139】
全反射ミラー51-3は、回転軸線Z-Z'と垂直な平面を基準として全反射ミラー46-3と対称となるように、全反射ミラー46-3の下側の回転軸13d内に固定されている。モニタ基板Sで反射された反射光は、全反射ミラー51-3で反射されて受光ヘッド54-3に入射される。
【0140】
このように、全反射ミラー46-1と51-1は、一組の光反射ユニットとして、投光ヘッド43-1から投光される測定光をモニタ基板Sに向けて反射すると共に、モニタ基板Sから反射する反射光を受光ヘッド54-1に向けて反射する。同様に、全反射ミラー46-2と51-2は、一組の光反射ユニットとして、投光ヘッド43-2から投光される測定光をモニタ基板Sに向けて反射すると共に、モニタ基板Sから反射する反射光を受光ヘッド54-2に向けて反射する。また、全反射ミラー46-3と51-3は、一組の光反射ユニットとして、投光ヘッド43-3から投光される測定光をモニタ基板Sに向けて反射すると共に、モニタ基板Sから反射する反射光を受光ヘッド54-3に向けて反射する。
【0141】
これら3つの光反射ユニットは、回転軸線Z-Z'に沿って互いにオフセットされた位置に配置されている。すなわち、回転軸線Z-Z'方向に沿って回転軸13dを見たとき、光反射ユニットは、回転軸線Z-Z'を中心として互いに中心角120°ずつずれた位置に配置されている。このように配置されることで、投光ヘッド43-1~43-3からの測定光が、他の全反射ミラーに邪魔されずに所定の全反射ミラーに照射される。また、モニタ基板から反射した反射光が、他の全反射ミラーに邪魔されることなく、所定の全反射ミラーに入射して所定の受光ヘッドで受光される。なお、光反射ユニットの位置は、このような120°ずつずれた位置に限定されず、他の全反射ミラーに投受光が邪魔されない位置であればどのような配置であってもよい。
【0142】
受光ヘッド54-1~54-3には、それぞれ受光側光ファイバ55-1~55-3が接続されている。受光側光ファイバ55-1~55-3は、いずれも図示しない分光測定装置と接続されている。さらに、この分光測定装置には、膜厚演算コンピュータが電気的に接続されている。この分光測定装置および膜厚演算コンピュータは、第一の実施形態の分光測定装置56および膜厚演算コンピュータ57と同様の装置であるが、本実施形態では、複数の受光側光ファイバ55-1~55-3から入射する反射光に基づいてモニタ基板S~Sの膜厚を側立して測定することで、回転ドラム13の長手方向での膜厚分布を測定することが可能となっている。
この膜厚演算コンピュータでの膜厚分布の測定は、本発明の膜厚分布取得工程に相当する。
【0143】
このように、本実施形態の薄膜形成装置では、回転ドラム13の長手方向での膜厚分布を測定することができる点を特徴としている。この回転ドラム13の長手方向は、ターゲット22a,22bの長手方向と一致する方向である。すなわち、本実施形態の薄膜形成装置によれば、回転ドラム13の長手方向での膜厚分布を測定することで、ターゲット22a,22bのエロージョンなどを原因とする成膜レートの局所的な変化をリアルタイムにモニタすることが可能となる。
【0144】
さらに、本実施形態の薄膜形成装置は、測定した膜厚分布に基づいて成膜レートを局所的に調整することで、膜厚分布を均一としたり、逆に膜厚分布に所定の傾斜を持たせたりすることができる。以下に、膜厚分布に基づいて成膜レートを局所的に調整する方法について説明する。
【0145】
図9は第二の実施形態に係る薄膜形成装置の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。この図に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1では、ターゲット22a,22bと基板Sとの間に可動式の補正小片81a-1~81a-3,81b-1~81b-3が配設されている。なお、本実施形態ではさらに、仕切壁12固定された膜厚補正板81cが設けられているが、この固定式の膜厚補正板81cについては必ずしも必要ではない。
【0146】
補正小片81a-1~81a-3は、ターゲット22aの前面左側であって、かつそれぞれモニタ基板S~Sに対応する位置に設けられている。すなわち、補正小片81a-1は、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線(モニタ基板Sの輪郭線と、この輪郭線をターゲット22a,22bに投影した投影輪郭線を結ぶ直線をいう。以下同じ)の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。同様に、補正小片81a-2についても、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。同じく補正小片81a-3についても、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。
