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病原体感染初期に誘導されるイネペルオキシダーゼ遺伝子

国内特許コード P05A007494
整理番号 植物バイオー177
掲載日 2005年9月21日
出願番号 特願2003-185982
公開番号 特開2005-013165
登録番号 特許第4366496号
出願日 平成15年6月27日(2003.6.27)
公開日 平成17年1月20日(2005.1.20)
登録日 平成21年9月4日(2009.9.4)
発明者
  • 大橋 祐子
  • 佐々木 克友
  • 佐々木 卓治
  • 光原 一朗
  • 瀬尾 茂美
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 病原体感染初期に誘導されるイネペルオキシダーゼ遺伝子
発明の概要 【課題】種々のペルオキシダーゼ(POX)の発現特異性を解明し、およびそれらの発現特異性を利用して植物に改変を施すための手段を提供すること。本発明のペルオキシダーゼ遺伝子の特異的発現を利用し、POXプロモーターに作動可能に連結した外来遺伝子を発現させることにより、病原体に対する抵抗性を植物体に付与すること。また、病原体感染を早期に発見すること。
【解決手段】特定のヌクレオチド配列を有するPOXプロモーター、またはその誘導体または改変体を含む核酸分子、このPOXプロモーターを利用したトランスジェニック植物の作出方法、この方法の利用によって得られた植物細胞、組織、植物体および種子。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


ペルオキシダーゼ(EC.1.11.1.7)(本明細書中で「POX」ともいう)は、一般に種々の基質の過酸化水素による酸化反応を触媒する酵素であって、微生物から動植物までに広く存在する。ペルオキシダーゼは、種々のアイソザイムおよびアイソフォームの形態からなるスーパーファミリーを構成し、現在では、その反応特異性および構造により、クラスI、クラスIIおよびクラスIIIに分類されている(Welinder、非特許文献1)。クラスIは、原核生物ペルオキシダーゼとも呼ばれ、酵母ミトコンドリアシトクロームcPOX、葉緑体アスコルビン酸POX、細胞質ゾルアスコルビン酸POXおよび遺伝子二重細菌POXなどが含まれる。クラスIIは、分泌型真菌ペルオキシダーゼとも呼ばれ、代表的にはP.chrysosporiumマンガン依存性POX(PCM)、およびリグニナーゼなどが含まれる。クラスIIIは、古典的分泌型植物ペルオキシダーゼとも呼ばれ、代表的には西洋ワサビPOXなどが含まれる。クラスIII植物POXは、植物において普遍的に見い出されており、さらに複数のアイソフォームが同一植物から見い出されている(非特許文献1)。



クラスIII植物ペルオキシダーゼ(POX)は、植物における種々の生理的過程(例えば、木化(Whettenら、(非特許文献2))、コルク化(Espelieら、(非特許文献3))、細胞壁タンパク質の架橋(Fryら(非特許文献4))、オーキシン分解および植物ホルモンであるインドール酢酸(IAA)の酸化(Hinmanら(非特許文献5))、病原体からの防御(Chittoorら(非特許文献6))、塩耐性(Amayaら(非特許文献7))、老化(Abelesら(非特許文献8))、植物の発生、分化および生長(Hortonら(非特許文献9))など)に寄与することが示唆されており、植物の生長および病傷害ストレス応答などにおいて重要な役割を担っていると考えられている。ペルオキシダーゼが単一の植物中に複数存在すること、および基質特異性が広いことなどから、個々のペルオキシダーゼの特異的な生理的機能を特定することは未だ困難である。



