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明細書 :地震イベントパラメータの推定を取得する方法及びそのシステム、地震イベント探索エンジン

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2014-517377 (P2014-517377A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成26年7月17日(2014.7.17)
特許番号 特許第5650353号 (P5650353)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
発明の名称または考案の名称 地震イベントパラメータの推定を取得する方法及びそのシステム、地震イベント探索エンジン
国際特許分類 G06F  17/30        (2006.01)
G01V   1/00        (2006.01)
FI G06F 17/30 350C
G01V 1/00 D
G06F 17/30 417
請求項の数または発明の数 33
全頁数 26
出願番号 特願2014-506751 (P2014-506751)
出願日 平成24年5月24日(2012.5.24)
国際出願番号 PCT/CN2012/075980
国際公開番号 WO2013/143222
国際公開日 平成25年10月3日(2013.10.3)
優先権出願番号 201210101264.7
優先日 平成24年3月31日(2012.3.31)
優先権主張国 中華人民共和国(CN)
審査請求日 平成24年9月14日(2012.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505383316
【氏名又は名称】中国科学技▲術▼大学
発明者または考案者 【氏名】張 捷
【氏名】張 海 江
【氏名】陳 恩 紅
【氏名】鄭 毅
【氏名】况 文 歓
個別代理人の代理人 【識別番号】110001195、【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
審査官 【審査官】野崎 大進
参考文献・文献 特開平11-316765(JP,A)
特開2000-131452(JP,A)
中国特許出願公開第102200999(CN,A)
蛯沢 勝三 他,361.地震情報緊急伝達システムの研究開発,日本原子力学会誌和文論文集,日本,社団法人日本原子力学会,2002年 6月25日,第1巻第2号,pp.73-86.
山岡 耕春,地震の観測と予知研究の最前線,応用物理,日本,社団法人応用物理学会,2007年 8月10日,第76巻第8号,pp.913-918.
鶴岡 弘,WWWを用いた地震情報検索・解析システムの開発,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,1998年 5月15日,第98巻第34号,pp.65-70.
伊藤 秀美,地震データのファジィ検索システム,ファジィ技術 応用の現状と事例,日本,財団法人日本情報処理開発協会AI・ファジィ振興センター,1994年 3月31日,pp.26-28.
調査した分野 G06F 17/30
G01V 1/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
地震イベントの地震パラメータの推定を取得するためにコンピュータによって実行される方法であって、
地震イベントの、地震波形を含む地震記象データを入力するステップと、
実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する予め作成された履歴地震記象データベース、及び人工的にモデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍探索法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出すステップと、
探索結果の集合からマッチングしている地震記象データを確定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得するステップとを含む、
地震イベントの地震パラメータの推定を取得する方法。
【請求項2】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
局所性鋭敏型ハッシュ法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
マルチランダムKDツリー法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
履歴及び理論的地震記象データベースに対しては、それぞれ、記憶された地震記象データを帯域フィルタリングして、複数の周波数レンジに分割すると共に、各周波数レンジに対して、それぞれ、地震記象データの初動到着時刻及び最大振幅到着時刻に基づいて波形の合わせを行い、2組の地震記象データを取得することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
履歴及び理論的地震記象データベースに対しては、それぞれ、取得された2組の地震記象データに対して、マルチランダムKDツリー法を用いて、各組の地震記象データに対して、単一又はマルチKDツリーを作成すると共に、
マルチKDツリーの場合は、各組内のマルチKDツリーに対して、並行に前記探索のステップを実行することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
地震記象データは、多次元データであり、
各組の地震記象データに対してKDツリーを作成するステップは、
組内の全ての地震記象データの各次元における平均値及び分散を算出し、複数の次元のうち平均値に対する最大分散を有する1つ又は複数の次元を確定すると共に、確定された1つ又は複数の次元うちの各次元に対して、当該次元における平均値を中間値として、地震記象データを2つの部分に分割し、各部分が1つの地震記象データしか残されていないことになるまで、再帰的に各部分に対して前記算出、確定および分割のステップを行い、それによって、単一又はマルチKDツリーを作成するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マルチKDツリーにおいて、近似最近傍探索法を用いて複数の探索結果を探し出し、複数の探索結果が、類似する具合に応じて高い順にソートされ、その中から前に並べた複数の探索結果を、探索結果の集合を構成する近似最近傍として選択することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
予め決められた地震パラメータの範囲を格子化し、格子毎に人工的モデル化で理論的地震記象データを算出することによって、理論的地震記象データベースを作成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マッチングしている地震記象データを確定するステップは、
入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間の相互相関係数を算出し、相互相関係数が最大の探索結果を、マッチングしている地震記象データとして用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
予め決められた類似度条件は、予め決められた探索正確率を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
全てのマッチングしている地震記象データの相互相関係数分布を比較することによって、探索結果の解析度及び信頼性を評価するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
履歴及び理論的地震記象データは、1つ又は複数の地震ステーションが記録した地震パラメータに基づいて作成されており、
複数の地震ステーションが記録した地震パラメータを用いれば、地震ステーション毎に地震パラメータの推定を取得し、複数の地震ステーションの地震パラメータの推定の論理積を、入力された地震イベントの地震パラメータの推定として確定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースからそれぞれ取得されたマッチングしている地震記象データと入力された地震イベントの地震記象データとの相互相関係数が同じ又は類似している場合、履歴地震記象データベースのマッチングしている地震記象データを選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
地震パラメータは、震央距離、震源深度、震源メカニズム及び震度のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステムであって、
実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する履歴地震記象データベースと、
人工的モデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースと、
地震イベントの、地震波形を含む地震記象データを入力する入力装置と、
履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍探索法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出し、探索結果の集合からマッチングしている地震記象データを確定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する探索エンジンとを含む、
地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステム。
【請求項16】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
探索エンジンは、局所性鋭敏型ハッシュ法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
探索エンジンは、マルチランダムKDツリー法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
履歴及び理論的地震記象データベースに対しては、それぞれ、記憶された地震記象データを帯域フィルタリングして、複数の周波数レンジに分割すると共に、各周波数レンジに対して、それぞれ、地震記象データの初動到着時刻及び最大振幅到着時刻に基づいて波形の合わせを行い、2組の地震記象データを取得することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
履歴及び理論的地震記象データベースに対しては、それぞれ、取得された2組の地震記象データに対して、マルチランダムKDツリー法を用いて、各組の地震記象データに対して、単一又はマルチKDツリーを作成すると共に、
マルチKDツリーの場合は、各組内のマルチKDツリーに対して、並行に前記探索のステップを実行することを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
地震記象データは多次元データであり、
各組の地震記象データに対して、組内の全ての地震記象データの各次元における平均値及び分散を算出し、複数の次元のうち平均値に対する最大分散を有する1つ又は複数の次元を確定すると共に、確定された1つ又は複数の次元うちの各次元に対して、当該次元における平均値を中間値として、地震記象データを2つの部分に分割し、各部分が1つの地震記象データしか残されていないことになるまで、再帰的に各部分に対して前記算出、確定および分割のステップを行い、それによって、単一又はマルチKDツリーを作成することを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
探索エンジンは、マルチKDツリーにおいて、近似最近傍探索法を用いて複数の探索結果を探し出し、複数の探索結果が、類似する具合に応じて高い順にソートされ、その中から前に並べた複数の探索結果を、探索結果の集合を構成する近似最近傍として選択することを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
予め決められた地震パラメータの範囲を格子化し、格子毎に人工的モデル化で理論的地震記象データを算出することによって、理論的地震記象データベースを作成することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
探索エンジンは、入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間の相互相関係数を算出し、相互相関係数が最大の探索結果を、マッチングしている地震記象データとして用いることによって、マッチングしている地震記象データを確定することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
