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鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法

国内特許コード P07A011939
整理番号 /NO30488
掲載日 2007年12月7日
出願番号 特願平11-035185
公開番号 特開2000-233744
登録番号 特許第4234249号
出願日 平成11年2月15日(1999.2.15)
公開日 平成12年8月29日(2000.8.29)
登録日 平成20年12月19日(2008.12.19)
発明者
  • 中村 英男
  • 村上 浩一
出願人
  • (財)鉄道総合技術研究所
発明の名称 鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法
発明の概要 【課題】 微小空転が連続している場合は空転抑制の程度を小さくし、再粘着後に早期に駆動力を回復し得る鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法を提供する。
【解決手段】 空転を検知した時点から所定対象時間T1だけ過去にさかのぼった時間内における、速度差VSが駆動車輪7の微小空転の場合のしきい値である第1速度差VS1以上となる時間である微小空転時間の総和値T2の所定対象時間T1に対する比率T2/T1がしきい値である特定時間比TA以上の場合には、帰還駆動力指令FCの値を低減させた減算駆動力指令GCだけ主幹制御器駆動力指令MCを低減させた第2制御駆動力指令NC2=MC-GCに主幹制御器駆動力指令MCを変更してディーゼル機関4の出力制御を行い駆動車輪7の微小空転を抑制する。
従来技術、競合技術の概要 鉄道車両は、レール上において、起動(発進)、加速、減速、制動等を行いながら走行するが、鉄道車両の走行が可能なのは、駆動源からの力をレールに伝達し駆動機能を発揮する車輪(以下、「駆動車輪」という。)がレールに接触する面(以下、「踏面」という。)と、レールの頭部上表面(以下、「レール頭頂面」という。)との間に摩擦が働いているからである。図3に示すように、鉄道車両の駆動車輪DとレールRとの間の作用力のうち、駆動車輪DとレールRの接触点においてレールRに平行に作用する力(以下、「駆動車輪周方向力」という。)をF。とし、レールRに垂直に作用する力(以下、「軸重」又は「輪重」という。)をW。とし、駆動車輪Dの踏面とレールRの頭頂面との間の摩擦係数をμ。とすると、下式F。≦μ。×W。 ………(1)の関係が成立する場合には、駆動車輪周方向力F。はレールRに確実に伝達され、駆動車輪DはレールR上をころがり、鉄道車両は円滑に走行することができる。上記した駆動車輪周方向力F。は、加速時には「駆動力」と呼ばれ、制動時には「制動力」と呼ばれる。しかし、下式F。>μ。×W。 ………(2)で示されるような関係となる場合には、駆動車輪DはレールR上でころがらずにすべるようになる。以下、このようなすべりを、「巨視すべり」という。この「巨視すべり」が生じると、車両の起動時又は加速時には、空転(スリップ)となり、レールRのほぼ同一の箇所で駆動車輪Dが高速回転することになるため、レールRの側に局部的に凹部状の著大な摩耗が生じる。また、車両の制動時に上記の「すべり」が生じると、滑走(スキッド)となり、走行中に駆動車輪Dが停止した状態でレールR上をすべることになるため、駆動車輪Dの踏面が局部的に平らにすりへり「フラット」と呼ばれる摩耗となる。これらの摩耗は、車両の乗り心地を悪くし、甚だしい場合には車両及び軌道の双方に悪影響を与える。鉄道車両全体、あるいは複数の鉄道車両からなる列車においては、図3に示すような単純な物理モデルよりも複雑であり、ある駆動車輪の軸重(輪重)値(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)と、レールに有効に伝達し得る駆動車輪周方向力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)の間の係数(上式(1),(2)におけるμ。に相当する値)も、実際のレールや駆動車輪の表面状態、例えば駆動車輪踏面やレール頭頂面における水、油性物、ゴミ、サビ等の付着の有無又はそれらの程度などによって変化する。鉄道においては、駆動車輪踏面とレール頭頂面との間で摩擦が有効に作用し、駆動車輪周方向力がレールに確実に伝達されており、両者間で「巨視すべり」が発生していない状態を「粘着状態」という。また、駆動車輪周方向力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)を「接線力」という。また、この接線力の最大値(上式(1),(2)におけるμ。×W。に相当する値)を「粘着力」といい、粘着力を軸重値(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)で除算して得られる値(上式(1),(2)におけるμ。に相当する値)を「粘着係数」という。