TOP > 中国の大学の特許 > 清華大学の特許一覧 > ヌクレオリンを介したがん診断および治療方法

ヌクレオリンを介したがん診断および治療方法

国内特許コード P150011703
掲載日 2015年3月30日
出願番号 特願2010-180525
公開番号 特開2011-013225
登録番号 特許第5502652号
出願日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成23年1月20日(2011.1.20)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
優先権データ
  • 200510011707.3 (2005.5.12) CN
発明者
  • 永章・▲羅▼
  • 虎兵・石
  • 卓兵・▲張▼
出願人
  • 清華大学
  • 北京普▲羅▼吉生物科技▲発▼展有限公司
発明の名称 ヌクレオリンを介したがん診断および治療方法
発明の概要 【課題】
本発明の課題は、抗血管新生がん療法に適したがん対象、特にヒト患者を同定する新しい方法を提供することである。
【解決手段】
ヌクレオリンがエンドスタチンの特異性レセプターであるという発見に基づく本発明は、エンドスタチンや、他の血管新生阻害剤を用いた治療に適する腫瘍の種類およびがん患者の検査およびスクリーニングのための診断用キットを提供する。特に、この診断用キットは、ヌクレオリンに対する抗体およびヌクレオリンをコードする核酸と結合するDNAまたはRNAを含む。本発明は、血管新生阻害剤、特にエンドスタチンの作用と類似した阻害剤をスクリーニングする方法も提供する。また、本発明は、細胞毒性薬、例えば腫瘍壊死因子αをヌクレオリン抗体と連結することによって、特異的に内皮細胞の増殖および腫瘍血管新生を特異的に抑制する方法を提供する。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



近年開発された新たながん療法として、ESを介して腫瘍の血管新生を抑制し、腫瘍への血流を遮断することによって腫瘍の成長を抑制するというものがある。ESはXVIII型コラーゲンのC末端球状ドメインで、分子量は20kDaである。ESは、最初にマウス血管内皮腫細胞系の培養上清から分離され、毛管内皮細胞の増殖を抑制する。動物試験では、ES処置が繰り返された後、腫瘍の消滅を促進し、薬剤耐性も生じなかった。さらに、動物試験および臨床試験でESの低毒性が観察された。ESは顕著な内皮細胞の増殖、遊走、接着、生存を抑制する能力を示し、細胞のアポトーシスを誘発する。インテグリン、トロポミオシン、グリピカンおよびEセレクチンがESのレセプターとして細胞の遊走を制御すること、β-カテニンとShbアダプターはESによって誘発された内皮細胞のG1期休眠とアポトーシスに関与すると予想されるが、ESの正確な分子機構はまだ議論があり、動物試験と臨床試験で観察されたESの低毒性の具体的な理由はまだ知られていない。一方、動物試験と臨床試験で高濃度のESが抗腫瘍効果に必要であるという事実に対し、まだ十分な説明がなされていない。





ESは血管新生を抑制することによって腫瘍を殺滅するので、有効ながん治療薬として認められている。腫瘍細胞は血管新生によって転移する。腫瘍細胞集団の毎回の増加は、腫瘍に集まる新しい毛細管の形成の後でなければ生じない。この現象はほとんど普遍的である:多数のヒトの固形腫瘍あるいは血液がんは血管新生依存性である。抗血管新生療法のさらなる利点は、低毒性、最小の薬剤耐性、およびこの治療の繰り返されたサイクルの後にさらなる治療なしで長い腫瘍休止状態が続くことを包む。Boehm et al., Antiangiogenic therapy of experimental cancer does not induce acquired drug resistance. Nature (1997) 390: 404-407を参照。しかしながら、これまで、ESの機能のメカニズムはまだ明らかにされていない。したがって、ES療法は各々の患者の感受性を考慮することなく、がん患者に一様に適用されている。同時に、ESが効果的に血管新生阻害剤として機能し、望ましい制がん作用を生じるために、大量のESを生産してがんを患う哺乳類またはヒトに投与しなければならないことが示された。このプロセスにおいて高用量のESが必要なので、これはひどく高価となり得る。したがって、他の方法で新しい血管新生阻害剤を産生し、そして、経済的さらに効果的に腫瘍治療に用いることが緊急に必要である。多くの臨床試験が有効な抗血管新生薬を見つけることを期待して行われた。一方、客観的な基準を用いてES治療に適合する患者を選ぶことができるならば、それは顕著な進歩である。





