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機械受容(StretchActivated)チャネルの活性化抑制剤 コモンズ

国内特許コード P06P003553
整理番号 NU-0024
掲載日 2006年5月26日
出願番号 特願2004-323916
公開番号 特開2006-131570
登録番号 特許第4654432号
出願日 平成16年11月8日(2004.11.8)
公開日 平成18年5月25日(2006.5.25)
登録日 平成23年1月7日(2011.1.7)
発明者
  • 成瀬 恵治
  • 曽我部 正博
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
発明の名称 機械受容(StretchActivated)チャネルの活性化抑制剤 コモンズ
発明の概要

【課題】 機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化を抑制するペプチドや、SAチャネルの活性化抑制剤や、心臓疾患の治療薬、心臓疾患の判定方法や、SAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】 SAチャネルのSTREX配列のうちLERAFPLで示されるアミノ酸配列からなるSAチャネルの活性化を抑制するペプチド該ペプチドをコードするDNAを調製し、SAチャネルの活性化抑制剤や心臓疾患の治療薬とする。また、ヒトSTREX配列におけるLERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド部分を標的として心臓疾患の判定をする。さらに、インビトロで、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価してSAチャネルの活性化抑制剤をスクリーニングする。

従来技術、競合技術の概要


あらゆる細胞は多様な機械刺激(張力、圧力、ズリ応力など)に対して様々な応答を示すが、その仕組みにはよく分かっていない。その最大の理由は、機械刺激の受容体(センサー)の分子実体や作動原理が不明な点にある。機械受容(Stretch Activated:SA)チャネルは、細胞膜の伸展で活性化されるイオンチャネルの総称であり、1984年に発見された新しい型のイオンチャネル(例えば、非特許文献1参照)で、電位依存性チャネル、受容体型チャネルに次いで第3のグループを作るものと予想されている。ただし広範なイオン選択性と被刺激性(電位、リガンド刺激にも応じるものがある)を併せ持つので、遺伝子レベルでファミリーを構成するとは考えにくい。これ以外に膜伸展で不活性化されるSI(Stretch Inactivated)チャネルや、膜が凹む刺激にのみ応じるPS(Pressure Sensitive)チャネル、あるいはズリ応力で活性化するものもあり、これらはあわせてMS(mechano-sensitive)チャネルあるいはMG(Mechano-gated)チャネルと呼ばれている。



これらのチャネルのうち、現在高次構造が分かっているのは細菌のMscL(閉構造)(例えば、非特許文献2参照)とMscSチャネル(開構造)(例えば、非特許文献3参照)のみであるが、点突然変異体とパッチクランプ法、あるいは分子動力学によるメカノゲーティング機構の詳細な研究が進行中である。細菌のMSチャネルは脂質2重膜上に再構成された状態でも伸展感受性を失わないので、膜伸展で増加する膜張力を直接感じて開口するものと考えられており、張力感知部位の同定も行われている(例えば、非特許文献4参照)(図1)。一方真核生物のMSチャネルとしては、酵母由来のMid1チャネル(例えば、非特許文献5参照)をはじめとして、MEC/DEGファミリーあるいはTRPファミリーに属するチャネルが、MSチャネル候補として数多く報告されている。例えば、線虫の機械受容に関連するMEC/DEGファミリーに属する膜2回貫通型イオンチャネル(例えば、非特許文献6参照)、BNC1(Brain Sodium Channel 1)と皮膚毛包受容器の関連(例えば、非特許文献7参照)、TRPチャネルファミリーに属するNOPMC(no mechanreceptor potential C)とショウジョウバエの機械感覚毛との関連(例えば、非特許文献8参照)、あるいはVR-OAC(vanilloid receptor-related osmotically activated channel)と呼ばれる浸透圧感受性チャネルと皮膚や聴器における機械受容との関連などが指摘されている(例えば、非特許文献9参照)。ごく最近では、ショウジョウバエ聴覚器におけるDm CG5842(TRPVのメンバー)(例えば、非特許文献10参照)、あるいはマウス心筋のTRPV2(例えば、非特許文献11参照)、さらには、マウス痛覚器(高閥値機械受容器)とTRPV4の関連(例えば、非特許文献12参照)など、TRPVサブファミリーとMSチャネルの密接な関連を指摘する報告が増えている。



