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酵母細胞を用いたインフルエンザウイルスゲノムの複製・転写系

国内特許コード P07P004965
整理番号 T60
掲載日 2007年6月15日
出願番号 特願2005-334549
公開番号 特開2007-135487
登録番号 特許第4820991号
出願日 平成17年11月18日(2005.11.18)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
登録日 平成23年9月16日(2011.9.16)
発明者
  • 永田 恭介
  • 内藤 忠相
出願人
  • 国立大学法人 筑波大学
発明の名称 酵母細胞を用いたインフルエンザウイルスゲノムの複製・転写系
発明の概要

【課題】これまでマイナス鎖RNAウイルスゲノムを酵母細胞内に導入すること、ならびに
そうしたゲノムが酵母細胞内で複製することは確認されていない。
【解決手段】今回、本発明者は酵母(Saccharomyces cerevisiae)にインフルエンザウイルス粒子より精製したvRNPを導入することにより、酵母内でウイルスRNAゲノムからの転写
・複製反応を起こさせることに成功した。豊富な遺伝情報が蓄積された酵母細胞内で、ウイルスゲノムの複製、ウイルス遺伝子の転写、ウイルスタンパク質の発現が可能となれば、インフルエンザウイルスの感染、宿主内でのその増殖、病原性に関わる特異的な宿主細胞因子を同定することができる。このため本発明は、抗インフルエンザウイルス剤の開発に必須のツール、手法を提供できる。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


インフルエンザウイルスはヒトやトリを含むさまざまな動物に感染する。ウイルスが増殖するためには、宿主となる動物内に侵入し、細胞に感染する必要がある。そして、細胞内に侵入したウイルスは、増殖のためウイルス性因子に加えて、細胞内小器官を含めた多くの宿主因子の機能を利用する。よって、ウイルスゲノムの複製機構や病原性の分子機構を理解するためには、それらの機能に関与する宿主因子を同定し、解析することが重要である。



DNAウイルスにおいては、ウイルスゲノムをDNAとして簡易に細胞内に導入することができたため、転写・複製の分子機構が詳細に解析され、また多くの宿主因子がその機能に関与することが示されてきた。さらにそれら宿主因子の解析は、宿主細胞ゲノムの転写・複製機構の解析にも寄与し、生物学の発展に貢献してきた。また、RNAウイルスのなかでも
、ゲノムをプラス鎖RNAとしてもつウイルスは、そのRNAゲノムのみで感染性をもつことがわかっている(非特許文献1参照)。よって、試験管内で合成したウイルスゲノムRNAを
細胞に導入すれば、それらウイルスゲノムから転写・複製が起こる。DNAウイルスと同様
に、プラス鎖RNAウイルスも、再構成したウイルスRNAゲノムを細胞内に導入し、ウイルス増殖過程を解析できたことから、転写・複製などの分子機構が明らかとなり、それに伴い必要な宿主因子が同定されてきている(例えば非特許文献2、3および4を参照)。



しかし、インフルエンザウイルスを含めたマイナス鎖RNAをゲノムとしてもつRNAウイルスは、そのRNAゲノムのみを細胞に導入しても感染性を示さない。マイナス鎖のRNAゲノムからの転写・複製にはウイルス由来のRNA依存性RNAポリメラーゼが必要である。そのため、RNAゲノムは、該ウイルスポリメラーゼなどとウイルスRNA-タンパク質複合体(vRNP: viral RNA-viral RNA polymerase-nucleocapcid protein complex)を形成することで感染性をもつ。よって、再構成したゲノムRNAを細胞内で機能させるためには、vRNPとしてか、または同時にウイルスポリメラーゼなどの転写・複製に必要なウイルス性因子を発現させなければならない(例えば非特許文献5および6を参照)。よって、マイナス鎖RNAウイ
ルスにおいて、再構成したゲノムRNAを用いた細胞内での解析は他のウイルスよりも遅れ
ていた。



近年、インフルエンザウイルスにおいてリバースジェネティクスシステムが確立され、ウイルスゲノムの転写・複製や病原性の解析が盛んに行われている(例えば非特許文献7
)。しかし、それらはウイルス性因子を標的とした解析がほとんどで、宿主因子の機能解析を行っている例は少ない。また、現在の系では機能的な宿主因子を同定することも困難である。そのため、インフルエンザウイルス増殖に関与する未知の宿主因子を同定できる新たな系の開発が望まれている。

