TOP > 国内特許検索 > バイオマスから水素を生産する方法

バイオマスから水素を生産する方法

国内特許コード P07A010638
掲載日 2007年10月4日
出願番号 特願2005-363506
公開番号 特開2007-159534
登録番号 特許第5334077号
出願日 平成17年12月16日(2005.12.16)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
登録日 平成25年8月9日(2013.8.9)
発明者
  • 横山 浩
  • 和木 美代子
  • 田中 康男
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 バイオマスから水素を生産する方法
発明の概要

【課題】家畜排泄物や食品残渣等の廃棄物バイオマス及びサトウキビ等のエネルギー作物由来のバイオマスを原料として水素を生産すること。
【解決手段】上記バイオマスを原料とし、種菌となる複合嫌気性微生物群の存在下に、71℃~79℃(好ましくは75℃)の温度範囲において、その原料を嫌気条件で加熱することによって、水素資化細菌の活性を抑制し、非常に簡便な手法・装置で水素を生産し、回収できる。複合嫌気性微生物群として、畜糞、コンポスト、活性汚泥及び嫌気性処理槽の汚泥等が例示できる。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


家畜の排泄物や食品残渣などの廃棄物を、資源循環の観点から、バイオマス資源として有効に利用し、有価的資源として回収するほかにもエネルギーとして効率的に利用する必要性は日に日に高まっている。また、近年ではエタノールやバイオディーゼルを生産するための原料として、サトウキビや菜種などエネルギー作物と呼称される作物の栽培機運が高まっている。



これらバイオマスからメタン醗酵で処理することにより、メタンが生産されることは従来からよく知られている。ところが、メタンガスは燃焼時に二酸化炭素や一酸化炭素に変化するため、地球温暖化の原因物質として、今日好ましくないものとして扱われている。これに対し、燃焼時に空気を汚すことのない水素は、地球温暖化の懸念がないばかりでなく、環境に対して低負荷型の次世代エネルギーとして注目されつつある。



もっとも、従来技術では、廃棄される有機物からメタンを回収することが資源回収の根幹的手法であり、水素を生産することを主眼とするものではなかった。そして、環境問題、とりわけ地球温暖化問題を見据えて、バイオマスから水素を高い効率で生産するという着想はきわめて今日的なものである。



そこで、家畜の排泄物などの廃棄物からメタンガスを得ることに主眼を置いた古典的技術にかわって、水素ガスを生産することが時代の要請といえる。



嫌気性微生物を利用して水素を生産する手段として、純粋菌である水素生産細菌を単独使用する方法と、活性汚泥やコンポスト等に含まれている微生物群を純化することなく、そのまま混合微生物群として使用する方法とがある。純粋菌を利用する手段は基質の制約や原料となるバイオマスの加熱滅菌を必要とし、多量のエネルギーを投入しなければならず、家畜の排泄物などの廃棄物に適用することは困難が伴う。これに対し、後者の混合微生物群を利用する方法は、基質の制約や原料の滅菌を必要とせず、適用範囲が広い利点がある。



畜糞、コンポスト、活性汚泥や嫌気性処理槽の汚泥中には、水素生産菌、メタン菌などの多種多様な微生物が含まれている。さらに、それらに含まれている微生物は単独では培養が困難であるため、未だ同定されていない、未知の、多くの微生物から構成されている。メタン醗酵や水素醗酵などの醗酵は嫌気条件を必要とするため、畜糞、コンポスト、活性汚泥や嫌気性処理槽の汚泥中に含まれる雑多な微生物の集団の中で、醗酵に関する微生物群は複合嫌気性微生物群といえる。
メタン醗酵の初期段階において水素が一時的に生産されることが知見されている。しかしながら、メタン醗酵を継続していると、水素はメタン生産細菌に喰われてしまい、実際上水素ガスを回収することは極めて困難であることも知られるに到っている。



天然には、嫌気性微生物として、メタン生産菌などの水素資化細菌と水素生産菌とが共に存在し、これらがバイオマスに作用する。醗酵当初には水素も相当量生産されるが、発生した水素は水素資化細菌により、次々と喰われてしまう。つまり、嫌気性バイオリアクターに担持されたメタン生産菌は水素生産菌と共生し、効率よく水素からメタンが生産されている。