全てのマッチングしている地震記象データの相互相関係数分布を比較することによって、探索結果の解析度及び信頼性を評価する評価装置をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
履歴及び理論的地震記象データは、1つ又は複数の地震ステーションが記録した地震パラメータに基づいて作成されており、
複数の地震ステーションが記録した地震パラメータを用いれば、探索エンジンは、地震ステーション毎に地震パラメータの推定を取得し、複数の地震ステーションの地震パラメータの推定の論理積を、入力された地震イベントの地震パラメータの推定として確定することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項26】
履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースからそれぞれ取得されたマッチングしている地震記象データと入力された地震時間の地震記象データとの相互相関係数が同じ又は類似している場合、探索エンジンは、履歴地震記象データベースのマッチングしている地震記象データを選択することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項27】
地震イベント探索エンジンであって、
入力された地震イベントの、地震波形を含む地震記象データに対して、実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する予め作成された履歴地震記象データベース、及び人工的にモデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出す探索装置と、
探索結果の集合において、マッチングしている地震記象データを確定し、その中から入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する確定装置とを含む、
地震イベント探索エンジン。
【請求項28】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
探索装置は、局所性鋭敏型ハッシュ法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項27に記載の地震イベント探索エンジン。
【請求項29】
履歴及び理論的地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されており、
探索装置は、マルチランダムKDツリー法を用いて探索を行うことを特徴とする請求項27に記載の地震イベント探索エンジン。
【請求項30】
探索装置は、マルチKDツリーにおいて、近似最近傍探索法を用いて複数の探索結果を探し出し、複数の探索結果が、類似する具合に応じて高い順にソートされ、その中から前に並べた複数の探索結果を、探索結果の集合を構成する近似最近傍として選択することを特徴とする請求項29に記載の地震イベント探索エンジン。
【請求項31】
確定装置は、入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間の相互相関係数を算出し、相互相関係数が最大の探索結果を、マッチングしている地震記象データとして用いることによって、マッチングしている地震記象データを確定することを特徴とする請求項27に記載の地震イベント探索エンジン。
【請求項32】
履歴及び理論的地震記象データは、1つ又は複数の地震ステーションが記録した地震パラメータに基づいて作成されており、
複数の地震ステーションが記録した地震パラメータを用いれば、地震イベント探索エンジンは、地震ステーション毎に地震パラメータの推定を取得し、複数の地震ステーションの地震パラメータの推定の論理積を、入力された地震イベントの地震パラメータの推定として確定することを特徴とする請求項27に記載の地震イベント探索エンジン。
【請求項33】
履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースからそれぞれ取得されたマッチングしている地震記象データと入力された地震時間の地震記象データとの相互相関係数が同じ又は類似している場合、確定装置は、履歴地震記象データベースのマッチングしている地震記象データを選択することを特徴とする請求項27に記載の地震イベント探索エンジン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地震観測及び地震予測分野に関し、特に、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を高速に取得する方法及びそのシステム、並びに地震リアルタイム探索エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
地震イベントは、工業の活動による微震イベント、石油や天然ガスの産量を増加させるために注水破裂を用いることによる微震イベント、強度の小さい又は大きい自然地震イベント、核爆発イベント或いは爆薬の爆発イベントなどを含む、地球内部のある一部の領域で発生した地質構造の突然変動によって発生したイベントである。
【0003】
地震イベントが発生した際に、当該地震イベントに対応する地震波信号データは、地震観測ステーション(地震波レシーバー)に記録され、出来るだけ速めに当該地震イベントの発生位置、震度及び震源メカニズムなどの情報を推定したい。現在、当該分野における最先端な技術は、縦波及び/又は横波の伝搬時間情報を用いて、地震が発生した後直ちに地震の発生位置を推算することができるが、その震源メカニズムが解析により得られるのは数時間又は数日もかからなければならない。現在の地震位置決め技術及び地震震度判定技術については、推定結果の精確度を保証するために、依然として一定レベルとなった専門家の推算に基づく必要がある。2004年12月26日に発生したスマトラ島北端沖での震度M9.1の地震イベントを例とし、当該地震イベントが発生した時にクリスマス休暇中のため、当該地震イベントが早めに報告されなくて、津波の警報が出さなかった。発生した地震イベントの震源メカニズムをリアルタイムで報告するのは、非常に重要なことである。例えば、Bouchon, M., Karabulut, H., Aktar, M., Ozalaybey, S., Schmittbuhl, J., and Bouin, M-P. (2011). Extended nucleation of the 1999 Mw 7.6 Izmit Earthquake, Sciences 331, 877-88にて、1999年トルコのイズミットで発生した震度M7.6の地震の地震前兆を解析し, 一連の前震の震源メカニズムが、動的断裂に加速したまでに、どれも類似的断層変位が現れたことを発見した。リアルタイムで前震の震源メカニズムを取得することは、早期警戒システムの開発に役立ち、又は、さらに、地震発生の予測までにも役立つことが可能となる。しかし、地震の震源メカニズムを取得するのは、例えば、波形モデル化や波形逆演算などの幾つかのプロセスの処理の必要があり、通常、その処理プロセスは、地震後の数時間又は数日内行われ、さらに、高度なモデル化と計算技術を用いることが要される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発生した地震イベントの地震パラメータ情報を高速に取得する方法が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例によれば、地震イベントの地震パラメータの推定を取得する方法であって、
地震イベントの、地震波形を含む地震記象データを入力するステップと、
実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する予め作成された履歴地震記象データベース、及び人工的にモデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍探索法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出すステップと、
探索結果の集合からマッチングしている地震記象データを確定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得するステップとを含む、
地震イベントの地震パラメータの推定を取得する方法を提供する。
【0006】
本発明の実施例によれば、地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステムであって、
実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する履歴地震記象データベースと、
人工的モデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースと、
地震イベントの、地震波形を含む地震記象データを入力する入力装置と、
履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍探索法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出し、探索結果の集合からマッチングしている地震記象データを確定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する探索エンジンとを含む、
地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステムを提供する。
【0007】
本発明の実施例によれば、地震記象探索エンジンであって、
入力された地震イベントの、地震波形を含む地震記象データに対して、実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶する予め作成された履歴地震記象データベース、及び人工的にモデル化された地震記象データを記憶する理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出す探索装置と、
探索結果の集合において、マッチングしている地震記象データを確定し、その中から入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する確定装置とを含む、
地震記象探索エンジンを提供する。
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の具体例とする実施例を説明することによって、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットがより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】3成分地震記象データを示した例である。
【図2】本発明の実施例に係る地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステムを示した模式ブロック図である。
【図3】履歴地震記象データベースを作成するプロセスを示した模式フロー図である。
【図4】論理地震記象データベースを作成するプロセスを示した模式フロー図である。
【図5】複数の時間領域を有する地震記象データを示した例である。
【図6】マルチランダムKDツリー(Multiple Randomized K-Dimensional Tree 、MRKD-Tree)の構造を作成するプロセスを示した模式図である。
【図7】マルチランダムKDツリーで一回目の探索を行うプロセスを示している。
【図8】マルチランダムKDツリーで二回目の探索を行うプロセスを示している。
【図9】本発明の実施例に係る地震イベント探索エンジンを示した模式ブロック図である。
【図10】本発明の実施例に係る地震イベントの地震パラメータの推定を取得する方法を示した模式フロー図である。
【図11】本発明の実施例に係る探索結果を示した例である。
【図12】線形探索(Linear Search)と、局所性鋭敏型ハッシュ(LSH)法と、MRKD-Tree法という3つの方法での地震記象探索時間の比較を示している。
【図13】入力された地震イベントと、それぞれ線形探索(Linear Search)法及びMRKD-Tree法で得られた最適にマッチングしている地震イベントとの間の最大相互相関係数の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参考しながら、本発明の具体例とする実施例を詳しく説明する。本発明は以下に示した実施例に限定されるものではない。また、本発明の基本的な趣旨を明確に説明するために、図面において、本発明に緊密に係る部材、機能や工程のみを示しており、以下の説明にて既知技術、機能、部材や工程の具体的な内容を省略する。