植物のPOX遺伝子については、例えば、アルファルファ、トマトおよびコムギから、それぞれ7以上のPOX遺伝子が単離され、そして同定されている(Chittorら(1999)、非特許文献6)。Chittoorらは、イネから相同性の高い3つのcDNAおよびゲノムDNAフラグメントを単離し、そしてこの3つのPOXがイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzaepv.oryzae)による感染の際に異なる誘導を受けることを示した(Chitoorら(1997)、非特許文献10)。Itoらは、イネの地上部組織にタンパク質レベルで25のPOXが存在することを示し、そのうち4種を精製して、N末端アミノ酸配列とそれぞれに対する抗体の反応性とから、これらが2組のアイソフォームであることを推定した(Itoら、非特許文献11)。Itoらは、2つの構造的に関連するPOXをコードするcDNA(prxRPAおよびprxRPN)を単離したが、この2つの遺伝子は、同一ではないが類似する発現パターンを示した。(Itoら、非特許文献12)。タバコにおいて、12のPOXアイソザイムが、等電点電気泳動後の活性染色によって検出され、そして、これらのアイソザイムが器官特異性および傷害またはTMV感染に対する応答性が異なることが示された。これらのタバコPOXについての観察から、個々のPOX遺伝子の発現が異なって調節されることが示唆された(Langriminiら、非特許文献13)。



このように、発現特異性について従来研究されたPOXアイソザイムの数は限定されており、数十あると予測されるPOXの発現動向について概括的な解析はなされておらず、また従来の知見からではそのような解析は困難であった。



ペルオキシダーゼ(POX)は、過酸化水素に代表される活性酸素種の除去において役割を有することが知られている。一般に、植物などの細胞中の活性酸素種(スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素など)の濃度が上昇した状態は、酸化ストレス(oxidative stress)と呼ばれる。これは、過酸化状態、紫外線および放射線、チトクロームの電子伝達系の異常、ペルオキシゾーム異常増加、高温・低温・化学物質等の非生物的作因、オゾンおよび二酸化硫黄のような大気汚染物質等が引き起こす酸化状態と、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、POX、ビタミンE、CおよびA等の作用による、細胞内の抗酸化剤防御機構とのバランスが崩れたときに起きる。



真核生物では、酸化ストレスに曝されるとSODなどの活性が高まることが以前から知られている。あらかじめSODなどを誘導しておくことにより、細胞が酸化ストレスに対して若干の抵抗性を示す例も観察されている。



植物においても、酸化ストレスの発生について、次のことが知られている。(1)光合成を妨げる様々な条件(光照射下の低温、除草剤処理など)によって、光合成反応経路等に起因する活性酸素種が、異常に発生し得る。(2)暗所でも、植物が低温に曝されると過酸化水素等の活性酸素種の濃度が上昇し得る。(3)除草剤(パラコート(商品名)(1,1-ジメチル-4,4-ジピリジニウムジクロリド)等)および紫外線も、その作用機構に活性酸素種が関わっている。そして、(4)乾燥ストレスや重金属なども、酸化ストレスを引き起こすと考えられている。



近年、酸化ストレスを含む環境ストレスが植物を含む生物の生体に与える影響が注目されている。近代の工業化による地球環境の悪化が深刻な社会問題になっており、植物においても環境ストレス耐性を向上させるための研究が行われている。POXのような抗酸化酵素は、種々の環境ストレスによって生体中に過多に発生する活性酸素を除去するのに有効な、環境ストレス耐性(生体防御)因子であると考えられている。しかし、POXについては、アイソザイムの多様性および広範な基質特異性などの点から、環境ストレス耐性における役割は充分に解明されていない。従って、現段階では環境ストレス耐性植物を作製するための材料とすることは困難である。



クラスIII POXについては、病原菌の感染のような生物的刺激に対しての役割も示唆されている。大橋ら(非特許文献14)においては、タバコPOXについて、タバコモザイクウイルス(TMV)感染による局部病斑形成とPOXとの関連が研究され、TMVによる壊死病斑形成の過程でPOXがポリフェノールの酸化という形で機能していることが示唆された。従って、POXは、病原体の感染に対して植物に防御機能を付与することにおいても重要な役割を果たし得ることが示唆される。



