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醸造酒中の原料植物の判別方法 新技術説明会

国内特許コード P08A013335
掲載日 2008年4月18日
出願番号 特願2006-169336
公開番号 特開2007-330230
登録番号 特許第4953058号
出願日 平成18年6月19日(2006.6.19)
公開日 平成19年12月27日(2007.12.27)
登録日 平成24年3月23日(2012.3.23)
発明者
  • 大坪 研一
  • 原口 和朋
  • 鈴木 啓太郎
  • 中村 澄子
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 醸造酒中の原料植物の判別方法 新技術説明会
発明の概要

【課題】
醸造酒を試料とする原料植物の種類又は品種を判別する方法を提供する。
【解決手段】
醸造酒からDNAを酵素法等によって抽出・精製して鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー存在下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて、醸造酒の原料植物の種類又は品種を判別する。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


米飯や餅など、原料品種のDNA判別技術が開発されつつある(特許文献1、特許文献2、非特許文献3)。米飯の場合、アミラーゼ、プロテアーゼを作用させ(本明細書において「酵素法」という)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理、フェノール処理を行ってDNAを抽出・精製し、これを鋳型DNAとしてプライマーを用いてPCRで増幅し、電気泳動して、DNAの多型に基づいて米飯の原料品種を識別する(特許文献1)。餅の場合、餅を凍結乾燥し、粉末にして、前記酵素法、CTAB処理、フェノール処理を行ってDNAを抽出・精製し、これを鋳型DNAとしてプライマーを用いてPCRで増幅し、電気泳動して、DNAの多型に基づいて餅の原料品種を識別する(特許文献2)。



日本酒やワインのような醸造酒の場合、品質に対して、製造者の技術や発酵用微生物の種類、あるいは製造条件が大きな影響を与えるが、特に原料植物、すなわち、イネやブドウの品種が強く影響することが知られている。日本酒の場合、山田錦や五百万石などの酒造好適米が知られており、高級酒の多くはこれらの酒造好適米を原料として製造され、包装ラベルに原料米の品種が記載されている場合が多い。包装ラベルに記載されている品種と実際に使用されている品種が同一であるかを確認できれば、高級酒の原料表示の偽造を防止・抑制できる。さらに、酒質と原料植物又は原料品種の関係を調べることができれば、今後の醸造酒の開発や品質改良に役立てることができる。



従って、醸造酒に使用されている原料植物の種類又は品種を、醸造酒を試料として識別できる技術が求められている。



しかし、日本酒やワイン等の発酵製品については、もともと液状であって水分含量が高く、固形物が少ない上に、製造過程(発酵段階)で微生物によって米のDNAも分解されてしまうため、前記原料植物のDNA品種判別技術の適用が不可能とされてきた。



また、遺伝子組み換え植物(GMO)及びその加工品の検知においても、導入遺伝子の配列に基づいて設計されたプライマーを用いるPCRによって導入遺伝子が検出されるが、醤油などの発酵された加工品の場合は、発酵過程におけるDNAの分解及び発酵微生物のDNAの混在のため、遺伝子組み換えの有無の検知が不可能とされてきた。



すなわち、流通消費段階で入手可能な醸造酒製品を試料とし、その原料植物の種類又は品種をDNA分析によって判別するためには、発酵工程を経ないために原料植物のDNAが多量に存在する固形の米飯や餅と異なり、発酵中の微生物による分解を受けながら、なお液体中に残存している極微量の原料植物由来のDNAあるいはその断片を、加熱による分解、変性、重合等を起こさない条件で濃縮して、PCRにおけるプライマーが結合(アニーリング)するために必要な濃度にまで上げなければならない。



また、米飯や餅と異なり、醸造酒の場合には、発酵過程を経るために、標的とするDNA以外に、麹菌や酵母の菌体あるいはその残さが共存しており、また、原料の成分である澱粉、タンパク質、脂質、細胞壁なども発酵過程で分解され、成分間反応なども進行し、きわめて複雑な組成を有しており、糖質、蛋白質、脂質等の混在物から試料のDNAを分離精製して良質のDNAを得るには、前記酵素法を更に工夫することが求められる。