【0011】
地震イベントは、地球内部のある一部の領域で発生した地質構造の突然変動により発生したイベントである。地震イベントは、地下の岩石構造の瞬間的破裂によることである。地震破裂メカニズムは、例えば、破裂面の走向角、傾斜角、スリップ角、震度及び震源深さなどの幾つかのパラメータによって記述されてもよい。これらのパラメータの組み合わせ及び地震波記録の震央距離を考えて、該当する地震記象は、例えば、横波、縦波、表面波がどれも異なる特徴を有するように、独特な波形記録を有する。地震記象は1つの時間信号系列である。所定の地球地質構造に対して、地震記象のそれぞれは、1つの特定の震源メカニズムパラメータと震央距離の組み合わせに対応している。 よって、地震記象から震源メカニズムパラメータ及び震央距離を逆算することができる。地震ステーション又は地震計により記録されたのは、地震波の記録地点への伝搬による地質変位、又は変位の速度(1次時間微分)、又は変位の加速度(2次時間微分)である。一般、地震ステーションは、3成分(垂直、東西、南北方向震動記録)地震記象データ、又は1成分(垂直成分)地震記象データを用いてもよい。図1は3成分地震記象データを模式的に示した例であり、ここで、上の図は南北震動成分を示し、中央の図は東西震動成分を示し、下の図は垂直震動成分を示し、横軸は相対時間(秒)で、縦軸は地震計の位置する箇所における地球地質震動の速度である。

