TOP > 国内特許検索 > 温度応答性ゾル-ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法

温度応答性ゾル-ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法 新技術説明会

国内特許コード P08P005265
整理番号 KANDAI-146
掲載日 2008年5月30日
出願番号 特願2006-304549
公開番号 特開2008-120886
登録番号 特許第5019851号
出願日 平成18年11月9日(2006.11.9)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
登録日 平成24年6月22日(2012.6.22)
発明者
  • 大矢 裕一
  • 大内 辰郎
  • 長濱 宏治
出願人
  • 学校法人 関西大学
発明の名称 温度応答性ゾル-ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法 新技術説明会
発明の概要 【課題】生体適合性、十分な力学強度、そしてゲル内部での細胞増殖性を持った、温度応答性ゾル-ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法、及び該生分解性ポリマーを用いた医療用材料を提供する。
【解決手段】親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合でメソゲン基が導入されてなる温度応答性生分解性ポリマーであり、具体的には、ポリグリセリンとポリアルキレングリコールとを縮合させたポリエーテルと、ヒドロキシ酸の重合体であるポリエステルに、コレステロール誘導体を含むメソゲン基を導入することにより得られる。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要

温度、pH、電界、及び化学物質の変化に対する刺激感受性ポリマーの物理化学的応答に焦点を合わせた多くの研究がなされてきた。特に、外部の温度変化に応じた相転移現象を示す熱感受性ポリマーは、薬物担体などの医療用材料として広く研究されてきた。

非特許文献1及び2によって開示されたN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAm) のホモポリマーまたはコポリマーは、1つの類である。もう1つの類は、例えば、非特許文献3によって開示されたプルロニック(ポロキサマー, Poloxamer, 商標)のような、ミドルブロックとしてポリ(プロピレンオキシド)およびサイドブロックとしてポリ(エチレンオキシド)からなるトリブロック共重合体である。このトリブロック共重合体は、温度に応答して溶液状態(ゾル)から溶媒を含んだゲル状態へ転移する挙動(以下,ゾル-ゲル転移と表記)を示す。これは、特定の分子量および組成範囲を有する共重合体水溶液が、ゾル-ゲル転移温度より低い温度では水溶液として存在するが、温度が転移温度より高いとき(例えば体温まで上昇するとき)共重合体間の相互作用によって固体ゲルを形成するという現象である。

外部からの添加物なしに(in situ)ゾルからゲルへの変化が可能なこれらのポリマーは、体内へ注射による投与が可能な医療用材料として用いることができる。投与後は、外科的処置の必要が無く、生体内において低侵襲的に任意の希望の形状のインプラントを形成できるという利点を有する。つまり、生理(薬理)活性物質とポリマー溶液を体内に注射することで容易に生理(薬理)活性物質を内部に取込んだゲルが調製でき,それをリザーバーとした生理(薬理)活性物質の徐放が可能である。また,適した細胞をポリマー溶液に懸濁させたものを体内に注射することで、容易に細胞を内部に取込んだゲルが調製できる。

この様に、in situでゲル化する材料は、注射によって生体内に埋植可能な埋め込み型ドラッグデリバリーシステムや生体組織工学 (tissue engineering) 用マトリックスとして注目を集めている。理想的な注射可能な系として機能するため、重合体の水溶液は、調製条件では注射可能な程度の低い粘性を示し、そして生理条件下(37℃付近)で迅速にゲル化する必要がある。医用材料として考慮する場合、重合体の生体適合性および安全性も重要な問題である。このため、その材料は生分解性で代謝可能あるいは毒性を発現することなく体外へ排泄される程度の分子量にまで分解される必要がある。また,その分解中、含水性に富んだヒドロゲルの性質を保持することにより、生体組織の刺激を誘起しないようでなければならない。

しかしながら、ポロキサマー型コポリマー(プルロニック)は非生分解性であり、そして動物実験で、ポロキサマーの水溶液を腹腔内に注射するとトリグリセリドとコレステロールが増加することが示されている(非特許文献4)。

最近、Jeongらは、生分解性で、in situでゲル化するポリ(エチレングリコール‐block‐(DL‐乳酸‐random‐グリコール酸)‐block‐エチレングリコ-ル); (PEG‐PLGA‐PEG)トリブロック共重合体を報告している(特許文献1)。

また、非特許文献5では、同様な性質を有する(PLGA‐PEG‐PLGA)トリブロック共重合体を報告している(図1)。

しかし、これらのポリマーは,分子量が低いためこのヒドロゲルの力学的強度は低く、生体組織との力学的適合性に乏しい。また,最初透明であったこれらのゲルは、加水分解に伴って不透明になりひいてはゲルが崩壊してしまう。ポリマーの分解に伴う構造変化と界面または相の発生は、生体内のタンパク質を変性する可能性があり、または生体組織工学での細胞損壊の原因になる可能性が指摘されている。

