TOP > 国内特許検索 > 石積壁の耐震補強方法

石積壁の耐震補強方法

国内特許コード P07A010815
整理番号 /NO33523
掲載日 2007年10月26日
出願番号 特願2005-101707
公開番号 特開2006-283309
登録番号 特許第4463140号
出願日 平成17年3月31日(2005.3.31)
公開日 平成18年10月19日(2006.10.19)
登録日 平成22年2月26日(2010.2.26)
発明者
  • 杉山 友康
  • 太田 直之
  • 岡田 勝也
  • 山本 彰
  • 鳥井原 誠
  • 山田 祐樹
出願人
  • 財団法人鉄道総合技術研究所
  • 株式会社大林組
発明の名称 石積壁の耐震補強方法
発明の概要

【課題】 地震時の変形防止機能及び地震時強度増加機能が上記した従来方式と同等以上でかつ建設コストも低廉となる石積壁の耐震補強方法を提供する。
【解決手段】 石積壁の表面で4個の積石材がほぼ会合する積石会合部P1付近の積石材2B等をコア抜きカッター11で除去し外部から胴込石領域に到達する挿入開口12を形成し、前端が尖端部13bで開口後端が流入口13cとなる打込注入管13を、挿入開口12から挿入し衝打を加えて押し込み、打込注入管13の吐出孔13d1等が略上方に向くようにしてグラウト材16を注入した後に打込注入管13を引き抜いて硬化させ略球根状の固化領域を4個の積石材の背後と地盤Gとの間に形成する工程を繰り返し、固化領域を石積壁の表面から見た平面配置が略散点状になるように複数形成させる。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


従来、特に鉄道沿線に存在する石積壁の構成としては、図8に示されるものが一般的である。この石積壁1は、地盤Gの法面(急勾配の斜面)Sに沿って積石材2を積み上げるとともに、隣接する積石材2どうしの間の空隙に積石材2よりも小径の栗石である胴込石4を充填し、かつ、積石材2の背後でかつ地盤Gとの間の空間に積石材2よりも小径の栗石である裏込石5を充填することにより構成されている。このような構成により、石積壁1は、地盤Gの法面Sの崩落を防止し、地盤Gからの土圧を支持する擁壁としての機能を果たしている。図8において、符号3は、この石積壁1の基礎を示しており、一又は複数の石材、又はコンクリート(無筋コンクリート又は鉄筋コンクリート)からなっている。また、図8において、符号6は、この石積壁1の基礎3の下方と地盤表面との間に敷設される基礎栗石を示している。また、図8において、符号8は、この石積壁1の下端と、基礎3の上方を被覆するように設置される被り土を示している。



上記した従来の石積壁1に用いられる積石材2としては、一般に、図9に示す間知石(けんちいし)2Kが用いられる。図9に示すように、間知石2Kは、略角錐台形の立体の底部に厚板状の部分が接合されてなる形状に形成された石材である。間知石2Kのうち、厚板状部の底面に相当する符号23で示す部分は、「面(つら)」と呼ばれ、略長方形状又は略正方形状となっており、積まれた後は、石積壁1の表面となる。また、間知石2Kのうち、厚板状部の側面に相当する符号22で示す部分は、「合端(あいば)」と呼ばれ、積まれたときに間知石どうしが接触する部分である。また、間知石2Kのうち、角錐台形部に相当する符号21で示す部分は、「胴(どう)」と呼ばれ、隣り合う間知石どうしの胴21で囲まれた空間に充填されるのが、胴込石4である。間知石2Kのうち、角錐台形部の頂面に相当する符号24で示す部分は、「友(とも)」と呼ばれ、積まれた後は、間知石2Kの後端(地盤Gに最も近い端部)となる部分である。図9においてL10で示す長さは、「控え長さ」と呼ばれ、間知石2Kが擁壁に積まれた場合、擁壁表面から地盤方の後端までの奥行き距離を示している。また、従来の鉄道沿線に存在する石積壁では、下段の積石材のうえに上段の積石材を積む場合に、モルタル等の接合材を用いない「空積み(からづみ)」という方式が採用されている。下段の積石材のうえに上段の積石材を積む場合に、モルタル等の接合材を用いて積む方式は、「練積み(ねりづみ)」と呼ばれている。