水素を分解・消費してしまう水素資化細菌はメタン菌のみではない。ホモ酢酸菌も水素を喰ってしまうのである。したがって、これら水素資化細菌の水素を消費してしまう作用を抑制する条件を持続できれば、水素を安定的に取り出し得る筈である。



この視点からメタン生産細菌の持つメチルレダクターゼ酵素を阻害する作用物質を添加して、水素が消費されないように処理する技術が開示されている(特開平4-346788号公報)。



また、メタン発酵の初期段階に水素生産細菌が活動する点に着目して、バイオリアクターの装置外に、速やかに水素を分離することによって、ある程度の水素を得ることができる技術が開示されている(特開2002-272491号公報)。



ところが、叙述の技術には、未解決の課題が残されている。例えば、メタン生産細菌の持つメチルレダクターゼ酵素を阻害する添加剤を添加しても、もしもホモ酢酸菌が存在すれば、この水素資化菌によって水素が消費されてしまう。それぞれの水素消費細菌のためにそれぞれの酵素阻害添加薬を準備することは得策とは言えず、生産コストも嵩むこととなる。



水素生産に関する技術を概観すると、
(A)原料となるバイオマスを加熱滅菌して、純化した水素生産菌を接種する純粋培養系であって、通常、醗酵温度を20~40℃の中温醗酵する場合と醗酵温度を50~60℃とする高温醗酵とがある。
(B)雑多な微生物からなる微生物群(以下、複合嫌気性微生物群と称することがある。)を用いる複合培養系であって、水素生産菌が耐熱性である点を利用して、醗酵温度を50~60℃に保って実施する高温水素醗酵である。この場合原料の滅菌処理が不要となる利点がある。
(C)複合嫌気性微生物群に熱処理(60~90℃)又は煮沸による前処理を施し、熱に弱い水素資化細菌を滅菌・抑制させ、耐熱性である水素生産菌群を濃縮して利用する手法がある。この技術では、前処理の後、その培養液を醗酵温度20~40℃の中温又は50~60℃の高温に保って水素生産を実施する。この手法において、原料を60~90℃に加熱する目的は、あくまでも前処理であって、この温度で水素を発生させるものではない。

【特許文献1】特開平08-308591号公報

【特許文献2】特開平08-294396号公報

【特許文献3】特開平08-252089号公報

【特許文献4】特開平07-031484号公報

【特許文献5】特開2002-272491号公報

【特許文献6】特開2005-013045号公報

【特許文献7】特開2003-135089号公報

産業上の利用分野


本発明はバイオマスを使用して水素ガスを生産する技術に関する。水素生産細菌固有の耐熱性を利用し、しかも水素生産を阻害するメタン生産菌などの水素資化細菌による水素分解・消費を抑制して、安定して水素を簡易な手段・装置によって獲得する技術に係わる。

特許請求の範囲 【請求項1】
有機物を原料とし、畜糞中に含まれている複合嫌気性微生物群の存在下に、71℃ないし79℃の温度範囲において該原料を嫌気条件で少なくとも2日間加熱することからなる、水素醗酵を利用した水素の生産方法。

【請求項2】
複合嫌気性微生物群が、畜糞、コンポスト、活性汚泥及び嫌気性処理槽の汚泥のいずれかである請求項1に記載の水素の生産方法。

【請求項3】
原料となる有機物が、家畜排泄物、生ごみ等の食品残渣又は食品加工工場から排出される有機物を含む廃棄物又は廃液及びサトウキビを含むエネルギー作物の群のいずれかである請求項1に記載の水素の生産方法。

【請求項4】
外部から水素醗酵の種菌を加えることなく、畜糞を原料とし、該畜糞中に含まれている複合嫌気性微生物群を種菌としてそのまま使用し、70℃超85℃以下の温度範囲において該原料を嫌気条件で少なくとも2日間加熱して水素醗酵を促進させることからなる水素の生産方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 処理操作
  • 微生物工業
  • 衛生設備
  • 廃棄物処理
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2005363506thum.jpg
出願権利状態 権利存続中


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close