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酵母変異体およびその利用 新技術説明会

国内特許コード P05P002815
掲載日 2005年10月14日
出願番号 特願2004-081318
公開番号 特開2005-261361
登録番号 特許第4487066号
出願日 平成16年3月19日(2004.3.19)
公開日 平成17年9月29日(2005.9.29)
登録日 平成22年4月9日(2010.4.9)
発明者
  • 宮川 都吉
  • 水沼 正樹
  • 平田 大
出願人
  • 国立大学法人広島大学
発明の名称 酵母変異体およびその利用 新技術説明会
発明の概要

【課題】 肝臓疾患・うつ病治療・骨関節症・がん治療等の各種疾患治療薬剤として有効なS‐アデノシルメチオニンを大量生産し得る酵母変異体、およびその利用方法を提供する。
【解決手段】 本発明の酵母変異体は、メチオニン代謝系酵素、特にS‐アデノシル‐L‐ホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子に変異がある。その結果、メチオニン代謝系に異常が生じ細胞内にS‐アデノシルメチオニンを大量に蓄積する。当該酵母変異体を培養することによって、S‐アデノシルメチオニンを大量に生産することが可能となる。また当該酵母変異体は、37℃において細胞周期がG1期で停止するという特徴を有していた。それゆえ当該酵母変異体は、S‐アデノシルメチオニンの生体内機能の解析に利用することができる。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


近年、脂肪肝、繊維症、肝硬変、肝細胞腫瘍などの症状となって表れるアルコール性肝臓疾患(ALD)は、世界的に主要な病気および死亡の原因となっている。現在、このようなアルコール性肝臓疾患とS‐アデノシルメチオニン(S-adenosylmethionine、以下AdoMetとする)との関係が注目されている。



AdoMetは、生体組織全体に存在し、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質、および、タンパク質の合成および代謝におけるメチル基供与体、または、酵素活性化因子として数多くの生物反応に関与する生理学的化合物である。AdoMetは、メチル基転移、硫黄基転移、および、アミノプロピル基転移の3つの代謝経路により代謝される。



以下に、AdoMetと、肝臓疾患およびその他病気との関連について説明する。



まず、AdoMetと肝臓疾患との関連について説明する。AdoMetは、様々な肝臓疾患に対して、治療効果があることが見出されている。例えば、非特許文献1では、ヒヒを用いた研究において、エタノールにより引き起こされた肝臓障害が、AdoMetの投与により緩和されたことが記載されている。また、非特許文献2では、AdoMetの投与により、肝硬変患者(人)の死亡率が、有意に減少したことが記載されている。また、非特許文献3には、AdoMetの投与が、4塩化炭素やacetaminophen等の肝細胞毒素(hepatotoxins)により引き起こされるラットの肝障害を、軽減させることが記載されている。



また、AdoMetは、様々な脳内神経伝達物質の生成に関与していることが知られている。それゆえ、うつ病等の治療において優位な治療効果を奏する。例えば、非特許文献4には、うつ病患者に対する、AdoMetの投与の効果が記載されている。うつ病患者に対して、200~1600mg/dのAdoMetの非経口および経口投与の効果は、従来の抗うつ剤のプラシーボよりも有意に勝り、tricyclic系抗うつ剤と同様であった。さらに、AdoMetの投与は、従来の抗うつ剤よりも効き始める時間が早く、tricyclic系抗うつ剤による効果を相乗的に高める。また、AdoMetは長期使用においては、治療効果の減少が少なく、副作用が少ない。しかしながら、躁鬱病患者において、躁病発生のケースがいくつか報告されている。



また、AdoMetは、骨関節症に対しても、有意な治療効果を奏する。例えば、非特許文献5には、AdoMetの骨関節症に対する治療効果を、プラシーボおよび非ステロイド系抗炎症剤と、痛みの軽減効果、機能回復、副作用で比較検討した結果が記載されている。その結果、AdoMetは、痛みの軽減、および、機能回復において、非ステロイド系抗炎症剤と同程度の治療効果を奏していた。また、AdoMetは、非ステロイド系抗炎症剤にしばしば見られる副作用が見られなかった。



また、AdoMetは、AdoMetは、細胞内での低メチル化の防御に関与していることが知られている。がん細胞では、染色体上のDNAの低メチル化部位と、高メチル化部位とが普遍的にみられている。この染色体上の低メチル化部位は、がん細胞のhallmarkとされている。すなわち、細胞内でのAdoMet濃度の上昇は、DNAメチルトランスフェラーゼの反応を刺激する。そして、このDNAメチルトランスフェラーゼが、染色体上のDNAの高メチル化を行なうことで、染色体を低メチル化から防御していると考えられている。



