TOP > 国内特許検索 > クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用

クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用 コモンズ

国内特許コード P07A012550
整理番号 A131P39
掲載日 2007年12月28日
出願番号 特願2004-135457
公開番号 特開2005-006647
登録番号 特許第4402511号
出願日 平成16年4月30日(2004.4.30)
公開日 平成17年1月13日(2005.1.13)
登録日 平成21年11月6日(2009.11.6)
優先権データ
  • 特願2003-146953 (2003.5.23) JP
発明者
  • 鍋島 陽一
  • 遠山 治
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 クロソ蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用 コモンズ
発明の概要 【課題】 クロソ蛋白質の機能を明らかにし、クロソ蛋白質の測定法及びその利用方法を提供すること。
【解決手段】 クロソ蛋白質が、β-グルクロニダーゼ活性(β‐glucuronidase)を持つことを解明し、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法を開発した。また、本発明は、該クロソ蛋白質の酵素活性を測定することにより、生体中のクロソ遺伝子の発現の状況を検知・測定し、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法を提供する。更に、本発明の知見により、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法を提供するとともに、該作用物質のスクリーニングを行った。また、本発明においては、本発明の方法を用いて、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニング、更には、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法を提供する。
従来技術、競合技術の概要


個体の老化機序の解明は、医学・生物学に残された最大の課題の一つである。老化は成熟期以後、加齢とともに各臓器の機能、あるいは統合する機能の低下が起こり、個体の恒常性を維持することができなくなり、最終的に死に至る過程を指す。このように老化は、広範囲に及ぶ多面的な現象であり、しかも、個体差が大きく、さらに環境や生活習慣の影響を受けることから、その実体を捉え、機序を説明することが困難であった。このような状況の中で、老化の実体を明らかにするために多くの独自の切り口を持った研究が進められてきた。例えば、(1)生物体を構成する細胞に着目したアプローチ、(2)生物個体の生理機能、免疫機能、内分泌系に着目したアプローチ、(3)実験動物の生存寿命に着目したアプローチ、また、(4)ヒトの早老症や老年性疾患を解析することで、老化の実体に迫ろうとするアプローチなどである。これらのアプローチは、それぞれ老化のある側面を捉えることを可能にしており、多くの老化に関する知識をもたらしたが、未だ老化の機序を一元的に説明するまでは至っていない。



その中にあって、黒尾らによって確立されたクロソ(Klotho)マウスは個体老化の実体、さらには機序の解析に一石を投じた。このマウスは、クロソ遺伝子の欠損によって、性成熟期に動脈効果、中膜や軟部組織の石灰化、肺気腫などヒト型老化様を呈し、短時間で死亡する。さらにクロソ遺伝子及び蛋白質は、主に腎臓遠位尿細管と脳脈絡叢に発現しているが、老化様表現型は発現部位を越え全身に及んでいる。これは、クロソの作用が組織-組織間を越えて作用しており、動物個体の恒常性を保ち、老化様表現型の発現を抑えていることを示している。このようにクロソの解析は、個体の恒常性の維持機構という立場で、老化の実体を理解するためのアプローチの一つと考え、研究が進められてきた。



クロソ遺伝子は、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化、生殖臓器の萎縮など、顕著かつ多彩な早期老化症状を呈するトランスジェニックマウス(クロソマウス)の外来遺伝子挿入部に存在し、その発現が低下するとマウスに前記老化症状を引き起こす原因遺伝子として同定された遺伝子である。クロソマウスは生後3週目までは野生型のマウスと同様に生育するが、その後は成長が止まり様々な老化の兆候を示す。6週齢になると、クロソマウスの活動性は野生型の50%程度に低下し、パーキンソン病様の歩行がみられる。性腺は萎縮しており不妊である。骨粗鬆症が顕著となるほか、大動脈弁、気管支、脳の脈絡叢に異所性の石灰化が生じる。動脈系では、血管内膜の肥厚や中膜の石灰化といった加齢に特徴的なメンケベルグ型の動脈硬化所見を示す。その他皮膚の萎縮や、肺気腫も観察されるようになる(WO98/29544、Nature, 390, 45, 1997)。クロソ遺伝子のcDNAの解析から、クロソ遺伝子はスプライシングの違いにより2種類のmRNAが転写され、該mRNAより2種類の蛋白質が翻訳される(以下、これら蛋白質を含め、クロソ遺伝子にコードされる蛋白質を「クロソ蛋白質」と呼ぶ)。



