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DNAへのランダム変異導入方法

国内特許コード P07A009795
掲載日 2007年4月20日
出願番号 特願2005-088811
公開番号 特開2006-262838
登録番号 特許第4709990号
出願日 平成17年3月25日(2005.3.25)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
登録日 平成23年4月1日(2011.4.1)
発明者
  • 藤井 亮太
  • 北岡 本光
  • 林 清
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 DNAへのランダム変異導入方法
発明の概要

【課題】 複数塩基単位の置換、挿入、欠失といった変異をDNAに簡便に導入する新たな手法を提供すること。
【解決手段】 以下の工程を含むDNAへのランダム変異導入方法。
(a) 変異導入の対象とするDNA鎖をランダムな部位で切断し、DNA断片を得る工程
(b) 得られたDNA断片の3'末端に複数個の塩基を付加する工程
(c) 塩基を付加した3'末端から、外来の鋳型DNA鎖の存在下または非存在下において、DNAポリメラーゼによりDNA鎖を伸長させる工程
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


酵素をコードする遺伝子へのランダム変異導入技術は、その酵素の機能を改変する上で重要な技術のひとつである。酵素をコードする遺伝子にランダム変異を導入すると、その変異に応じて機能がさまざまに変化した変異酵素が得られるので、その中から適当な選抜系にて目的とする機能をもった酵素を選抜することが可能となる。たとえば、ランダム変異を導入した酵素のライブラリーから、熱処理しても活性の残っている酵素を同定することで、耐熱性の向上した変異酵素を得ることができる。さらに、ランダム変異と選抜の操作を繰り返せば、有効な変異が蓄積でき、酵素の機能をさらに向上させることができる。変異と選抜の操作を繰り返して酵素の機能を向上させる技術は、生物が進化するさまに似ていることから、「進化分子工学」と呼ばれている。



自然界における変異の種類は、大別して、別の種類の塩基への置き換え(置換)、新たな塩基の挿入(挿入)、塩基の脱落(欠失)の三つに分けられる。このうち、進化分子工学の分野では、主に置換変異が利用される。まず、エラープローンPCR 法(非特許文献1)などで遺伝子にランダムな1塩基置換変異を導入し、機能の変化した変異体を選抜する。取得した変異体には、さらに置換変異を導入するか、変異部位のコドンを部位特異的にランダムに改変するか(サチュレーション変異導入;非特許文献2)、いくつかの変異体の遺伝子をかけあわせて(DNA シャッフリング;非特許文献3)、変異の組み合わせを検討する。そして、これらの作業をルーチン化して、機能をできるだけ向上させるというのが、従来の進化分子工学研究の進め方であった。ただ、機能が無限に向上し続けることはなく、数世代の実験で進化が頭打ちになることも多い。置換変異のバリエーションは、300アミノ酸残基からなるタンパク質において1アミノ酸残基を置換する場合、19×300=5700通りである。このバリエーションの中に、機能を向上させる変異がなければ、置換変異による進化は起こらない。たとえ置換変異の頻度を上げたとしても、それ以上の進化が望めるとは限らない。なぜなら、置換変異はおおむね相加性を持っているが、相乗効果を生む例はまれで、予想外の進化が得られる可能性は低いからである。従って、この5700種の置換変異を探索しつくした時点で、進化は頭打ちになると予想される。



一方、もし挿入や欠失をランダムに導入できるなら、置換とはまったく異なる変異体のバリエーションを作製できるため、たとえ進化が頭打ちになっても、さらなる進化を起こさせる可能性がある。例えば、300アミノ酸残基からなるタンパク質の場合、nアミノ酸残基欠失のライブラリーの数は(301-n)通り、nアミノ酸残基挿入のライブラリーの数は(20のn乗×301)通り存在することから、非常に大きなライブラリーを得ることができる。従って、置換変異による進化が限界でも、挿入や欠失を利用することで進化の頭打ちに対してブレークスルーをもたらすこともできると考えられる。



しかしながら、挿入や欠失をタンパク質の機能改変に用いた例はきわめて少なく、現代の構造生物学および分子進化学の分野において、挿入や欠失に関しては、いまだ未知の部分が多い。これは、構造変化の予想が難しいからである。もし、挿入や欠失を含む変異体を作成し、構造や機能に関する情報を蓄積できれば、進化分子工学のみならず、構造生物学や分子進化学にも大きな影響を与える可能性を秘めている。



