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多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法および多重蛍光からの蛍光強度の推定方法 新技術説明会

国内特許コード P08A013653
整理番号 11098
掲載日 2008年8月22日
出願番号 特願2005-062524
公開番号 特開2006-242899
登録番号 特許第4537231号
出願日 平成17年3月7日(2005.3.7)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
登録日 平成22年6月25日(2010.6.25)
発明者
  • 森下 壮一郎
  • 横田 秀夫
  • 姫野 龍太郎
  • 三島 健稔
出願人
  • 独立行政法人理化学研究所
発明の名称 多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法および多重蛍光からの蛍光強度の推定方法 新技術説明会
発明の概要

【課題】多重蛍光から各蛍光色素の蛍光色素濃度を精度よく推定することを可能にして、従来の技術では分離が困難な多重蛍光の分離を可能とした多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法を提供する。
【解決手段】測定した多重蛍光から蛍光色素濃度を推定する多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法において、蛍光色素濃度が既知の蛍光色素の分光スペクトルに対して独立成分分析を行って独立成分の強度を導出し、上記導出した独立成分の強度を変数として回帰分析を行って上記蛍光色素濃度が既知の蛍光色素の蛍光色素濃度関数を推定し、上記推定した蛍光色素濃度関数に基づいて測定した多重蛍光から蛍光色素の濃度を推定する。
【選択図】 図14

従来技術、競合技術の概要


従来より、蛍光色素に光を照射すると、当該蛍光色素に照射された光(励起光)の波長とは異なる波長の蛍光が観察されることが知られている。



即ち、蛍光色素は、光子を吸収して励起されるが、分子内緩和によりエネルギーが失われ、吸収した光子よりエネルギーが低い光子を発する。これを蛍光と称しており、上記したように蛍光は、励起光よりエネルギーが低い光、即ち、波長が長い光として観測されるものである。



より詳細に説明すると、蛍光色素は、それぞれ固有の吸光スペクトルε(λ)と発光スペクトルf(λ)とをもっており、吸光スペクトルε(λ)のピークを励起波長と称し、発光スペクトルf(λ)のピークを蛍光波長と称している。



従って、蛍光色素のこのような性質から、蛍光色素を含有する試料に対して励起波長を含むが蛍光波長は含まない光を照射して、蛍光波長のみを観察することにより、試料における蛍光色素の分布のみを観察することができることになる。



このように、蛍光は、励起光の波長とは異なる波長で観察されるので、散乱光や透過光による影響を受けることなく、試料内におけるその有無を容易に判別することが可能なものである。




上記したような背景から、タンパク質の同定や生体組織の観察のために、タンパク質や生体組織を蛍光色素で染色して可視化する手法たる蛍光イメージングが、分子生物学の分野などにおいて広く行われている。



即ち、上記したように蛍光色素は励起光とは異なる波長で蛍光を発するので、例えば、波長フィルタを適切に組み合わせることにより蛍光のみを取り出して、蛍光色素で染色した組織のみの分布や形状を観察することができるようになる。このため、生体形状を観察するに際しては、対象組織を蛍光色素でマーキングする蛍光イメージングが有効であると認識されており、タンパク質の同定や生体組織の観察のために分子生物学の分野などで広く実施されているものである。



また、上記した蛍光イメージングのなかで、複数の蛍光色素を用いて多重蛍光染色を行って可視化する手法は、多重蛍光イメージングと称されている。今日における蛍光色素合成やマーキング技術の研究の成果により、試料の組織をそれぞれ別の蛍光色素で染色する多重蛍光染色が可能となってきており、現在では、上記した多重蛍光イメージングが観察の主流となっている。




ところで、多重蛍光イメージングにおける多重蛍光染色試料の観察には、重なり合った蛍光の分離が必要となる。



こうした多重蛍光染色における蛍光の分離を簡単にするためには、蛍光色素同士の励起波長や蛍光波長が重ならないように、各種の蛍光色素を組み合わせることが必要となってくる。



ここで、蛍光色素iの吸光スペクトルをε(λ)とし、蛍光色素iの発光スペクトルをf(λ)とすると、蛍光色素iの吸光スペクトルと蛍光色素jの発光スペクトルとの相互の影響r(i,j)は、次のように計算することができる。
【数式1】




染色に用いた蛍光色素の数をNとすると、蛍光色素同士の相互の影響は、
【数式2】




と表される。



このとき、式(2)のRができる限り小さくなるような蛍光色素の組み合わせが、多重蛍光イメージングにおける蛍光の分離には最適となる。



しかしながら、実際には、吸光スペクトルや発光スペクトルにはある程度の広がりがあるため、相互の影響を0、即ち、相互の影響が全く無い蛍光色素同士の組み合わせを得ることは極めて困難であり、相互の影響が無視できるほど十分に小さくなるような蛍光色素の組み合わせも極めて限られている。



このため、多重蛍光イメージングにおける重なり合った蛍光の分離の手法として、蛍光色素同士の相互の影響を考慮した多重蛍光の分離の手法が、従来より種々提案されている。



こうした従来の多重蛍光の分離の手法としては、例えば、波長フィルタによる特定波長の強度測定の手法や、リニア・アンミキシング(Linear Unmixing)による分光スペクトルからの蛍光強度推定の手法などが知られている。