【0012】
地震学分野において、地震モデル化には、同一地震観測ステーションにて記録された2つの地震記象が同じであれば、この2つの地震記象が対応する震源解及びそれらの伝搬プロセスの速度構成も同じであるべきという基本的な仮想がある。よって、地震学分野において、正演算及び逆演算の方法を用いて、波形のマッチングしている地震記象を探すことは、地震パラメータ及び地球構造を推定する標準方法であり、例えば、Xu, Y., Herrmann, R. B., and Keith, D. K. (2010). Source parameters of regional snall-to-moderate earthquakes in the Yunnan-Sichuan region of China, Bull. Seismol. Soc. Am. 100, No. 5B, pp. 2518-2531,以及Bonner, J., Herrmann. R., and Harley, B. (2010). Variable-period surface-wave magnitudes: a rapid and robust estimator of seismic moments. Bull. Seismol. Soc. Am. 100, No. 5A, pp. 2301-2309を参照してもよい。

【0013】
本発明の実施例は、発生した地震イベントに対して、履歴の地震記象データ及び人工的にモデル化された地震記象データを高速に探索することにより、波形のマッチングによって当該地震イベントの地震記象データと類似した地震記象データを探し出して、その中から当該地震イベントの地震パラメータの推定を取得する。本発明の実施例によれば、履歴及び人工的にモデル化された地震記象データは予め用意されている。また、当該探索方法は、1つの地震波形の解を割り出すことだけでなく、一定の類似度の条件における異なる地震イベントの波形の解集を割り出してもよい。本発明の実施例によれば、各地震イベントの波形の解は、ネットワーク探索エンジンの結果における各ページリンクのように、類似度に応じてソートされてもよい。このようにして、地震モデル化における一意的でない地震イベントの波形の解集を検出するチャンスを与えることになる。本発明の実施例によれば、近似最近傍探索法を用いて、地震発生後の数秒内でこれらの一意的でない地震イベントの波形の解集を高速に取得することができて、発生した地震イベントに対して極めて短い時間内で全面的な認知を得ることになる。地震信号ノイズの影響、モデルパラメータの相互作用、及び地球構造の複雑度を考えて、複数の一意的でない解を取得する必要があり、これらの解の特徴から探索された解集の信頼性及び解析度を評価してもよい。

【0014】
図2は本発明の実施例に係る地震イベントの地震パラメータの推定を取得するシステムを示した模式ブロック図。当該システム10は、実際に発生した地震イベントの地震記象データを記憶している履歴地震記象データベース110と、人工的にモデル化された地震記象データを記憶している理論的地震記象データベース120と、地震イベントの、地震波形を含む地震記象データを入力する入力装置130と、履歴地震記象データベース110及び理論的地震記象データベース120において、波形のマッチングによって、近似最近傍法で並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って、当該入力された地震イベントの地震記象データと類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出し、そして、探索結果の集合から、マッチングしている地震記象データを特定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する探索エンジン140とを備える。

【0015】
履歴及び理論的地震記象データベースは、ローカル又は遠距離的に記憶するデータベースであってもよく、集中型或分散型のデータであってもよい。

【0016】
本発明の実施例によれば、システム10は、マッチングしている全ての地震記象データの相互相関係数分布を比較することによって、探索結果の解析度及び信頼性を評価する評価装置(不図示)を更に備えてもよい。

【0017】
地震記象データは、図1のような3成分波形信号であってもよく、例えば、1成分垂直波形信号など、何か他の適した形式を用いてもよい。地震記象データは、デジタル化記録されたものであってもよく、例えば、標準のSAC、SEG2、SEGD或SEGYフォーマット等で記憶され、データヘッドに国際地震組織が認定した地震パラメータを記憶し、その地震パラメータは、例えば、震央距離と、震源深さと、震源メカニズムと、震度とを含み、そのうち、震源メカニズムは、走向角と、傾斜角と、スリップ角とを含んでもよい。

【0018】
履歴地震記象データベース110
履歴地震記象データベース110は予め作成されたものである。履歴地震記象データベース110を作成するために、単一又は複数の異なる地震観測ステーションが記録した地震イベントの数字化記録を用いてもよい。例えば、ある特定の地域及び地震観測ステーションネットに対してデータベースを作成し、又は、広範にわたる地域的及び超遠地震距離の地震課題に対して、震央距離、震源深度及び震源メカニズムに基づいてデータベースを作成する。本発明の実施例によれば、データベースに各地震観測ステーションの数字化記録が別々に記憶されもよい。地震ステーションのそれぞれに対して、地震パラメータの推定を取得し、複数の地震ステーションの地震パラメータの推定の論理積を、入力された地震イベントの地震パラメータの推定に確定してもよい。本発明の実施例によれば、履歴地震記象データベースにおける地震記象データは、インデックス処理されたものであり、局所性鋭敏型ハッシュ(LSH)法、又は、MRKD-Tree法を用いて探索を行ってもよい。LSHは、コンピュータ科学分野においてファイル検索及び図検索に適用される常用な高速探索方法であり、ここで、その詳しい説明を省略する。方法の詳細な説明について、Slaney, M., and Casey, M. (2008), Locality-sensitive hashing for finding nearest neighbors, IEEE Singal Processing Magzine, March, pp128-131を参照すればよい。図3は履歴地震記象データベースを作成する一例の模式フロー図300を示しており、この例において、MRKD-Tree法を適用して、地震記象データをインデックス処理する。図3に示したように、単一又は複数の異なる地震観測ステーションから記録された地震記象データを取得した後、ステップ302に、信号処理を行い、ノイズを除去し、P波初動到着時刻をピックアップする。ステップ304に、例えば、周波数レンジ[0.01Hz, 0.04Hz], [0.03Hz,0.06Hz]が選択され、複数の周波数レンジになるように、地震記象データを帯域フィルタリングし、フィルタリングされた表面波の最大振幅到着時刻をピックアップする。そうすると、例えば異なるステーションのデータにおける計器応答を除去できる(Herrmann, R. (1973). Some aspects of band-pass filtering of surface waves. Bull. Seismol. Soc. Am. 63, No. 2, pp. 663-671参照)。ステップ306に、各周波数レンジに対して、それぞれ地震記象データの初動到着時刻及び最大振幅到着時刻に基づいて波形の合わせを行い、2組の地震記象データを取得する。ステップ308に、それぞれ取得された2組の地震記象データに対して、MRKD-Tree法を適用して、各組の地震記象データに対して単一またはマルチKDツリーを作成する。よって、MRKD-Tree構造に従ってインデックス処理された履歴地震記象データベースは作成されている。本発明の実施例によれば、このようなMRKD-Tree構造を有するデータベースに対してMRKD-Tree法と近似最近傍探索法との組み合わせを適用して探索を行ってもよい。