異なる患者において、がん療法の効果は種々の内的または外的要因によって、相違が極めて大きい。外的要因は治療を実施する時のがんの進行段階(がんの発見が早いほど治療と回復に有利になる)および治療を与える相対強度、例えば手術、化学療法あるいは放射線療法を包含する。内的要因は患者の免疫系の健康の程度を包含する。強健な免疫系はより長く、より強い処置を維持することを可能にし、そして、患者がより速く回復することを援助する。がん治療において、また、一般的な医学分野においても、個人化医療と呼ばれる一つの重要な問題が検討されている。異なる個人が同じがん治療薬に対する異なる耐容性と感受性を持ち得るという概念は、特定のがん治療効果を高めるための様々なアプローチを提供するものである。したがって、個体の多様性のために、ある患者で有効な薬が他の患者で有効であるとは限らない。がん治療領域において、患者の遺伝子型を通じて、ある特定の薬物が特定の遺伝子的特徴を有する患者に有効であるかどうかを理解する試みが行われている。同様に、ES治療の個人化を実現するため、最近遺伝子チップ技術によって遺伝子発現プロファイルを取得して、ESがどのようにして内皮細胞血管新生を抑制することができるかを研究する試みもなされている。M. Mazzanti, et al., Genome Research, 14:1585-1593 (2004)参照。





ヌクレオリンは、遍在する非ヒストンタンパク質であり、最初に核小体から分離された。NLの量はGranzyme Aと自己切断能力によって制御され、興味深いことに、それは細胞増殖と相関している。NLも自己切断されて、その切断は細胞の増殖速度の増加に伴って減少する。同時に、それはまた細胞障害性リンパ球によって分泌されるエステラーゼであるGranzyme Aによって切断される。(Chen et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 7754-7758; Fang and Yeh, Exp. Cell. Res., 1993, 208, 48-53; Pasternack et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 14703-14708)。それらの切断およびそれに伴う分解はNLの翻訳後制御を構成する。

多機能タンパク質として、NLは細胞増殖に対して決定的かつ基本的な効果を有する。それは核小体クロマチンの配列、pre-RNAのパッケージング、rDNA の転写およびリボース体の組み立てである。NLのこれらの活性は、CK2やcdc2などの特定のプロテインキナーゼによって調節され、後者はまた他の細胞周期タンパク質により厳格に制御される。そして、NLも細胞表面、細胞質と核の間を往復し、細胞表面マーカーとして機能する。多くのウイルスとサイトカインのレセプターとして、リガンドと結合する時に、NLはリガンドの内在化を誘発する。





Orrickら(1973)は下記のような報告をした:NLの分子量が約100~110kDaであり、主に増殖細胞の核の中に存在していた。NLは自己分解されて、ウエスタンブロット法分析において70と50kDaの2本のバンドを示す。NLは、高度にリン酸化およびメチル化され、さらにはADPリボシル化され得る。NLの合成が細胞分裂速度の増加に正相関しているので、腫瘍細胞や速く分裂する細胞の中のNL含有量はより高いレベルである。NLの配列については、Srivastavaらが、Cloning and sequencing of the human nucleolin cDNA.FEBS Lett.250(1), 99-105(1989)に報告している。