ここで、以下の説明の理解を容易にするために、蛍光観察の定式化について検討するが、まず、蛍光観察を定式化するために、励起光および観察光をそれぞれ分光できる観察系を考える。



この観察系での試料の観察によって得られる分光スペクトルXを、励起波長λおよび観察波長λの関数として次のように表す。
【数式3】




なお、式(3)において、Eは観察系の光源や光学系あるいは検出器などによって決まる装置関数であり、Sは試料の特性によって決まる試料関数である。



試料関数Sを試料が散乱させた成分のみを表すSと蛍光に由来する成分を表すSとの
和として、次の式(4)に示すように表す。
【数式4】




なお、式(4)において、Srは蛍光を観察する上では不要な成分であり、むしろノイズとされる。しかしながら、励起光の波長以外で散乱光が観察されることはないので、
【数式5】




となる。従って、式(3)、式(4)および式(5)より、
【数式6】




が得られる。



即ち、蛍光を観察するには励起波長と観察波長とが等しくならない場合を考えればよく、これは蛍光観察の本質であって、上記した波長フィルタによる波長選択の手法やリニア・アンミキシングによる手法は、いずれもこの考え方に基づいている。




次に、従来の波長フィルタによる波長選択の手法について説明するが、この波長フィルタによる波長選択を用いた蛍光の分離は、単一蛍光色素による染色や、多重蛍光染色でも蛍光色素同士の励起波長や蛍光波長が十分に大きく異なる場合においては、信頼性のある簡便な手法であることが知られている。



ここで、励起光側の波長フィルタの分光透過率をFとし、観察光側の波長フィルタの分光透過率をFとすると、観測値Xは、以下の式(7)により表すことができる。
【数式7】




ただし、式(6)の条件を満たすために、波長フィルタの組み合わせは、FとFとが直交するように、即ち、
【数式8】




となるように選択すべきである。



多重蛍光染色の場合には、さらに蛍光色素同士の相互影響が少なくなるように、波長フィルタを選択しなければならない。



ここで、F、Fを通して測定される蛍光色素iの蛍光を表す量Yを、
【数式9】




とすれば、各蛍光色素iについて
【数式10】




を計算し、Rができる限り小さくなるように波長フィルタの組み合わせを選択すれば良いと考えられる。



このように、上記した従来の波長フィルタによる波長選択の手法においては、吸光スペクトルや発光スペクトルのピークが重ならないように波長フィルタを選択する必要があるが、常に都合の良いフィルタの組み合わせが得られると限らず、むしろそのような組み合わせは極めて限定されるという問題点があった。



換言すれば、従来の波長フィルタによる波長選択の手法においては、吸光スペクトルや発光スペクトルのピークが近い蛍光色素を同時に用いた場合などには、多重蛍光を分離して判別することができないという問題点があった。



さらに、従来の波長フィルタによる波長選択の手法においては、同時に使用できる蛍光色素の数も2~3種類程度が限界であるという問題点があった。




一方、リニア・アンミキシングによる分光スペクトルの分離は、吸光スペクトルや発光スペクトルのピーク波長が近い蛍光の分離に有効であることが知られている(非特許文献1参照)。



即ち、リニア・アンミキシングは、分光分析により分光スペクトルから多重蛍光の分離を行う手法であり、励起光の励起波長あるいは観察光の観察波長のいずれか一方を固定し、波長を固定しない他方の励起光または観察光の波長を走査してスペクトルを観察するというものである。ここで、励起光あるいは観察光の波長を固定するということは、励起光あるいは観察光の分光スペクトルを変化させないということであり、それが単一波長の光であるか、白色光であるか、種々の波長の光を混合したものであるかは問わない。



なお、以下の説明において式を簡略に記述するために、走査した方の光(励起光または観察光)の波長を単にλとする。このλは離散波長であり、L個の値をとるものとする。そして、各波長の信号強度を並べたL次元列ベクトルをxと表す。



さらに、染色に用いた蛍光色素の数をNとし、リファレンスとして、蛍光色素i(i=1,・・・,N)のみが蛍光しているスペクトルがL次元列ベクトルaとして得られているものとする。



ここで、混合された蛍光色素の蛍光スペクトルが、リファレンスaの線形結合で表されると仮定すれば、観測スペクトルxのリファレンスaに対する相対強度yは、xのaへの射影
【数式11】




と計算できる。上記式(10)において、は転置を表す。



なお、リニア・アンミキシングによる信号分離のためには、リファレンスaは必ずしも直交している必要はなく、独立であればよい。勿論、吸光スペクトルや発光スペクトルのピーク波長が重なっていても構わない。



つまり、リニア・アンミキシングは、分光スペクトルの線形結合モデルを仮定し、線形代数の理論に基づいて色素に固有のスペクトル(この色素に固有のスペクトルは、「フィンガープリント」と称される。)に対する観測スペクトルの射影を得て分離を行うというものであり、この手法によれば、蛍光のピークが重なっていてもスペクトルの形さえ異なっていれば多重蛍光を分離することができる。



