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超高速非線形光学素子

国内特許コード P06A009076
整理番号 A241P11
掲載日 2006年6月16日
出願番号 特願2003-073271
公開番号 特開2004-279882
登録番号 特許第3844132号
出願日 平成15年3月18日(2003.3.18)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
登録日 平成18年8月25日(2006.8.25)
発明者
  • 鶴町 徳昭
  • 小森 和弘
出願人
  • 独立行政法人産業技術総合研究所
発明の名称 超高速非線形光学素子
発明の概要

【課題】大きな光学的非線形性と高速応答特性という背反する2つの条件を同時に克服することができる超高速非線形光学素子を提供する。
【解決手段】超高速非線形光学素子において、不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、パルス面積を考慮したパルス列を同軸で入射し、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する。
【選択図】 図2

従来技術、競合技術の概要
光情報処理技術はこれまでの電子技術にはない様々な特徴を持つが、特にその実現により、情報処理速度と情報処理の容量を格段に向上させることが可能となる。まず、情報処理速度に関しては、電子素子による演算において、現在のところ10psの応答速度が実現できているので、1ps程度というのが光演算素子の目標となる。また、光の持つ並列性を利用すれば、電子素子による演算容量をはるかに凌駕する情報処理が可能となる。
【0003】
この光情報処理の分野において、非線形光学効果、とりわけ四光波混合過程は光スイッチ、実時間の画像処理、画像演算、位相共役、光メモリー、光双安定などで重要な役割を果たしている。この光学過程を起こすには大きく分けて2つの方法がある。
【0004】
(1)第1は三次の非線形分極に由来した方法であり、原理的には、原子、分子、有機色素、液晶、半導体など、どのような物質においても起こり得る光学過程である。また、その起源も様々で媒質に非共鳴な場合における光カー効果や、共鳴な場合における吸収飽和効果などがある。
【0005】
(2)第2には光誘起屈折率効果(フォトリフラクティブ効果)が挙げられる。これは三次の非線形分極に由来するものではないが、類似の効果を生み出すもので、近年、その応用が期待される物質である。
【0006】
このような四光波混合過程を利用した光情報処理素子の実現のためには、大きな光学的非線形性と高速緩和を同時に示す媒質が必要となる。しかしながら、これまで知られている物質ではこの条件を満たすものがなく、実現には越えるべきハードルが多いことをうかがわせる。
【0007】
まず、光カー効果においては、数100fsから1ps程度の応答時間が期待できるが、非線形感受率が小さく信号の発生効率は極めて低い。また、吸収飽和効果においては、共鳴を利用するため信号の発生効率は高くなるが、数100ps以上の励起状態の寿命で応答速度や繰り返し速度が決まるため、通常は、1ps程度の高速応答を期待できない。
【0008】
一方、フォトリフラクティブ効果では、10mW/cm2 程度の低強度でも動作が可能であるが、応答速度が極めて遅く、100ms程度である。このように、信号の発生効率と応答時間の間にはトレードオフの関係があり、両者を同時に満たすのは難しいことがこれまでにも指摘されてきた。
【0009】
この問題を解決するためには、いろいろなアプローチが考えられる。
【0010】
まず、物質の側からのアプローチとして、新物質の探索や作製が上げられる。その中で最も有力だと思われるのが、半導体量子ナノ構造の利用である。GaAsやInPに代表されるIII -V族の化合物半導体や、CdSなどに代表されるII-VI族の化合物半導体は広く研究されている。また、SiやCなどのIV族の半導体においても、近年新しい構造が見つかりその応用が期待される。また、有機-無機複合体において実現された自然量子井戸構造も特異な物性を示し、今後の研究が待たれるところである。
【0011】
これらの中で光通信帯である1.55μm帯での使用を考えた場合、化合物半導体は有力な候補といえる。また、結晶成長技術の進歩に伴い、量子構造としても閉じ込めの次元の様々な構造が作製可能である。閉じ込めの次元が1次元の量子井戸、2次元の量子細線、3次元の量子ドットなどが現在作製可能であるが、その状態密度が急峻なために振動子強度の大きい量子ドットは今後の応用が強く期待されている。
【0012】
これまでは、このような物質そのものの特性改善が主流であったが、近年、光の側からの新しいアプローチが注目を浴びている。
【0013】
まず、非線形光学特性を向上させる試みとして、微小共振器やフォトニック結晶のような構造を利用するアプローチがある。光の波長程度の周期で誘電率が変調された媒質をフォトニック結晶と呼ぶが、微小共振器も1次元のフォトニック結晶と考えると統一的な見方が可能となる。このような周期構造においては、光が存在できないような周波数帯、いわゆるフォトニックバンドギャップ、あるいはストップバンドというような周波数帯が出現し得るが、周期構造に欠陥を導入することでこのような周波数帯の中に光のモードを作り出すことができる。
【0014】
これは共振器でいうところの共振ピークに相当し、欠陥を有するフォトニック結晶は共振器であるともいえる。この共振ピークの周波数の光を入射した場合、この共振部分(欠陥)付近に光が局在するために光電場が増強することが知られている。このことを利用して共振部分に非線形光学媒質を導入すれば、この増強された電場により、非線形光学効果を実効的に増強することができる。
【0015】
図17は従来の微小共振器構造の非線形光学素子の模式図であり、100は微小共振器構造であり、101,103はλ/4厚みの多層膜ブラッグ反射鏡、102はλ/2共振層(非線形光学媒質を含む)、104は光の伝搬方向を示している。
【0016】
これまで、有機色素分子やCdSe量子ドットを非線形媒質とした、図17のような微小共振器構造(1次元フォトニック結晶)100において、縮退四光波混合光の発生効率を数1000倍増強できることが示されている。また、位相共役画像の発生にも成功しているので、理論的にはより大きな増強度も期待できる。半導体微細加工技術の進歩に伴い、このような誘電率の変調構造と半導体量子ドットのような量子ナノ構造を結合させることは可能となっており、工業的にも期待の持てる技術であるといえる。
【0017】
もう一つの課題である高速応答性を実現するためには、これとは別の方法が必要となる。光の側からのもう一つのアプローチとして励起子のコヒーレント制御という方法がある。半導体を光励起して励起子を生成すると、一般にその寿命、すなわちエネルギー緩和時間は数100psであり、光演算等を考える場合、その数100ps間の時間は次の演算ができないとされてきた。