NL(別名P92またはC23)は活発に増殖する細胞の核小体の中で最も量の多いリンタンパク質である(Srivastava et al., FEBS Lett., 1989, 250, 99-105; Srivastava et al., J. Biol. Chem., 1990, 265, 14922-14931)。NLは主にリボソームの生合成に関与することが報告されている(Ghisolfi et al., Mol. Biol. Rep., 1990, 14, 113-114; Sipos and Olson, Biochem. Biophys. Res. Commun., 1991, 177, 673-678)。NLは自身のリボ核タンパク質共通配列を介して一時的にプレリボソームと結合することによって、リボソームの合成に関与する(Bugler et al., J. Biol. Chem., 1987, 262, 10922-10925; Ghisolfi-Nieto et al., J. Mol. Biol., 1996, 260, 34-53; Sapp et al., Eur. J. Biochem., 1989, 179, 541-548)。NLは全核小体タンパク質の5%を占める(Lapeyre et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1987, 84, 1472-1476; Sapp et al., Eur. J. Biochem., 1989, 179, 541-548)。NLはまた細胞質分裂、核の形成、細胞の増殖と成長、転写抑制、DNA 複製、シグナル伝達とクロマチン脱凝縮に関与している(総説、Tuteja and Tuteja, Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol., 1998, 33, 407-436を参照)。





前記NLの多機能性は、いくつかの構造的および機能的な独立ドメインの存在に起因する(Creancier et al., Mol. Biol. Cell., 1993, 4, 1239-1250; Sapp et al., Eur. J. Biochem., 1989, 179, 541-548)。NLの3つのドメインが知られている:N末端ドメイン、中間ドメインおよびC末端ドメインである。N末端ドメインの中にHMGタンパク質の相同配列が含まれ、クロマチンと相互作用することができる(Erard et al., Eur. J. Biochem., 1988, 175, 525-530)。中間ドメインは4つのRNA認識モチーフを含み、特に18Sおよび28SリボソームRNAの短いステムループと結合する(Bugler et al., J. Biol. Chem., 1987, 262, 10922-10925)。C末端ドメインはRNA内塩基の非スタッキングを行うドメインを含む(Ghisolfi et al., Mol. Biol. Rep., 1990, 14, 113-114; Ghisolfi-Nieto et al., J. Mol. Biol., 1996, 260, 34-53)。NLは2つに分かれた(bipartite)核局在シグナルを含み、これはタンパク質のN末端と中間部位にわたる。この配列はNLが核内に局在することを助ける。NLは、他のタンパク質との相互作用によって核内に蓄積する(Schmidt-Zachmann and Nigg, J. Cell Sci., 1993, 105, 799-806)。





NLは、そのドメイン構造によりAg-NORタンパク質(核仁組織領域に局在する活性リボソーム遺伝子)と分類され、これは活性リボソーム遺伝子のマーカーとして知られている(Roussel et al., Exp. Cell. Res., 1992, 203, 259-269)。リボソーム遺伝子の転写がAg-NORタンパク質の存在を必要とすることが示されており、そして、Ag-NORタンパク質の発現が腫瘍成長率の予測に使用されている。

NLは、ヒト赤白血病細胞からマトリックス結合領域(MAR)結合タンパク質としても精製された。研究によって、NLが、クロマチンループが核マトリックスに定着する過程に関与することが明らかになった(Dickinson and Kohwi-Shigematsu, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 456-465)。





NLは高度にリン酸化されて、カゼインキナーゼII(以下、「CK2」と略す)(Csermely et al., J. Biol. Chem., 1993, 268, 9747-9752; Schneider and Issinger, Biochem. Biophys. Res. Commun., 1988, 156, 1390-1397)、プロテインキナーゼCζ (Zhou et al., J. Biol. Chem., 1997, 272, 31130-31137)およびCdc2(Belenguer et al., Mol. Cell. Biol., 1990, 10, 3607-3618)の基質であることが示された。さらに、NLのリン酸化状態はNLの細胞内局在を制御することが示された。