例えば、非特許文献5には、脱メチル化活性試験を行なった結果が記載されている。脱メチル化活性試験では、HEK293細胞にCMV‐GFPプラスミドを導入することで、このプラスミドの脱メチル化を、検出している。上記CMV‐GFPプラスミド上のCMV‐GFPの発現は、当該CMV‐GFPの脱メチル化が起きることで行なわれる。それゆえ、上記非特許文献5では、AdoMet、または、アデノシルホモシステイン存在下で、NEK293細胞内でのCMV‐GFPの発現を指標に、細胞内の脱メチル化の検出を行なっている。また、AdoMet、または、アデノシルホモシステイン存在下で、試験管内にて脱メチル化酵素(Methylated DNA binding protein 2/DNA demethylase:MBD2/dMTase)への影響も調べている。その結果、アデノシルホモシステインは、脱メチル化酵素の阻害効果を持たない一方、AdoMetは、脱メチル化酵素反応を直接阻害することが示された。また、上記脱メチル化試験からも、AdoMetは、細胞内においても脱メチル化を阻害していることが示された。それゆえ、AdoMetは、細胞内で、脱メチル化酵素反応を直接阻害し、DNAの高メチル化をもたらすことが示された。



また、特許文献1には、抗炎症作用、軟骨保護作用、軟骨調節作用、軟骨安定化作用、軟骨代謝作用を促進することができる組成物として、アミノ糖、グルコサミノグリカン、および、S‐アデノシルメチオニンを含む組成物が開示されている。



また、AdoMetは、メチル基を供与した後、S‐アデノシルホモシステイン(adenocylhomocysteine; 以下AdoHcyとする)になる。そして、AdoHcyは、AdoHcy加水分解酵素によって、アデノシンとホモシステインとに加水分解される。



上記AdoHcy加水分解酵素をコードする遺伝子は、様々な生物種から単離されており、種を超えて非常によく保存されている。例えば、特許文献2には、樹状細胞から単離されたAdoHcy加水分解酵素遺伝子が開示されている。また、特許文献3には、AdoHcy加水分解酵素遺伝子の発現を抑制した生物が開示されている。



上記のように、AdoMetは、様々な疾患に対しての治療効果があることが見出されている。それゆえ、AdoMetの大量生産が期待されている。このようなAdoMetの製造方法としては、例えば特許文献4および5に、酵母を用いたAdoMetの製造方法が開示されている。

【非特許文献1】Lieber CS et al., Hepatology 1990 Feb; 111: 65-72

【非特許文献2】Lieber CS, Annu Rev Nutr.2000;20:395-430

【非特許文献3】Gasso M et al., J Hepatol. 1996 Aug; 25:200-205

【非特許文献4】Soeken KL et al. J Fam. Pract 2002 May, 51:425-430

【非特許文献5】Detich N et. al. J. Biol. Chem 2003 Jun 6. 20812-20820

【特許文献1】特表2002-516866号公報(公表日 平成14年6月11日)

【特許文献2】特表2002-513276号公報(公表日 平成14年5月8日)

【特許文献3】国際公開第WO96/14734号パンフレット(国際公開日 平成8年5月23日)

【特許文献4】特公平4-55677号公報(公告日 平成4年9月4日)

【特許文献5】特公平4-33439号公報(公告日 平成4年4月3日)

産業上の利用分野


本発明は、酵母変異体およびその利用に関するものであり、より詳細には、細胞内で、S‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母変異体およびその利用に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
細胞内でS‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母であって、配列番号4に示されるアミノ酸配列である変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素を有することを特徴とする酵母変異体。

【請求項2】
上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子を有することを特徴とする請求項1に記載の酵母変異体。

【請求項3】
上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする請求項2に記載の酵母変異体。

【請求項4】
上記酵母変異体が、サッカロミセス・セルビシェ(Sacharomyces cerevisiae)FERMP‐19715であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酵母変異体。

【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の酵母変異体を培養することにより、S‐アデノシルメチオニンを生産することを特徴とするS‐アデノシルメチオニンの生産方法。

【請求項6】
アミノ酸配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素。

【請求項7】
請求項6に記載の変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子。

【請求項8】
上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする請求項7に記載の遺伝子。

【請求項9】
請求項7または8に記載の遺伝子を含むことを特徴とする組換え発現ベクター。

【請求項10】
請求項7または8に記載の遺伝子を宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の生産方法。

【請求項11】
請求項10に記載の形質転換体の生産方法によって得られた形質転換体。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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11712_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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