【0019】
本発明の実施例によれば、地震記象データは多次元データであってもよく、ここの「次元」とは、時間次元であってもよく、又は、時間サンプリングも称される。各組の地震記象データに対してKDツリーを作成することは、組内の全ての地震記象データの各次元における平均値及び分散を算出し、複数の次元のうち平均値に対する最大分散を有する1つ又は複数の次元を確定すると共に、確定された1つ又は複数の次元のうちの各次元に対して、当該次元における平均値を中間値として、地震記象データを2つの部分に分割して、各部分が1つの地震記象データしか残されていないことになるまで、再帰的に各部分に対して前記算出、確定および分割のステップを行い、それによって、単一又はマルチKDツリーを作成することを含んでもよい。以下、図5及び6を参照しながら、地震記象データに対してどうのようにMRKD-Tree法を適用するの例をさらに説明する。図5は1つのデータベースの10個地震記象が3つの最大分散分布における時間次元及び該当する二乗平均偏差値(それぞれ1.67e-004, 2.14e-004, 1.85e-004)を示しており、ただし、地震記象データは初動到着時刻に従って合わせる。本発明は、それに限定されなく、複数の時間次元を有してもよい。また、各時間次元において二乗平均偏差を算出して、二乗平均偏差が最大の幾つかの次元を地震記象データの時間次元として選出する。図6はMRKD-Tree構造を作成するプロセスの模式図を示している。同図に示したように、3つの地震記象でデータベースを作成し、各地震記象は4つの次元を有する。テーブルは地震記象の振幅の値(地球地質震動速度)の各次元における平均値及びその二乗平均偏差を示している。二乗平均偏差の数式は、以下の式(1)となる。

【0020】
【数1】
JP0005650353B2_000002t.gif

【0021】
ただし、Ai(t)はデータベースにおいてi番目の地震記象が次元tにおける振幅の値で、 α(t)は全ての地震記象が次元tにおける振幅で、Nはデータベースにおいて地震記象の数である。図6のテーブルに、最大の二乗平均偏差は次元2及び4において、共に0.04667である。そして、同時に次元2及び4においてツリーの作成を始めてもよい。次元2は、地震記象の振幅の値が次元2において平均値0.3よりも小さいものが左側に置かれ、この平均値よりも大きいものが右側に置かれることによって、分割されている。そして、続いて左側又は右側に残された地震記象について、最後に1つの地震記象だけ残されるまで、当該規則を適用してこのツリー化プロセスを繰り返す。同時に、次元4においても、同様な分割方法に従い、もう一つのツリーの作成を始める。これによって、図6の下段に示したようはMRKD-Tree構造は得られる。

【0022】
上記のように、各組の地震記象データについてMRKD-Tree構造を作成する際に、分散の取る値が最大の次元(時間)に基づいて全ての地震記象データは2つの部分に分割され、即ち地震記象データ空間は1つの直交超平面によって2つの空間に分割される。この2つの部分のデータは、次にそれぞれ再帰的に分割プロセスを行い、即ち空間分割プロセスで、最後に平衡バイナリツリーは作成された。

【0023】
理論的地震記象データベース120
実際の地震記象データは地球内部の覆う範囲に限界がある。新たに発生した地震は従来履歴における何れかの地震イベントと類似する可能又は不可能であり、特に、実際の地震記象のデータベースが完全でないため、非常に類似している実際の地震記象を探索することができない場合が少なくない。従って、本発明は、補充として理論的モデル化される地震記象データを用いて、より大きい地球内部の覆う範囲を作成することを提案している。そして、本発明の実施例によれば、予め理論的地震記象データベース120を作成する。こうすると、新たに発生した地震イベントに対して、探索プロセスは、履歴データベースと理論的データベースを探索する並行プロセスである。この2つの并行探索プロセスの戻る結果は、いずれも重要な独立した情報を提供することができるため、現在の地震イベントの地震パラメータを推定することを補助するに使用される。本発明の実施例によれば、実際の地震記象データはリアルな地震記録で、何かの地球簡易化の仮想もない一方、理論的地震記象データは各簡易化の仮想条件で算出されたものであるため、2つのデータベースが混合されて探索を行うことをしないことは好ましい。履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースからそれぞれ取得されたマッチングしている地震記象データと入力された地震時間の地震記象データの相互相関係数が同じ又は類似している場合、探索エンジンは、履歴地震記象データベースのマッチングしている地震記象データを選択して、地震パラメータを推定することが好ましい。

【0024】
1つの十分な理論的計算された地震記象データベースを用意するために、数百万から数千万までの人工的にモデル化された地震記象を算出する必要がある。地震記象の特徴は、例えば、横波及び縦波の時間差、表面波のスペクトル特徴、地震記録の時系列長さなどは、観測記録距離に応じて異なる。一部の領域を観測することを目標とすれば、3次元差分法又は有限要素シミュレーションを用いて、3次元地球速度モデル、 格子化された震源パラメータ(例えば、震央距離及び震源深さなど)で、短波長(高周波数)の理論的地震記象を算出してもよい。方法については、例えば、Zhang, W., and X. Chen. 2006. Traction image method for irregular free surface boundaries in finite difference seismic wave simulation. Geophysical Journal International 167(1): 337-353を参照する。地域的及び超遠距離の地震について、弾性波シミュレーション法を用いて、全球平均の1次元地球モデルで長波長(低周波数)の地震記象を算出してもよい。1次元モデルについては、例えば、Dziewonski, A. M. and Anderson, D. L., (1981), Preliminary reference earth model. Phys. Earth Planet. Inter., 25: 297-356を参照する。距離の遠近に関わらず、上記すべての地震記象の波形データは、いずれも最初信号到着時刻又は最大振幅到着時刻を用いて合わせられる。また、特定の地震パラメータ範囲を格子化してもよく、例えば、震央距離10°~35° (1°≒111km)、深さ0~50km、距離間隔5km、深さ間隔5km、走向角間隔10°、傾斜角間隔10°、スリップ角間隔10°のように、各格子毎に、理論的地震記象を人工的モデル化又は合成してもよい。同様に、SACフォーマットで理論的地震記象を記憶してもよい。

