TOP > 国内特許検索 > 水油界面を利用した薬物-シリカ封入体の製造法

水油界面を利用した薬物-シリカ封入体の製造法

国内特許コード P08P005678
整理番号 IP18-080
掲載日 2008年11月7日
出願番号 特願2007-108375
公開番号 特開2008-266157
登録番号 特許第5344417号
出願日 平成19年4月17日(2007.4.17)
公開日 平成20年11月6日(2008.11.6)
登録日 平成25年8月23日(2013.8.23)
発明者
  • 奥 浩之
  • 神野 恵治
  • 茂木 健司
出願人
  • 国立大学法人群馬大学
発明の名称 水油界面を利用した薬物-シリカ封入体の製造法
発明の概要

【課題】穏和な条件で効率よく薬物のシリカ封入体を製造する方法および該薬物のシリカ封入体を含有する医薬組成物の提供。
【解決手段】薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液を調製して、該二層分離液の界面において薬物のシリカ封入体を生成させる、薬物のシリカ封入体の製造方法。さらに該シリカ封入体を、生体に許容される支持材と混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込んでなる、医薬組成物。該薬物は、細胞壁合成阻害、細胞膜阻害、核酸合成阻害等の各種作用型抗生物質等からなる群より選択される少なくとも一つの薬物であり、該医薬組成物は骨髄炎の治療用または予防用、骨腔補填剤または骨接合剤として有用である。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


(1)整形外科領域に於ける骨髄炎治療の現況:
骨髄炎は、骨組織の感染を治療するのが極めて困難である。通常、この治療は感染された骨範囲の壊死組織切除法によって行われる。切除した空洞部には、生体吸収性の無いSeptopal(登録商標)チェーンまたはゲンタマイシンを含有するコラーゲンフリースを充填することによる、複数の抗生物質での局所的治療が有効である。この場合、ゲンタマイシンは細菌による病原菌を殺す高い用量で局部的に放出される。その他に骨髄炎の炎症を抑えるために抗生物質を取り込ませたカルシウム塩の骨代用材料が知られている(特許文献1)。



骨折後に生じた骨髄炎の治療に於いては感染の鎮静化と骨癒合の両方が必要であり、特に起因菌がMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)である場合には困難を伴うことが多い。これに対応する目的で、生体吸収性のないポリメタクリル酸メチルを主成分とする骨セメント80gに、抗生物質であるバンコマイシン2gとパニマイシン200 mgを混入したセメントビーズを作成し、治療に成功した事例が知られている(非特許文献1)。ただしセメントビーズは生体分解性がないために、感染の治まった術後7週目に抜去のために再手術を行う必要があった。



一般に骨髄炎を治療するための医薬品組成物は、抗生物質を局所的に放出することができ、場所を保持する機能を有する材料(インプラント)であることが望まれている。しかしながら従来の方法である、生体親和性の無い材料による場合には細菌を殺すことはできても、材料の異物としての強い炎症反応が、生じる。また、生体吸収性問題の無い材料による場合には抗生物質の放出後に、再手術により材料の摘出を要することが、それぞれ問題点になっている。



(2)口腔外科領域に於ける慢性骨髄炎治療の現況(顎骨手術に於ける問題点):
下顎骨や上顎骨には、(a)う蝕、歯周疾患に継発する歯性の慢性骨髄炎、(b) 悪性腫瘍の放射線治療後の慢性骨髄炎である放射線骨髄炎、(c)バイフォスフォネート投与による慢性骨髄炎が多く、しかも治療が困難なために問題となっている。また、顎口腔外科領域に頻発する嚢胞摘出後の感染を防止しつつ骨腔を補填できる材料や、抗生物質を含有し生体吸収性もある骨接合材料の開発が課題となっている。
慢性骨髄炎の治療は、(a)原因歯の抜去、(b)感染骨髄の外科的除去、(c)全身的、局所的抗生物質療法からなる。特に(c)抗生物質療法は、術後早期から開始され、かなりの長期間にわたる場合が多い。しかし、骨内への抗生物質の移行は不十分で、従って完全治癒の可能性は低く、患者には大きな負担となっている。



従来の抗生物質である、トシル酸スルタミシリン製剤では(ファイザー社、ユナシン)、1日750-1125mgを2~3回に分けて分服する。このように抗生物質を頻回に長期間にわたって服用する必要があった。これは薬剤の病巣や組織内移行が悪かったためである。最近はこれらの問題を解決するために、3日間の服用(毎日2錠(500mg))で7日間
効果の持続するアジスロマイシン製剤(ファイザー社、ジスロマック)が開発されている。しかし服用回数や組織移行性が改善されたのみであり、長期の服用を必要とする点で未だに問題が未解決のまま残っている。



動物ではあるが、長期服用の改善を目的とした研究例がある(非特許文献2)。ここでは抗生物質としてゲンタマイシンやクリンダマイシンを含んだポリメタクリル酸メチルのビーズを炎症モデル動物(ワラビー)の下顎骨に埋め込んだ事例が報告されている。しかしながら、整形外科領域での骨髄炎治療の場合と同様な問題点、基材による炎症や再手術の必要性は依然として残っている。