しかしながら報告されている電気生理学のデータや個人的情報によれば、これらのチャネルの異所的発現効率が良好でないため、まだ詳細な電気生理学的解析に耐えうる状況にはないようである。これまでしばしば指摘されているように、これらのチャネルの膜での発現や機能の発揮には細胞膜裏打ち骨格や骨格関連タンパク質の協力が必要なのかもしれない(例えば、非特許文献13,14参照)。事実TRPV4のCHO細胞での機能的発現量はマイクロフィラメント会合タンパク質MAP7によって著しく増大するという報告がある(例えば、非特許文献15参照)。これらに比較して、高等生物の各種臓器に発現する2P(ポア)ドメインKチャネル(TREK/TRAAKファミリー)(例えば、非特許文献16参照)や本発明者らが最近クローニングした心筋や血管平滑筋に発現するbigKcaチャネル型のSAKCA(例えば、特許文献1、非特許文献17,18参照)は、発現効率が高く安定した伸展感受性を示すので、ほぼ間違いなくMSチャネルであると断言できる。



心臓に対する過度の伸展刺激は自動能の亢進、不整脈・細動の誘発、ANP、BNP分泌亢進、あるいは肥大などの様々な応答を引き起こす。心肥大については、これまでに多くの研究がなされており、PKCの下流でのERKの活性化や、Ca2+流入などの関与が言われてきたが、ごく最近アンジオテンシンIIとは無関係にAT1受容体が機械刺激で活性化され、その下流でERKの活性化が起こることが示された(例えば、非特許文献19参照)。しかし肝心の機械受容体はまだ謎である。一方HansenらはSAチャネルと伸展誘発性不整脈の関係について興味深い結果を報告している(例えば、非特許文献20参照)。彼らはイヌ摘出心室を用いて伸展依存性不整脈を再現性よく誘発できるモデルを調整し、その不整脈がSAチャネルのブロッカーであるガドリニウム(Gd3+)でほぼ完全に抑えられることを示した。彼らはこの結果から、不整脈の発生機序(SAチャネルの活性化による脱分極で説明可能)もGd3+による抑制も、陽イオン選択性のSAチャネルによって統一的に説明できるとしている。確かに心筋細胞には120pSの陽イオン選択性のSAチャネルが報告されている(例えば、非特許文献21参照)。しかしその後、心筋には数種類のカリウム選択性や陰イオン選択性のSAチャネルも見つかっているので(例えば、非特許文献22~24参照)このように単純に割り切れるか否かは慎重な検討が必要である。また後述するように最近発見された蜘蛛毒由来のMSチャネルブロッカーGsMTx-4が伸展誘発性の心房細動に抑制効果があることが報告され注目されている(例えば、非特許文献25参照)。心臓には伸展刺激以外にズリ応力、経壁圧力も負荷されているがその効果については研究が進んでいない。また前述したように岩田ら(例えば、非特許文献11参照)はマウス心筋にMSチャネルとして働くと思われるTRPV2の発現を報告しているが、成体の正常心筋細胞膜での発現やその機能については今後の課題である。心筋と並んで最もよく研究されてきたのは、血管内皮細胞とメカニカルストレスの関係である。内皮細胞には陽イオン選択性のSAチャネル(約35pS)活性が報告されており(例えば、非特許文献26参照)、このチャネルの活性化による細胞内Ca2+濃度の上昇が確認されている(例えば、非特許文献27参照)。拍動による血管の周期的伸展がこのチャネルを活性化して細胞形態のリモデリングや接着力の強化に寄与するという報告がある(例えば、非特許文献28,29参照)。血管平滑筋にも同様なSAチャネルが発現しており、伸展誘発性の収縮に寄与するらしい。血管内皮細胞のSAチャネルの分子実体の解明は多くの研究者が待ち望んでいるがいまだに謎である。また、ズリ応力に応答するKチャネルがずいぶん以前に報告されているが(例えば、非特許文献30参照)、その後目覚しい進展はない。



