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質量分析用イオン化標識剤およびそれを用いた質量分析法 新技術説明会

国内特許コード P08P013825
掲載日 2008年9月26日
出願番号 特願2007-163180
公開番号 特開2008-064739
登録番号 特許第5110424号
出願日 平成19年6月20日(2007.6.20)
公開日 平成20年3月21日(2008.3.21)
登録日 平成24年10月19日(2012.10.19)
優先権データ
  • 特願2006-170616 (2006.6.20) JP
  • 特願2006-218733 (2006.8.10) JP
発明者
  • 真木 俊英
  • 石田 幸路
出願人
  • 国立大学法人 長崎大学
発明の名称 質量分析用イオン化標識剤およびそれを用いた質量分析法 新技術説明会
発明の概要

【課題】マトリックスに依存することなく、高感度かつ高精度のレーザーイオン化質量分析を可能にする質量分析用標識剤を提供すること。
【解決手段】レーザー照射によってイオン対に開裂するイオン開裂部分および他の物質と結合を形成しうる結合基を有する化合物(好ましくは中性分子)からなる質量分析用イオン化標識剤、および該標識剤を用いる質量分析法。
【選択図】図3

従来技術、競合技術の概要


質量分析法は、幅広く化学、生物学などの分子を扱う科学において必須の分子測定法である。その際だった特徴は、分子量の情報に基づく優れた分子定性能である。加えて、質量分析は破壊的測定法であるものの、一般に高感度分析が可能であるため、測定試料の要求量は極めて小さく、測定機器の普及に伴い、その重要性、汎用性は益々高まって行くものと考えられる。



質量分析法は、大きく分けて1)イオン化法と2)分子ふるい部分に分けて考えることができる。イオン化法としては,エレクトロンインパクト(EI)、ケミカルイオン化(CI)、高速原子衝突イオン化(FAB)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧イオン化(API)、コールドスプレーイオン化(CSI)そしてマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)などが開発されており、分子ふるい部である2重収束型質量分析法,四重極型質量分析法(Q-MS)、飛行時間型質量分析法(TOF-MS)などと組み合わせて広く利用されている。



既存のイオン化法は、外部からの物理的なエネルギーを標的試料に加えることによって標的分子のイオン化を促す方法であり、一般的に多くの化合物を網羅的に測定可能とするものの幾つかの解決されるべき問題点を残している。例えば、1)塩などの夾雑物の影響により目的分子イオンが観察できない場合がある(夾雑物の存在に弱い)、2)イオン化し易さが分子により大きく異なり、観察し難い分子がある、3)微妙な試料状態、分析条件変化、分子構造の違いで試料分子のレスポンスファクターが変化し易いため、定量解析が一般に難しいなどを挙げることができる。



特定の標的分子を解析し、その質量変化を定量的に見積もるためには、安定したイオン化を可能とするイオン化標識の導入が効果的であると考えられる。この様な背景の下、イオン化を促進するための標識試薬の開発がなされており、これまでに、オリゴ糖のネガティヴモード検出を目的とした2-アミノベンズアミド(非特許文献1)、特定のマトリックスとの組み合わせによりイオン化を促進する2-ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(特許文献1)、グアニジウム基の導入のための糖鎖標識試薬(特許文献2)などのマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)におけるイオン化を促進するための各種標識試薬が報告されている。



MALDI-TOF-MSは、従来イオン化が困難であった高分子量の生体分子を安定かつ高感度にイオン化することを可能にし、ポストゲノムにおけるプロテオーム解析の必須アイテムになっている。しかし、MALDI-TOF-MSは高濃度のマトリックスを必要とするため、1)低分子量領域でマトリックスに由来するイオンピークがバックグランドとして発生して低分子化合物の分析が困難である、2)試料の層厚を増して、試料分布の不均一とレーザー光線のエネルギー伝播の不均一をもたらし、また、3)イオン化されたマトリックスを介する複雑なメカニズムでイオン化されるので、再現性に欠けるという問題があった。また、一般的にマトリックスと試料化合物との混合結晶を予め調製し、さらにレーザー光線の照準を混合結晶に合わせるなどのテクニックを要し、自動化が困難であるため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)等の分離精製機器とのオンライン分析が困難であった。



この様な背景の下、レーザーイオン化において、試料の分子構造、分析条件、夾雑物、マトリックスなどによるレスポンスファクターの影響を受けにくく、さらにマトリックスに依存することなく安定したイオン化を可能にするイオン化標識剤を開発することができれば、生命科学をはじめとする各種分野において、再現性、定量性が高い質量分析を簡便に行うことを可能にする革新的なツールになるものと期待できるが、そのような標識剤は未だ開発されていない。