【0025】
図4は理論的地震記象データベースを作成する一例の模式フロー図400を示しており、当該例においても、MRKD-Tree法を適用して、地震記象データにインデックスを付ける。ステップ402に、特定の地震パラメータ範囲を格子化し、各格子毎に、理論的地震記象を算出する。ステップ404に、特定の地震ステーション計器のスペクトル応答と理論的地震記象とを重畳積分して、理論的データと実際のデータとの比較が可能となり、これは実際受信されたデータが地震ステーションスペクトル応答の重畳積分効果を有するからである。ステップ406に、P波初動到着時刻をピックアップする。ステップ408に、帯域フィルタリングして、フィルタリングされた最大振幅到着時刻をピックアップする。ステップ410に、各周波数レンジに対して、それぞれ地震記象データの初動到着時刻及び最大振幅到着時刻に基づいて波形の合わせを行い、2組の地震記象データを取得する。ステップ412に、それぞれ取得された2組の地震記象データに対して、MRKD-Tree法を適用して、各組の地震記象データに対して単一またはマルチKDツリーを作成する。よって、MRKD-Tree構造に従ってインデックス処理された理論的地震記象データベースは作成されている。理論的地震記象データベースにおいて、各組の地震記象データに対してMRKD-Tree構造を作成するプロセスは、履歴地震記象データベースにおいて実行されるプロセスと同様である。

【0026】
入力装置130
入力装置130は、地震イベントの地震記象データを入力するためのインターフェースであってもよく、例えば、1つ又は複数の地震観測ステーションの出力装置又は通信インターフェースに接続されて、1つ又は複数の地震観測ステーションから発生した地震イベントの地震記象記録を受信するようになってもよい。入力装置130は、例えば、キーボード、タッチパネルなどのユーザインターフェースを含んでもよく、ユーザ又はオペレータは、入力装置130によって、システムの設置、予め決められた条件などを入力して、システムの運行を制御し管理してもよい。いずれかの適当な構成又は形式を用いて入力装置130を実現してもよい。

【0027】
探索エンジン140
探索エンジン140は、別体に実現されたデバイスであってもよく、履歴地震記象データベース110、理論的地震記象データベース120及び入力装置130のうち1つ又は複数と同じ位置に形成されるように実現されてもよい。探索エンジン140は、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又は専用演算デバイスによって実現されてもよい。

【0028】
1つの十分な地震イベントのデータベースは、数億~数十億程度の地震記象を含む。最先端のコンピュータデバイスが使用されても、原始的線形探索方法を用いれば、この大量なデータを探索するには十分な処理能力がない。例えば、近似最近傍探索(例えば、Muja, M., Lowe, D. G. (2009). Fast approximate nearest neighbors with automatic algorithm configuration, VISAPP (1) 2009: 331-340を参照)のコンピュータ探索技術によって、大規模なデータベースから一定の正確率具合で高速サーチを行って類似な地震記象を取得することができ、なお、この技術は、インターネットのデータ量レベルで、図検索、音楽検索及びビデオ検索の分野に適用されたことが既に成功している。

【0029】
探索エンジン140は、近似最近傍法を用いて、履歴地震記象データベース110及び理論的地震記象データベース120において並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データと類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出す。例えば、予め決められた類似度条件は、予め決められた探索の正確率であってもよく、例えば90%、この条件を満たす地震記象データは、いずれも探索結果としてもよい。本発明の実施例によれば、探索エンジン140は、探索プロセスにおいて、局所性鋭敏型ハッシュ(LSH)法又はMRKD-Tree法とをさらに組み合わせて、探索プロセスをより速くしている。図7は本発明の実施例に係る探索エンジン140の模式ブロック図を示している。探索エンジン140は、探索装置710と確定装置720とを含む。入力装置130によって入力された地震イベントの、地震波形を含む地震記象データについて、探索装置710は、履歴及び理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍法を用いて並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データと類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出す。確定装置720は、探索結果の集合において、マッチングしている地震記象データを確定し、その中から入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得する。本発明の実施例によれば、システム10は、探索エンジン140に接続され、探索エンジン140が取得した地震パラメータの推定を出力する出力装置(不図示)を更に含んでもよい。出力装置は、例えば、ディスプレイ、スピーカなどであってもよい。

【0030】
本発明の実施例によれば、探索装置710は、履歴及び理論的地震記象データベースにおいて、複数組の地震記象データについて、並行に近似最近傍探索を行い、予め決められた類似度条件(例えば、予め決められた探索の正確率、例えば90%)に従って、各組の独立した複数の探索結果を取得し、類似度に従って高い順に1つの全体の優先キューを得て、前の幾つか(例えば、20個)の最近傍を最終的な探索結果の集合として取り出す。これらの探索結果は、当該大規模データベースの全てのデータの1つの部分集合と見なされてもよい。ここで、類似度は、入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間のユークリッド距離、即ち両者の間の差分に基づいてもよい。

【0031】
探索された地震記象は、プリ処理で合わせる時に時間の選択的ずれがある可能性があるため、探索結果をユークリッド距離の大きさに基づいて順次並べると、十分に精確でないの可能性がある。本発明の実施例によれば、類似度は、入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間の相互相関係数に基づいてもよい。(規格化された)相互相関係数は、以下の数式で算出されてもよい。