クロソ遺伝子変異が様々な老化症状を引き起こす機作や、クロソ蛋白質の分子機能はまだ明らかにされていない。クロソ遺伝子の発現は腎臓で高いが、激しい老化症状は、肺、骨、胃壁、皮膚等を含む全身臓器に及んでいる。このことから、その分子機能には何らかの分泌性の因子が存在し、作用を発揮していることが推定された(Nature, 390, 45, 1997)。クロソマウスとクロソ遺伝子発現トランスジェニックマウスとの交配実験および、膜結合型クロソ遺伝子のcDNAを組み込んだアデノウイルスベクターを用いてクロソマウス体内でクロソ蛋白質を発現させる実験等により、クロソマウスの老化症状発症の予防が達成されたことから、クロソ蛋白質の機能不全に由来する疾患の治療は、何らかの手段を用いてクロソ遺伝子を増強することにより達成されることが示唆されている(Nature, 390, 45, 1997、WO98/29544)。血管内皮細胞は、内皮依存性血管弛緩因子や内皮依存性血管収縮因子を放出して血管緊張を調節しているばかりでなく、血管内膜の透過性や血小板凝集にも深く関与しており、血栓性動静脈疾患の発症進展に重要な役割を演じている。



前記2種類のmRNAにコードされるクロソ蛋白質の内、一方の蛋白質はN末端のシグナル配列領域、細胞外ドメイン領域及びC末端の膜貫通ドメイン領域を有する構造を持つ1型膜蛋白(以下、「膜結合型クロソ蛋白質」と呼ぶ)であり、細胞外ドメインは細菌或いは植物のβ-グルコシダーゼに相同性を持つ2つのドメイン(KL1、KL2)より構成されている。これに対して、もう一方の蛋白は、N末端のシグナル配列領域とKL1ドメイン領域を有する分泌蛋白(以下、分泌型クロソ蛋白と呼ぶ)であることが明らかにされた(Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998)。



クロソ蛋白質は、約120kDaの1型膜蛋白質である。N末端側よりシグナル配列、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase)に相同性のある2つの繰り返し領域を持つ細胞外領域(KL1、KL2)、1回膜貫通領域、短い細胞内領域を持つ。β-グルコシダーゼとは、高度に保存された酵素群であり、単糖-単糖間、単糖-オリゴ糖間及び単糖-非炭水化物間のグリコシド結合を加水分解するものであり、生体内において糖鎖の合成・分解、配糖体の合成・分解、細胞内シグナルの調節、解毒など生体維持に不可欠な機能を担っている。例として、ファミリー1グリコシダーゼ(glycosidase)には、リソソームβ-グルコシダーゼ(lysosomal beta-glucosidase)、細胞質β-グルコシダーゼ(cytosolic beta-glucosidase)、ラクターゼピロリジンヒドラーゼ(lactase philorizine hydrolase:LPH)、ミロシナーゼ(myrosinase)などがある。またファミリー2には、β-グルクロニダーゼ(beta-glucuronidase)、β-ガラクトシダーゼ(beta-galactosidase:LacZ)、β-マンノシダーゼ(beta-mannosidase)などがある。多くのグリコシダーゼは2つの活性中心(求核基、酸塩基触媒基)を担うグルタミン酸残基を持ち、これらの働きによって酵素反応が2段階にわたって進む。