上記のことから、鉄道においては、粘着係数を向上させるための対策、空転や滑走を早期に検出する方法、空転や滑走を抑制するための制御方法、いったん空転等を生じた場合に再び粘着状態に戻す(以下、「再粘着」という。)ための対策等について種々の研究や開発がなされている。以下に、図を参照しつつ、鉄道における空転の実際の例について説明する。以下の説明において、VDは駆動車輪の速度(以下、「駆動車輪速度」という。)を、VTは駆動されない車輪であって車両の走行に伴って回転する車輪(以下、「従動車輪」という。)の速度(以下、「従動車輪速度」という。)を、VSはこれら両速度の速度差(VD-VT)を、F1,F2は駆動車輪の駆動力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)を、μ1,μ2,μ3,μ4は期待接線力係数(上式(1),(2)におけるμに相当する値)を、Wは軸重(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)を、μ1×W,μ2×W,μ3×W,μ4×Wは期待粘着力(上式(1),(2)におけるμ。×W。に相当する値)を、それぞれ表すものとする。図4は、駆動車輪の駆動力が、駆動車輪とレールの間の粘着力を大きく上回っている場合における車輪速度の経時変化を示したグラフであり、横軸は時間経過を、縦軸は車輪の速度を、それぞれ示している。駆動車輪の駆動力が粘着力を大きく上回ったままとなっていると、図4において曲線C11(従動車輪速度:VT)及び曲線C12(駆動車輪速度:VD)で示すように、ある時点t11から駆動車輪速度VDは従動車輪速度VTから外れて増大を始める。これは空転状態が始まったことを意味しており、曲線C11に示すように、駆動車輪速度VDはそれ以後増加する一方となる。すなわち、図4に示す場合は、空転が発散し、大規模な空転(以下、「大空転」という。)に発展している状況を示している。空転が上記のような大空転に発展する原因を、図5に基づいて説明する。図5において、横軸は駆動車輪速度VD又は速度差VSを、縦軸は駆動力F及び期待接線力μ1×W,μ2×Wを、それぞれ示している。図5においては、駆動車輪速度VDと駆動力Fとの関係、及び速度差VSと期待接線力μ1×W,μ2×Wとの関係を重ねて描いてある。まず、最初は、期待接線力(μ1×W)が曲線C13で示されるように、速度差VSに応じて変化する関数で、点P11で最大値すなわち粘着力となるような特性であり、駆動力F1が、C14で示されるように、速度VD,VSの増加に応じて減少する傾斜直線であるとすると、両者は点P12の状態で釣り合う。点P12では、下式F1=μ1×W ………(3)が成立している。この場合、最大点P11における速度差をVS11(=VD11-VT11)とし、交点P12における速度差をVS12とすると、下式VS11>VS12 ………(4)の関係となっている。この点P12における状態は、「粘着状態」である。一般に、鉄道のような鉄レールと鉄車輪との摩擦を利用する鉄車輪系移動体の場合のVS11は、自動車のようなゴムタイヤ系移動体の場合のVS11に比べ非常に小さい。次に、図5において、レールと車輪の間の状況が変化し、期待接線力係数がμ1からμ2に低下したとすると、期待接線力(μ2×W)はC15で示されるような曲線となる。しかし、この場合には、つねに下式F1>μ2×W ………(5)の関係となる。このような状態は「空転状態」であり、駆動力F1と期待接線力(μ2×W)が釣り合うことがないため、駆動車輪速度VDは上昇する一方となり、図4に示すような大空転に発展する。次に、上記の大空転とは異なる空転について説明する。図6は、駆動車輪の駆動力が、駆動車輪とレールの間の期待接線力をわずかに上回っている場合における車輪速度の経時変化を示したグラフであり、横軸は時間経過を、縦軸は車輪の速度を、それぞれ示している。このように駆動車輪の駆動力が期待接線力をわずかに上回っている状態では、図6において曲線C11(従動車輪速度:VT)及び曲線C16(駆動車輪速度:VD)で示すように、ある時点t12から駆動車輪速度VDは従動車輪速度VTから外れ、空転状態が始まるが、駆動車輪速度VDと従動車輪速度VTとが大きく乖離することなく、微小な空転(以下、「微小空転」という。)を連続的に繰り返す。上記のような微小空転が発生する原因を、図7に基づいて説明する。図7において、横軸は駆動車輪速度VD又は速度差VSを、縦軸は駆動力F及び期待接線力μ3×W,μ4×Wを、それぞれ示している。図7においても、図5と同様に、駆動車輪速度VDと駆動力Fとの関係、及び速度差VSと期待接線力μ3×W,μ4×Wとの関係を重ねて描いてある。まず、最初は、期待接線力(μ3×W)が曲線C17で示されるように、速度差VSに応じて変化する関数で、点P13で最大となるような特性であり、駆動力F2が、C18で示されるように、速度VD,VSの増加に応じて減少する傾斜直線であるとすると、両者は点P14の状態で釣り合う。点P14では、下式F2=μ3×W ………(6)が成立している。この場合、最大点P13における速度差をVS13とし、交点P14における速度差をVS14とすると、下式VS13<VS14 ………(7)の関係となっている。