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超電導コイル

国内特許コード P07A010728
整理番号 /NO33498
掲載日 2007年10月26日
出願番号 特願2005-005453
公開番号 特開2006-196604
登録番号 特許第4558517号
出願日 平成17年1月12日(2005.1.12)
公開日 平成18年7月27日(2006.7.27)
登録日 平成22年7月30日(2010.7.30)
発明者
  • 岩熊 成卓
  • 富岡 章
  • 今野 雅行
  • 富士 広
  • 鈴木 賢次
  • 和泉 輝郎
  • 塩原 融
  • 林 秀美
出願人
  • 岩熊 成卓
  • 株式会社フジクラ
  • 公益財団法人鉄道総合技術研究所
  • 九州電力株式会社
  • 富士電機株式会社
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明の名称 超電導コイル
発明の概要 【課題】 並列化超電導導体を用いて交流損失の抑制を可能とし、かつコイルの電流容量の増大を図り、さらに、励磁突入時や突発的な短絡事故時等における過電流による導体の焼損を防止し、安全な大容量の超電導コイルを提供する。
【解決手段】 複数本の超電導素線40をコイル軸方向に並列配置してなる二次並列導体50を、複数層並列に積層してなる三次並列導体60を超電導導体ユニットとし、この超電導導体ユニットとしての三次並列導体60を、巻枠55の外周面上に巻回してなるものとする。
【選択図】 図1
従来技術、競合技術の概要


超電導コイルは、高磁界発生手段として種々の分野で実用されている。一方、前記変圧器やリアクトルなどのような交流機器への超電導コイルの適用は、超電導導体が交流によって損失を発生するという現象があることから、その実用化は、あまり進んでいない。



しかしながら、近年、超電導導体素線の細線化による交流損失の小さな超電導線が開発されて以来、変圧器などの交流機器への適用研究が進展し、その超電導コイルの構成に関しても、種々の提案が行われている。



この場合の超電導導体としては、液体ヘリウムの蒸発温度である4Kの極低温で超電導状態を維持する金属超電導体を使用した超電導線が、実用的な超電導材料として、主に使用されるが、最近では、酸化物超電導体を適用した超電導コイルの開発も進められている。この酸化物超電導体は、高温超電導体とも呼ばれており、この高温超電導体を使用した場合には、金属超電導体を使用した場合に比べて運転コストが低い利点がある。



ところで、通電電流が高速で変動する、例えば変圧器のような交流機器において、複数の導体を並列に使用するときには、導体の転位が行われる。これは、複数の導体の相対位置を変えることによってそれぞれの導体を磁気的に一致させて誘起電圧の差を小さくし、これによってそれぞれの導体の電流分担を均一にするためである。



通電電流によって発生した磁束によるそれぞれの並列導体の誘起電圧の差によって、循環電流が誘起されるが、銅やアルミなどの通常の導体の場合には、インピーダンスは抵抗性成分が主であるので、循環電流は通電電流に対し位相がおよそ90°ずれたものになる。そのため、例えば30%の循環電流が発生したとしても、1本の導体に流れる電流は、通電電流の100%とこれに90°の位相差のある30%の循環電流とのベクトル和となって、その絶対値はそれぞれの二乗の和の平方根になることから、約105%となり、循環電流の割には電流値の増加は小さい。



一方、導体として超電導線を用いた場合、超電導状態では抵抗はほぼ零であるので、循環電流をきめるインピーダンスはほとんどインダクタンスで決まる。従って循環電流は通電電流と同相になり、仮に循環電流が30%とすると、通電電流にこの循環電流が加算されて超電導線には130%の電流が流れることになる。この電流値が、後に詳述する臨界電流に達すると、交流損失が増大したり、偏流が増進する。



また、超電導コイルの巻線に用いられる超電導導体(または超電導線)には、臨界温度,臨界電流,臨界磁場が存在する。即ち、超電導線が超電導状態を維持するためには、温度,電流,磁場が、所定の臨界値以下である必要がある。



循環電流によって超電導線に臨界電流以上の電流が流れた場合には、超電導状態から常電導状態、すなわち抵抗を持った通常の導体になり、ジュール発熱により超電導線は破損する可能性が生じる。