【0032】
【数2】
JP0005650353B2_000003t.gif

【0033】
ただし、x(i)及びy(i)は、2つの時間系列の地震記象で、それぞれN個離散値を持ち (i=1,2,3,…N)、 mxはx(i)の平均値で、myはy(i)の平均値である。相関による時間系列r(j) (j=1,2, … N)は、値が[-1、+1]の範囲内であるべき。この値が大きいほど、2つの地震記象が類似していることを表明する。相互相関係数の算出コストはユークリッド距離の算出コストより遥かに大きいが、類似度の計量から見ると、その精確度がユークリッド距離より高い。近似最近傍の探索結果だけにおいて相互相関係数が算出され、そのデータの規模が全体のデータベースに比べて遥かに小さいため、相互相関係数の算出は、それほど時間がかからない。

【0034】
本発明の実施例によれば、確定装置720は、入力された地震記象の地震記象データと探索結果の集合における各探索結果との間の相互相関係数を算出し、マッチングしている地震記象データとして相互相関係数が最大の探索結果を用いることによって、マッチングしている地震記象データを確定する。探索装置710が既に相互相関係数の大きさに従って全体の優先キューを形成していれば、確定装置720は、マッチングしている地震記象データとして、直接優先キューから相互相関係数が最大の探索結果を選択してもよい。履歴地震記象データベース及び理論的地震記象データベースからそれぞれ取得されたマッチングしている地震記象データと入力された地震時間の地震記象データとの相互相関係数が同じ又は類似(例えば、類似度が予め決められた閾値を満たす)場合、確定装置720は、履歴地震記象データベースのマッチングしている地震記象データを選択する。

【0035】
図9は本発明の実施例に係る地震イベントの地震パラメータの推定を取得する方法のフロー図を示している。方法800は、ステップ802に地震イベントの地震記象データを入力することを含む。地震記象データは、地震観測ステーションで記録され、かつプリ処理されたものであってもよい。プリ処理は、信号処理を行い、ノイズ除去し、P波初動到着時刻をピックアップすることと、地震記象データを帯域フィルタリングして複数の周波数レンジに分割し、フィルタリングされた表面波の最大振幅到着時刻をピックアップすることと、各周波数レンジに対して、それぞれ地震記象データの初動到着時刻及び最大振幅到着時刻に基づいて波形の合わせを行い、2組の地震記象データを取得することとを含んでもよい。

【0036】
方法800は、ステップ804に、履歴及び理論的地震記象データベースにおいて、波形のマッチングによって、近似最近傍探索法で並行探索を行い、予め決められた類似度条件に従って当該入力された地震イベントの地震記象データに類似する複数の地震記象データを探索結果の集合として探し出すことをさらに含む。ここで、図6に示した例によって具体的に説明する。上記のように、図6はデータベースにおける組毎の地震記象データに対してMRKD-Tree構造を作成することを模式的に示している。当該図には、同時に2つのツリーを作成する例を示している。具体的に、データベース地震記象を入力してツリーを作成する際に、それぞれ、各地震記象データのその次元2及び4における値がツリーの頂点の平均値0.3及び0.6より小さいか大きいかを並行に判断する。例えば、次元2からのツリーの作成に対して、何れかの地震記象の幅値について、次元2において平均値0.3より小さいものが左側(ID=1, 2)に置かれ、この平均値より大きいものが右側(ID=3)に置かれる。左側に置かれた全ての地震記象(ID=1、2)の最大平均値は次元4の0.65である。同様に、次元4において、底の最後の1つの地震記象に到達するまでに、平均値が0.65より小さい地震記象はノードの左側(ID=1)に置かれ、平均値が0.65より大きい地震記象はノードの右側(ID=2)に置かれ、そのようにして、一本のMRKD-Treeの作成ができって、ここまで、ツリー1のツリー化が完了する。同様な方式で、右側(ツリー2)の次元4からのツリーは作成されている。

【0037】
図7及び図8は二回探索のプロセスを示している。
図7には、一回目の探索プロセスを示しており、即ち、各MRKD-Treeにおいて根ノードからサーチし、具体的に、各MRKD-Treeにおいて以下方式でサーチしており;まず、根ノードから、根ノードの「平均値」とサーチ待ちの地震記象データの「選択次元」の値とを比較し、サーチ待ちの地震記象データの「選択次元」の値が根ノードの「平均値」より小さい又は等しいであれば、根ノードの左の子ノードに入り、同時に右の子ノードとサーチ待ちの地震記象との間のヒューリスティック距離情報(hdist)を算出し、右の子ノードを優先キューに挿入し、逆に、根ノードの「平均値」より大きいであれば、根ノードの右の子ノードに入り、同時に左の子ノードに応じるヒューリスティック距離情報(hdist)を算出し、左の子ノードを優先キューに挿入し、図7のa) に示したように、ツリー1の「選択次元=4、平均値=0.65」のノードに入ると共に、ツリー1のID=3ノードのヒューリスティック距離情報を算出し、当該ノードを優先キューに挿入し、同様な処理方式に従って、内部ノードの「平均値」とサーチ待ちの地震記象の当該ノードに対応する「選択次元」の値とを再帰的に比較し、左の子又は右の子ノードに入ると共に、「入りしていない」子ノードのヒューリスティック距離情報を算出し、これを優先キューに挿入し、葉ノードに到達するまでとなり、そのとき、図7のb)に示したように、当該葉ノードに対応するIDを結果キューに加入し、もし、結果キューに既に当該葉ノードに対応するIDを含んでいれば、同じIDを結果キューに挿入することしなく、今回の操作をスキップし、単一ツリーの一回目の探索が完了するまで、同様な処理方式で、各MRKD-Treeを探索し、図7のc)に示したように、ツリー2の一回目の探索結果を示している。各MRKD-Treeの探索が完成したことは、一回目の探索の完了に意味する。

