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Y染色体標識トランスジェニック非ヒト動物 コモンズ

国内特許コード P05P003034
整理番号 Y2004-P020
掲載日 2005年6月24日
出願番号 特願2004-298672
公開番号 特開2005-137367
登録番号 特許第4271120号
出願日 平成16年10月13日(2004.10.13)
公開日 平成17年6月2日(2005.6.2)
登録日 平成21年3月6日(2009.3.6)
優先権データ
  • 特願2003-354416 (2003.10.14) JP
発明者
  • 遠藤 仁司
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 Y染色体標識トランスジェニック非ヒト動物 コモンズ
発明の概要 【課題】 作製した動物の組織、細胞、胚、胎児等の由来の判別、雌雄の判別が確実かつ容易な標識化されたトランスジェニック非ヒト動物、及び、そのES細胞を用いたトランスジェニック非ヒト動物の簡便な作出方法を提供すること。
【解決手段】 標識タンパク質の遺伝子を、サイトメガロウイルス エンハンサーとチキンベーターアクチンプロモーターのような調節遺伝子の下流に連結したトランスジーンをマウスのような哺乳動物の受精卵の前核に導入することにより、該標識タンパク質の遺伝子がY染色体上に局在させたトランスジェニック動物を作出できる。該トランスジェニック動物を用いて、雌雄の判別や、作製した動物の組織、細胞、胚、胎児等の由来の判別をより確実、容易に行うことができる。更に、ES細胞を構築し、Y染色体が特異的に脱落したES細胞とを用いて、迅速かつ簡便な方法でノックアウト動物等のホモ接合体を作製することが可能である。
従来技術、競合技術の概要


1980年にGordonらにより(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:7380-7384,1980)、マウス受精卵の前核に組換えDNAを直接注入する方法でトランスジェニックマウスの作成が報告されて以来、近年の遺伝子操作技術や遺伝子導入技術の進展により、多くのトランスジェニック動物が作出されている。数々の改変遺伝子を導入したトランスジェニックマウスのような遺伝子改変動物は、発生生物学、細胞生物学、免疫学、及び医療などの分野で新たな研究の展開を生み出している。



例えば、遺伝子を導入したトランスジェニック動物や胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)を用いたジ-ンターゲッティングにより作製したノックアウト動物により、哺乳動物の遺伝子の機能解析が進んでいる。また、哺乳動物の遺伝子の機能解析により、その遺伝子と他の遺伝子の相互作用の解明も行われ、それらの関連から発生する疾病の機序解明に重要な役割を果たしている。また、最近では体細胞を用いた核移植の技術により、ヒツジ(Nature,385:810-813,1997)やウシ(Science,280:1256-1258,1998)の体細胞クローン動物の作製に成功しており、これをヒツジのような家畜のトランスジェニック動物の作製に応用してトランスジェニックヒツジが作出されている(Science,278:2130-2133,1997)。



これまでに作製されたトランスジェニック動物は多岐に渡っており、例えば種々のサイトカイン遺伝子を組込んだトランスジェニック動物について見てみても、ヒトIL-2を発現し、脱毛症や肺炎を高率に発症するトランスジェニックマウス(Int. Immunol. 1:113-120,1989)や、骨組織における骨芽細胞、破骨細胞の活性低下に伴う骨粗鬆症を起こすヒトIL-4を持つトランスジェニックマウス(Cell,62:457-467,1990; Eur. J.Immunol. 22:1179-1184,1992; Proc. Natl. Acad. Sci. USA,90:11618-11622,1993)や、自己免疫疾患や形質細胞腫を引き起こすヒトIL-6導入トランスジェニックマウス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:7547-7551,1989; Proc. Natl. Acad. Sci. USA,89:232-235,1992)や、各々リンパ腫、好中球の移動障害及び眼房内へのマクロフアージ集積による白内障等を引き起こすヒトIL-7、ヒトIL-8及びヒトGM-CSFを過剰発現するトランスジェニックマウス(J. Exp. Med. 177:305-316,1993; J. Clin. Invest. 94:1310-1319,1994; Cell 51:675-686,1987)等多くのものが、報告されている。



また、外来遺伝子を導入したトランスジェニック動物を作製することにより、各種の有用な物質を生産する例もある。例えば、ヒツジ胎仔線維芽細胞にヒト血液凝固第IX因子遺伝子を導入し、その細胞核をドナー核として核移植を行い、トランスジェニックヒツジを作製した報告(Science 278:2130-2133,1997)、或いは、ヒツジ乳汁中へのα1-アンチトリプシンの生産を行った報告(Bio/Technology 9:830-834,1991)、ブタ乳汁中へのヒトプロテインCの生産を行った報告(WO 94/05796)、ヤギ乳汁中へのヒト t-PAの生産を行った報告(Bio/Technology 12:699-702,1994)等、トランスジェニック動物を作製して、動物の乳汁中へ有用物質を生産することに関する報告だけでも多数のものがある。その他、胚性幹細胞(ES細胞)を用いたジ-ンターゲッティングにより特定の遺伝子をノックアウトして作出した(Molecular Medicine 34,1997)各種のノックアウト動物の報告もなされている。このように現在、種々の目的からトランスジェニック動物が作製されており、遺伝子やそれに関連する疾病の機構の解明やそれを利用した薬剤のスクリーニング、或いは家畜等の動物自体の改良への利用等がなされている。