このように、超電導線を用いたコイルでは、循環電流を抑制することは非常に重要である。そのために、前述のように転位を行い、循環電流を抑制することが行われている。なお、酸化物超電導線の場合には、合金超電導体に比べて曲げの力に弱い性質を持っており、性能を発揮するための許容曲げ半径が存在する。従って、並列本数が多いほど、すなわち転位部が多いほど不安定箇所が多くなるので、転位作業には細心の注意を要する。



循環電流を抑制しつつ不安定箇所としての転位部を少なくし、転位作業を簡単にして低コスト化を図ることを目的とした超電導コイルの構成は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された発明の骨子は、下記のとおりである。即ち、「複数の超電導線を並列化し巻回してなる超電導コイルにおいて、巻線端部のみで転位を行なう構成とすること、加えてコイルの層数を、並列化している超電導線の並列本数の4倍(本数×4倍)の整数倍とすることで、転位部を少なくし、循環電流を抑制しつつ不安定部を少なくし得る。その結果、転位のための作業,時間が短縮されて安価となるだけでなく、少ない不安定部で循環電流を抑制できることから、高速の励磁,消磁を安定に行なうことが可能になるという利点も得られる。」ことにある。



図7は、特許文献1の図1に記載された超電導コイルの転位構成の一例を示す。図7においては、例えば、コイルの半径方向に3本重ねた超電導線3aを、巻枠1aから巻枠1bの方向に巻回して形成するに当たり、超電導線3aが巻枠1a側の巻線の始まりではコイル内径方向から、例えば、図示しない(A1,A2,A3)の順に重ねて巻かれているとして、巻線端部の転位部2bにおいて、まず(A3)を次のターンに曲げ、同様に(A2,A1)と転位作業を行なうことで、巻枠1b側の巻線の終わりでは、例えば(A3,A2,A1)の順にする。上記により、特許文献1の図4に記載された従来の転位構成に比較して、転位部や巻線の曲げ数が少なくなるので、作業が著しく簡単になる。



なお、前記の「コイルの層数を、並列化している超電導線の並列本数の4倍(本数×4倍)の整数倍とする」構成例については、ここでは説明を省略する(詳細は、特許文献1参照)。



上記特許文献1に記載のような転位構成を採用することにより、導体を構成している超電導線のインダクタンスの均一化および電流分担の均一化を図ることができる。これにより、超電導線の並列本数を増加させることで電流容量を増大でき、かつ、並列本数増加による付加的な損失をなくすことができる。



次に、前記酸化物超電導材料(高温超電導線材)の従来技術について述べる。高温超電導線材の量産性の高い好ましい製造方法として、例えば、フレキシブルなテープ基板上に、酸化物超電導材料を膜状に形成する方法が考えられ、レーザアブレーション法、CVD法等の気相法を用いた製造方法の開発が進められている。上記のような、テープ基板上に酸化物超電導膜が形成された構造を有する高温超電導線材は、最外層に超電導膜が露出し、露出した側の表面は何ら安定化処理が施されていない。そのため、このような高温超電導線材に比較的大きな電流を流した場合に、局所的な熱発生のため、超電導膜が局所的に超電導状態から常電導状態へ転移し、電流輸送が不安定になるという問題があった。



前記問題点を解決し、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうことができる、ならびに、長期間の保存によってもその安定性が低下しない酸化物超電導導体およびその製造方法を提供することを目的として、特許文献2には、下記のような構成を備えたテープ状の超電導線が開示されている。



即ち、「フレキシブルなテープ基板とテープ基板上に形成された中間層と、中間層上に形成された酸化物超電導膜と、酸化物超電導膜上に形成された、厚さが0.5μm以上の金または銀からなる膜(常電導の金属層)とを備える超電導線」である。特許文献2に記載された実施例の一例としては、「基板としてのハステロイテープの上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層もしくは酸化マグネシウム層が設けられ、この上にY-Ba-Cu-O系酸化物超電導膜が形成され、さらにこの上に金または銀からなるコーティング膜が形成される。」
しかしながら、上記特許文献2に記載されたような量産性が高いテープ状の超電導線材を交流機器に用いた場合、超電導線材に発生する交流損失は、偏平なテープの形状異方性により、テープの偏平な面に垂直に作用する垂直磁界中の交流損失が支配的となり、交流損失が増大する問題がある。また、転位構成に関しても難があり、これ等の問題を解消するため、本願発明の一部の発明者等は、国際出願(PCT/JP2004/009965)により、以下のような超電導線材および同線材を用いた超電導コイルを開示している。