【特許文献1】特開2006-10672号公報

【特許文献2】特開2005-291958号公報

【非特許文献1】Analytical Chemistry, 第77巻, 2005年, p.6954-6959

【非特許文献2】Organic Letters, 第3巻, 第2号, 2001年, p.255-257

【非特許文献3】Journal of the American Chemical Society, 第122巻, 2000年, p.2687-2697

【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 第6巻, 1996年, p.979-982

【非特許文献5】The Journal of Organic Chemistry, 第62巻, 1997年, p.2370-2380

【非特許文献6】Journal of Combinatorial Chemistry, 第5巻, 2003年, p.814-820

産業上の利用分野


本発明は、各種試料を高感度かつ定量的に質量分析することを可能とする新規概念に基づく質量分析用イオン化標識剤およびそれを用いた質量分析法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
レーザー照射によってカルボカチオンと(チオ)フェノール性アニオンのイオン対に開裂する(チオ)エーテル結合を含むイオン開裂部分およびアニオンに開裂する部分構造中に存在し、かつ他の物質と結合を形成しうる結合基を有する中性分子化合物であって、カルボカチオンが共役系スペーサーを介するかまたは介さないで電子求引性基を少なくとも1つ有する化合物からなることを特徴とする、質量分析用イオン化標識剤。

【請求項2】
カルボカチオンがベンジルカチオンである、請求項記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項3】
(チオ)フェノール構造に共役する不飽和結合を有する基を有する、請求項1または2に記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項4】
質量分析用イオン化標識剤を構成する化合物が、式(I)
【化学式1】


(式中、R、RおよびRは独立して、水素原子または任意の置換基を示し、かつR、RおよびRの少なくとも一つが、共役系スペーサーを介するかまたは介さない電子求引性基、または該電子求引性基を少なくとも一つ有し、さらに任意の置換基を有していてもよいフェニル基であり、Xは酸素原子または硫黄原子を示し、Wは単結合またはカルボニル基を示し、Yは単結合または任意の構造を有するスペーサーを示し、Zは他の物質と結合を形成しうる結合基を示し、環Aは独立して1以上の任意の置換基を有していてもよい。)で表される(チオ)エーテル化合物である、請求項記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項5】
電子求引性基が、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、カルボニル基、ホスホリル基、スルホニル基および電子欠乏型複素環基から選ばれる、請求項記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項6】
Xが酸素原子である、請求項4または5に記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項7】
Zが、カルボキシル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アミノ基、マレイミジル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ヒドラジノ基、ハロゲン原子、ハロゲノスルホニル基、ボロン酸基、アジド基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基およびジスルフィド基から選ばれる結合基である、請求項のいずれか一項に記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項8】
環Aが環Aに共役する不飽和結合を有する基を有する、請求項のいずれか一項に記載の質量分析用イオン化標識剤。

【請求項9】
試料化合物に請求項1~のいずれか一項に記載の質量分析用イオン化標識剤を作用させて標識する工程、得られた標識化試料化合物にレーザーを照射してイオン化する工程、およびイオン化された標識化試料化合物を質量分離部にて分離する工程を含むことを特徴とする質量分析法。

【請求項10】
飛行時間型質量分析法によってイオンを分離する、請求項記載の質量分析法。

【請求項11】
試料化合物の定量分析を行う、請求項または10記載の質量分析法。

【請求項12】
試料化合物の反応をモニターする、請求項または10記載の質量分析法。

【請求項13】
式(I’)
【化学式2】


(式中、R1’、R2’およびR3’は独立して、水素原子;アルキル基;またはアルコキシ基を示し、かつR、RおよびRの少なくとも一つが、ハロゲン原子、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ホスホリル基、スルホニル基およびパーフルオロアルキル基から選ばれる電子求引性基;または該電子求引性基を少なくとも一つ有し、さらにアルキル基およびアルコキシ基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよいフェニル基を示し、Xは酸素原子または硫黄原子を示し、Y’は単結合、フェニレン基または炭素数1~17の飽和または不飽和の炭化水素鎖(該炭化水素鎖は、オキソ、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよく、構成炭素原子の1以上が、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれるヘテロ原子またはフェニレン基で置き換わってもよい。)からなるスペーサーを示し、Z’はカルボキシル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アミノ基、マレイミジル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ヒドラジノ基、ハロゲン原子、ハロゲノスルホニル基、ボロン酸基、アジド基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基およびジスルフィド基から選ばれる結合基を示し、環A’は独立して、アルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホスホリル基およびスルホニル基から選ばれる1以上の置換基を有していてもよい。)で表される(チオ)エーテル化合物からなることを特徴とする、請求項1記載の質量分析用イオン化標識剤

【請求項14】
Xが酸素原子である、請求項13記載の質量分析用イオン化標識剤
産業区分
  • 試験、検査
  • 有機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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