【0018】
コヒーレント制御においては、強制的に励起子を消滅させることでこの制約を打ち破ることができる。具体的には光励起した直後、励起子分極は入射光の振動電場とコヒーレンスを持つので、この励起子分極のコヒーレンスが残っている間に最初の励起光と位相同期した第2のパルス照射により励起子数を制御できる。
【0019】
第2パルスの位相が第1パルスと同位相の場合は励起子数が増加し、逆位相の場合は励起子数を減少させることができる。この分極のコヒーレンスが残っている時間を位相緩和時間と呼び、このようなコヒーレント制御は、この位相緩和時間の間は可能となるので、コヒーレント制御のためには位相緩和時間が長い物質が必要となる。
【0020】
例えば、GaAs量子井戸ではこの位相緩和時間は数psであり、第1パルスと逆位相の第2パルスを数ps以内に照射すれば励起子を消滅させることが可能であることが知られている。この場合、量子井戸は均一広がりの系であることが条件である。位相緩和時間は、均一幅の逆数で定義される時間であり、均一幅が狭いほど位相緩和時間は長くなるので、この均一幅の狭い媒質がコヒーレント制御に適している。
【0021】
その点、量子ドットは、3次元的な量子閉じ込め効果のために電子の状態密度は極めてシャープで、均一幅も量子井戸に比べて桁違いに狭く、位相緩和時間に換算すると数10psから数100ps程度にも達することが知られており、コヒーレント制御には絶好の系である。しかしながら、現実の量子ドットの場合、サイズ等のばらつきのために均一幅は狭いものの非常に広い不均一広がりが存在するので、コヒーレント制御の場合は単一の量子ドットを観測する必要がある。
【0022】
単一量子ドットを顕微系でコヒーレント制御することで励起子数の制御が可能であり、これを利用して量子コンピュータの量子ビットとして用いるという試みが近年行われるようになってきた。このように、長い位相緩和時間を持つ量子ドットを用いることで、エネルギー緩和時間に律速されない高速応答が可能な素子が期待できるが、縮退四光波混合に代表される非線形光学効果を利用した素子の実現にはいくつかの問題点がある。
【0023】
以下に、半導体量子ドットを非線形光学媒質とした新しい非線形光学素子の実現のための問題点を挙げる。
産業上の利用分野
本発明は、光通信や光情報処理の分野において、数100fsから1ps程度の時間間隔の高繰り返し光スイッチングや光演算が可能な、新しい高効率大容量の超高速非線形光学素子に関するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】 不均一広がりのある系にラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を照射し、不均一広がりのデフェイジング(dephasing)効果をリフェイジング(rephasing)効果で相殺することにより、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、励起された系をエネルギー緩和時間よりも短時間で強制的に緩和することができ、不均一広がりのある系に対応したコヒーレント制御を行うことを特徴とする超高速非線形光学素子。
【請求項2】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を同軸で入射し、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
【請求項3】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を入射することにより、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
【請求項4】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を同軸で入射し、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
【請求項5】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強できる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を入射することにより、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸入射縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
【請求項6】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、同軸で光パルスを入射し、量子ドットを励起した後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を同軸で入射し、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こすことにより、初期状態に速やかに回復させることができ、高繰り返しスイッチングが可能となる同軸入射超高速光スイッチング機能を有する超高速非線形光学素子。
【請求項7】 不均一広がりが大きく、位相緩和時間の長い自己組織化量子ドット集合体のような媒質を厚みに変調を加えた半導体微小共振器の共振部分に配置することにより、光学的非線形性を実効的に増強でき、かつ素子面内の各場所で独立演算が可能となる素子に、非同軸で2つないし3つの光パルスを入射し、縮退四光波混合光を発生させた後に、ラビ周波数(物質の双極子モーメントと電場の積)とパルス幅の積で定義される量であるパルス面積を考慮した、多次元パルス成形法で作った光パルス列を入射することにより、不均一広がりのある系におけるコヒーレント制御において、(a)均一幅の逆数である位相緩和時間が長い非線形光学媒質を対象とする。(b)ラビ周波数が不均一幅よりずっと大きくΩ》Δ(Ωはラビ周波数、Δは入射光の周波数と物質中の分極周波数との間の離調)という近似が成り立つ。(c)位相も考慮し入射するパルス面積の総和が2πの整数倍となる。(d)πパルスなどを用いてデフェイジング(dephasing)-リフェイジング(rephasing)過程が実現するようなタイミングで光パルスを入射する条件で、1ps程度以下の高速エネルギー緩和を強制的に起こし、高繰り返し高効率光演算が可能となる非同軸縮退四光波混合超高速光演算機能を有する超高速非線形光学素子。
産業区分
  • 光学装置
  • 伝送方式
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2003073271thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 新しい物理現象や動作原理に基づくナノデバイス・システムの創製 領域
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