図6は、前記国際出願において図1として開示された超電導線材である。即ち、前記国際出願は、「交流損失の抑制が可能な超電導線材を提供し、さらにこの超電導線材を用いた超電導コイルは、転位なしの簡便な構成により線材に対する垂直磁界による鎖交磁束がキャンセル可能な構成で、かつ、垂直磁界による線材内循環電流を抑制して電流分流を均一化でき、これにより低損失の超電導コイルを提供すること」を目的とし、図6に示すように、「基板31面上に超電導薄膜を形成してテープ状にしてなる超電導線材において、少なくとも超電導層33としての超電導薄膜部に、スリット35を加工し、断面が矩形状の複数の超電導薄膜部に電気的に分離して並列化した並列導体、即ち、複数の要素導体を並列化した並列導体としてなるものとし、また、前記超電導線材を巻回してなる超電導コイルとしては、超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素30間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなる、転位なしの簡便なコイル構成」を開示する。



なお、図6において、部番30は、分割された金属層および超電導層からなる導体要素を示し、32は中間層、34は金属層、35は分割溝としてのスリット、36は電気絶縁性材料を示す。図6(a)に示す分割前の超電導導体は、例えば、基板31としてのハステロイテープの上に、電気絶縁層の機能を有する中間層32を設け、この上に超電導層33としてY-Ba-Cu-O系酸化物超電導膜を形成し、さらにこの上に、常電導の金属層34として、例えば金または銀からなるコーティング膜を形成したものを用いる。また、前記中間層32としては、ガドリニウムジルコニウム酸化物(Gd2Zr2O7)層上に酸化セリウム(CeO2)層を形成した2層構造を用いる。なお、前記金属層34は設けなくともよい。



上記超電導導体を、図6(b)に示すように、超電導導体の長手方向にスリット加工し、図6(c)に示すように、スリット加工して形成された溝の中および導体の周囲全体にわたって、エポキシ樹脂,エナメルなどの可とう性をもつ電気絶縁性材料36を充填して並列導体を構成する。上記のような超電導線材を超電導コイルに適用する場合には、前記並列導体からなる超電導線材を、図6(b)に示すように、コイル中心軸14を中心として、図示しない電気絶縁性材料からなる円筒状巻枠の外周面上に、円筒層状に巻回する。



上記図6に示す超電導線材は、超電導薄膜部を複数に分割し、電気的に並列化することで、マルチフィラメント超電導導体として機能し、電流分流の均一化が図れると共に、超電導線に垂直方向に印加される磁界が低減でき、結果として交流損失を低減することが可能になる。



なお、前記国際出願(PCT/JP2004/009965)は、さらに、上記図6に示す超電導線材を適用する超電導コイルの好ましい構成について開示する。即ち、前記国際出願は、「前記超電導線材を巻回してなる超電導コイルとしては、超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記並列導体の各導体要素間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えるものとする。これにより、交流損失の抑制が可能な超電導線材を提供し、さらにこの超電導線材を用いた超電導コイルは、転位なしの簡便な構成により線材に対する垂直磁界による鎖交磁束がキャンセル可能な構成で、かつ、垂直磁界による線材内循環電流を抑制して電流分流を均一化でき、これにより低損失の超電導コイルを提供することができる。」旨を記載する(詳細は、前記国際出願参照)。



次に、変圧器の短絡事故等の過電流対策について述べる。変圧器が短絡事故を起こすとコイルに大きな短絡電流が流れて過大な電磁力が働く。超電導変圧器の場合には、常電導変圧器に比較して電流密度が高く、言い換えれば同じ電流容量であれば超電導変圧器の方が導体断面積が小さい。従って、同じ電磁力が導体に作用した場合、超電導変圧器の方がより大きな応力が導体に作用することになる。酸化物超電導変圧器の場合には、導体が酸化物であるので機械的強度が比較的低く、この過電流時の電磁力に耐えられない可能性がある。