しかしながら、このリニア・アンミキシングは、観測の対象が蛍光の場合には、蛍光色素同士の相互影響により、この手法が前提としている分光スペクトルの線形結合モデルが成り立たず、この手法が適用できるのは蛍光色素同士の相互影響を無視できる場合のみであり、またそのような状況は極めて稀であるという問題点があった。



換言すれば、多重蛍光の分離においては、ある蛍光色素の蛍光が別の蛍光色素に吸収されて励起するなどの要因により、線形結合モデルが成り立たないことが多いものであるが、上記したようにリニア・アンミキシングは、蛍光の分光スペクトルを観察し、蛍光色素の蛍光スペクトルへの線形写像から各蛍光色素の蛍光強度を得ようとするものであり、スペクトルの線形結合モデルに基づいている手法であるため、その適用範囲が極めて限られるという問題点があった。



即ち、スペクトルの線形結合モデルに基づいているリニア・アンミキシングは、蛍光色素同士の励起波長と蛍光波長とが重なっているときには、スペクトルの線形性が保たれないので適用できないという問題点があった。



また、リニア・アンミキシングは、蛍光色素同士の相互作用はないものと見なしているため、式(2)で得られるRが十分に小さくなければこの手法による多重蛍光の分離結果は意味がないものとなるものであるが、多重蛍光染色において使用する蛍光色素の数が増えるほど式(2)で得られるRが大きくなる傾向があるため、この手法により正しく分離できる蛍光色素数は、経験的には高々3程度であるという問題点があった。




以上において説明したように、従来の波長フィルタによる波長選択の手法やリニア・アンミキシングの手法は、蛍光色素の相互作用を考慮に入れていないため、限定された場合のみにしか適用することができず、いずれも蛍光色素同士の励起波長や蛍光波長が重なり合って相互作用がある場合には適用できないという問題点があり、また、多重蛍光染色において同時に使用することができる蛍光色素の数も極めて少ないという問題点があった。

【非特許文献1】鶴井博理、「画像分光による超多色蛍光イメージング法」、サイトメトリー・リサーチ(Cytometry Research)、9(2)、pp.1-7、1999

産業上の利用分野


本発明は、多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法および多重蛍光からの蛍光強度の推定方法に関し、さらに詳細には、多重蛍光イメージングなどに用いて好適な多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法および多重蛍光からの蛍光強度の推定方法に関し、特に、多重蛍光イメージングなどにおいて重なり合った蛍光たる多重蛍光を分離する際に用いて好適な多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法および多重蛍光からの蛍光強度の推定方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
測定した多重蛍光から各蛍光色素の蛍光色素濃度を推定する多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法において、
多重蛍光を発する各蛍光色素数以上の種類の濃度比率で混合した蛍光色素濃度が既知の蛍光色素の分光スペクトルに対して独立成分分析を行って独立成分の強度を導出し、
前記導出した独立成分の強度を変数として回帰分析を行って前記蛍光色素濃度が既知の蛍光色素の蛍光色素濃度関数を推定し、
前記推定した蛍光色素濃度関数に基づいて、測定した多重蛍光から各蛍光色素の蛍光色素濃度を推定する
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法。

【請求項2】
請求項1に記載の多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法において、
前記回帰分析は、線形回帰モデルによる回帰分析である
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法。

【請求項3】
請求項1に記載の多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法において、
前記回帰分析は、非線形回帰モデルによる回帰分析である
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法。

【請求項4】
請求項3に記載の多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法において、
前記非線形回帰モデルは、ロジスティック回帰モデル、多項式回帰モデル、フーリエ級数、ウェーブレットまたはn次スプラインである
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光色素濃度の推定方法。

【請求項5】
測定した多重蛍光から各蛍光色素の蛍光強度を推定する多重蛍光からの蛍光強度の推定方法において、
多重蛍光を発する各蛍光色素数以上の種類の濃度比率で混合した蛍光強度が既知の蛍光色素の分光スペクトルに対して独立成分分析を行って独立成分の強度を導出し、
前記導出した独立成分の強度を変数として回帰分析を行って前記蛍光強度が既知の蛍光色素の蛍光強度関数を推定し、
前記推定した蛍光強度関数に基づいて、測定した多重蛍光から各蛍光色素の蛍光強度を推定する
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光強度の推定方法。

【請求項6】
請求項5に記載の多重蛍光からの蛍光強度の推定方法において、
前記回帰分析は、線形回帰モデルによる回帰分析である
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光強度の推定方法。

【請求項7】
請求項5に記載の多重蛍光からの蛍光強度の推定方法において、
前記回帰分析は、非線形回帰モデルによる回帰分析である
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光強度の推定方法。

【請求項8】
請求項7に記載の多重蛍光からの蛍光強度の推定方法において、
前記非線形回帰モデルは、ロジスティック回帰モデル、多項式回帰モデル、フーリエ級数、ウェーブレットまたはn次スプラインである
ことを特徴とする多重蛍光からの蛍光強度の推定方法。
産業区分
  • 試験、検査
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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