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染色体の微小領域を回収する方法

国内特許コード P06A009345
掲載日 2006年10月13日
出願番号 特願2004-319230
公開番号 特開2006-129717
登録番号 特許第4677602号
出願日 平成16年11月2日(2004.11.2)
公開日 平成18年5月25日(2006.5.25)
登録日 平成23年2月10日(2011.2.10)
発明者
  • 杉山 滋
  • 塚本 和己
  • 大谷 敏郎
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 染色体の微小領域を回収する方法
発明の概要

【課題】 染色体の構成物質を含む微小領域を効率的に回収し、複数の隣接する微小領域の連続回収も精度良く行なうことのできる方法を提供すること、及び、回収された染色体の微小領域を基に、染色体の全てまたは任意の箇所の塩基配列を正確かつ簡便に解読する方法および物理地図を作成する方法を提供すること。
【解決手段】 染色体の微小領域を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて回収するにあたり、AFMの探針を染色体が固定されている基板方向に押しつけながら移動させて、回収の対象である染色体中の構成物質を含む微小領域を前記探針に付着させた後、前記探針を前記基板から引き離すことにより、染色体の構成物質を含む微小領域を回収することを特徴とする染色体の微小領域を回収する方法、並びに回収された微小領域を利用した染色体の塩基配列解読法及び物理地図作成法。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


従来のゲノム解析技術においては、解析対象生物から全ゲノムDNAを抽出し、数kbから数十kbの大きさに一旦断片化した後、適切なシーケンス用ベクターにクローニングした後、各クローンの塩基配列を決定し、これにより得られた比較的短い塩基配列(通常数百塩基)を解析し、末端の相同な部分を繋ぎ合わせて染色体全体の塩基配列を復元する手法がとられていた。
しかしながら、特に真核生物ではゲノム上に類似した配列や繰り返し配列が多く含まれ、クローンの塩基配列情報のみから全配列を復元することは不可能であり、多くの場合、数Mbの長さのコンティグ(前記クローンを末端塩基配列の相同性や制限酵素切断パターンに基づいて整列させたもの)を作成するのが限度であった。



そこで、通常の場合は過去の研究により得られた遺伝子地図や物理地図のデータを使用することによりコンティグの染色体上の位置を決定しているが、地図作製を含めた全作業には非常な長期間と膨大な労力、予算が必要であった。
また、場合によっては、例えば有用遺伝子や病因遺伝子の単離や同定などを目的として、対象となる染色体の一部分のみの塩基配列や物理地図が必要とされることがあるが、従来の方法では、原理上、特定の場所のみの塩基配列を得ることは困難で、かなり多量の塩基配列解析を行なうか、遺伝子地図や物理地図のデータを利用する必要があり、やはり相当な期間、労力、予算が必要であった。



このような問題が生じる原因は、一度に解読できるDNAの長さが数百塩基に限られ、最初に全ゲノムを小さく断片化せざるを得ず、その時点で各断片(クローン)の位置情報が失われてしまうためである。この問題は、染色体の目的とする部分をナノレベルで位置決めし、その部分を微小領域に分割して確実に回収し、各微小領域中のDNAを抽出もしくは増幅することができれば解決可能である。このようにして得られたDNAは、由来する染色体上の位置が既知であるため、上記のような復元の問題は生じず、染色体の対象とする部分の塩基配列の復元や物理地図作成を容易に行なうことができる。



そのため、これまでに染色体の微小領域を回収することを目的に、ガラスキャピラリーによる回収(非特許文献1)、レーザーによって対象領域の周囲を焼き切ることによる目的部分の回収(レーザーダイゼクション:非特許文献2、特許文献1及び特許文献2)、原子間力顕微鏡(AFM)による回収(非特許文献3~非特許文献5)、等の技術が開発されている。



しかし、キャピラリーによる切断回収においては、キャピラリーのサイズが大きいため、マイクロメートル以上の大きさの断片しか回収できず、微小断片の回収は困難であり、また、位置決めの精度にも問題がある。
また、レーザーダイゼクションにおいては、レーザーをマイクロメートル以下に収束させることが困難で精度に問題がある上、周囲を焼き切ってしまうため連続的な回収が不可能である。



一方、AFMによる染色体の切断、微小領域の回収方法においては、染色体の切断対象領域上で探針を往復走査しながら徐々に押し下げ、最終的には探針を基板面まで押し下げて切断を行なう。この方法によれば、キャピラリーやレーザーによる回収方法に比べて、精度や回収領域のサイズは改善される。
しかし、従来のAFMによる切断回収法では、切断された染色体の構成物質の大部分が基板上に残り、回収率が著しく低いという問題点があった。また、AFMにより、隣接した断片を回収しようとしても、2つの領域の境界線上の染色体構成物質を完全に掻き取れずに残片が残ってしまう。
従って、AFMによる技術を利用して連続的な切断に成功した例は、現在まで報告されていない。さらに、AFMによる回収操作後、染色体の構成物質が実際に回収されていることを直接的に検証した例もない。




