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陽電子放射断層撮像装置及び放射線検出器

国内特許コード P08A013394
整理番号 NIRS-272
掲載日 2008年5月16日
出願番号 特願2006-229376
公開番号 特開2008-051701
登録番号 特許第4877766号
出願日 平成18年8月25日(2006.8.25)
公開日 平成20年3月6日(2008.3.6)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発明者
  • 澁谷 憲悟
  • 津田 倫明
  • 錦戸 文彦
  • 稲玉 直子
  • 吉田 英治
  • 山谷 泰賀
  • 村山 秀雄
出願人
  • 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
発明の名称 陽電子放射断層撮像装置及び放射線検出器
発明の概要 【課題】飛行時間差(TOF)を利用した画像再構成において、信号対雑音比や空間解像度を改善する。
【解決手段】消滅放射線14の飛行時間差(TOF)の情報を画像再構成に利用する陽電子放射断層撮像(PET)装置において、消滅放射線14と放射線検出素子(例えばシンチレータ結晶23)が相互作用した深さ方向と横方向の結晶座標情報に対応する検出時刻補正情報が書き込まれるメモリを有し、該検出時刻補正情報を参照することにより、飛行時間差の情報精度を高める。
【選択図】図5
従来技術、競合技術の概要


陽電子放射断層撮像装置(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ:PET)は、陽電子放出核種を利用した核医学イメージング装置で、癌の診断や分子イメージング等に広く応用されている。



陽電子放出核種とは、18Fのように原子核中の陽子数が中性子数に比べて過多であることにより不安定な同位元素であり、+β崩壊に伴って陽電子とニュートリノを放出する性質がある。放出された陽電子は電子の反物質であるため、電子と出会うと対消滅して、両者の質量が全てエネルギに転換される。このエネルギは、消滅放射線という高エネルギ電磁波の形で放射される。対消滅の前後で運動量保存則が保存されるため、消滅放射線は主に2本が同時刻にほぼ正反対の方向に放出される。厳密には1本のみの放出や、3本以上が放出される場合も存在するが、その割合は合わせて全体の1%未満であるためイメージングでは無視できる。2本を放出する場合、それぞれのエネルギは(陽)電子1個の質量分に相当し、約511keVである。



イメージングの原理は消滅放射線の同時計数である。511keVの放射線が対向する2つの放射線検出器でほぼ同時刻に測定された場合、この2つの放射線検出器を結ぶ直線上で陽電子が対消滅した可能性が最も高い。この情報を、図1(A)に示す如く、被検体10の周囲に配置した多くの放射線検出器16を用いて収集し、X線CTと同様な数学的手法によって再構成することにより、被検体10中の陽電子放出核種12の分布を近似する断層映像が得られる。図において、18はベッドである。



従って、放射線検出器16に求められる性能は、消滅放射線14の入射位置、エネルギ、入射時刻を、なるべく正確に測定できることである。ここで、ほぼ同時刻とは概ね15ナノ秒(ナノは10の-9乗)以内の時間であり、放射線検出器の時刻決定の精度が高い場合には10ナノ秒以下、あるいは5ナノ秒以下とすることができる。二本の消滅放射線の入射を同時刻とみなして、一つの対消滅によって生じた一組の消滅放射線であると判定するための時間の枠(タイムウィンドウ)を短くすると、別々の対消滅に起因する複数の消滅放射線を誤って組み合わせる可能性が減少するため、測定精度を高めて信号対雑音比を向上させることができる。但し、個々の放射線検出器の時間分解能は、現在0.3ナノ秒程度にまで改善可能であるが、これにあわせてタイムウィンドウを短くし過ぎると、正しい消滅放射線の組み合わせに計数漏れを生じ、装置の空間的な測定領域が狭くなり感度も低下する。



放射線検出器16からの電気信号を処理して消滅放射線14の入射時刻を決定する能力が概ね1.5ナノ秒以下である場合には、タイムウィンドウは正しい消滅放射線の組み合わせに計数漏れを生じない範囲のままで、消滅放射線の飛行時間差(タイム・オブ・フライト:TOF)を利用すると陽電子放射断層撮像(PET)装置の信号対雑音比が向上することが知られている。例えば、対消滅が対向する2つの放射線検出器の中心部で起きた場合、2本の消滅放射線は同時刻に放射線検出器に到達する。また、対消滅が、どちらかの放射線検出器に近い座標(空間座標)で起きた場合、消滅放射線は近い方の放射線検出器へ先に到達する。つまり、両放射線検出器への到達時刻の差を求めることで、対消滅が起きた空間座標から、それぞれの放射線検出器まで距離の差に換算することができる。図1(A)に示したような、従来の飛行時間差を利用しないPET装置では、一組の同時計数から得られる情報は、対消滅が起きたと考えられる空間座標を含む直線となるが、飛行時間差を用いると、図1(B)に示す飛行時間差型PET(TOF-PET)装置のように、その直線上のある範囲に絞り込むことができる。その絞り込みの精度は、装置の時間分解能によって定まり、決定精度が高くなるほど対消滅位置に関する情報量が増大して信号対雑音比が向上する(非特許文献1参照)。



