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ベクターマダニのガレクチン、それをコードする核酸分子及びそれらの利用

国内特許コード P07A013074
掲載日 2008年2月1日
出願番号 特願2005-225683
公開番号 特開2007-037464
登録番号 特許第4719527号
出願日 平成17年8月3日(2005.8.3)
公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発明者
  • 辻 尚利
  • 黄 暁紅
  • 三好 猛晴
  • 藤崎 幸蔵
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
  • 国立大学法人帯広畜産大学
発明の名称 ベクターマダニのガレクチン、それをコードする核酸分子及びそれらの利用
発明の概要

【課題】マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用な新規ポリペプチド及びポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】前記ポリペプチドは、新規のガレクチンである。前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを含むベクターは、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。また、前記ポリペプチドに対する阻害剤又は前記ポリペプチドに対する抗体も、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


地球上に棲息する500属15,000種を越える吸血性節足動物の中で、マダニはわずか19属750種(5%)の弱小グループであるが、ヒト以外の動物では第1位、ヒトでは蚊に次いで第2位に重要な感染症媒介節足動物である。経済的被害からもマダニとマダニ媒介性疾病による損害額はウシだけでも毎年70億米ドル以上[FAO(Food and Agriculture Organization)1995]にのぼり、その対策は世界各国で畜産振興上の最重要課題となっている。マダニ防除の中心は化学療法剤などの薬剤利用に深く依存している。DTTが開発された1950年以降、有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系などの化合物が殺ダニ剤としてマダニ防除に使用されてきた。しかしながら、薬剤の連続使用によるいわゆる薬剤耐性がいずれの薬剤に対しても確立され、殺虫効果の消失するものも少なくない。さらに、薬剤の使用には常に人あるいは動物への副作用を考えなくてはならず、同時に、食と環境の安全性を脅かす薬物残留問題があり、消費者から敬遠される傾向にある。そのうえ、薬剤の使用には有効性や適用範囲に加えて、膨大な開発コストの面からも限界が生じつつある。



感染症媒介者(ベクター)としてのマダニは、マラリアベクターの蚊と比べて、ウイルス、リケッチア、細菌、原虫、寄生虫などほぼすべての種類の病原体の伝播に関与する他に比肩しうるもののない優れた疾病媒介能を有する。ヒトではマラリアが世界的に猛威を振るっていることはよく知られているが、動物(家畜・愛玩動物)ではマラリアに類似した感染症としてマダニが媒介するバベシア症がある。本症は畜産・獣医学領域で最も被害の大きい寄生虫感染症であり、近年ではヒトでのバベシア症が世界各国で報告され、新興人獣共通感染症のひとつにあげられている。



感染症予防の最大の武器はワクチンであるが、寄生虫ワクチン(多大な資金と精力的なワクチン開発にかかわらずマラリアであっても)の開発は困難を極めている。進化した生活環を有する寄生虫では、動物・ヒトの獲得防御免疫に関する主要な寄生虫由来の抗原や免疫誘導機構など、不明な点が多くあるためであるが、とりわけ重大なのは、寄生虫は高度に発達した免疫回避機構により宿主の免疫監視から逃れるシステムを発達させており、防御免疫の獲得が困難なことにある。このようなことからバベシア原虫についても例外ではなく、バベシア症の発症をもたらす宿主体内ステージに焦点をあてた研究開発からはワクチンを生まれていない。



一方、マダニの頻回寄生に対して宿主が抵抗性を獲得する現象を応用した獲得免疫によるマダニ防除法が以前から試みられている(非特許文献1)。また、宿主への接触が全くないマダニタンパク質がマダニ感染に対する防御抗原となることも明らかにされ、実際にワクチン抗原(Tick GARD)(非特許文献2)として一部のマダニ媒介性病原体[例えば、1宿主性のマダニ(Boophilus microplus)]に対して野外応用されているものの、多くのマダニ媒介性病原体媒介者に対してのワクチンは依然として開発途上にあり、病原体側のマダニ媒介性病原体の防除対策もマダニと同様に薬剤に深く依存しているのが実情である。このように21世紀におけるマダニ媒介性病原体による人及び家畜生産の被害を既存の薬剤使用によって防ぐことは非常に難しい状況にある。