従って、ストレス耐性植物を含む有用植物の、遺伝子工学的手法による作出という観点から、POX遺伝子の発現特性についての詳細な知見の蓄積が所望されている。



最近、イネを含む多くの植物において、大規模な発現配列タグ(EST)配列決定プログラムが進行中である。イネ(Yamamotoら、(非特許文献15))およびシロイヌナズナ(Oestergaardら(非特許文献16))からも、それぞれ42および41の異なるPOX遺伝子の存在が確認された。しかし、これらのEST配列は、遺伝子の部分配列情報を提供するのみである。これらの遺伝子の機能については簡単に分析したものが報告されているが、詳細に機能分析をした報告はまだない。



【特許文献1】
再公表WO02/042745号
【非特許文献1】
Welinder K.G.ら(1992)、Curr.Opin.Struct.Biol.,2:388
【非特許文献2】
Whetten R.ら(1995)、Plant Cell 7,1001-1013)
【非特許文献3】
Espelie K.E.ら(1986)、Plant Physiol.81,487-492
【非特許文献4】
Fry S.C.(1986)、Ann.Rev.Plant.Physiol.37、165-186)
【非特許文献5】
Hinman R.L.ら(1965)、Biochemistry 4、144-158
【非特許文献6】
Chittoor J.M.ら(1999)、Pathogenesis-Related Proteins in Plants (DattaおよびMuthukrishnan編) 171-193、CRC Press、Boca Raton
【非特許文献7】
Amaya I.ら(1999)、FEBS Lett.457、80-84
【非特許文献8】
Abeles F.B.ら(1988)、Plant Physiol.87.609-615
【非特許文献9】
Horton R.F.ら(1993)、J.Plant Physiol.141:690
【非特許文献10】
Chitoor J.M.ら(1997)、Mol.Plant-Microbe Interact.7:861-867
【非特許文献11】
Ito H.ら(1991)、Agric.Biol.Chem.55:2445-2454
【非特許文献12】
Ito H.ら(1994)、Plant Cell Rep.13:361-366
【非特許文献13】
Langrimini L.M.ら(1987)、Plant Physiol.84:438-442
【非特許文献14】
大橋(Oohashi Y.)(1975)、名古屋大学大学院農学研究科農芸化学専攻、博士論文
【非特許文献15】
Yamamoto K.ら(1997)、Plant Mol.Biol.35:135-144
【非特許文献16】
Oestergaard L.ら(1998)、FEBS Lett.433:98-102

産業上の利用分野


本発明は、特異的な発現を促進する、植物のペルオキシダーゼ遺伝子のプロモーター活性を含む核酸分子(本明細書中以降、POXプロモーター)に関する。より詳細には、本発明は、このPOXプロモーターを利用したトランスジェニック植物の作出方法、この方法の利用によって得られた植物細胞、組織、植物体および種子に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】トランスジェニック植物の作出方法であって、該方法は以下の工程:
(1)配列番号16に記載のプロモーターに作動可能に連結された外来遺伝子をコードするヌクレオチド配列を植物細胞に導入する工程;および
(2)得られた植物細胞を再分化して、トランスジェニック植物を作出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】配列番号16に記載のプロモーターの、外来遺伝子の根特異的発現および/またはストレス誘導性発現のための使用。
【請求項3】前記ストレス誘導性発現は、病原体誘導性発現、傷害誘導性発現、およびプロベナゾール誘導性発現からなる群より選択される少なくとも1つの発現を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】配列番号16に記載されるプロモーター、および植物細胞において該プロモーターに作動可能に連結されるべき外来遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含む、根特異的発現および/またはストレス誘導性発現のための組成物。
【請求項5】前記ストレス誘導性発現は、病原体誘導性発現、傷害誘導性発現およびプロベナゾール誘導性発現からなる群より選択される少なくとも1つの発現を含む、請求項4に記載の組成物。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 登録


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