心臓は体内の中で最も活発に収縮-弛緩を繰り返す臓器で、その機能にはmechano-electric-feedbackが重要なことは以前から指摘されている。ところが肝心の機械センサーについては何も分かっていない。そこで機械センサーとして最も可能性の高いMSチャネルのパッチクランプ法によるスクリーニングが鶏胚から単離した培養心筋細胞を使って行われた(例えば、非特許文献22参照)。その後我々も同様の標本を使って再スクリーニングを行い、1種類の陽イオンチャネルと4種類のKチャネルの計5種類のMSチャネルを同定するとともに、最も観測頻度が高い大きなコンダクタンスのKチャネルがカルシウム依存性BigK(BK)チャネルに一致することを発見した。このチャネルはBKチャネルの特徴である(細胞内)Ca2+依存性と電位依存性に加えて、伸展依存性と細胞内ATP依存性を併せ持っているので当初、SAKca、ATPチャネルと命名した(例えば、非特許文献23参照)。これは心筋における最初のBKチャネルの報告である。BKチャネルはsiolと呼ばれる遺伝子によってコードされるタンパク質であることが分かっているので(例えば、非特許文献31参照)、本発明者らは、BKチャネルに対するdegenerate primersを用いて鶏胚心筋細胞から調製したライブラリーを元にSAKca、ATPチャネルの遺伝子クローニングを試みた。その結果、既知のBKチャネルと非常に高い相同性を持ちC末に59アミノ酸残基から成るSTREX(Stress-Axis-Regulated-Exon)(例えば、非特許文献32参照)と呼ばれる特異的配列が挿入されたsplicing variant(1172残基)の同定に成功し、改めてSAKCAと命名した(Fig.2a)。ここでいうstressは機械的なそれではなく、生理的・心理的ストレスの意味であり、そのようなストレスが負荷されるとこの挿入配列をもつBKチャネルがアップレギュレーションされることが知られている(例えば、非特許文献33参照)。この遺伝子をCHO細胞に一過性に発現すると、心筋細胞と同様の、280pS(140mM K)のコンダクタンスをもつSABKcaチャネルが再現性よく観測された。また、STREX配列に対する抗体を作成し、免疫組織学を行ったところ心筋や血管平滑筋に強い発現が認められた。



BKチャネルは一般的にチャネルの基本特性を総て備えたαサブユニットとそのゲーティング特性を修飾するβサブユニットからなり、我々がクローニングしたのは前者である。両サブユニットの共発現の結果などから、αサブユニットのみで、天然のSAKcaチャネルのほぼ総ての性質を再現できた。ここではαサブユニットのみの結果を紹介する(例えば、非特許文献17参照)。これまでに、幾つかの細胞・組織において伸展刺激依存性のBKチャネルが報告されている。多くの場合、パッチ膜に共存するカルシウム透過性SAチャネルの活性化に伴うカルシウム上昇で間接的にBKチャネルが活性化されるようであるが(例えば、非特許文献34参照)、中には膜伸展が直接活性化するという報告もある(例えば、非特許文献35参照)。一方、数多くの種・細胞からBKチャネル及びそのsplicing variant(STREX挿入も含む)がクローン化されているが(例えば、非特許文献36参照)、伸展感受性と分子構造の関連に関しての報告は全くない。