【非特許文献1】H.-J.Ludecke,G.Senger,U.Claussen,B.Horsthemke,Nature,338,348(1989)

【非特許文献2】秦野 伸二(S.Hadano),池田 穣衛(Joh-E.Ikeda),組織培養,22,55(1996)

【非特許文献3】C.Mosher,D.Jondle,L.Ambrosio,J.Vesenka,E.Henderson,Scanning Microsc.,8,491(1994)

【非特許文献4】S.Thalhammer,R.W.Stark,S.Muullere,J.Wienberg,W.M.Heckl,J.Struct.Biol.,119,232(1997)

【非特許文献5】S.Iwabuchi,T.Mori,K.Ogawa,K.Sato,M.Saito,Y.Morita,T.Ushiki,E.Tamiya,Arch.Histol.Cytol.,65,473(2002)

【特許文献1】特開平11-148887号公報

【特許文献2】特開2002-202229号公報

産業上の利用分野


本発明は、染色体の微小領域を回収する方法に関し、詳しくは、染色体の微小領域を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて精度良く効率的に回収する方法に関する。
また、本発明は、上記方法により回収された染色体の微小領域に含まれる構成物質としてのDNAを利用して染色体の塩基配列決定及び物理地図作成を行なう方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
染色体の微小領域を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて回収するにあたり、AFMの探針を染色体が固定されている基板方向に押しつけながら移動させて、回収の対象である染色体中の構成物質を含む微小領域を前記探針に付着させた後、前記探針を前記基板から引き離すことにより、染色体の構成物質を含む微小領域を回収することを特徴とする染色体の微小領域を回収する方法であって、
AFMの探針を基板方向に押しつける力の大きさが、1μN以上50μN以下であり、かつ、探針の移動速度が毎秒0.1μm以上10μm以下であり、
染色体の全てまたは任意の部分を構成する複数の微小領域のうち、染色体または任意の部分の末端に位置する第一の微小領域の回収操作を行ない、続いて、前記第一の微小領域から10nm以上5μm以下の間隔をおいた第二の微小領域について第一の微小領域の回収操作における探針の移動方向と平行に探針を移動させる回収操作を行ない、以下順次同様の回収操作を染色体または任意の部分の他の末端に位置する微小領域まで繰り返した後、第一の微小領域と第二の微小領域の中間に存在する微小領域について回収操作を行ない、以降順次同様の回収操作をすべての微小領域が回収できるまで繰り返すことにより、染色体の全て又は任意の部分を連続する複数の微小領域に分割して回収する方法。


【請求項2】
回収操作を、溶液中で行なうことを特徴とする請求項1に記載の染色体の微小領域を回収する方法。

【請求項3】
回収操作に用いる溶液が、水、生理緩衝液、エタノール、メタノール、又は界面活性剤を含有する水溶液である請求項記載の染色体の微小領域を回収する方法。

【請求項4】
探針の移動を、染色体の長軸に対して60度~120度の角度をなす方向に染色体の全幅に対して行なう請求項1~のいずれかに記載の染色体の微小領域を回収する方法。

【請求項5】
一回の回収操作ごとに染色体上の回収位置を記録し、各回収操作において探針に付着した微小領域を探針から取り外すか、或いは探針ごとAFMから取り外して、当該微小領域の染色体上における回収位置に従い、染色体上の位置情報付き微小領域として回収保存することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の染色体の微小領域を回収する方法。

【請求項6】
請求項記載の方法により回収保存される染色体上の位置情報付き微小領域に含まれるDNAを抽出または増幅した後、その塩基配列を決定し、得られる塩基配列をそれぞれの位置情報にしたがって順次連結することにより、染色体の全てまたは任意の部分の塩基配列を決定することを特徴とする染色体の塩基配列解読法。

【請求項7】
請求項記載の方法により回収保存される染色体上の位置情報付き微小領域に含まれるDNAを抽出または増幅した後、その塩基配列の一部を決定し、全ゲノムDNAを断片化してベクターにクローニングして作成したゲノムDNAライブラリーに含まれるクローンの中から、前記微小領域の塩基配列と相同な配列を含むクローンを選別し、前記微小領域の位置情報に基づいて前記選別したクローンを整列させることを特徴とする染色体の物理地図作成法。

【請求項8】
染色体が、レプトテン期、ザイゴテン期、パキテン期、及びディプロテン期のいずれかの時期の染色体であることを特徴とする請求項記載の染色体の塩基配列解読法。

【請求項9】
染色体が、レプトテン期、ザイゴテン期、パキテン期、及びディプロテン期のいずれかの時期の染色体であることを特徴とする請求項記載の染色体の物理地図作成法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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14839_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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