【0147】
補正小片81b-1~81b-3についても同様に、ターゲット22bの前面右側であって、かつそれぞれモニタ基板S~Sに対応する位置に設けられている。すなわち、補正小片81b-1は、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。同様に、補正小片81b-2についても、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。さらに、補正小片81b-3についても、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部と重なる位置に配置されている。
【0148】
これらの補正小片81a-1~81a-3は、第一の実施形態と同様に、原動軸83a-1~83a-3を出力軸とする補正板駆動モータ84a-1~84a-3と螺旋棒82a-1~82a-3によりターゲット22a,22bの前面の中心方向に向けて進退移動する。同様に、補正小片81b-1~81b-3も、原動軸83b-1~83b-3を出力軸とする補正板駆動モータ84b-1~84b-3と螺旋棒82b-1~82b-3によりターゲット22a,22bの前面の中心方向に向けて進退移動する。補正板駆動モータ84a-1~84a-3,84b-1~84b-3は、第一の実施形態と同様に、いずれも図示しない膜厚制御装置と電気的に接続されている。この膜厚制御装置は、モニタ基板S~Sに対して測定した膜厚に基づいて、補正板駆動モータ84a-1~84a-3,84b-1~84b-3の移動方向および移動量を決定する機能を有する。
なお、本実施形態における膜厚制御装置は本発明の膜厚分布調整手段に相当する。また、膜厚制御装置による膜厚分布の調整を行う工程は、本発明の膜厚分布調整工程に相当する。
【0149】
このように、モニタ基板S~Sに対応する位置に補正小片81a-1~81a-3,81b-1~81b-3が配設されているため、これらの補正小片81a-1~81a-3,81b-1~81b-3をターゲット22a,22bの前面中心方向に向けてそれぞれ独立に進退移動させることで、成膜レートを局所的に調整して膜厚分布を調整することが可能となる。以下に、成膜レートの調整方法について具体的に説明する。
【0150】
例えば、モニタ基板Sで測定した膜厚が他のモニタ基板S,Sで測定した膜厚よりも大きい場合、モニタ基板Sに対応する領域での成膜レートを他の領域における成膜レートよりも相対的に減少させることで、回転ドラム13の長手方向の膜厚分布を均一する。具体的には、補正板駆動モータ84a-2を駆動して原動軸83a-2を図中のd方向に回転して、補正小片81a-2をd方向へ移動させる。同時に、補正板駆動モータ84b-2を駆動して原動軸83b-2を図中のd方向に回転して、補正小片81b-2をd方向へ移動させる。
【0151】
あるいは、補正板駆動モータ84a-1,84a-3を駆動して原動軸83a-1,83a-3をそれぞれd'方向に回転して、補正小片81a-1,81a-3をそれぞれd'方向へ移動させる。同時に、補正板駆動モータ84b-1,84b-3を駆動して原動軸83b-1,83b-3をそれぞれd'方向に回転して、補正小片81b-1,81b-3をそれぞれd'方向へ移動させる。若しくは、補正小片81a-2,81b-2のd方向への移動と、補正小片81a-1,81a-3,81b-1,81b-3のd'方向への移動を組み合わせてもよい。
【0152】
これにより、補正小片81a-2,81b-2で膜原料物質の移動を遮断する面積が、他の補正小片81a-1,81a-3,81b-1,81b-3で遮断する面積よりも相対的に大きくなる。この結果、補正小片81a-2,81b-2を回転ドラム13上に投影した領域での成膜レートが他の領域での成膜レートよりも相対的に減少する。この状態で成膜が進むと、回転ドラム13上での膜厚分布が均一となる。
【0153】
反対に、モニタ基板Sで測定した膜厚が他のモニタ基板S,Sで測定した膜厚よりも小さい場合、モニタ基板Sに対応する領域での成膜レートを他の領域における成膜レートよりも相対的に増加させることで、回転ドラム13の長手方向の膜厚分布を均一する。具体的には、補正板駆動モータ84a-2を駆動して原動軸83a-2を図中のd'方向に回転して、補正小片81a-2をd'方向へ移動させる。同時に、補正板駆動モータ84b-2を駆動して原動軸83b-2を図中のd'方向に回転して、補正小片81b-2をd'方向へ移動させる。
【0154】
あるいは、補正板駆動モータ84a-1,84a-3を駆動して原動軸83a-1,83a-3をそれぞれd方向に回転して、補正小片81a-1,81a-3をそれぞれd方向へ移動させる。同時に、補正板駆動モータ84b-1,84b-3を駆動して原動軸83b-1,83b-3をそれぞれd方向に回転して、補正小片81b-1,81b-3をそれぞれd方向へ移動させる。
【0155】