したがって、点P14における状態は、「空転状態」である。しかし、この空転状態は、大空転に発散することはなく、微小空転が維持される。このような微小空転がしばらくの間続く場合には、空転が収束し、再び粘着状態に戻り「再粘着状態」となる可能性がある。これは、微小空転状態が続くことにより、車輪踏面が荒れてきて、期待接線力係数が図7のμ3からμ4に増大し、期待接線力(μ4×W)がC19で示されるような曲線となると考えられるからである。このような変化が起こると、駆動力F2と期待接線力(μ4×W)は点P15の状態で釣り合う。点P15では、下式F2=μ4×W ………(8)が成立している。この点P15の状態における速度差をVS15とすると、下式VS15<VS13 ………(9)の関係となっており、図5における点P12における状態と同様の「粘着状態」である。このようなメカニズムにより、図6に示すように、微小空転と再粘着が繰り返される。以上説明したように、鉄道においては、「大空転」と「微小空転」の2種類の空転状態が起こり得る。次に、従来、鉄道車両において、上記の空転を抑制するために行っていた制御方法の例について説明する。この例は、原動機にディーゼル機関(図示せず)を用い、駆動車輪への動力伝達手段として液体変速機(図示せず)を用いた鉄道車両における空転抑制制御方法である。上記のディーゼル機関には、燃料制御装置(図示せず)が接続されており、燃料制御装置には主幹制御器(図示せず)が接続されている。このような構成により、鉄道車両の運転操作者が主幹制御器を取り扱い運転操作を行うと、主幹制御器は駆動力指令(自動車のアクセル操作に相当する)を燃料制御装置に出力する。燃料制御装置は、駆動力指令に応じた燃料噴射量制御指令をディーゼル機関に出力する。ディーゼル機関は、この燃料噴射量制御指令により所定の出力で回転し駆動車輪を駆動する。この場合、駆動車輪(図示せず)と従動車輪(図示せず)にはそれぞれ速度センサ(図示せず)が取り付けられており、これらが検出した駆動車輪速度VDと従動車輪速度VTは空転抑制制御装置(図示せず)に送られる。空転抑制制御装置は、上記の主幹制御器と燃料制御装置の間に介在し、例えば速度差VS(=VD-VT)を算出してこれを監視し、速度差VSが所定のしきい値を越えた場合に、「駆動車輪が空転した」と判別し、このときの速度差VSの値等に基づいて上記の駆動力指令を低減させた制御駆動力指令を燃料制御装置に出力する。これにより、ディーゼル機関の出力を低下させ、駆動車輪の速度を減速させて速度差VSを減少させ空転を抑制しようとするものである。図8は、上記の空転抑制制御の実例を示したものである。すなわち、図8(A)に示すように時刻t21に速度差VSのしきい値超過を検知し、図8(B)に示すように回転力を低減させるような指令を燃料制御装置(図示せず)に出力すると、ディーゼル機関(図示せず)の出力は低下し、図8(A)に示すように空転が抑制される。空転開始から再粘着までの接線力は、図8(C)に示すように、速度差VSに対応して低下の後、上昇する。
産業上の利用分野 本発明は、鉄道車両等の鉄車輪系移動体の加減速時に駆動車輪に発生する空転を抑制するように制御する鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法の改良に関するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】 運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値に対して1より小さい値である減算係数(GK)を乗じた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項2】 請求項1記載の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記所定対象時間(T1)の間に前記主幹制御器駆動力指令(MC)が新たな主幹制御器駆動力指令(MC′)に変化した場合には、変化後制御駆動力指令(NC′=MC′)により前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項3】 請求項1記載の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記減算係数(GK)は、下式GK=1-(T2/T1)により演算されることを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項4】 運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値を減算係数(GK)の分だけ低減させた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法。
産業区分
  • 鉄道
国際特許分類(IPC)
出願権利状態 権利存続中
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