前記のように、本発明者らは、上記特許文献1において、細胞膜伸展刺激に対して活性化するカルシウム依存性カリウム透過性機械受容(SAKCA)チャネルタンパク質の遺伝子を新規にクローニングし、その発現によって1172個のアミノ酸からなるSAチャネルタンパク質(図1参照)を取得し、このSAKCAチャネルがSTREX配列を含むこと、STREX配列が伸展感受性に重要であることを明らかにしている。




【特許文献1】特開2000-97060号公報

【非特許文献1】J. Physiol. 352, 685-701(1984)

【非特許文献2】Science 282, 2220-2226 (1998)

【非特許文献3】Science 298, 1582-1587 (2002)

【非特許文献4】Biophys. J. 86, 2113-2120 (2004)

【非特許文献5】Science 285, 882-886 (1999)

【非特許文献6】Nature 349, 588-593 (1991)

【非特許文献7】Nature 407, 1007-1011 (2000)

【非特許文献8】Science 287, 2229-2234 (2000)

【非特許文献9】Cell 103, 525-535 (2000)

【非特許文献10】Nature 424, 81-84 (2003)

【非特許文献11】J Cell Biol. 2003, 9; 161 (5) : 957-67

【非特許文献12】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 25, Issue of June 20, pp. 22664-22668 (2003)

【非特許文献13】Biophys J. 59, 722-728 (1991)

【非特許文献14】Proc Natl Acad Sci USA. 93, 6577-6582 (1996)

【非特許文献15】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 51, Issue of December 19, pp. 51448-51453 (2003)

【非特許文献16】Curr. Opin. Cell Biol. 13, 422-428 (2001)

【非特許文献17】J Membr Biol, 196: 185-200 (2003)

【非特許文献18】Biophys. J. 86, A2825 (2004)

【非特許文献19】Nat Cell Biol. 2004 Jun; 6 (6): 499-506

【非特許文献20】Circulation 81, 1094-1105 (1990)

【非特許文献21】Biosci. Rep., 8: 407-414 (1988)

【非特許文献22】Am. J. Physiol. 264 (3 Pt 2): H960-72

【非特許文献23】Am. J. Physiol. 276, H 1827-38 (1999)

【非特許文献24】J. Physiol., 456:285-302 (1992)

【非特許文献25】Nature 409, 35-36 (2001)

【非特許文献26】Nature 325, 811-813 (1987)

【非特許文献27】Am. J. Physiol. 264:C1037-C1044 (1993)

【非特許文献28】Am. J. Physiol. 43: H1532-H1538 (1998)

【非特許文献29】Biochem. Biophys. Res. Com. 239:372-376 (1997)

【非特許文献30】Nature 331: 168-170 (1998)

【非特許文献31】Science 261, 221-224 (1993)

【非特許文献32】J. Biol. Chem. 272, 11710-11717 (1997)

【非特許文献33】Science 280, 443-446 (1998)

【非特許文献34】Am. J. Physiol. 257, F347-F452 (1989)

【非特許文献35】Am. J. Hypertens. 7, 82-89 (1994)

【非特許文献36】J. Neuron 19, 1061-1075 (1997)

産業上の利用分野


本発明は、機械受容(Stretch Activated;SA)チャネルの活性化を抑制するペプチドや、該ペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とするSAチャネルの活性化抑制剤や循環器病疾患の治療薬、前記ペプチドを標的とした循環器病疾患の判定方法、SAチャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなり、機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化を抑制するペプチド。

【請求項2】
請求項1記載のペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合ペプチド。

【請求項3】
LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチド又は該ペプチドをコードするDNAを有効成分とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤。

【請求項4】
インビトロで、LERAFPLに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと被検物質とを接触させ、その結合の程度を測定・評価することを特徴とする機械受容(Stretch Activated)チャネルの活性化抑制剤のスクリーニング方法。
産業区分
  • 有機化合物
  • 薬品
  • 薬品
  • 微生物工業
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 権利存続中
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