また、醸造酒の場合は、既報における米飯や餅の場合と異なり、麹菌、酵母、ホップ、ブドウ果皮などの共存により、ポリフェノール等の色素成分を多く含んでいる。さらに、原料の加熱殺菌、発酵及び「火入れ」等の発酵停止処理等により、メイラード反応を始めとする成分間反応が起こり、黄色や赤褐色の色素成分が増加する。ポリフェノールやメラノイジン等の色素成分は、その多くが酵素阻害作用を持っており、PCRを阻害する。



また、分離精製した原料植物由来のDNAあるいはその断片をPCRで増幅し、その多型によって原料植物又は品種を判別するためには、混在する麹菌や酵母などのDNAは増幅しないで、植物由来のDNAのみが増幅するようなプライマーが必要である。部分分解されているDNA断片を鋳型とした場合でも、原料植物同士の品種判別が可能な増幅DNAが得られるように、植物遺伝子特有のプライマーの中でも特に好適なプライマーを選定することが必要である。



更に、原料植物由来のDNAあるいはその断片がPCRの鋳型として利用可能となり、DNAの増幅に好適なプライマーが共存した状態で、識別可能なDNA多型が現れるためには、PCRが順調に終了するための好適な反応条件を設定しなければならない。



前記のような多くの技術的な困難が伴うとともに、前記米飯及び餅の原料品種のDNA判別技術を醸造酒にそのまま適用できないため、醸造酒のみを試料として、その原料植物の種類又は品種を判別することは、当業者が想起しなかったことであるし、また解決すべき多くの課題を抱えていた。




【特許文献1】特許第3048149号公報

【特許文献2】特開2002-306173号公報

【非特許文献1】中村澄子ら、日本農芸化学会誌、2004年、78巻10号、p.984-993

産業上の利用分野


本発明は、醸造酒中の原料植物のDNA判別方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、エタノール処理を行い、次いでフェノール処理によってタンパク質を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNA、あるいは醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理を行って多糖類を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNAを鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類を判別する、醸造酒原料判別方法。

【請求項2】
醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、エタノール処理を行い、次いでフェノール処理によってタンパク質を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNA、あるいは醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理を行って多糖類を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNAを鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物品種を判別する、醸造酒原料判別方法。

【請求項3】
前記醸造酒が日本酒、ビール又はワインである、請求項1又は2に記載の方法。

【請求項4】
前記醸造酒を凍結乾燥、気流乾燥又は噴霧乾燥で粉末にする工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
前記醸造酒を冷風乾燥、冷風減圧乾燥又は減圧遠心乾燥により濃縮して薄膜にする工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

【請求項6】
前記DNAの抽出・精製において、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クロロフォルム及びフェノールからなる群から選択される1種類又は2種類以上の有機溶剤を用いて色素成分を除去する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。

【請求項7】
前記醸造酒が日本酒である場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、Mitol(配列番号75及び76)、Chlo1(配列番号77及び78)、GluSNP(配列番号79及び80)、BARGBSS(配列番号83及び84)、Ipoamy(配列番号87及び88)、Sugacss(配列番号89及び90)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)及びSBE(配列番号100及び101)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
前記醸造酒がビールである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、BARGBSS(配列番号83及び84)、MAIZGBSS(配列番号85及び86)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)及びダイズタンパク質グリシニン由来のプライマー(配列番号106及び107)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項9】
前記醸造酒がワインである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、VITGT(配列番号81及び82)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子由来のプライマー(配列番号102及び103)及びブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来プライマー(配列番号104及び105)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項10】
前記プライマーが、植物由来の反復配列の一部である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。

【請求項11】
前記多型の判別をSNP判別法によって行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。

【請求項12】
醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類又は品種を判別する醸造酒原料判別方法であって、前記プライマーとして請求項7~9のいずれかに記載のプライマーを使用することを特徴とする方法。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中


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