また、従来、鉄道沿線に存在する石積壁では、下方から上方へと間知石を積み上げていくことになるが、ある段(その上方にさらに新たな間知石が積まれる状態)における間知石の上端の輪郭線は、略水平方向に、ジグザグした波線状となっており、略「V」字状に凹んだ箇所(以下、「谷(たに)」という。)に、新たな間知石が、その正面形状が略菱形状になる(いずれかの四隅角点が最も高さの高い頂点となる)ように積まれる。このような間知石の積み方を、「谷積(たにづみ)」という。



このような石積壁に地震が作用した場合には、大きな変形を生じたり、崩壊したりすることもあった。このため、鉄道事業者は、石積壁の地震時の変形を防止するとともに地震時強度を増加させる方法の確立を急いでいた。このような方法(以下、「石積壁の耐震補強方法」という。)の一つとして、以下に説明する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。



まず、石積壁の目地(図8における9のような石材どうしが接して略線状となっている箇所)にシール材(早強セメントに珪砂と有機性接着剤を適宜に混合し水を加えて練ったもの等)を押し込んで固め、積石材どうしを一体化させる。この際、その後にグラウト注入を行う注入口の部分は、あらかじめ管などを差し込んだ状態でシールを施工し、シールの固化後に管などを抜くことにより注入口を形成する。シール工程の後には、注入口を用いて、市販のグラウト材を注入する。この注入工程により、積石材の背後の胴込石の箇所と裏込石の全部の箇所には、全面的にグラウト材が充填される。この注入工程の後、グラウト材がある程度固化した状態で、口径90ミリメートル、長さ45センチメートル程度の円柱状のコアを抜き除去する。このコア抜き工程の後、コアを抜いた空跡に水濾過体を設置する(排水部形成工程)。水濾過体としては、口径75ミリメートルで両端が開口し円筒部に多数の穴があけられた塩ビ管からなる外筒と、外筒の中に収容された円筒状の特殊フィルタ(内外面を形成するポリプロピレンの網目構造のパイプとこれらの間のポリエチレンテレフタール繊維充填材とが組み合わされた円筒体)とで構成されたものが用いられる。このような方法により、石積壁の地震時の変形を防止しかつ地震時強度を増加させることができ、かつ、石積壁の背後に浸透してきた雨水などを確実に排水することができ、石積壁の背後に充満した水による石積壁の崩壊や倒壊を防止することができる、というものである。



しかしながら、石積壁の地震時の変形防止機能及び地震時強度増加機能が上記した従来の石積壁の耐震補強方法と同等以上で、かつ、建設コストも低廉となる石積壁の耐震補強方法の開発が現在強く要請されている。