若しくは、補正小片81a-2,81b-2のd'方向への移動と、補正小片81a-1,81a-3,81b-1,81b-3のd方向への移動を組み合わせてもよい。
【0156】
これにより、補正小片81a-2,81b-2で膜原料物質の移動を遮断する面積が、他の補正小片81a-1,81a-3,81b-1,81b-3で遮断する面積よりも相対的に小さくなる。この結果、補正小片81a-2,81b-2を回転ドラム13上に投影した領域での成膜レートが他の領域での成膜レートよりも相対的に増加する。この状態で成膜が進むと、回転ドラム13上での膜厚分布が均一となる。
【0157】
以上のように、回転ドラム13の長手方向に沿った膜厚分布に基づいて複数の補正小片を進退移動させることで、回転ドラム13の長手方向に沿った複数の位置で均一な膜厚を有する光学製品を製造することが可能となる。
【0158】
上記実施形態では、複数の補正小片を用いて膜厚分布を調整しているが、他の手法により膜厚分布を調整するようにしてもよい。例えば、回転ドラム13の長手方向の複数の位置からスパッタガスを供給する手段を設けて、それぞれ独立にスパッタガスの流量を調整することで、膜厚分布を調整することもできる。以下に、この手法による膜厚分布の調整方法について説明する。
【0159】
図10は第三の実施形態に係る薄膜形成装置の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。この図に示すように、ターゲット22a,22bの片側には、ターゲット22a,22bの長手方向に沿った複数の異なる位置からスパッタガスや反応性ガスを供給するためのガス供給手段が設けられている。
【0160】
真空容器11の外部には、スパッタガスを供給するためのスパッタガスボンベ32と反応性ガスを供給するための反応性ガスボンベ34が設けられている。スパッタガスボンベ32には配管36が接続されている。この配管36は途中で3つに分岐しており、それぞれの分岐部の末端には、スパッタガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ31-1~31-3が接続されている。一方、反応性ガスボンベ34にも配管37が接続されている。この配管37も途中で3つに分岐しており、それぞれの分岐部の端末には、反応性ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ33-1~33-3が接続されている。
【0161】
マスフローコントローラ31-1とマスフローコントローラ33-1には、Y字型の配管35-1の3つの端部のうち2つがそれぞれ接続されている。この配管35-1の他端は真空容器11内部に貫入しており、その端部に形成された導入口35a-1がターゲット22bの右側側面(図10では、向かって左側)に位置するように真空容器11内に配置されている。
【0162】
この導入口35a-1は、図示しないモニタ基板Sに対応する位置にある。ここで、モニタ基板Sに対応する位置とは、モニタ基板Sをターゲット22a,22bに向けて投影した投影線の少なくとも一部が、導入口35a-1からターゲット22a,22bの前面に向けて導入されるガスと重なる位置をいう。同様に、導入口35a-2は、モニタ基板Sに対応する位置に、導入口35a-3はモニタ基板Sに対応する位置にある。
【0163】
マスフローコントローラ31-1~31-3,33-1~33-3には、図示しない膜厚制御装置が電気的に接続されている。膜厚制御装置は、モニタ基板S~Sで測定した膜厚に応じて、それぞれのモニタ基板S~Sに対応する導入口35a-1~35a-3から導入されるガスの流量を調節するための指令をマスフローコントローラ31-1~31-3に出力する。この指令に従って、マスフローコントローラ31-1~31-3がその内部を通過するスパッタガスの流量を調整することで、ターゲット22a,22bに導入されるスパッタガスの流量を調整する。スパッタガスの流量が増加すると、ターゲット22a,22bに衝突するイオンの量が増加するため、成膜レートが上昇する。逆に、スパッタガスの流量が減少すると、ターゲット22a,22bに衝突するイオンの量が減少するため、成膜レートが減少する。
【0164】
なお、マスフローコントローラ31-1~31-3によるスパッタガスの流量を調整することに加えて、マスフローコントローラ33-1~33-3により反応性ガスの流量を調整するようにしてもよい。あるいは、反応プロセス領域60A内に酸素ガスを導入するマスフローコントローラ72やアルゴンガスを導入するマスフローコントローラ74の流量を調整するようにしてもよい。このように、成膜プロセス領域20A内に供給される反応性ガスの流量や、反応プロセス領域60A内に供給される酸素ガスやアルゴンガスの流量を調整することで、薄膜中に含まれる膜原料物質の反応物の割合を変更することができる。この割合を変更することで、膜厚や屈折率といった膜物性値を調整することができる。従って、所望の膜物性値を有する光学製品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】第一の実施形態に係る薄膜形成装置を上方から見た説明図である。
