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酵母の形質転換方法

国内特許コード P05A007429
整理番号 140
掲載日 2005年8月12日
出願番号 特願2002-054965
公開番号 特開2003-250542
登録番号 特許第3682530号
出願日 平成14年2月28日(2002.2.28)
公開日 平成15年9月9日(2003.9.9)
登録日 平成17年6月3日(2005.6.3)
発明者
  • 村田 幸作
  • 橋本 渉
  • 河井 重幸
  • 葉山 善幸
  • 福田 泰樹
出願人
  • 国立大学法人京都大学
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 酵母の形質転換方法
発明の概要 【課題】 簡便で、時間を要さず、且つ高効率の酵母の形質転換方法を提供すること。
【解決手段】 (1)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子およびポリエチレングリコールを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法、(2)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子およびグルタチオンを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法、並びに(3)対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子および酵母細胞成分を含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法。
従来技術、競合技術の概要



【従来の技術】

現在、バイオテクノロジーは、全ての生物の遺伝子を操作することを可能にしている。また、コンピューターサイエンスやバイオインフォーマティクス(生物情報学)は、多くの生物の全ゲノム構造の決定と遺伝子の機能解析を加速している。その結果、細胞を構成するタンパク質の機能、構造、並びにタンパク質間相互作用の網羅的解析を基軸とするプロテオミクスの格段の進歩が求められている。そのためには、正確な遺伝的背景とその制御が可能な大腸菌や枯草菌などの原核微生物、或いは酵母やカビなどの真核微生物での遺伝子発現によるタンパク質の構造・機能相関解析が不可欠であり、それを可能にする形質転換法(細胞に遺伝子を導入する方法論)の確立も極めて重要となる。





酵母は、単細胞でありながら真核細胞のモデルとして生物学的に重要な位置にあり、多くの生物の遺伝子発現系として多用されている。サッカロミセス属酵母、就中サッカロミセス セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、清酒、パン、ビールなどの発酵食品の製造に重要であり、その諸性質の改良を目的とした分子育種が盛んに行われている。しかし、酵母細胞は極めて強固な細胞壁を有しているため、酵母への遺伝子導入は、原核細胞への遺伝子導入ほどには容易ではない。





現在、酵母への遺伝子導入法として、(1)プロトプラスト法、(2)金属処理法、(3)エレクトロポレーションが知られている。以下、各方法とその問題について説明する。





(1)プロトプラスト法

1978年に酵母の細胞壁を適当な細胞壁溶解酵素で除去して生成するプロトプラストに、ポリエチレングリコールとカルシウム存在下で遺伝子を導入する方法が開発された(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75: 1929 (1978))。このプロトプラスト法は、その後5年間に渉って酵母の形質転換に多用されてきたが、本法は多くの問題点を有していた。特に、裸の細胞であるプロトプラストが不安定で取扱操作が容易でないこと、形質転換頻度が低いこと、プロトプラスト融合などで目的以外の細胞が生成すること、またプロトプラストの再生のために寒天培地中に埋め込む操作が煩雑で、且つその再生に多大な時間を要することが大きな欠点であった。





(2)金属処理法

1983年には、プロトプラスト法に代わる新たな方法が開発された(J. Bacteriol., 153: 163 (1983))。これは、酵母細胞をリチウム、セシウム、ルビジウムなどのアルカリ一価カチオンで処理することによって、酵母細胞にコンピテント能(遺伝子取り込み能力)を賦与し、ポリエチレングリコール存在下で酵母細胞に遺伝子を取り込ませる方法である(以下、アルカリ一価カチオン処理法ともいう)。これにより、酵母細胞の形質転換は大腸菌並に簡便化された。つまり、プロトプラストの調製と再生に必要な、煩雑で時間の掛かる操作が省かれ、上記の諸問題が改善された。また、アルカリ一価カチオンで処理する代わりに2-メルカプトエタノールのようなスルフヒドリル基(SH基)含有化合物で処理する変法も開発された(Agric. Biol, Chem., 48: 341 (1984))。





これらの化学物質処理細胞、就中、リチウム処理細胞を用いる形質転換法は、プロトプラスト法に付随していた多くの問題点を一挙に解決したものであり、現在、世界中で酵母の研究に採用されている、しかし、これらの化学物質処理細胞を用いる形質転換法も解決すべき問題点を有している。それは、高い形質転換頻度を得るために、大半の酵母細胞が死滅するほどの過度なアルカリ一価カチオン処理が要求されること、並びに操作回数が多く、形質転換操作に長時間を要することなどである。





(3)エレクトロポレーション

プロトプラスト法やアルカリ一価カチオン処理法以外に、プロトプラストに遺伝子を導入するエレクトロポレーション法(Nature, 319: 791 (1986))やエレクトロインジェクション法(Virology, 52: 456 (1973))なども考案されたが、低い形質転換頻度や操作性、装置の問題など解決すべき問題点を有している。





一方、ある種の細菌は、化学的・物理的処理をすることなく、DNA(遺伝子)を細胞内に取り込む能力を有する(この現象を自然形質転換という)。この自然形質転換は、Bacillus subtilis, Haemophilus influenzae, Acinetobacter calcoaceticus, Pseudomonas stutzeriなど数種の限られた細菌で確認されている。その現象論、生態学的、進化学的側面については、分子生物学の手段で解析され、DNA取り込み機構に関しても基本的なモデルが提出されている。自然形質転換は、自然界において細胞がDNA取り込み能を獲得(コンピテント化)し、自らの形質を転換させる現象を指す。すなわち、自然形質転換は、カルシウム処理による大腸菌のDNA取り込み能の付与(J. Mol. Biol., 166: 557-580 (1983); Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989))やアルカリ一価カチオン処理による酵母のDNA取り込み能の付与など、人為的なコンピテント化とは基本的に異なり、細胞増殖過程の特定時期(主に、対数増殖期)に自らその能力を発現する極めて生理的な現象である。自然形質転換は、DNAの垂直・水平伝達を許容し、微生物進化の原動力になってきたと考えられる。実際、土壌中には相当量の裸のDNAが存在することが確認されており、それらが自然形質転換に利用されている可能性がある。





しかし、この自然形質転換は細菌において確認されている現象であり、真核微生物である酵母においては全く知られていなかった。

産業上の利用分野



【発明の属する技術分野】

本発明は、酵母に、遺伝子を簡便、高効率、且つ短時間に導入する新たな形質転換法に関する。本発明は、酵母が遺伝子を細胞内に取り込む能力(自然形質転換能)を有していることを新たに見出したことに基づくものである。なお、本発明は、バイオテクノロジーの根幹に関わる新技術を提示するものであり、そのため、バイオテクノロジー一般のみならず、微生物の遺伝学、生化学、生態学、進化学にも大きな影響を持つと考えられる。

特許請求の範囲 【請求項1】 対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子、ポリエチレングリコール、および酸化型グルタチオンを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする酵母の形質転換方法。
【請求項2】 前記維持後の溶液に、ヒートパルス処理もしくはpHジャンプ処理を行う工程を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の酵母の形質転換方法。
【請求項3】 前記遺伝子が、環状プラスミドに組み込まれた形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の酵母の形質転換方法。
【請求項4】 前記遺伝子が、線状化されたプラスミドに組み込まれた形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の酵母の形質転換方法。
【請求項5】 対数増殖期の酵母細胞を、該酵母細胞に導入する遺伝子、ポリエチレングリコール、および酸化型グルタチオンを含有する溶液中で維持する工程を具備することを特徴とする形質転換酵母の調製方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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