現在、トランスジェニック動物を作製するために用いられている遺伝子の導入方法としては、一般的には、受精卵の前核内に目的遺伝子をマイクロインジェクションで直接的に導入する方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:7380-7384, 1980)、或いは、胚性幹細胞(ES細胞)に目的遺伝子を導入し、キメラ動物を介して次世代の動物に導入する方法(Science, 244:1288-1292, 1989)が用いられている。



更に、最近ではクローン動物作製技術が確立されたことにより、体細胞を用いた遺伝子導入技術を合体させトランスジェニック動物を作製する方法も用いられている。トランスジェニック動物の作製において、目的とする外来遺伝子を組込んだ卵は形質転換卵と呼ばれ、この形質転換卵を偽妊娠させたレシピエント(受容雌)の生殖器道(卵管又は子宮)に移植することにより、成長させることができる。得られた成体のトランスジェニック動物は、外来性遺伝子を自らの染色体に組込んでおり、プロモーター等の適当な調節遺伝子の影響下で外来性遺伝子を発現することができる。こうして取り込まれた外来性遺伝子は、トランスジーン(Transgene)と呼ばれている。トランスジーンは、細胞への遺伝子導入に際して、適切なプロモーター領域の選択等、種々の調節遺伝子を選択して構築される。トランスジェニック動物の染色体内に組込まれたトランスジーンは、その発現によって、該遺伝子がコードするタンパク質をトランスジェニック動物内に生産する。



トランスジェニック動物の作製に際して、トランスジェニック動物がトランスジーンを自らの染色体に取り込んでいるかどうかは、一般的にはPCR法やサザンブロット法等の解析により確認される。この取り込みが確認された場合、更に、in vivoにおける遺伝子発現解析、例えば、ノーザンブロット法や免疫抗体法等による解析が行われる。一方、トランスジェニック動物の作製において、遺伝子プロモーター活性の検定、遺伝子発現程度の確認、遺伝子発現部位及び発育ステージの同定に、レポーター遺伝子が用いられる。レポーター遺伝子としては、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等が用いられる。これらのレポーター遺伝子を標識として、トランスジェニック動物の作製における、遺伝子の取り込み状況、その発現の状況の確認や、遺伝子導入胚の選別等が行われる。



近年、トランスジェニック動物の作製に関する技術として、作出されたトランスジェニック動物の胚や胎児の性の判別や、該判別方法を雌雄の分離等に利用する技術が開示されている。特開平8-154685号公報には、マウス及びウシの性決定遺伝子Sry関連DNAの塩基配列を解明し、これを性判別、種同定又はキメラ細胞のキメリズムの決定、或いは染色体のマーカーとして利用することが開示されている。特開平8-256778号公報には、ウシの雄特異的DNA断片、或いは雌雄共通の繰り返し配列等をマーカーとして、種の同定、核と細胞質の別、性染色体と常染色体の別、及び性染色体であればX染色体とY染色体の別等の同定や特定を行う方法が開示されている。また、特表2001-509381号公報には、ウマのY染色体に特異的なDNA配列をプローブとして、ウマ、ウマ胎児、ウマの胚、ウマ細胞の性を決定する方法について開示されている。これらはいずれも、動物の性染色体の特異塩基配列を検知して、動物の胎児や胚の性を決定する方法が採られており、その判定が複雑になっている。したがって、トランスジェニック動物の作製過程等において、逐次、作製された胚や胎児等の性の判別に用いる技術としては不便な点があった。



更に最近、動物の雌雄判別の方法として、Nagyらにより、トランスポーター遺伝子のような標識遺伝子を用いて雌雄の判別を行う方法が報告されている(Nat. Genet. 19:220-222,1998)。この方法は、緑色蛍光タンパク質(green fluorescence protein:GFP)を利用した方法であり、非侵襲的(non-invasive)な雌雄判別が可能な方法である。この雌雄の判別方法は、GFPで標識化したXGFPYのオスと野生型のXXのメスのマウスを掛け合わせることにより、子供はXGFPXのメスとXYのオスに別れ、雌雄判別が可能となるものである。しかし、この方法の場合、メスはX染色体の不活化が生じ、同じXGFPXでも緑色蛍光を発する場合と発しない場合があり、発した場合は必ずメスであるが、発しない場合はオスかメスかの判別ができないという不確実性の問題が生じる。



