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抗HIV-1薬剤のスクリーニング系及びスクリーニング方法

国内特許コード P06A009388
整理番号 KU2004029AR
掲載日 2006年10月19日
出願番号 特願2004-319531
公開番号 特開2006-129726
登録番号 特許第4528963号
出願日 平成16年11月2日(2004.11.2)
公開日 平成18年5月25日(2006.5.25)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発明者
  • 岡田 誠治
  • 鈴 伸也
出願人
  • 国立大学法人 熊本大学
発明の名称 抗HIV-1薬剤のスクリーニング系及びスクリーニング方法
発明の概要

【課題】 操作が簡単で、短時間で測定が可能で、大規模スクリーニングを実施することができ、さらに追加のスクリーニングを実施することなく、抗HIV-1薬剤をスクリーニングすることを可能にする方法を提供すること。
【解決手段】 M-CSF受容体、及びHIV-1 Nef蛋白質とエストロゲン受容体のホルモン結合領域を融合させたNef-ER融合蛋白質を発現し、M-CSF依存性に増殖するマクロファージ系細胞を、エストロゲン誘導体及びM-CSFの存在下で培養して、細胞増殖を抑制させることを含む、抗HIV-1薬剤のスクリーニング系の製造方法。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


抗HIV-1薬剤の新規スクリーニング系の必要性
エイズは、原因ウィルスであるヒト免疫不全ウィルス(HIV-1)感染によって引き起こされる重篤な免疫不全症候群である。世界的規模でみると死亡原因の上位にランクされる、人類にとって深刻な感染症の一つである。現在、逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤による治療が可能となりつつあり、また、ウィルス侵入阻害剤の開発が進行中であり、今後の臨床応用が待たれている。しかし、一方で、これらの薬剤に耐性のウィルスが出現することが深刻な問題となっている。薬剤耐性ウィルスの出現は主に、開発薬剤がウィルスに対して直接的に選択圧を持つものであることが一因となっていると考えられる。従って今後は、新規作用機序、特に、ウィルスに対し直接選択圧をかけない薬剤の開発が望まれている。このためには、薬剤開発の分子標的として「HIV-1感染により特異的に機能が撹乱され、そしてその撹乱がエイズ発症に繋がる宿主側因子群」を同定することが不可欠であり、そしてその宿主側因子群を標的にした抗HIV-1薬剤のスクリーニング系を確立する必要がある。



Nefによって障害を受ける宿主側因子Hckが標的となり得る根拠
HIV-1感染によりエイズ発症に至る過程で、HIV-1ゲノムにコードされているアクセサリー蛋白質の一つであるNefの働きが重要であることがこれ迄に報告されている(非特許文献1及び2)。HIV-1トランスジェニックマウスを用いた、以下の結果がこのことを端的に示している(非特許文献2)。ヒトCD4遺伝子のプロモーター配列の制御下にHIV-1全ゲノムを導入した、HIV-1トランスジェニックマウスはCD4陽性T細胞数の低下等のエイズ様病態を発症する。しかし、Nef遺伝子を欠損したHIV-1ゲノムを導入したトランスジェニックマウスでは、同様の病態を発症するものの、発症までの期間が長くかかる(非特許文献2)。



Nefがどのような機構でエイズ発症を規定しているかという点についてであるが、その機構解明の糸口となる研究結果が前述のHIV-1トランスジェニックマウスを用いた実験で報告されている(非特許文献3)。前述のように、HIV-1トランスジェニックマウスはCD4陽性T細胞数の低下等のエイズ様病態を発症する。ところが、同様のトランスジェニックマウスをHck(宿主細胞内に存在する酵素チロシンキナーゼの一つ)欠損マウスで作製した場合、発症までの期間が長くかかる(非特許文献3)。NefがHckと結合し、Hckの酵素活性を増強することは以前より報告されている(非特許文献4)。更に、NefがHckに結合するNef内の配列(非特許文献4)に変異を導入したHIV-1ゲノムを用いて作製したHIV-1トランスジェニックマウスの場合も、同様に発症までの期間が長い(非特許文献3)。HckはHIV-1感染細胞であるCD4陽性T細胞とマクロファージの内、マクロファージのみに存在する酵素であることが良く知られている。従って、以上の結果より、NefがHckへの結合・活性化を通してマクロファージの中で何かしらの非生理的な働きをすることによりエイズ発症を進展させていると考えられる。



