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液-液抽出あるいは固-液抽出のための装置およびそれを用いた抽出方法

国内特許コード P07A009811
掲載日 2007年4月20日
出願番号 特願2005-224916
公開番号 特開2007-038130
登録番号 特許第4997487号
出願日 平成17年8月3日(2005.8.3)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発明者
  • 徳安 健
  • 小野 裕嗣
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 液-液抽出あるいは固-液抽出のための装置およびそれを用いた抽出方法
発明の概要

【課題】 様々な液-液抽出あるいは固-液抽出系に対応し、繰り返して抽出を行うことができる装置、キットおよびその使用方法を提供することにより、液-液抽出あるいは固-液抽出の効率化を図る。
【解決手段】 互いに混合せず2層を形成する高密度液体と低密度液体の組み合わせによる液-液交換あるいは固-液交換分配抽出用の装置であって、液-液界面における溶質の交換分配反応を行う空間を有するカラムと、該空間へ両液体を注入するための上部の開口と、一方の液体を排出するための下部の閉栓可能な開口を有し、下部の開口と溶質の交換分配反応を行う空間の間に、装置下部から排出したい液体と親和性が強く、カラムの空間に滞留させたい液体と親和性が弱い多孔性材料を装着したことを特徴とする装置および該装置を用いた液-液交換分配抽出方法である。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


互いに混合しない二液を用いた液-液抽出工程や、固体と該固体を完全に溶解しない液体を用いた固-液抽出工程は、目的とする抽出物質の各液体への溶解性・分配性をもとに分離する工程であり、食品成分の抽出、薬品や色素等の化学物質の合成・精製、環境関連物質の分析等の工程で広く活用されてきた技術である。
これまでに、抽出・精製工程の大規模化、効率化を目的として液相での連続抽出技術等が開発されてきた。例えば、日本ダイオネクス株式会社では、製品「ASE-200」を販売し、メトラー・トレド株式会社では、液-液抽出装置「ALLEXis」を販売している。また、現在でも、液-液抽出のための分液漏斗は、多くの有機合成工程や抽出成分の分離工程等において日常的に用いられている。



その一方で、薬物シーズ化合物などの高付加価値化合物のスクリーニング工程においては、微量、かつ多数の試料を迅速に処理する必要があり、抽出処理速度の向上が重要な要素となってきている。
これに対応して、カラムクロマトグラフィー技術の変法とも言える固相抽出法が開発され、様々な場面で活用されてきた。しかしながら、固相抽出法については、抽出の目的化合物ごとの細かいメソッドの開発方法、カラムの吸着容量に対する試料の適切な添加量の設定、回収液が希釈される可能性や、カラムからの有機物の溶出の影響などを考慮する必要がある。このため、現在でも、種々のスクリーニング場面における抽出技術の処理速度向上など効率化へのニーズが高まっている。



液-液あるいは固-液抽出の本質は、互いに混じり合わない二相の界面における移動現象である。分析を行いたい物質や分析の妨げとなる物質が第1相である液体や固体に溶解あるいは分散している時、界面によって隔てられた第2相へと界面の境界層拡散によってその物質は移動することが可能である。このときの物質移動は双方向的であり、第1相から第2相への物質移動と第2相から第1相への物質移動が拮抗したとき、各相への物質分配が平衡に達する。また、速やかに平衡に達せさせるため、撹拌などの機械的操作がしばしば行われるが、これは拡散の起こる界面面積の増大と、界面が絶えず更新されることによる二相の境界層を薄くすることを狙った物である。抽出成分の二相における分配の比率が大きければ大きいほど抽出は効率よく行われるが、場合によっては、第2相を交換して何度か抽出を繰り返すこととなる。いずれの場合でも、抽出作業を前後の操作と連続的かつ効率的に行おうとすると、2つの相をいかに効率よく分離しうるかが鍵となる。



2つの相が共に液体である場合、これらを効率的に分離するための手段として、分液漏斗が古くから知られており、分析を目的とする実験で今日でもしばしば利用されている。また、固体から液体を抽出するにはソックスレー抽出器がよく知られている。しかし、分液漏斗もソックスレー抽出器もいずれも再利用を前提とした道具であり、その操作は人手に頼る部分が大きいため、分析操作に要するコストや時間の低減を困難としている。
分液漏斗にかわる手段として、試験管中の上層と下層に分離した二層を人手によるピペッティング操作によって集めることもしばしばなされるが、分析の再現性が実験者の手技によって大きく変わってしまうこと、また、大量点数の試料を並列に取り扱うことが困難であることなどが問題である。