医療分野では、通常、生体内の臓器と異なる力学的な特性を有する人工材料を埋植すると、生体内で力学的性質の違いに起因する生体反応が起こることが知られており、そのため、生体内の臓器と同様の力学的な特性を有する材料の開発が求められている。

しかしながら、今まで開発されたin situでゲル化する生分解性ポリマーでは、生体内に埋植後十分な力学強度、生体適合性を併せ持ったものは存在しない。

最近、Ouchiらは分岐構造を有するポリエチレングリコール‐block‐ポリ(L‐乳酸)8ブロック共重合体を報告している。この分岐ブロック共重合体は、直鎖型のポリ(エチレングリコール)‐block‐ポリ(L‐乳酸)2ブロック共重合体と比較して、多点でポリ乳酸ブロックの凝集が起こるために、フィルムの引っ張り時破断伸びが効果的に増大する(非特許文献6)。このポリマーは親水部(ポリエチレングリコール)と疎水部(ポリ(L‐乳酸))の比率によっては温度応答性を示すが,その挙動はゾル-ゲル転移ではなく,ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)と同様な溶解-不溶の転移である。しかし,この知見に基づき、ポリ乳酸ブロックの分岐構造に起因した凝集性をさらに強めることができれば、ゾル-ゲル転移の発現や生じたゲルの力学強度を効果的に増大できると考えられる。

【特許文献1】米国特許第6117949号明細書
【非特許文献1】Baeら Makromol. Chem. Rapid Commun., 8, 481-485 (1987)
【非特許文献2】Chenら Nature, 373, 49-52 (1995)
【非特許文献3】Malstonら Macromolecules, 25, 5440-5445 (1992)
【非特許文献4】Wout et. al, J. Parenteral Sci. & Tech., 46, 192-200 (1992)
【非特許文献5】Doo Sung Lee, Macromol. Rapid Commun. 2001, 22, 587.
【非特許文献6】Ouchiら, Polymer J. 2006, 38, 852.

産業上の利用分野

本発明は、生体適合性に優れ、温度応答性ゾル-ゲル転移を示す生分解性ポリマー及びその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
親水性ポリエーテルと疎水性ポリエステルとから構成される共重合体に、共有結合でメソゲン基が導入されてなる温度応答性生分解性ポリマーであって、該親水性ポリエーテルが、ポリグリセリンの水酸基にポリアルキレングリコールを脱水縮合したポリエーテルであり、該疎水性ポリエステルがヒドロキシ酸の重合体である、温度応答性生分解性ポリマー
【請求項2】
前記疎水性ポリエステルの末端水酸基と前記メソゲン基が共有結合してなる請求項に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項3】
前記メソゲン基が、コレステロール誘導体を含む基である請求項1又は2に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項4】
一般式(A):
【化1】



(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13~100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5~112の整数を示し、nは同一又は異なって3~20の整数を示し、pは0~28の整数を示す。)
で表される化合物である請求項1に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項5】
一般式(A)においてRで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【化2】



(式中、qは1~10の整数を示す。)
で表される基である請求項に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項6】
濃度20wt%の水溶液としたときの、温度37℃において形成されるヒドロゲルの貯蔵弾性率が50~50,000Paである請求項に記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項7】
数平均分子量(Mn)が8,000~100,000である請求項1~のいずれかに記載の温度応答生分解性ポリマー。
【請求項8】
数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)が1.0~2.0である請求項1~のいずれかに記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項9】
生分解挙動が、37℃に調整したpH=7.4のリン酸緩衝液中に浸漬した場合に、20日で数平均分子量が20~100%減少する請求項1~のいずれかに記載の温度応答性生分解性ポリマー。
【請求項10】
一般式(A):
【化3】



(式中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは同一又は異なって水素原子又はメソゲン基を示し、全てのRのうち13~100%がメソゲン基であり、mは同一又は異なって5~112の整数を示し、nは同一又は異なって3~20の整数を示し、pは0~28の整数を示す。)
で表される化合物の製造方法であって、一般式(B):
【化4】



(式中、R、m、n及びpは前記に同じ。)
で表される化合物と、一般式(C):
X-R (C)
(式中、Xは脱離基を示し、Rは前記に同じ。)
で表される化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記Rで示されるメソゲン基が一般式(C1’):
【化5】



(式中、qは1~10の整数を示す。)
で表される基である請求項10に記載の温度応答性生分解性ポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記請求項1~のいずれかに記載の温度応答性生分解性ポリマーを含む医療用材料。
産業区分
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2006304549thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close