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Hモード・ドリフトチューブ線形加速器

国内特許コード P07A009853
整理番号 NIRS-238
掲載日 2007年5月11日
出願番号 特願2005-172476
公開番号 特開2006-351233
登録番号 特許第4385150号
出願日 平成17年6月13日(2005.6.13)
公開日 平成18年12月28日(2006.12.28)
登録日 平成21年10月9日(2009.10.9)
発明者
  • 岩田 佳之
  • 山田 聰
出願人
  • 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明の名称 Hモード・ドリフトチューブ線形加速器
発明の概要 【課題】 Hモード・ドリフトチューブ線形加速器において、共振器の入射部の最初の数個のギャップ電圧を上げる。
【解決手段】 共振器の入射部のドリフトチューブの外径を大きくすること、入射部のドリフトチューブの内径を小さくすること及び入射部のドリフトチューブの曲率半径を小さくすることの何れかの組み合わせによって入射部のドリフトチューブ間の容量を増やし、それによって入射部の最初の数個のギャップ電圧を上げる。
【選択図】 図5
従来技術、競合技術の概要


Hモード・ドリフトチューブ線形加速器
ビーム軸に対し垂直に電流が流れるTE波(Hモード)を利用して荷電粒子を加速する線形加速器をHモード・ドリフトチューブ線形加速器と呼ぶ。Hモード・ドリフトチューブ線形加速器では、そのビーム軸に沿って多数のドリフトチューブが配列されており、それぞれ隣り合うドリフトチューブ間のギャップに所定の電圧が発生していて、粒子がドリフトチューブの中を通過するたびにその電圧により次々と加速されるようになっている。



IH型線形加速器について
Hモード・ドリフトチューブ線形加速器のうち、Interdigital H-mode(IH)型共振器を用いた線形加速器をIH型線形加速器と呼ぶ。図3に示すように、代表的なIH型共振器1は円筒形の共振器内部に上下(対向方向に)2枚のリッジ2と呼ばれる板が取り付けられている構造を持つ(リッジはなくても良い)。これらのリッジ2には、ステム3を介して複数個のドリフトチューブ4が上下交互に取り付けられて軸方向に配列されている。粒子はこれらのドリフトチューブ4の中を通過して軸方向に進む。



CH型線形加速器について
Hモード・ドリフトチューブ線形加速器のうち、Crossbar H-mode(CH)型共振器を用いた線形加速器をCH型線形加速器と呼ぶ。図16に示すように、代表的なCH型共振器10は円筒形の共振器内部にドリフトチューブが十字状かつ交互に取り付けられている。粒子はこれらのドリフトチューブ中を通過して軸方向に進み、ドリフトチューブ間の電場により次々と加速されてゆく。



それら共振器内部に、所定の周波数の高周波電力を投入すると共振が起こり、ドリフトチューブとドリフトチューブとの間のギャップ5に電圧(電場)が発生する。このギャップ5に発生した電場により粒子はギャップを超えるごとに次々と加速される。



このIH型線形加速器及びCH型線形加速器の原理は50年代に開発されていたが、近年まで実用化されていなかった。その大きな理由は、IH型共振器の電圧分布が共振器全体の構造で決定されるため、当時の2次元電磁場計算コードでは計算不可能であったためである。そのため、スケールモデルなどを製作して、電圧分布を調べる必要があった。これらの作業は膨大な時間や費用がかかる。しかしながら、近年の計算技術の発展により3次元電磁場計算コードが開発され、IH型共振器の電磁場分布が直接計算できるようになってきた。これに伴い、IH型共振器の設計が比較的容易となったため、最近ドイツGSI(ドイツ連邦共和国重イオン科学研究所)などで実用化が始まりつつある。



共振器設計における問題点
Hモード・ドリフトチューブ線形加速器の共振器設計において最も重要なのが、ギャップに発生する電圧(電場)分布が設計通りに得られるかどうかである。設計通りの電圧分布が得られないとビームは正しく加速されず、多くの粒子は加速途中でドリフトチューブ内壁などに衝突して失われてしまう。