第一段階として、求核基が基質のアノマー炭素を攻撃し、酸塩基触媒基のカルボキシル基が糖-酵素(α-グリコピラノシル-酵素:alpha-glycopyranosyl-enzyme)中間体の形成を助ける。第二段階として、水分子による一般塩基触媒作用によりアノマー中心が攻撃を受ける。最終的に、グリコシド結合は切断される。興味深いことに、クロソ蛋白質は、活性に必要な2つのグルタミン酸残基の一方が、それぞれの領域で置換されている。KL1領域において、酸塩基触媒を担うグルタミン酸残基がアスパラギン酸に、KL2領域において求核基を担うグルタミン酸残基がアラニンまたはセリンに置換されている。このため、クロソ蛋白質が一次構造上に相同性を持つからといって、β-グルコシダーゼとして働くかは不明であった。しかし、植物が持つミロシナーゼは、酸塩基触媒を担うグルタミン酸がグルタミンに置換されているのにもかかわらず、S-グリコシド(S-glycoside)結合を持つグルコシノレート(glucosinolate)に対して、酵素活性が見られている。よってクロソ蛋白質も酵素として機能する可能性が考えられていた。



前記のとおり、クロソ遺伝子や該遺伝子がコードするクロソ蛋白質の欠失により、多彩な老化関連疾患が発症する機構や、クロソ蛋白質の機能については明らかにされていない点が多いが、その医薬等への利用については、特許公報上でいくつかの開示がなされている。再公表特許公報WO98/29544には、クロソ蛋白質のポリペプチド、該ポリペプチドを認識する抗体等を、早期老化症治療薬、成人病治療薬及び老化抑制薬等に用いること及びクロソ遺伝子を組み込んだベクター等を該老化抑制のための遺伝子治療に用いることが開示されている。WO00/27885には、血中での安定性を保持するために、クロソ蛋白質と免疫グロブリンとを結合させたキメラポリペプチドを老化症の予防・治療薬、或いは腎疾患、悪液質及び変形性関節炎等の予防・治療薬として用いることが開示されている。



また、特開2001-72607号公報には、クロソ遺伝子cDNAを組み込んだ組換えベクターを投与することにより、哺乳動物の血管内皮機能低下を伴う高血圧や動脈硬化等の疾患の予防・改善を図ることについて開示されている。



更に、関連する開示としては、WO01/005244には、二価の陽イオン金属を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物を食品や動物飼料に含有させて、摂取させることにより、ヒトや動物のクロソ蛋白質発現量増加又は減少に伴う疾患の予防又は治療を行うことについて開示されている。また、特表2003-514513号公報には、骨粗鬆症、皮膚障害、老化関連疾患、肺機能不全及び代謝症候群を含むさまざまな慢性疾患に対する素因と関連して、クロソ遺伝子中のリスク多型に関連する疾患の診断方法等について、開示されている。



上記のように、クロソ蛋白質やその遺伝子、及びその用途については、種々の開示がなされており、また、該クロソ蛋白質や遺伝子の検出方法やそれを用いたクロソ遺伝子の発現を増強させる化合物のスクリーニング方法等についての開示もなされているが(WO98/29544)、クロソ蛋白質の欠失が多彩な老化関連疾患をもたらす機構は、唯一、クロソ蛋白質の細胞外ドメインがβ-グルコシダーゼと相同性を持つこと以外は明らかになっていない。したがって、クロソ蛋白質の機能を明らかにすることが、生体においてクロソ蛋白質の機能に関与する物質を特定し、老化関連疾患に対するクロソ蛋白質の作用機構の解明を可能にし,更には、クロソ蛋白質の機能を増加させる物質の効果的な開発が可能になる。したがって、それらの解明が強く望まれていた。
【特許文献1】
WO98/29544。
【特許文献2】
WO00/27885。
【特許文献3】
特開2001-72607号公報。
【特許文献4】
WO01/005244。
【特許文献5】
特表2003-514513号公報。
【非特許文献1】
Nature, 390, 45, 1997。
【非特許文献2】
Biochem. Biophys. Res. Commun., 242, 626, 1998。