【図2】図1の薄膜形成装置を矢視A-A'方向に見た説明図である。
【図3】回転ドラム13を斜め上方から見た斜視部分断面図である。
【図4】第一の実施形態に係る薄膜形成装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】図1の成膜プロセス領域20Aを拡大して示した説明図である。
【図6】図1の成膜プロセス領域20Aを基板側から見た状態を示す説明図である。
【図7】図1の反応プロセス領域周辺を拡大して示した説明図である。
【図8】第二の実施形態に係る薄膜形成装置の回転ドラム13を斜め上方から見た斜視部分断面図である。
【図9】第二の実施形態に係る薄膜形成装置の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。
【図10】第三の実施形態に係る薄膜形成装置の成膜プロセス領域を基板側から見た状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0166】
1 薄膜形成装置
11 真空容器
11a 開口
11A 薄膜形成室
11B ロードロック室
11C 扉
11D 扉
12 仕切壁
13 回転ドラム(基体保持手段)
13a 基板保持板
13b フレーム
13c 締結具
13d 回転軸
13e ギヤ(動力伝達部材)
13f 開口
14 仕切壁
15a 真空ポンプ
15b 真空ポンプ
16a-1 配管
16a-2 配管
16b 配管
17 回転ドラム駆動モータ(基体保持手段駆動源)
17a ギヤ
20 スパッタ手段(膜原料物質供給手段)
20A 成膜プロセス領域
21a マグネトロンスパッタ電極(スパッタ電極)
21b マグネトロンスパッタ電極(スパッタ電極)
22a ターゲット
22b ターゲット
23 トランス
24 交流電源(電力供給手段)
30 スパッタガス供給手段
31 マスフローコントローラ
31-1~31-3 マスフローコントローラ
32 スパッタガスボンベ
33 マスフローコントローラ
33-1~33-3 マスフローコントローラ
34 反応性ガスボンベ
35 配管
35a 導入口
35a-1~35a-3 導入口
36 配管
37 配管
41 光源(投光部)
42 投光用光ファイバ(投光部)
42-1~42-3 投光用光ファイバ(投光部)
43 投光ヘッド(投光部)
43-1~43-3 投光ヘッド(投光部)
44 投光側集光レンズ
45 投光側集光レンズ
46 全反射ミラー(第一の光反射部材)
46-1~46-3 全反射ミラー(第一の光反射部材)
51 全反射ミラー(第二の光反射部材)
51-1~52-3 全反射ミラー(第二の光反射部材)
52 受光側集光レンズ
53 受光側集光レンズ
54 受光ヘッド(受光部)
54-1~54-3 受光ヘッド(受光部)
55 受光側光ファイバ(受光部)
55-1 受光側光ファイバ(受光部)
55-2 受光側光ファイバ(受光部)
55-3 受光側光ファイバ(受光部)
56 分光測定装置(受光部)
57 膜厚演算コンピュータ(膜厚演算部)
60 プラズマ発生手段
60A 反応プロセス領域
61 ケース体
61A アンテナ収容室
62 誘電体板
63 アンテナ
64 マッチングボックス
65 高周波電源
70 反応性ガス供給手段
71 酸素ガスボンベ
72 マスフローコントローラ
73 アルゴンガスボンベ
74 マスフローコントローラ
75 配管
75a 導入口
81a 膜厚補正板
81b 膜厚補正板
81c 膜厚補正板
81a-1~81a-3 補正小片
81b-1~81b-3 補正小片
82a 螺旋棒(補正部材移動手段)
82b 螺旋棒(補正部材移動手段)
82a-1~82a-3 螺旋棒(補正部材移動手段)
82b-1~82b-3 螺旋棒(補正部材移動手段)
83a 原動軸(補正部材移動手段)
83b 原動軸(補正部材移動手段)
83a-1~83a-3 原動軸(補正部材移動手段)
83b-1~83b-3 原動軸(補正部材移動手段)
84a 補正板駆動モータ(補正部材移動手段)
84b 補正板駆動モータ(補正部材移動手段)
84a-1~84a-3 補正板駆動モータ(補正部材移動手段)
84b-1~84b-3 補正板駆動モータ(補正部材移動手段)
85a,85b シールド
90 膜厚制御装置(膜厚調整手段・膜厚分布調整手段)
S 基板(基体)
モニタ基板(基体)
モニタ基板(基体)
モニタ基板(基体)
モニタ基板(基体)
V1 バルブ
V2 バルブ
V3 バルブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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