NLは自己切断するか、あるいは細胞障害性リンパ球によって分泌されるエステラーゼ、Granzyme Aに切断されるが、細胞が増殖期に入ることに伴い自己切断活性は低下する(Chen et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 7754-7758; Fang and Yeh, Exp. Cell. Res., 1993, 208, 48-53; Pasternack et al., J. Biol. Chem., 1991, 266, 14703-14708)。前記切断過程およびそれに伴う分解はNLの翻訳後制御を構成する。

抗NL抗体は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)(Minota et al., J. Immunol., 1990, 144, 1263-1269; Minota et al., J. Immunol., 1991, 146, 2249-2252)および強皮症様慢性移植片対宿主病(scleroderma-like chronic graft vs. host disease)(Bell et al., Br. J. Dermatol., 1996, 134, 848-854)を含む全身性結合組織疾患患者の血清で見つかる。したがって、病的状態下でNLの発現を薬理学的に調節するのは適切な治療方法になる可能性がある。

産業上の利用分野



関連出願

本出願は2005年5月12日に出願された中国特許出願200510011707.3の優先権を主張する。





技術分野

本発明は抗血管新生がん療法に適したがん対象、特にヒト患者を同定する新しい方法に関する。本発明は、血管新生阻害剤、細胞、特に血管新生依存性のがん細胞の悪性増殖の抑制に有効と考えられる分子を探索およびスクリーニングする新規な方法にも関する。本発明は、ヌクレオリン(nucleolin、以下、「NL」と略す)を用いた血管新生阻害剤をスクリーニングする方法を開示する。特に、本発明は、エンドスタチン(endostatin、以下、「ES」と略す)の作用メカニズムに類似する血管新生阻害剤をスクリーニングすることに関する。本発明は、NLがESの特異的レセプターであり、ESの血管新生抑制活性に関するシグナル伝達経路に関与しているという知見に基づくものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
インビトロで増殖中の内皮細胞に加えらた場合に、内皮細胞の増殖および/または遊走を抑制する能力を有する血管新生阻害剤を選択する方法であって、
a. 薬学的に許容できる方法を用いて、ヌクレオリンを標的分子として、これと特異的に相互作用する分子を見出す工程、
b. 工程a.で得られたヌクレオリン特異的分子を、内皮細胞の増殖および/または遊走を抑制する効果について試験する工程、および
c. 得られた内皮細胞の増殖および/または遊走の抑制に有効な分子を確定し、該分子の抗血管新生機能の有効性をエンドスタチンの抗血管新生機能の有効性と比較する工程、
を含む、前記方法。

【請求項2】
ヌクレオリン特異的分子がタンパク質またはペプチドである、請求項に記載の方法。

【請求項3】
ヌクレオリン特異的分子が小分子である、請求項に記載の方法。

【請求項4】
標的細胞の血管新生阻害剤への反応性を増強する方法であって、
a. 外因性ヌクレオリンを標的細胞に導入し、外因性ヌクレオリンを発現する複数の改変標的細胞を得ること、および
b. 改変標的細胞に対するエンドスタチンの殺傷率を測定すること、
を含む、前記方法。

【請求項5】
標的細胞ががん細胞である、請求項に記載の方法。

【請求項6】
標的細胞が内皮細胞である、請求項に記載の方法。

【請求項7】
血管新生阻害剤がエンドスタチンである、請求項に記載の方法。

【請求項8】
外因性ヌクレオリンが、ウイルスベクターによって標的細胞に導入される、請求項に記載の方法。

【請求項9】
標的内皮細胞に対する血管新生阻害剤の抗血管新生作用を強化する方法であって、
a. 薬学的有効量の外因性ヌクレオリン分子を前記標的細胞に導入し、前記ヌクレオリン分子を前記標的細胞に発現させること、および
b. 前記標的細胞を前記血管新生阻害剤と共にインキュベートし、前記標的細胞の増殖を抑制すること、
を含
前記血管新生阻害剤がエンドスタチンである、前記方法。

【請求項10】
内皮細胞ががん細胞である、請求項に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
分野
  • 物理学
  • 化学;冶金
※ 特許の内容に興味を持たれた方は、下記問合せ先にご相談下さい。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close