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ダイヤモンドライクカーボン膜の製造方法 新技術説明会

国内特許コード P06A009663
掲載日 2007年2月16日
出願番号 特願2005-036870
公開番号 特開2005-226162
登録番号 特許第5002803号
出願日 平成17年2月14日(2005.2.14)
公開日 平成17年8月25日(2005.8.25)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
優先権データ
  • 60/544,132 (2004.2.12) US
発明者
  • 飯島 貴之
  • チュウ チャオキョン
  • 田中 勝己
出願人
  • 国立大学法人電気通信大学
発明の名称 ダイヤモンドライクカーボン膜の製造方法 新技術説明会
発明の概要

【課題】 可変バンドギャップにより次世代半導体材料として期待されているダイヤモンドライクカーボン膜は、プラズマCVDやパルスレーザ蒸着により成膜されていたが、高真空下での成膜であるので、設備が大掛かりになり、また生産性も高いとはいえなかった。
【解決手段】 基体の表面上に、触媒作用を有する遷移金属から選ばれる1種又は2種類以上を複合した金属化合物を含有する溶液を塗布し、この基体の表面上に前記金属化合物を形成させた後に、前記金属化合物が表面上に形成された基体を、炭化水素ガス含有雰囲気中で1400℃以上に加熱する。これにより、常圧において、前記基体の表面上に、炭化水素ガスの熱分解によるダイヤモンドライクカーボン膜を形成することができる。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon:以下「DLC」ともいう。)の研究は、1970年に東京農工大学の難波らの研究グループによって始められ、1979年にはダイヤモンド状の薄膜を発表して話題となった。



そして現在、DLCはプラズマCVD(Chemical VaporDeposition)装置や、PLD(Pulsed Laser Deposition)法などを用いて作製され、主に工具の硬質被覆材として実用化されている。また、最近ではDLCを次世代半導体と捉え、可変バンドギャップの性質を利用して、ディスプレイ等に用いられる電子放出素子として応用されることが期待されている。



すなわち、現在のエレクトロニクスは、シリコン半導体を中心とする電子デバイスによるが、今後、シリコン半導体だけでは、これらあらゆる分野のエレクトロニクス化に対応することができないことが考えられる。特に送電システムなどエネルギー輸送に用いる電子デバイスは、現在のシリコン半導体の電子デバイスでは達成できない高パワー・高周波・高集積が必要であり、このためには、その物性値からみてシリコン半導体より優れている炭化ケイ素、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体、DLCなどの可変バンドギャップ半導体による開発が期待されている。



ダイヤモンドは、そのバンドギャップがSi、GaAs、SiCと比較して圧倒的に大きい(5.5eV)ことが最大の特徴である。また、耐熱性・耐化学薬品性・耐放射線性などでも他の材料より優れている。このような理由で、ダイヤモンド薄膜及びダイヤモンド薄膜と同様な性質を有するDLC薄膜は、電子デバイスとして、自動車、航空、宇宙、原子炉など幅広い分野への応用が強く期待されている。



また、ダイヤモンド及びDLCの特徴的な物性を活かす応用分野としては、電子エミッタ材料への利用が挙げられる。それらは他の半導体材料と異なり、固体から電子が自ら飛び出しやすい状態(NEA状態:Negative Electron Affinity状態)にすることができ、この性質を利用して、現在のプラズマディスプレイや液晶ディスプレイ、次世代の平面ディスプレイの電子放出材料としても期待されている。



このような次世代半導体として期待されているダイヤモンド、DLCを比べると、DLCは、可変バンドギャップという性質でダイヤモンドより優れているといえる。以下、DLCについて説明する。



(DLCとは)
炭素の形態は多様である。これは、炭素原子が4本の結合手を持つこと、さらに、これらの電子状態が種々の混成準位(SP、SP、SP)を形成することに起因する。炭素の同素体としては、ダイヤモンド、グラファイト、カルビン、C60、C70等が知られている。このうち、ダイヤモンドはSP混成軌道の三次元結晶、グラファイトはSP混成軌道の二次元結晶、カルビンはSP混成軌道の一次元結晶、C60やC70等はグラファイト同様にSP混成軌道であるがサッカーボールの形をした三次元の分子である。これに対して、DLCはSP、SPの混成軌道のアモルファス構造(非結晶質構造)であり、多くのダイヤモンドに似た特性、特徴をもっている。



(DLCの主な特徴)
(構造的特徴)
DLCは、ラマン分光分析による構造解析などから、非晶質なSP構造の中に非晶質のSP構造を持つものが分散した形で含まれるものと考えられる。つまり、ダイヤモンド構造に対応するSP結合を持ってはいるが、部分的にグラファイトの構造に対応するSP結合やH結合を含むために、長距離秩序的には決まった形を持たない。



(基本的特性)
薄膜状ダイヤモンドは、天然には存在しないものである。一方、天然ダイヤモンドの性質は、あらゆる物質の中でも最高の硬さを有し、熱的には絶縁性でありながら最も高い熱伝導性をもち、光学的にも屈折率が最も高い値を示すという極めて優れた性質をもつ材料である。DLCはそのダイヤモンドがアモルファス状であると思われる。DLCは、I-カーボン、硬質炭素膜、非晶質炭素膜(a-C)、水素化炭素膜(a-C:H)などと呼ばれている。それぞれの呼び名は、作製プロセス、膜質、膜構造のどの面を重視するかで変わってくる。