マダニ媒介性病原体は宿主とマダニで複雑な生活環を形成している。牛バベシア症の中で最も重篤な症状をもたらすバベシア ビゲミナ(Babesia bigemina)の生活環は、宿主赤血球に寄生したバベシア原虫(メロゾイト)が宿主体内で分裂増殖し、他の赤血球への侵入を繰り返す。牛におけるピロプラズマ症の発症はメロゾイトによるものである。マダニが媒介する動物間のバベシア原虫感染は、吸血によってバベシア感染赤血球がマダニ中腸内に取り込まれ、ガメトゴニー及びシゾゴニーの増殖をする。唾液腺に移行したバベシア原虫はスポロゴニーによって増殖し、生じたスポロゾイト期の原虫はマダニの吸血によって宿主体内に侵入する。以上のように、バベシア原虫の生活環を考慮すれば、誰しもマダニステージの重要性は理解することができるが、マダニコロニーの系統維持の難しさから、世界的にもマダニステージの虫体に特化した研究を展開することができるグループは限られている。



一方、ガレクチンは、糖鎖構造(ガラクトースに対する結合特異性)を認識する動物レクチンである。分布は、脊椎動物から線虫、昆虫、海綿動物などの無脊椎動物にも広く存在が知られている。ダニガレクチンとしては、例えば、ヒメダニの1つであるオルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata)由来のガレクチン(特許文献1)、あるいは、牛の東海岸熱病のベクターであるコイタマダニの一種(Rhipicephalus appendiculatus)由来のガレクチン[NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLASTP (Protein-protein Basic Local Alignment Search Tool) サーチ, Accession No. AA060051)等の塩基配列及びアミノ酸配列が決定されている。しかしながら、ベクターマダニのガレクチンが媒介病原体の伝搬に必須であることはいずれのマダニにおいても実証されるに至っていない。




【非特許文献1】「ナショナルインスティチュート・オブ・アニマルヘルス・クオータリー(トウキョウ)(National Institute of Animal Health Quarterly、Tokyo) ,1978年,18巻,27-38頁

【非特許文献2】「プラシトロジー・トゥデー(Parasitology Today)」,(オランダ国),1999年,15巻,258-262頁

【特許文献1】国際公開第03/072781号パンフレット

産業上の利用分野


本発明は、ベクターマダニのガレクチン、それをコードする核酸分子及びそれらの利用に関する。



より詳細には、本発明は、マダニが媒介する動物・ヒトの病原体がマダニ体内への侵入に不可欠な接着に関わるタンパク質、それをコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用に関する。ここで、動物・ヒトの病原体とは、世界的に甚大な被害をもたらすピロプラズマ症の病原体であるバベシア原虫をはじめとする人獣共通細菌・ウイルスを指す。具体的には、本発明は、これらの病原体がマダニ個体への最初の侵入器官である中腸上皮や体内移行経路にあたる器官・組織の細胞上皮で発現するガレクチンをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを保持する組換え体細胞、組換えペプチドタンパク質、及び合成ペプチドに関する。本発明により、バベシア症をはじめとする人及び動物の感染症予防及び治療を目的とした化合物の合成、あるいはそれら病原体による感染症の治療薬の開発に応用することができる。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下のポリペプチド(a)~(d)からなる群から選んだポリペプチド:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、ガレクチン活性を有するポリペプチド;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、ガレクチン活性を示すポリペプチド;並びに
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、ガレクチン活性を有するポリペプチド。

【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【請求項3】
以下のポリヌクレオチド(A)及び(B)からなる群から選んだポリヌクレオチドである、請求項2に記載のポリヌクレオチド:
(A)配列番号1で表される塩基配列における129番~1097番の塩基からなる配列を含むポリヌクレオチド;及び
(B)配列番号1で表される塩基配列における129番~1097番の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ガレクチン活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【請求項4】
請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを含む組換え体分子。

【請求項5】
請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。

【請求項6】
請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを含む組換え体細胞。

【請求項7】
請求項6に記載の組換え体細胞を培養し、その培養物から請求項1に記載のポリペプチドを採取することを特徴とする、前記ポリペプチドの製造方法。

【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドを認識する抗体又はその抗原結合断片。

【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項8に記載の抗体又はその抗原結合断片。

【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、及び
前記ポリペプチドのガレクチン活性を分析する工程
を含む、前記ポリペプチドのガレクチン活性を修飾する物質のスクリーニング方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 薬品
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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