挿入や欠失は、置換に比べて構造の変化が大きいため、酵素の構造を著しく壊すかもしれず、タンパク質工学には応用しにくいと考えられがちである。ところが、酵素のアミノ酸配列のデータベースを調査したところ、10アミノ酸残基以下の挿入や欠失は、進化の過程でかなりの確率でおきていることがわかった(非特許文献4)。とりわけ、5アミノ酸残基以下の挿入欠失は頻繁に起こるとされている。これは、挿入や欠失が、タンパク質の機能改変に応用できる可能性を示唆している。



これまでDNAに挿入や欠失をランダムに導入する方法は、いくつか開発されている。たとえば、認識配列の外側を切断する特殊な制限酵素を用いて挿入や欠失を導入した例(非特許文献5)、コドン単位で DNA を合成して欠失を導入した例(非特許文献6)、トランスポゾンを利用して特定の15塩基をランダムに挿入した例(非特許文献7)、エンドヌクレアーゼを用いて欠失やリピート配列を導入した例(非特許文献8)、などが挙げられる。これらの方法のうちいくつかは、実際に酵素や機能性タンパク質の向上を実現しており、挿入欠失変異の有効性を示している。しかしながら、いずれの方法も、操作が複雑であったり、導入できる変異の種類や長さが限られていたり、特殊な技術や設備が必要であったりするなどの問題がある。従って、より簡便にDNAに挿入欠失変異を導入する方法が求められていた。

【非特許文献1】Leung, D. W., Chen, E. and Goeddel, D. W., A method for random mutagenesis of a defined DNA segment using a modified polymerase chain reaction. Techniques, 1, 11-15 (1989).

【非特許文献2】Miyazaki, K. and Arnold, F. H., Exploring nonnatural evolutionary pathways by saturation mutagenesis: Rapid improvement of protein function. J. Mol. Evol., 49, 716-720 (1999).

【非特許文献3】Stemmer, W. P. C., Rapid evolution of a protein in-vitro by DNA shuffling. Nature, 370, 389-391 (1994).

【非特許文献4】Pascarella, S. and Argos, P., Analysis of Insertions Deletions in Protein Structures. J. Mol. Biol., 224, 461-471 (1992).

【非特許文献5】Murakami, H., Hohsaka, T. and Sisido, M., Random insertion and deletion of arbitrary number of bases for codon-based random mutation of DNAs. Nat. Biotechnol., 20, 76-81 (2002).

【非特許文献6】Osuna, J., Yanez, J., Soberon, X. and Gaytan, P., Protein evolution by codon-based random deletions. Nucleic Acids Res., 32, e136 (2004).

【非特許文献7】Hallet, B., Sherratt, D. J. and Hayes, F., Pentapeptide scanning mutagenesis: Random insertion of a variable five amino acid cassette in a target protein. Nucleic Acids Res., 25, 1866-1867 (1997).

【非特許文献8】Pikkemaat, M. G. and Janssen, D. B., Generating segmental mutations in haloalkane dehalogenase: a novel part in the directed evolution toolbox. Nucleic Acids Res., 30, e35 (2002).

産業上の利用分野


本発明は、DNAへのランダム変異導入方法、詳しくは、置換、挿入、欠失といった変異を複数塩基単位で簡便に導入することのできるDNAへのランダム変異導入方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含むDNAへのランダム変異導入方法。
(a) 対象とする二本鎖のDNA鎖をランダムな部位で切断し、二本鎖のDNA断片を得る工程
(b) 得られたDNA断片の3'末端に複数個の塩基を付加する工程
(c) 塩基を付加した3'末端から、外来の鋳型DNA鎖の非存在下において、DNAポリメラーゼによりDNA鎖を伸長させる工程

【請求項2】
DNA断片の3'末端に付加する塩基が、デオキシリボ核酸またはデオキシリボ核酸類縁体である、請求項に記載の方法。

【請求項3】
DNA断片の3'末端に付加する塩基数が5~50塩基である、請求項1または2に記載の方法。

【請求項4】
DNA断片の3'末端への塩基の付加が、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェ
ラーゼ、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、またはRNAリガーゼのいずれかを用いて行われる、請求項1~のいずれかに記載の方法。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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16126_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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