粒子を加速するにあたり、ギャップに発生する電圧は高いほど短い距離で目的のエネルギーまで加速することができる。しかしながら、電圧を上げすぎると放電が起こるため、むやみに高い電圧を発生することはできない。放電限界電圧はドリフトチューブの表面状態や形状など多くの要素で決まるが、半経験的な指標がある。電圧分布の設計では、その放電限界を与える指標を超えない範囲で、なるべく高くするよう電圧分布を設定する。



次にIH型共振器の設計における共振器構造の工夫を説明する。まず問題となるのが入射部の電圧分布の調整である。IH型共振器では、入射部の最初の数個のギャップの電圧が設計値より低下してしまい、思うように電圧分布の調整ができない。特に収束方式としてAlternating Phase Focusing(APF)を採用した共振器では顕著である。



ドリフトチューブ線形加速器では入力される高周波によってギャップ間に電圧を発生させ、粒子を加速している。そのため、ギャップ間電圧は周期的に変化する。同期粒子がギャップ中央に来た際の位相を同期位相と呼ぶが、同期位相の選び方により粒子は収束及び発散の作用を受ける。具体的には正(負)の同期位相はビーム軸成分に発散(収束)、ビーム軸と垂直な成分に収束(発散)を受ける。従って同期位相の符号を数セル(ドリフトチューブの中心から次のドリフトチューブの中心までをセルと呼ぶ。)周期で振動的に変化させることでビーム軸成分及びビーム軸と垂直な成分両方の収束を得ることができる。このようにしてビームが出射されるまで全体の収束を試みようというのがAPF収束方式である。



入射部電圧分布
APF収束方式のIH型線形加速器においては、上述したように、入射部の最初の数個のギャップの電圧が下がる現象が見られる。図1は、72個のギャップを有するIH型線形加速器すなわち72ギャップモデルの電圧分布を示したものである。図1において、縦軸は、ギャップ電圧(MV)を示し、横軸は、ギャップ番号を示している。また、図1において、曲線Aは、軌道計算で求められたギャップ電圧をプロットしたものであり、この曲線Aが上述した設計された電圧分布を示す。他方、曲線Bは、3次元電磁場計算で得られたギャップ電圧をプロットしたものであり、この曲線Bが共振器の設計のための計算された電圧分布を示す。図1に示されているように、電圧分布全体を軌道計算で求められた電圧分布に合わせるように共振器径r(図3参照)を調節すると、入射部の最初の数個のギャップの電圧が下がってしまう。この場合、アクセプタンス低下などの弊害が予想されるため、可能な限り修正する必要がある。



図2の曲線Dは、図1における軌道計算で求められた電圧分布と3次元電磁場計算で得られた電圧分布との各ギャップにおける電圧差をプロットしたものである。図2において、縦軸は、電圧差を示しており、この電圧差は、3次元電磁場計算で得られた電圧と軌道計算で求められた電圧との差の、軌道計算で求められた電圧に対する比を百分率で示したものである。すなわち、電圧差=(3次元電磁場計算で得られた電圧-軌道計算で求められた電圧)/軌道計算で求められた電圧(%)である。また、図2の横軸は、ギャップ番号を示している。図2を参照すると、第1ギャップから第7ギャップまでの間において最大60%まで低下していることが分かる。



原因
IH型線形加速器における容量成分はギャップに集中している。そのため、電圧分布は主に、ギャップ容量により決定されると考えて良い。現在のセルテーブルにおいてギャップ長は単調増加している。ギャップ容量Cは、ギャップ長gとドリフトチューブの実効断面積Sを用いてC∝S/gのように書ける。よってギャップ容量は分数関数的に減少するため、電圧分布も同様に分数関数的な振る舞いをすることが予想される。



しかしながらAPF収束方式のIH型線形加速器ではドリフトチューブ長が図3に示すように増減する。これは、同期位相の選び方に依存している。図3の場合では、第10ギャップ付近でドリフトチューブ長が最も短くなっていることがわかる。



ドリフトチューブが短い場合、
(1)ギャップが集中するので、局所的容量が大きくなる
(2)ドリフトチューブ間の容量は、対向するチューブ断面だけでなくステムの一部が見えるため、大きくなる
(3)ステムの支持台が密になるため、リッジ間の容量も増加する
という現象が起きる。