一方、極く最近に、トランスジェニック動物の作出に関連して、Jaenischらによって、遺伝子破壊胚性幹細胞(ES細胞)からノックアウトマウスを作製する迅速な方法が報告された(Nat. Biotech. 20:455-459, 2002)。この方法は、40,XY ES細胞から遺伝子破壊ES細胞を作成し、このES細胞からY染色体の不安定性を用いて39,XO ES細胞を単離する。それぞれのES細胞からオスとメスのヘテロ接合体マウスを直接作成することが可能となり、次世代でノックアウトマウスのホモ接合体を作成することが可能である。この方法を行うためには、遺伝子破壊40,XY ES細胞から先ずオスのマウスを作成し、そのマウスを親としてオスとメスのヘテロ接合体マウスを作成する。Jaenischらは、このノックアウトマウスを作製する方法の報告において、39,XO ES細胞を選別する方法として、約200コロニーのES細胞からDNAを抽出し、Southern Blot法を用いたことを報告しているように、この方法は、細胞数が多く必要であり、煩雑で時間がかかるという問題を有している。



上記のように、昨今、各種の目的から、多岐に渡りトランスジェニック動物の作出が行われ、その開発の重要性が高まる中で、そのトランスジェニック動物の作出方法や作出過程の判別方法、更にはそれらの利用において、より確実で、容易な技術の更なる開発が望まれているところである。



【特許文献1】
特開平8-154685号公報。
【特許文献2】
特開平8-256778号公報。
【特許文献3】
特開2001-509381号公報。
【特許文献4】
WO 94/05796。
【非特許文献1】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:7380-7384,1980。
【非特許文献2】
Nature,385:810-813,1997。
【非特許文献3】
Science,280:1256-1258,1998。
【非特許文献4】
Science,278:2130-2133,1997。
【非特許文献5】
Int. Immunol. 1:113-120,1989。
【非特許文献6】
Cell, 62:457-467,1990。
【非特許文献7】
Eur. J.Immunol. 22:1179-1184,1992。
【非特許文献8】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:11618-11622, 1993。
【非特許文献9】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:7547-7551, 1989。
【非特許文献10】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:232-235, 1992。
【非特許文献11】
J. Exp. Med. 177:305-316, 1993。
【非特許文献12】
J. Clin. Invest. 94:1310-1319, 1994。
【非特許文献13】
Cell 51:675-686, 1987。
【非特許文献14】
Bio/Technology 9:830-834, 1991。
【非特許文献15】
Bio/Technology 12:699-702, 1994。
【非特許文献16】
Molecular Medicine 34, 1997。
【非特許文献18】
Science, 244:1288-1292, 1989。
【非特許文献19】
Nat. Genet. 19:220-222, 1998。
【非特許文献20】
Nat. Biotech. 20:455-459, 2002。

産業上の利用分野


本発明は、Y染色体上に標識タンパク質の遺伝子を局在させたトランスジェニック非ヒト動物、そのES細胞、その作出方法、及び該Y染色体上に局在させた標識タンパク質の遺伝子を用いたトランスジェニック非ヒト動物の雌雄判別方法、該Y染色体上に局在させた標識タンパク質の遺伝子を用いた遺伝子ノックアウト非ヒト動物或いはトランスジェニック非ヒト動物の作出方法、及び該Y染色体上に局在させた標識タンパク質の遺伝子を用いたキメラ非ヒト動物の由来判別方法等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
サイトメガロウィルスエンハンサー及びチキンベーターアクチンプロモーターのDNA配列の下流に、標識タンパク質の遺伝子を連結したトランスジーンを構築し、該トランスジーンを、非ヒト動物の受精卵の前核に導入し、発生させ、トランスジェニック非ヒト動物の胚盤胞からY染色体上に標識タンパク質の遺伝子が局在したトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞を樹立し、該トランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞を継代培養し、該標識タンパク質の標識をマーカーに、Y染色体が特異的に脱落したクローンを単離することを特徴とするY染色体が特異的に脱落したトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞の取得方法。

【請求項2】
標識タンパク質が、緑色蛍光タンパク質であることを特徴とする請求項1記載のY染色体が特異的に脱落したトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞の取得方法。

【請求項3】
Y染色体が標識された胚性幹細胞を用いて特定遺伝子をノックアウトした胚性幹細胞を作成し、該胚性幹細胞を継代培養し、該標識タンパク質の標識をマーカーに、Y染色体が特異的に脱落したクローンを単離することにより、Y染色体が特異的に脱落したトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞を取得し、該Y染色体が特異的に脱落し、特定遺伝子がノックアウトされたトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞と、Y染色体を保持し、特定遺伝子がノックアウトされたトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞とを用い、ホモ接合体を作製することを特徴とする遺伝子ノックアウト非ヒト動物の作出方法。

【請求項4】
Y染色体が標識された胚性幹細胞を用いて特定遺伝子を導入した胚性幹細胞を作成し、該胚性幹細胞を継代培養し、該標識タンパク質の標識をマーカーに、Y染色体が特異的に脱落したクローンを単離することにより、Y染色体が特異的に脱落したトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞を取得し、該Y染色体が特異的に脱落し、特定遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞と、Y染色体を保持し、特定遺伝子が導入されたトランスジェニック非ヒト動物の胚性幹細胞とを用い、ホモ接合体を作製することを特徴とする遺伝子トランスジェニック非ヒト動物の作出方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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