【0038】
図8には二回目からの探索フローを示している。まず、優先キューからキューの先頭のノード、即ちヒューリスティック距離情報(hdist)が最小のノードを取り出し、そして、このノードの情報に基づいて、対応するツリー番号及びノード位置情報を探し、それによって、このノードから、一回目の上から下までの方式で、当該ノードの「平均値」とサーチ待ち地震記象の当該ノードに対応する「選択次元」の値とを比較し、サーチ待ち地震記象の「選択次元」の値が当該ノードの「平均値」以下であれば、左の子ノードに入ると共に、右の子ノードのヒューリスティック距離情報を算出し、これを優先キューに加入し、当該ノードの「平均値」より大きいであれば、左右の子を交換し、同様な方式に従って行い、葉ノードに到達するまで、そのようにして繰り返し、キューに既に当該ノードを含んでいれば、加入することを重複しない。これらの操作は一回目における操作と同様である。留意すべきのは、結果キューの大きさの上限が指定されば、結果キューにおけるノードの数がこの上限に達すると、全体の探索プロセスが完了し、そうされなければ、全てのノードを結果キューに加入するまで、上記方式に従ってサーチを続ける。 図8のa) ~ d)の 各図における対応するのは、一回で優先キューからノードを取り出してサーチするプロセスである。

【0039】
このようなマルチKDツリーの探索について、元の基礎となるコンピュータ理論と方法が、Silpa-Anan, C., and Hartley, R. (2008). Optimised KD-trees for fast image descriptor matching, In CVPRという論文に詳しく説明されている。

【0040】
方法800は、ステップ806に、ステップ804に探し出された探索結果の集合からマッチングしている地震記象データを確定し、その中から、入力された地震イベントの地震パラメータの推定を取得することを更に含む。地震パラメータは、震央距離、震源深さ、震源メカニズム及び震度のうちの少なくとも1つを含んでもよい。本発明の実施例によれば、方法800は、全てのマッチングしている地震記象データの相互相関係数分布を比較することによって、探索結果の解析度及び信頼性を評価することを更に含んでも良い。

【0041】
以下、本発明の実施例を用いる模擬示例を説明し、ここで、1つの人工的合成された地震の地震パラメータを推定する。人工的合成された地震記象は、震央距離300km、震源深さ25km、震源メカニズム:走向角=170°、傾斜角=230°、スリップ角= 170°としている。この例について、理論的データベースは、震央距離100~1000 km、間隔5km、震源深さ5-30km、間隔5km、震源メカニズム:走向角=0 ~360°、傾斜角=0~90°、スリップ角=-180°~ 180°、間隔10°というパラメータを用いて格子化する。人工的合成された地震記象の波形を本発明の実施例に係るシステム10に入力し、図11は1つの探索結果の例を示しており、MRKD-Tree法で探索する20個の最適なマッチング結果を含む。最上方の太線の地震記象は、探索された、入力された地震記象と全く同じ地震記象及び他の19個の人工的にモデル化された類似地震イベントの地震記象である。

【0042】
図12は、精確な線形探索(Linear Search)、局所性鋭敏型ハッシュ(LSH)法、及びMRKD-Tree法という3つの方法の地震記象探索時間の比較を示している。同じ数の地震記象のデータベースを探索する時に、精確な線形探索は100個の最適なマッチング結果を返すと共に、100%の正確率及び最長の探索時間を得ている。LSH法及びMRKD-Tree法で得られた結果は90%の正確率を有するが、MRKD-Tree法のかかる時間はLSH法及び精確な線形探索法より遥かに小さい。実際の適用について、90%の正確率では十分である。これから分かるように、MRKD-Tree法の速度及び效率が非常に高い、実験結果によれば、数百万のデータ量のデータベースにおいて、MRKD-Tree法が数秒だけで探索結果を得ることができ、高速、さらにリアルタイムの地震パラメータの推定を実現している。

【0043】
図13は、入力された地震イベントと線形探索(Linear Search)及びMRKD-Tree法を用いてそれぞれ得られた最適なマッチングしている地震イベントとの間の最大相互相関係数の比較を示している。図から分かるとおり、MRKD-Tree探索で得られた結果に50個のマッチングしている地震記象データのうちの幾つかを欠いているが、実際の適用に対して、MRKD-Tree法は、既に統計上に必要とするマッチングしている地震記象データを、十分に多く探索して取得することができている。MRKD-Tree法は精確な線形探索に比べて速度及び效率が非常に高いことを考えて、本発明の実施例に係るMRKD-Tree法を用いる方法及びシステムは、ほぼリアルタイムで地震パラメータの推定を取得する利点がある。

【0044】
以上、本発明の実施例に係る入力された地震イベントの地震パラメータの推定を高速に探索する方法及びそのシステム、並びに地震時間探索エンジンは、入力された地震データを取得した後数秒内で当該入力された地震イベントの地震パラメータを推定することができる。当該方法及びシステムは地震イベント探索エンジンを用いて、大規模な履歴実際地震資料データベースを作成すること及び全ての震源パラメータの理論的地震記象を完全に覆う可能な大規模なデータベースを作成することによって、高速にデータベースから入力された地震記象に類似する全ての地震イベントを探索する。入力された地震イベントに対応するマッチングしている結果を探索して取得すると、当該システムは、例えば、震源メカニズム及び他の震源パラメータの推定を取得するように、直ちにこれらのマッチングしている地震イベントの地震パラメータを表示する。本発明の実施例方法及びシステムは、コンピュータの探索技術を用いて、自然地震のリアルタイム観測、リアルタイムで石油と天然ガスの開発による微震イベントを観測することに適用されることが可能であり、かつ、リアルタイムで核爆発または爆薬の爆発などを観測することに適用されてもよい。

【0045】
上記したのは、本発明の具体例とする実施形態であり、本業者は、本発明の上記趣旨から逸脱しない限り、若干の改良及び変形をしてもよく、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲と見なされることが理解されるべきである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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