【特許文献1】特開2000-355949号公報

産業上の利用分野


本発明は、地盤法面に沿って積石材を積み上げ積石材と地盤との空隙に積石材よりも小径の栗石を充填して地盤法面の崩落を防止し土圧を支持する石積壁の地震時の変形を防止するとともに地震時強度を増加させる方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
地盤の法面の崩落を防止し土圧を支持する擁壁のうち、前記地盤法面に沿って積石材を積み上げるとともに隣接する前記積石材どうしの間の空隙に前記積石材よりも小径の栗石である胴込石を充填しかつ前記積石材の背後の地盤との間に前記積石材よりも小径の栗石である裏込石を充填することにより構築される石積壁の地震時の変形又は崩壊を防止するための耐震補強方法であって、
前記石積壁の表面において4個の積石材がほぼ会合する箇所である積石会合部付近の積石材をコア抜きカッターを用いて略円柱状に除去し外部から前記胴込石領域に到達可能な挿入開口を形成し、
金属からなる中空円筒の前端を閉塞して錐状の尖端部とするとともに前記円筒の後端を開口させて流入口としかつ前記尖端部と流入口の間に複数個の吐出孔を開設した打込注入管を、前記挿入開口から前記胴込石領域の前部に挿入した後、衝打を加えて胴込石領域の内部方向へ押し込み、前記打込注入管の裏込部吐出孔を裏込石領域の後部の地盤手前位置付近まで到達させ、
前記打込注入管の胴込部吐出孔と裏込部吐出孔が略鉛直上方に向くように設定し、前記打込注入管の流入口に注入プラント側の注入ホースを連結し流動体状のグラウト材を前記注入プラントの注入ポンプから前記注入ホースを経て所定の注入量だけ注入した後に前記打込注入管を引き抜いて前記グラウト材を硬化させ、前記胴込石及び裏込石とこれらの空隙に充填された前記グラウト材を硬化させることにより略球根状の固化領域を前記4個の積石材の背後と前記地盤との間に形成し、
前記工程を繰り返すことにより、前記略球根状固化領域を、前記積石材の背後と前記地盤との間に、前記石積壁の表面から見た平面配置が略散点状になるように複数形成させること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項2】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記所定の注入量は、前記胴込石又は裏込石の空隙に前記グラウト材が充填されて硬化した場合に、略球根状の固化領域が前記4個の積石材の背後と前記地盤との間に形成されるのに必要な前記グラウト材の量をあらかじめ計算によって算出しておくこと
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項3】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記4個の積石材の目地のうち前記積石会合部が略中央部となるような外縁目地部の適宜の箇所に小孔を開設し管状部材である注入確認管を前記胴込石中まで差し込んでおき、前記注入確認管から前記グラウト材が漏出してきたときをもって、前記所定の注入量が注入されたと判断すること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項4】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記積石材は、壁の表面となる石面が略長方形状又は略正方形状で全体が略角錐台形の立体の底部に厚板状の部分が接合されてなる形状に形成された間知石であること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項5】
請求項4記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記間知石は、壁面の略水平方向の目地のなす線がジグザグの波線状となる谷積方式で積まれること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項6】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記打込注入管の前記尖端部と流入口を結ぶ一つの線上に1列に並ぶように胴込部吐出孔と裏込部吐出孔を一又は複数開設すること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項7】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記打込注入管の胴込部吐出孔は1個、前記裏込部吐出孔は2個設けられること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項8】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記打込注入管の前記流入口付近を大径部とし、前記大径部を前記積石材の表面に定着させること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項9】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記打込注入管の前記流入口の付近に雄ネジ又は雌ネジである流入口ネジを形成しておくとともに、前記注入ホースの前記流入口側の端部に前記流入口ネジに螺合可能なホース端ネジを形成しておくこと
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項10】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記グラウト材は、セメントと砂と水を混合して生成されること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項11】
請求項10記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記グラウト材の材料の配合割合は、生成された流動体状のグラウト材のフロー値が15~18cmの範囲の値となるように設定されること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項12】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記グラウト材の注入に際しては圧力を付加し、前記注入圧は0.05~0.06メガパスカル程度の値に設定されること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項13】
請求項1記載の石積壁の耐震補強方法において、
前記略球根状固化領域が形成された後、前記積石会合部付近から前記コア抜きカッターを用いて前記略球根状固化領域を略円柱状に除去しさらに奥の地盤を略円柱状に除去して外部から前記裏込石の奥の地盤中に到達可能な定着空間を形成し、前記定着空間内に前記流動体状のグラウト材を注入し、定着鋼材を前記定着空間内の流動体状のグラウト材の中に挿入し、前記グラウト材を硬化させ、その後外部に突出した前記定着鋼材の端部に、前記積石会合部付近の積石材の表面を押さえ付けた状態で押さえ鋼板を固定させること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項14】
地盤の法面の崩落を防止し土圧を支持する擁壁のうち、前記地盤法面に沿って積石材を積み上げるとともに隣接する前記積石材どうしの間の空隙に前記積石材よりも小径の栗石である胴込石を充填しかつ前記積石材の背後の地盤との間に前記積石材よりも小径の栗石である裏込石を充填することにより構築される石積壁の地震時の変形又は崩壊を防止するための耐震補強方法であって、
前記石積壁の表面において4個の積石材がほぼ会合する箇所である積石会合部付近の積石材をコア抜きカッターを用いて略円柱状に除去し外部から前記胴込石領域に到達可能な挿入開口を形成し、
金属からなる中空円筒の前端を閉塞して錐状の尖端部とするとともに前記円筒の後端を開口させて流入口とし前記流入口の端部に雄ネジ又は雌ネジである流入口ネジを形成しておきかつ前記尖端部と流入口の間に複数個の吐出孔を開設した打込注入管を、前記挿入開口から前記胴込石領域の前部に挿入した後、衝打を加えて胴込石領域の内部方向へ押し込み、前記打込注入管の裏込部吐出孔を裏込石領域の後部の地盤手前位置付近まで到達させ、前記打込注入管の胴込部吐出孔と裏込部吐出孔が略鉛直上方に向くように設定し、前記打込注入管の流入口に注入プラント側の注入ホースを連結し流動体状のグラウト材を前記注入プラントの注入ポンプから前記注入ホースを経て所定の注入量だけ注入した後に前記グラウト材を硬化させ、前記胴込石及び裏込石とこれらの空隙に充填されるとともに前記打込注入管に定着鋼材の機能を発揮させるようにして前記グラウト材を硬化させることにより前記打込注入管により補強された略球根状の固化領域を前記4個の積石材の背後と前記地盤との間に形成し、その後外部に突出した前記打込注入管の流入口付近に、抑えプレートに開設しておいたプレート挿通孔を挿通させ、前記流入口ネジに螺合可能な固定具を、前記抑えプレートから突出した前記流入口ネジに螺合させることにより前記積石会合部付近の積石材の表面を前記抑えプレートで押さえ付けた状態で固定し、
前記工程を繰り返すことにより、前記打込注入管により補強された前記略球根状固化領域を、前記積石材の背後と前記地盤との間に、前記石積壁の表面から見た平面配置が略散点状になるように複数形成させること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。