NefのHckへの結合・活性化を標的としたスクリーニング系の現状
前述のように、NefのHckへの結合・活性化がエイズ発症の一因と考えられることから、実際、これを標的とした抗HIV-1薬剤スクリーニング系が報告されている(非特許文献5)。これは、mammalian two-hybrid系(Clontech社)を応用して、NefとHckの結合を阻害し得る薬剤をスクリーニングしようとするものである。実際には以下の方法が報告されている。先ず、酵母GAL4とNefと融合させたプラスミド、ヘルペスウィルスVP16転写活性化領域をHckと融合させたプラスミドおよびルシフェラーゼをコードするレポータープラスミドを作製する。次に、前日24穴プレートにまいておいたヒト胎児腎臓由来細胞株293T細胞あるいはマウス腺維芽細胞NIH3T3に、これらプラスミドをFuGENE6(Roche社)あるいはlipofectamine(GIBCO社)を用いてトランスフェクションする。2日後にトリプシン処理後で細胞をディッシュよりはがし96穴プレートにまき直し、24時間後に薬剤候補物質を添加する。更に24時間後に細胞を溶解し、PiCaGene Kit(Toyo Inki社)によりルシフェラーゼ活性を測定する。この際、アルカリフォスファターゼをコードするプラスミドをトランスフェクションした細胞も同時に調製しておき、その活性をp-nitrophenyl-phosphateを基質として測定し、トランスフェクションの効率を標準化してルシフェラーゼ活性を算出する(非特許文献5)。



上記した方法は、確かにNefとHckの結合を阻害するスクリーニング系としては有効と考えられるが、前述のように極めて煩雑であり、測定に5日間を要し、大規模のスクリーニングを現実的に実施することは困難と考えられる。更に、このスクリーニング系で候補物質が特定されたとしても、NefとHckの結合により、どのような機能変化(エイズ発症の進展を促すような)が宿主細胞、特にマクロファージの中で起きているかが明らかになっていないため、それらの候補物質の中から真の抗HIV-1薬剤を見出すためには、追加のスクリーニングを実施しなければならない。




【非特許文献1】Kirchhoff F, Greenough TC, Brettler DB, Sullivan JL, Desrosiers RC. Brief report: absence of intact nef sequences in a long-term survivor with nonprogressive HIV-1 infection. N Engl J Med. 1995;332:228-232.

【非特許文献2】Hanna Z, Kay DG, Rebai N, Guimond A, Jothy S, Jolicoeur P. Nef harbors a major determinant of pathogenicity for an AIDS-like disease induced by HIV-1 in transgenic mice. Cell. 1998;95:163-175.

【非特許文献3】Hanna Z, Weng X, Kay DG, Poudrier J, Lowell C, Jolicoeur P. The pathogenicity of human immunodeficiency virus (HIV) type 1 Nef in CD4C/HIV transgenic mice is abolished by mutation of its SH3-binding domain, and disease development is delayed in the absence of Hck. J Virol. 2001;75:9378-9392.

【非特許文献4】Moarefi I, LaFevre-Bernt M, Sicheri F, et al. Activation of the Src-family tyrosine kinase Hck by SH3 domain displacement. Nature. 1997;385:650-653.

【非特許文献5】Murakami Y, Fukazawa H, Kobatake T, et al. A mammalian two-hybrid screening system for inhibitors of interaction between HIV Nef and the cellular tyrosine kinase Hck. Antiviral Res. 2002;55:161-168.

産業上の利用分野


本発明は、抗HIV-1薬剤の新規なスクリーニング系及びスクリーニング方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
M-CSF受容体、及びHIV-1 Nef蛋白質とエストロゲン受容体のホルモン結合領域を融合させたNef-ER融合蛋白質を発現し、M-CSF依存性に増殖するマクロファージ系細胞において、Hckのチロシンリン酸化、又はHck とM-CSF受容体複合体との会合を分析する方法。

【請求項2】
M-CSF依存性に増殖するマクロファージ系細胞が、マクロファージ系細胞にM-CSF受容体遺伝子を導入し、さらにHIV-1 Nef蛋白質とエストロゲン受容体のホルモン結合領域を融合させたNef-ER融合蛋白質をコードする遺伝子を導入して得られる細胞である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
マクロファージ系細胞株がヒトマクロファージ系細胞株であり、M-CSF受容体遺伝子がヒトM-CSF受容体遺伝子である、請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
M-CSF受容体、及びHIV-1 Nef蛋白質とエストロゲン受容体のホルモン結合領域を融合させたNef-ER融合蛋白質を発現し、M-CSF依存性に増殖するマクロファージ系細胞を、エストロゲン誘導体、M-CSF及び被験物質の存在下で培養し、Hckのチロシンリン酸化、又はHck とM-CSF受容体複合体との会合を指標として抗HIV-1薬剤のスクリーニングを行う、抗HIV-1薬剤のスクリーニング方法。

【請求項5】
M-CSF依存性に増殖するマクロファージ系細胞が、マクロファージ系細胞にM-CSF受容体遺伝子を導入し、さらにHIV-1 Nef蛋白質とエストロゲン受容体のホルモン結合領域を融合させたNef-ER融合蛋白質をコードする遺伝子を導入して得られる細胞である、請求項4に記載のスクリーニング方法。

【請求項6】
マクロファージ系細胞株がヒトマクロファージ系細胞株であり、M-CSF受容体遺伝子がヒトM-CSF受容体遺伝子である、請求項4又は5に記載のスクリーニング方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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