液-液分配後の2相の分離を効率的に行うために、水を通さず、有機溶媒のみを選択的に透過させる性質をもつ疎水性濾紙や、それを固定したカラムが知られている。しかしながら、このような濾紙においては、親水性基材であるセルロースに撥水性を付与するために用いられている特殊シリコンの一部が使用時に溶出するため、使用上の制約がある。また、カラムについては、液-液抽出時に非極性液体が下層にある場合には可能であるが、逆の場合には底面の疎水性濾紙に非極性液体が接触できないため十分に機能しない。
水より比重が大きい溶媒としては、クロロホルムやジクロロメタンなどが挙げられ、水より比重が小さい溶媒としては、ヘキサン、酢酸エチルなどが挙げられる。また、液-液抽出の場合、回収するのは極性液体か非極性液体か、加えて回収すべき液体が上層にあるのか下層なのかに注意する必要がある。
さらに、液-液分離工程は、液体同士の分離の問題のほかに、両者を効率的に界面交換反応させる方法に関する問題や、繰り返し抽出を行う方法に関する問題を考慮する必要がある。固-液抽出の場合も同様である。既存の濾紙やカラム等の液-液分離装置は、これらの問題には的確に対応しておらず、現在までに、これらの問題を解決し、ハイスループット化を実現するための基礎技術やそれらを応用したカラムや抽出システムは開発されていない。



液-液抽出技術開発へのニーズが高い分野としては、例えば、物質の誘導体化による高感度検出・定量分析技術の分野がある。これは、物質に誘導体化試薬を作用させることで、その物質を高感度検出・定量分析に適した部分化学構造によって標識された標識化合物に変換して検出、定量を行う技術である。この目的には、しばしばパイ電子系を有する部分化学構造による標識が行われるが、これは可視・紫外波長領域の光吸収や蛍光特性のほか、質量分析条件におけるイオン化効率の増大などにより、高感度検出・定量分析を狙ったものである。
高感度検出・定量分析を目的とする誘導体化試薬の多くは、分析対象となる物質がもともと持っている特定の官能基を作用点としている。これまでに、作用点となる官能基として、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アルコール水酸基、チオール基等に注目した誘導体化試薬が数多く開発・販売されている。例えば、カルボニル基を標識する試薬には、“Alexa Fluor 350 Hydrazide、Sodium Salt”、“Fluorescein-5-Thiosemicarbazide”など、カルボキシル基を標識する試薬は、“9-Anthryldiazomethane”、“5-(Aminoacetamido)Fluorescein”など、アミノ基を標識する試薬は、“AMCA―NHS”、“Fluorescamine”など、アルコール水酸基を標識する試薬は“9-Anthroylnitrile”、“Fluorescein-5-Carbonyl Azide、Diacetate”など、そして、チオール基を標識する試薬には、“Alexa Fluoro 350 C5 Maleimide”、“IC3-OSu”など、多くの種類が存在する。



しかしながら、この高感度測定技術では、多くの場合、誘導体化後の反応液中に大過剰の未反応の誘導体化試薬やそれに由来する夾雑物が残存している。このような場合、反応液の吸光度あるいは蛍光強度を直接測定しても、バックグラウンドノイズが大きすぎて反応液中に含まれる標識された物質の存在を検出・測定することができない。
従って、多くの場合、誘導体化した物質の検出や定量は、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動等の分離分析を組み合わせた分析結果を待たねばならない。このことは、数百、数千またはそれ以上の試料から目的の反応を検出するようなスクリーニングを行う上では、効率化を妨げる問題となる。



物質の誘導体化による高感度検出・測定技術の分野の具体例としては、還元糖の検出・測定技術が挙げられる。一般に、糖質は紫外・可視波長領域に明瞭な吸収を有さず、また質量分析時のイオン化効率が低いため、高感度測定や構造決定が困難な化合物として知られる。そのため、蛍光性物質等の標識化合物によって糖の還元末端のカルボニル基を修飾し、感度よく糖分子を検出・測定する方法(特許文献1参照)などが開発されている。