DLCの定義も、必ずしも明瞭ではなく、特に定量的に決められているわけではない。ダイヤモンド膜にしても、グラファイト状炭素が部分的に含まれていることが多いため、DLCとの明確な境ははっきりしていないが、DLCはSP、SP、ポリマーの各成分を含有していて、茶、もしくは黒色で表面平滑な硬い膜である。さらに、スパッタ装置以外で作製されたDLC膜は、H結合をも有している。



DLCは、高硬度、低摩耗、低摩擦、表面平滑性に優れている特徴を持っている。ビッカース硬度Hvが2000~5000、電気抵抗率が10~1014Ω・cmである。また、赤外領域で透光性があり、高屈折率等を示す。また、O、COなどの気体の透過が非常に少ないので、これを利用して食品や薬品の包装紙や容器に用いること等も検討され、一部では既に商品化されている。



そして、最近DLCの特徴として最も注目されている特性は、既に述べたように次世代半導体材料としての特性である。DLCが、SP、SPの構成比によって変化させることのできるバンドギャップを持つことや、NEA状態を取り易いこと等がそれにあたる。



なお、DLCは、コーティング材(硬質被覆材)としては今までに数多くの研究がされてきているが、半導体としては未だ十分な研究がされていないのが現状である。ゆえにコーティング材としてではなく半導体としての研究を進めることが現代の課題となっている。



(ダイヤモンド薄膜との比較)
DLCとダイヤモンド薄膜の特性の違いについて、天然ダイヤモンド、グラファイトを比較対象に加えて表1に示す。なお、DLCについては、H結合を有するものと、H結合を有しないものに分けて示してある。
【表1】




CVDにより製造されたダイヤモンドもDLCも、種々の特性についてダイヤモンドに近い値をとる。もっとも、ダイヤモンドとDLCとで大きく異なることがある。1つめはバンドギャップで、ダイヤモンドが5.5eVなのに対し、DLCは可変バンドギャップである。その可変域は、DLC自体に明確な定義がないため具体的に上げることは困難だが、強いて挙げるとするとグラファイトの0eVからダイヤモンドの5.5eVの範囲ということになる。DLCは、構成するSP及びSPの割合でバンドギャップは変化するのである。2つめは熱伝導性である。これは、結晶構造をとっているダイヤモンドが、アモルファス構造であるDLCよりも熱伝導がし易いためである。



(表面構造)
DLCは、特徴的には緻密なアモルファス構造をしている。比較のために、DLC、ダイヤモンド及びグラファイトの各結晶構造をそれぞれ図21、図22及び図23に模式図で示す。各図において図中丸印で示す炭素原子が、隣接する炭素原子とどのように結合しているかにより、構造の相違が明らかである。DLCの表面は非常に滑らかであり、結晶粒界がない。その際立った表面特性である平滑性のために、DLCは優れた摩耗、摩擦特性を示すのである。摩耗、摩擦試験において比べられた値をみても、DLCの数値は他の硬質な薄膜と比べて、圧倒的に低い摩擦係数と優れた耐摩耗性、低攻撃性を示していることがわかる。しかし、DLCが400℃を超える環境下に置かれると、アモルファス構造が変化していき、DLCの特徴がなくなってしまい、炭素質膜になってしまう。



このように優れた特質、特性を有するDLCの製造方法に関しては、従来、プラズマCVD法やパルスレーザ蒸着法などが用いられてきた。このような従来のDLCの製造方法に関して、プラズマCVD法によるDLC膜の形成方法は、例えば、特許文献1に記載されている。



しかし、プラズマCVD法やパルスレーザ蒸着法といった従来のDLC膜の形成方法では、DLCを成膜させるのに、成膜させる対象物近傍を高真空度の環境にしなければならず、設備が大掛かりになるし、また、生産性も高いとはいえなかった。



また、関連技術に関して、特許文献2には、擬似ダイヤモンド被膜を形成するのに熱フィラメント蒸着反応装置を用いることが記載されているが、この熱フィラメント蒸着反応装置もまた、真空雰囲気中での成膜であるので、設備が大掛かりになるし、また、生産性も高くないという問題があった。また、特許文献3には、メタンガスを原料ガスとしてマイクロ波プラズマCVD法によりダイヤモンド粒子を形成することが記載されているが、このマイクロ波プラズマCVD法も真空雰囲気中での成膜であるので、設備が大掛かりになるし、また、生産性も高くない。更に、特許文献4には、熱フィラメントCVD法により被処理材表面に黒鉛質やダイヤモンド質粒子を生成することが記載されているが、この熱フィラメントCVD法もまた、真空雰囲気中での成膜であるので、設備が大掛かりになるし、また、生産性も高くない。

【特許文献1】特開2005-002377号公報

【特許文献2】特許第2939272号明細書

【特許文献3】特開2002-281991号公報

【特許文献4】特開2004-288460号公報

産業上の利用分野


本発明は、ダイヤモンドライクカーボン膜の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
Siからなる基体の表面上に、Niを含む金属化合物、Coを含む金属化合物、およびFeを含む金属化合物から選ばれる1種又は2種以上金属化合物を含有する溶液を塗布し、この基体の表面上に前記金属化合物を形成させる工程と、
前記金属化合物が表面上に形成された基体を、常圧の炭化水素ガス含有雰囲気中で1400℃以上に加熱することにより、前記基体の表面上に、炭化水素ガスの熱分解によるダイヤモンドライクカーボン膜を形成する工程とを有し、
前記金属化合物の金属原子の数量が、基体を構成する原子の単位表面積当たりの原子の個数の100分の1を超え、1未満となる範囲にて、前記金属化合物は前記基体の表面上に形成されることを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の製造方法。
産業区分
  • 表面処理
  • 食品
  • 無機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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