産業上の利用分野


本発明は、クロソ(Klotho)蛋白質の酵素活性の測定法及びその利用方法、特には、クロソ蛋白質のβ-グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することによりクロソ蛋白質の酵素活性を測定する方法、及び、該方法を用いてクロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断を行う方法、生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニングを行う方法、クロソ蛋白質機能活性化物質のスクリーニングを行う方法、及び、早期老化症状を呈する疾病の予防又は治療薬のスクリーニングを行う方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
クロソ蛋白質のβ-グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性を測定することを特徴とするクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項2】
クロソ蛋白質のβ-グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、β-グルクロニド結合を有する酵素基質を用いる特異酵素活性の測定であることを特徴とする請求項1記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項3】
β-グルクロニド結合を有する酵素基質が、β-グルクロニド結合を有するフラボノイド又はアルカロイドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項4】
β-グルクロニド結合を有する酵素基質が、4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項5】
β-グルクロニド結合を有する酵素基質が、天然基質のステロイドβ-グルクロニドであることを特徴とする請求項1又は2記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項6】
天然基質のステロイドβ-グルクロニドが、β-エストラジオール3-β-Dグルクロニド、エストロン3-β-Dグルクロニド、又はエルトリオール3-β-Dグルクロニドであることを特徴とする請求項5記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項7】
クロソ蛋白質のβ-グルクロニダーゼ活性に基づく特異酵素活性の測定が、生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定であることを特徴とする請求項1~6のいずれか記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項8】
生体または生体細胞中のクロソ遺伝子の発現に基づくクロソ蛋白質生成の測定が、クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断のための測定であることを特徴とする請求項7記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項9】
クロソ遺伝子の発現の低下により発症する疾病の診断が、早期老化症状を呈する疾病の診断であることを特徴とする請求項8記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項10】
早期老化症状を呈する疾病の診断が、寿命の短縮、各種臓器の石灰化、動脈硬化又は生殖臓器の萎縮に係わる疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項11】
早期老化症状を呈する疾病の診断が、血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断であることを特徴とする請求項9記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項12】
血管内皮機能劣化に起因する疾病の診断が、高血圧、動脈硬化、高コレステロール血症、糖尿病、心筋梗塞又は脳梗塞の診断であることを特徴とする請求項11記載のクロソ蛋白質酵素活性の測定法。

【請求項13】
配列表の配列番号2又は配列番号4に示されるポリペプチド、又は該ポリペプチドの有するアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ-グルクロニダーゼ活性を有する変異ポリペプチドを用い、生体又は生体細胞中から分離した物質とのβ-グルクロニダーゼ酵素反応を利用して生体又は生体細胞中の酵素基質を検出することを特徴とする生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。

【請求項14】
請求項13記載のポリペプチド又は変異ポリペプチドを、イムノグロブリンを結合させたキメラポリペプチドとして用いることを特徴とする請求項13記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。

【請求項15】
イムノグロブリンとしてイムノグロブリンFc領域を用いることを特徴とする請求項14記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。

【請求項16】
生体又は生体細胞中の物質とのβ-グルクロニダーゼ酵素反応を利用した生体または生体細胞中の酵素基質の検出が、β-グルクロニダーゼ酵素反応によって生成されるβ-グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13~15のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。

【請求項17】
生体又は生体細胞中の酵素基質の検出が、天然基質としてのステロイドβ-グルクロニドの検出であることを特徴とする請求項13~16のいずれか記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。

【請求項18】
天然基質としてのステロイドβ-グルクロニドの検出が、天然基質としてのβ-エストラジオール3-β-Dグルクロニド、エストロン3-β-Dグルクロニド、又はエルトリオール3-β-Dグルクロニドの検出であることを特徴とする請求項17記載の生体中のクロソ蛋白質作用物質のスクリーニング方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

24713_01SUM.gif
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST ゲノムの構造と機能 領域
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close