これまでに、還元糖の検出・測定のために、数種類の装置やキットが市販されている。例えば、糖鎖を切り出し、2-ピリジルアミン(PA)により標識誘導体化するための反応装置(宝酒造株式会社「PALSTATION」、「GlycoTAG」など)、4-アミノ安息香酸エチルエステル(ABEE)や4-アミノ安息香酸オクチルエステル(ABOE)により還元糖を修飾し、高速液体クロマトグラフィーにより分離・同定するための試薬キット(生化学工業株式会社「J-オイルABEE糖組成分析キット」、「J-オイルABOE糖鎖標識化キット」など)、水溶性蛍光化合物8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルフォン酸(ANTS)等により糖鎖を蛍光標識し、電気泳動によりバンドを検出・定量する方法(東洋紡績株式会社「FACE Carbohydrate Analysis Kits」や「FACE SE1000 Workstation」)などが市販されている。
しかしながら、その際に混入する大過剰の蛍光性標識誘導体化試薬から分析対象である糖質由来の標識化合物を精製する方法が存在しないことから、ハイスループット化の動きには十分に対応できていないのが現状である。



糖質に関する研究は、基礎研究のみならず、医学・薬学研究、食品利用研究、バイオマス利用研究等多岐にわたる研究領域において重要性が高い。医学・薬学研究領域においては、糖鎖の合成や代謝の制御による複雑な生命活動の維持とその崩壊による疾病の発現等が注目されている。
糖鎖生物学研究による知見として、例えば、呈示される糖鎖の構造や糖鎖関連酵素の活性変化が重要な疾病マーカーとなることが知られている。これまでに糖タンパク質、糖脂質等から糖鎖を切り出し、それをマッピングする方法等が開発されてきた。また、このような研究を支える基盤技術としての、糖鎖関連酵素のスクリーニングが精力的に行われてきた。



食品利用研究においては、低カロリー甘味料、プレバイオティックス活性を有するオリゴ糖等の食品素材の開発や有用酵素のスクリーニングが精力的に行われている。これらのスクリーニングの結果、酵素変換法や発酵生産法の確立を経て、サイクロデキストリンやエリスリトールなどの新食品素材の大量製造技術の確立に至っている。また、加工食品の物性の改善等を目的とした酵素製剤の開発が行われており、微生物資源からのアミラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ等のスクリーニングが行われてきた。



バイオマス利用研究においては、セルロース、キチン、ヘミセルロース、デンプン等の糖質を効率的に分解するための微生物・酵素のスクリーニングが行われてきた。遺伝子組換え技術による一層強力なセルラーゼの生産や生デンプン分解酵素のスクリーニングなど、実用化を目指した研究が進行している。さらに、エタノール発酵においては、酵母がヘミセルロース由来の五炭糖を代謝できないことから、代謝工学的技術を用いて五炭糖の代謝能を付与してエタノール生成効率を上げるための研究が行われている。その他にも、菌類多糖、海藻多糖、動物性多糖等の有用素材への変換について研究が進んでいる。
このように、糖質研究を支える糖質スクリーニング技術の効率化に対するニーズは極めて大きいものと考えられる。




【特許文献1】特開平10-267931号公報

産業上の利用分野


本発明は、液-液抽出あるいは固-液抽出のための装置、該装置を用いた抽出方法および物質の検出・測定法並びにそれらに用いるキットに関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
互いに混合せず2層を形成する以下の(A)に記載の液体, および, (B)に記載の液体の組み合わせによる液-液交換分配抽出用の装置であって、
液-液界面における溶質の交換分配反応を行う空間を有するカラムと、該空間へ両液体を注入するための上部の開口と、一方の液体を排出するための下部の閉栓可能な開口を有し、下部の開口と溶質の交換分配反応を行う空間の間に、細孔を有し且つ以下(C1)及び(C2)の特徴を有する多孔性材料を装着したものを、;並列に複数個連結したことを特徴とする、液-液交換分配抽出用の装置。
(A):水、又は、水に溶質を含有する液体。
(B):前記(A)の液体と液-液界面を形成する有機溶媒、又は、前記有機溶媒に溶質を含有する液体。
(C1):セルロース、ガラス繊維、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、及びナイロン、から選ばれる1以上の多孔性材料。
(C2):前記(B)の液体を含浸させることによって、前記(B)の液体で細孔が埋め尽くされた多孔性材料。

【請求項2】
装置上部の開口を閉栓する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。

【請求項3】
前記有機溶媒が、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ヘキサン、酢酸エチル、ベンゼン、及びトルエン、から選ばれる1以上を含むものである、請求項1又は2に記載の装置。

【請求項4】
前記多孔性材料が、セルロース濾紙、ポリエチレン多孔質フィルター、及びポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルター、から選ばれる1以上のものである、請求項1~3のいずれかに記載の装置。

【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の装置の各カラムの下端に、開口を閉栓する機能を備えた栓を有し、前記各カラムを連結し組み立てるための器具を有していることを特徴とする、液-液交換分配抽出用のハイスループット化キット。
産業区分
  • 処理操作
  • その他無機化学
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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16142_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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