【請求項15】
地盤の法面の崩落を防止し土圧を支持する擁壁のうち、前記地盤法面に沿って積石材を積み上げるとともに隣接する前記積石材どうしの間の空隙に前記積石材よりも小径の栗石である胴込石を充填しかつ前記積石材の背後の地盤との間に前記積石材よりも小径の栗石である裏込石を充填することにより構築される石積壁の地震時の変形又は崩壊を防止するための耐震補強方法であって、
前記石積壁の表面において4個の積石材がほぼ会合する箇所である積石会合部付近の積石材をコア抜きカッターを用いて略円柱状に除去し外部から前記地盤法面よりも奥の地盤領域に到達可能な挿入開口を形成し、
金属からなる中空円筒の前端を閉塞して錐状の尖端部とするとともに前記円筒の後端を開口させて流入口としかつ前記尖端部と流入口の間に複数個の吐出孔を開設した打込注入管を、前記挿入開口から挿入した後、衝打を加えて内部方向へ押し込み、前記打込注入管の裏込部吐出孔を胴込石領域付近まで到達させ、
前記打込注入管の胴込部吐出孔が略鉛直上方に向くように設定し、前記打込注入管の流入口に注入プラント側の注入ホースを連結し流動体状のグラウト材を前記注入プラントの注入ポンプから前記注入ホースを経て所定の注入量だけ注入した後に前記打込注入管を引き抜いて前記グラウト材を硬化させ、前記胴込石とその空隙に充填された前記グラウト材を硬化させることにより胴込石領域のみを包含する表面付近固化領域を前記4個の積石材の周囲の胴込石領域付近に形成し、
前記工程を繰り返すことにより、前記表面付近固化領域を、前記積石材の周囲の胴込石領域付近に、前記石積壁の表面から見た平面配置が略散点状になるように複数形成させ、
前記積石会合部付近から前記コア抜きカッターを用いて前記表面付近固化領域を略円柱状に除去しさらに奥の地盤を略円柱状に除去して外部から前記裏込石の奥の地盤中に到達可能な定着空間を形成し、前記定着空間内に前記流動体状のグラウト材を注入し、定着鋼材を前記定着空間内の流動体状のグラウト材の中に挿入し、前記グラウト材を硬化させ、その後外部に突出した前記定着鋼材の端部に、前記積石会合部付近の積石材の表面を押さえ付けた状態で押さえ鋼板を固定させること
を特徴とする石積壁の耐震補強方法。
産業区分
  • 土工
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2005101707thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記「問合せ先」まで直接お問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close