この問題を解決するための手段が、特許文献3に開示されている。特許文献3のに要約の記載を引用すれば、即ち、「円筒状の絶縁巻枠の外周面側に螺旋状の溝を形成し、この溝に沿ってテープ状の超電導線材を巻回してなる超電導コイルにおいて、前記超電導線材に重ねてその外周側に銅,銅合金,チタン,ステンレス鋼等の常導電体を用いた金属テープを巻き付けて樹脂の硬化処理などによりバインドし、さらに金属テープを超電導線材と電気的に並列接続する。これにより、短絡事故などの際に超電導線材に加わる半径方向の電磁力を外周側から金属テープで支持し、さらに、過電流によるジュール発熱で超電導線材が常電導化した場合には、電流の一部を金属テープに分流させて急激な温度上昇によるコイル焼損を防ぐ。」
【特許文献1】
特開平11-273935号公報(第2-4頁、図1-4)
【特許文献2】
特開平7-37444号公報(第2-7頁、図1)
【特許文献3】
特開平2001-244108号公報

産業上の利用分野


この発明は、通電電流が高速で変動する電気機器、例えばエネルギー貯蔵,磁場応用,変圧器,リアクトル,限流器,モータ,発電機等に用いる超電導コイルに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
複数本の超電導素線をコイル軸方向に並列配置してなる二次並列導体をユニットとし、この二次並列導体ユニットを複数層並列にコイル径方向に積層してなる三次並列導体を単層もしくは複数層巻回してなる超電導コイルであって、前記超電導コイルの構造もしくは配置上、超電導コイルによって生ずる磁場分布によって前記二次並列導体ユニットの各超電導素線間に作用する垂直鎖交磁束が、互いに打ち消すように作用する部分を、少なくとも一部に有してなるコイル構成を備えることを特徴とする超電導コイル。

【請求項2】
請求項1に記載の超電導コイルにおいて、前記超電導素線は、基板面上に形成した超電導層を、複数の超電導導体に電気的に分離して並列化してなるものとすることを特徴とする超電導コイル。

【請求項3】
請求項1に記載の超電導コイルにおいて、前記超電導素線は、基板面上に、電気絶縁層の機能を有する中間層、超電導層を積層し、かつ前記超電導層を電気的に分離して並列化してなるものとすることを特徴とする超電導コイル。

【請求項4】
請求項1に記載の超電導コイルにおいて、前記超電導素線は、基板面上に、電気絶縁層の機能を有する中間層、超電導層および金属層を積層し、かつ前記超電導層および金属層を電気的に分離して並列化してなるものとすることを特徴とする超電導コイル。

【請求項5】
請求項1に記載の超電導コイルにおいて、前記二次並列導体ユニットを複数層並列にコイル径方向に積層してなる三次並列導体を巻回する際に、前記各層の二次並列導体ユニットを転位してなることを特徴とする超電導コイル。

【請求項6】
請求項1に記載の超電導コイルにおいて、前記三次並列導体における複数本の超電導素線の内、少なくとも1本の超電導素線は、常電導導体材料からなる常電導素線に置き換えてなることを特徴とする超電導コイル。

【請求項7】
請求項に記載の超電導コイルにおいて、前記三次並列導体における複数層の二次並列導体の内、最外層の二次並列導体は、常電導素線からなる二次並列導体に置き換え、この常電導素線からなる最外層は、転位しない構成とすることを特徴とする超電導コイル。

【請求項8】
請求項に記載の超電導コイルにおいて、前記三次並列導体における複数層の二次並列導体の内、最外層の二次並列導体は、常電導材料もしくは高強度の絶縁材料からなる電磁力支持部材に置き換えてなることを特徴とする超電導コイル。

【請求項9】
請求項6に記載の超電導コイルにおいて、前記三次並列導体における複数層の各二次並列導体を構成する複数本の超電導素線の内、コイル軸方向端部の超電導素線は、常電導導体材料からなる常電導素線に置き換えてなることを特徴とする超電導コイル。

【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の超電導コイルにおいて、前記三次並列導体を複数層巻回してなる超電導コイルは、1つの巻枠に三次並列導体を複数層巻回してなることを特徴とする超電導コイル。
国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 登録
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