なお、消滅放射線の入射時刻を決定する能力が概ね100ピコ秒(ピコは10の-12乗)以下である場合には、信号対雑音比のみならず断層映像の空間解像度も向上すると期待されている。



消滅放射線の飛行時間差を利用したTOF-PET装置の概念は、1980年代には知られていた(非特許文献2参照)が、当時の技術水準では、放射線検出素子として用いられるシンチレータ結晶や放射線検出器、および放射線検出器からの電気信号を処理する回路の性能等が不十分であったため、信号対雑音比が向上しなかった。現在では、LSO(ケイ酸ルテチウムに少量のセリウムを添加したもの)やLYSO(LSOとケイ酸イットリウムの混晶に少量のセリウムを添加したもの)のように応答速度に優れたシンチレータ結晶が開発されており、また、放射線との相互作用で発光したシンチレーション光を検出するための光検出器として用いられる光電子増倍管(PMT)のタイミング性能も改善している。更に、特定用途向けの集積回路技術も向上しているため、消滅放射線の飛行時間差を利用したTOF-PET装置が、従来のPET装置の性能を信号対雑音比で上回ることが確認されている。このため、より時間分解性能に優れた放射線検出器が強く求められている。信号対雑音比の向上により、陽電子放射断層撮像に要する時間の短縮や、被検者に投与する放射性薬剤量の低減を図ることができる。



【特許文献1】
特開2004-279057号公報
【非特許文献1】
W.W.Moses,IEEE Trans. Nucl. Sci.,50巻5号 1325-1330頁,2003年
【非特許文献2】
T.Tomotani,IEEE Trans. Nucl. Sci.,28巻6号 4582-4589頁,1981年
【非特許文献3】
放射線ハンドブック第3版、753頁、2001年 日刊工業新聞社刊
【非特許文献4】
T.Tsuda他、IEEE Trans. Nucl. Sci.,53巻1号35-39頁、2006年

産業上の利用分野


本発明は、消滅放射線の飛行時間差の情報を画像再構成に利用する陽電子放射断層撮像
装置、及び、放射線検出器に係り、特に、放射線の入射した時刻を、より正確に決定することが可能な陽電子放射断層撮像装置、及び、これに用いるのに好適な放射線検出器に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
消滅放射線の飛行時間差の情報を画像再構成に利用する陽電子放射断層撮像装置において、
放射線検出素子と、
消滅放射線と放射線検出素子が相互作用した深さ方向と横方向の座標情報に対応する検出時刻補正情報を格納する記憶手段と
該検出時刻補正情報を参照することにより、飛行時間差の情報精度を高める検出時刻補正手段と、
を備えたことを特徴とする陽電子放射断層撮像装置。

【請求項2】
前記放射線検出素子が、検出素子の内部で消滅放射線と相互作用した深さ方向の情報が得られるシンチレータ結晶であることを特徴とする請求項1に記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項3】
前記シンチレータ結晶が、深さ方向に長い棒状とされ、深さ方向に複数の仮想層を設けて、深さ方向に2段以上に積層されていると見倣すことを特徴とする請求項に記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項4】
前記シンチレータ結晶が、深さ方向に2段以上に積層されていることを特徴とする請求項又はに記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項5】
前記検出時刻補正手段が、シンチレータ結晶内における消滅放射線とシンチレーション光の伝達速度の違いによる検出時刻の誤差を修正するものであることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項6】
前記検出時刻補正手段が、シンチレータ結晶内におけるシンチレーション光の伝達経路の距離の違いによる検出時刻の誤差を修正するものであることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項7】
前記検出時刻補正手段が、シンチレータ結晶内におけるシンチレーション光の伝達経路の違いによる検出器の出力波形の違いが原因となって生じる検出時刻の誤差を修正するものであることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の陽電子放射断層撮像装置。

【請求項8】
放射線検出素子に入射した消滅放射線を検出するための放射線検出器において、
放射線検出素子と、
消滅放射線と放射線検出素子が相互作用した深さ方向と横方向の座標情報に対応して、検出時刻の誤差を修正するための検出時刻補正情報を格納する記憶手段と、
該検出時刻補正情報を参照することにより、飛行時間差の情報精度を高める検出時刻補正手段と、
を備えたことを特徴とする放射線検出器。

【請求項9】
前記放射線検出素子がシンチレータ結晶とされ、
前記検出時刻補正手段が、消滅放射線の飛行速度と、消滅放射線とシンチレータ結晶の相互作用によりシンチレータ結晶中で発生したシンチレーション光の伝達速度の違いによる検出時刻の誤差を修正するものであることを特徴とする請求項に記載の放射線検出器。

【請求項10】
前記放射線検出素子がシンチレータ結晶とされ、前記検出時刻補正手段が、消滅放射線とシンチレータ結晶の相互作用によりシンチレータ結晶中で発生した多数のシンチレーション光子が、様々な伝達経路を経て様々な時刻に光検出器に到達するところ、その時刻と光子数との関係が、消滅放射線とシンチレータの結晶が相互作用した深さ方向と横方向の座標により異なるため、光検出器の出力波形が該座標ごとに変化することにより生じる検出時刻の誤差を修正するものであることを特徴とする請求項に記載の放射線検出器。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
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