以上から、予想されるドリフトチューブ間の容量分布は(1)分数関数の分布と(2)チューブ長の増減による分布の掛け合わせのようになる。よって総合的な容量分布及び電圧分布は図4に示したように入射部に偏り、且つ増減のある分布となることが予想される。図4において、(A)は分数関数の容量分布を示し、(B)はチューブ長の増減による容量分布を示し、(C)はこれらの容量分布を掛け合わせた総合的な容量分布を示している。また、これらのグラフにおいて、縦軸は、ギャップ容量(Cgap)、ドリフトチューブ間容量(CDT)、総合的な容量(Ctotal)をそれぞれ示し、横軸は、セル番号(cell#)を示している。



入射電圧分布の改善
入射部のギャップ電圧を上げるため、以下の方法が考えられる。
(1)入射部のリッジ2に切り欠きを入れる
(2)入射端のドリフトチューブ6を長くし、入射単板7とリッジ2との間の距離を取る
(3)入射部に容量性チューナーを設ける
(4)入射部のみリッジ間の容量を大きくする(リッジ間隔を短くする等)



先ず(1)と(2)では、入射部付近を周回する磁束を調整することができる。しかしながら前述のように電圧分布は主に容量分布により決定されているので、入射部の最初の数個のギャップの電圧のみを上げることはできない。実際、3次元電磁場計算をしてみると、電圧分布の形状を保ったまま入射部全体の分布が増減する結果となる。



次に(3)の容量性チューナーに関しても入射部全体の容量のみが増減してしまい、入射部の最初の数個のギャップのみの電圧を調整することは不可能である。同様な理由で(4)も有効でない。



【非特許文献1】
畑寿起、外7名、“重イオン用APF-IH型線形加速器の研究(II)”Proceeding of the 26th linear Accelerator Meeting in Japan (2001) 186-188
【非特許文献2】
山本和男、外6名、“低エネルギー入射小型APF-IH型線形加速器に関する研究”Proceeding of the 27th linear Accelerator Meeting in Japan (2002)



以上IH型共振器の設計にける共振器構造の工夫を説明したが、CH型共振器の設計も同様である。

産業上の利用分野


本発明は、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
共振器内部に発生するTE波を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器において、共振器の入射部容量を増やすことによって入射ドリフトチューブ間のギャップ電圧を高くするように設計されたことを特徴とするHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項2】
前記Hモード・ドリフトチューブ線形加速器が、共振器の内部に対向方向から交互に取り付けられた一連のドリフトチューブによって粒子を加速するIH型線形加速器であることを特徴とする請求項1に記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項3】
前記Hモード・ドリフトチューブ線形加速器が、共振器の内部に十字状方向から交互に取り付けられた一連のドリフトチューブによって粒子を加速するCH型線形加速器であることを特徴とする請求項1に記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項4】
前記入射部のドリフトチューブ間の容量は、入射部のドリフトチューブ間の容量であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項5】
前記入射部のドリフトチューブ間の容量は、入射部のドリフトチューブの外径、内径又は形状を変更することにより共振器の他の部分のドリフトチューブ間の容量に比べて増やしたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項6】
前記入射部のドリフトチューブ間の容量は、入射部のドリフトチューブの外径を共振器の他の部分のドリフトチューブの外径に比べて大きくすること、入射部のドリフトチューブの内径を共振器の他の部分のドリフトチューブの内径に比べて小さくすること及び入射部のドリフトチューブの外側又は内側の曲率半径を共振器の他の部分のドリフトチューブの外側又は内側の曲率半径に比べて小さくすることの何れかによって、あるいはそれら何れかの組み合わせによって増やしたことを特徴とする請求項5に記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項7】
前記共振器はAPF収束法を採用したことを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項8】
前記入射部のドリフトチューブ間のギャップ電圧は、入射部の最初の数個のギャップにおけるギャップ電圧であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。

【請求項9】
入射面と出射面で形状が異なるドリフトチューブを設けたことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載のHモード・ドリフトチューブ線形加速器。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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