【非特許文献1】Neumann G ら、J Gen Virol, Vol.83, p2635-2662 (2002)

【非特許文献2】Kushmer D.B ら、 Proc Natl Acad Sci USA, Vol.100, p15764-15769 (2003)

【非特許文献3】Panavas T ら、 Proc Natl Acad Sci USA, Vol.102, p7326-7331 (2005)

【非特許文献4】Ahlquist P ら、J Virol, Vol.77, p8181-8186 (2003)

【非特許文献5】Luytjes W ら、Cell, Vol.59, p1107-1113 (1989)

【非特許文献6】Yamanaka K ら、Proc Natl Acad Sci USA, Vol.88, p5369-5373 (1991)

【非特許文献7】Neumann G ら、Proc Natl Acad Sci USA, Vol.96, p9345-9350 (1990)

産業上の利用分野


本発明は、酵母細胞を用いたインフルエンザウイルスゲノムの複製・転写系に関する。より詳しくは、インフルエンザウイルスのマイナス鎖RNAゲノムからの転写・複製を酵母
細胞おいて発現する系に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
インフルエンザウイルス粒子より精製したウイルスRNA-ウイルスRNAポリメラーゼ-ヌクレオカプシドタンパク質複合体(vRNP)を酵母細胞に導入することにより、該酵母細胞でそのインフルエンザウイルスRNAゲノム複製・転写を行わせることを特徴とする、インフルエンザウイルスの酵母内ゲノム複製系の作成方法。

【請求項2】
前記の導入が、酵母のスフェロプラストを調製し、ポリエチレングリコールの存在下で、精製したvRNPを混合することによる、請求項に記載の作成方法。

【請求項3】
外来レポーター遺伝子を組込んだモデルインフルエンザウイルスRNAゲノムと、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼおよびヌクレオカプシドタンパク質の発現用ベクターとを酵母細胞に導入することにより当該モデルインフルエンザウイルスRNAゲノムの複製およびその遺伝子の発現を該酵母細胞内で行わせることを特徴とする、インフルエンザウイルスの酵母内ゲノム複製系の作成方法。

【請求項4】
酵母細胞、インフルエンザウイルス粒子より精製したウイルスRNA-ウイルスRNAポリメラーゼ-ヌクレオカプシドタンパク質複合体(vRNP)、酵母細胞スフェロプラスト調製用の試薬類、トランスフェクション用試薬類、インフルエンザウイルスタンパク質発現用ベクターを少なくとも含む、インフルエンザウイルスゲノム複製系を作成するためのキット。

【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の方法で作成されたインフルエンザウイルスの酵母内ゲノム複製系を用いる、インフルエンザウイルスRNAゲノムの複製と転写に関わる宿主因子のスクリーニング方法。

【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の方法で作成されたインフルエンザウイルスの酵母内ゲノム複製系を用い、インフルエンザウイルスRNAゲノムの複製活性または転写活性、ウイルス因子-宿主因子の相互作用、あるいは宿主因子のウイルス増殖促進作用を作用の標的とする、抗インフルエンザウイルス剤のスクリーニング方法。

【請求項7】
外来レポーター遺伝子を組込んだモデルインフルエンザウイルスRNAゲノム、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼおよびヌクレオカプシドタンパク質の発現用ベクター、酵母細胞、酵母細胞スフェロプラスト調製用の試薬類、トランスフェクション用試薬類を少なくとも含む、インフルエンザウイルスRNAゲノム内に組み込まれた外来レポーター遺伝子の発現を測定することにより、酵母内インフルエンザウイルスゲノムの複製活性または転写活性、ウイルス因子-宿主因子の相互作用、あるいは宿主因子のウイルス増殖促進作用に影響を及ぼす抗インフルエンザウイルス候補物質の作用を調べるためのキット。

【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載の酵母内ゲノム複製系の作成方法において作成された、酵母にインフルエンザウイルスRNAゲノムが導入され、形質転換された酵母形質転換体。
産業区分
  • 微生物工業
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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