(3)口腔外科や整形外科に用いられる生体材料の現況:
近年の生体材料学の急速な進展によって、多くの生体内で吸収されて組織置換される材料が開発されている(非特許文献3)。用いられる材料には、リン酸カルシウム系のセラミックス材料、ポリ乳酸やポリグリコール酸やポリ乳酸グリコール酸共重合体のような合成高分子材料、コラーゲンやゼラチンなどの天然高分子材料、腸線などの生物由来材料に分類される。一般的な用途として、外科手術時の組織の縫合、固定、被覆、ステントなどの形態保持、補強や骨欠損の補填、組織誘導の足場、薬剤を徐放するコーティング材としての利用が挙げられる。このうち、口腔外科領域や整形外科領域に於いては、主に組織置換される材料として手術用縫合糸、骨接合剤、骨欠損補填剤が臨床応用されている。近年の開発例としては、ポリ乳酸とヒドロキシアパタイトを圧縮成型した吸収性骨接合剤(非特許文献4)が知られている。



(4)天然物や生理活性物質を用いた、シリカ作成法の現況:
生体材料に限らず、一般的な無機質素材であるシリカ合成には、ゾル-ゲル法が多く用いられる。これは、アルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン Si(OEt)4)を酸性条件下(例えばpH 1.5~3.0)での水―メタノール(例えば1:1)混合溶媒中で、加水分解と脱水縮合によりSiO2固体を生成する方法である。同様に塩基性条件下でもSiO2固体を生成することができる。通常は均一系で反応を進行させている。



ゾル-ゲル法は生体材料の作成に多用されているが、最適なpHが生理的pHの範囲外にある点で問題となっている。医薬品や蛋白質をシリカへ封入するにはリン酸緩衝液の緩衝範囲内(pH 6.2-8.2)でシリカ形成を行うことが望まれている。



天然物や高分子化合物を用いてシリカを作成した例として、天然物や高分子化合物のアルコキシシランから誘導されるシリカの作成例がある。例えば、糖、糖酸、糖アルコール、ならびにグリセロール、ソルビトール、マンノース、およびデキストランを含む多糖類由来アルコキシシラン(特許文献2)やポリオール由来のテトラアルコキシシラン(特許文献3)を用いている。これらの方法の特徴は、一般に用いられるシリカ出発原料、テトラエトキシシランではなく、天然物や高分子化合物から合成・単離されたアルコキシシランを出発原料として用いる点にある。



(5)シリカを用いたインプラントの現況:
シリカをインプラントとして臨床応用した例には、リン酸カルシウム系ガラスが多い。特にバイオガラスと呼ばれるNa2O-CaO-SiO2-P2O5系ガラスは、骨と直接結合する最初の例として知られている(非特許文献5)。ここに於いてシリカの成分SiO2が用いられているのは、生体適合性の期待されるリン酸カルシウムそのものでは強度が不足して脆い材料になりやすかったこと、ゾル-ゲル法により材料を作成できること、の2点の理由が考えられる。



そのほかのインプラントとして、予め作成したシリカ繊維を用いた、繊維強化型医療用
インプラント(特許文献4)。ゾル-ゲル法により作成したシリカを用いる、ケイ酸カルシウム組成物(特許文献5)などがある。



一般にはシリカそのものでは、強度はあるものの、生体適合性が低いと考えられている。そこで、シリカの生体適合性を改善する方法として、ゾル-ゲル誘導シリカ系生物学的活性ガラス上にカルシウム-ホスフェート皮膜を生成させて生体適合性を付与した事例も報告されている(特許文献6)。



(6)シリカを用いた薬物放出体の現況:
組織置換を目的とするインプラントには、組織形成を促進する分子を放出する機能を持つものが知られている。例えば骨形成を目的として、酸性メタノール水溶液(水5.4mL、テトラメトキシシラン5.4mL、メタノール5.0mL、1N HClaq.10μLの混合物)を用いたゾル-ゲル法によってサイトカインであるTGF-β1を取り込ませた生理活性ガラスが作成されている(特許文献7)。



その他に、生理活性蛋白の安定な封入を目的として、少量の酸を添加(水600μLに0.1N
HClaq. 0.5μL)したジグリセリルシラン(0.2g)水溶液に、微量の血液凝固第Xa因子(0.011μg)を封入した、ゾル-ゲル法による実施例が開示されている(特許文献2)。これらは何れも酸の添加によるゾル-ゲル反応の進行や、多量のアルコールを用いた均一系水溶液でのシリカ形成を行っている点に問題がある。



(7)口腔外科学の視点から見た新材料の必要性:
近年,ポリ乳酸を代表とする生体吸収性材料の研究開発が進み,一部分は既に日常臨床に使われている.歯科口腔外科臨床における生体吸収性材料の適用は,顎骨骨折の場合の骨接合プレートなどから,薬剤の局所的持続的投与、手術後の骨腔の補填材などへの応用などが幅広く考えられる。一般にポリ乳酸に加えて多く検討される材料にはリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトやこれらの複合材料があるが、分解の遅いことや、血流中への移行による塞栓が強く懸念されるために、口腔外科学分野においてほとんど使用されていない。そこでリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトを使わずに、抗生物質を局所投与できる新規な生体吸収性材料が求められている。

【特許文献1】特開2006-167469号公報

【特許文献2】特表2005-528445号公報

【特許文献3】特表2005-536625号公報

【特許文献4】特表2001-514049号公報

【特許文献5】特表2003-506391号公報

【特許文献6】特表2000-513714号公報

【特許文献7】特表平10-503210号公報

【非特許文献1】河野稔文ら、東日本整災会誌、14巻、539-543ページ、2002年

【非特許文献2】M. P. HartleyとS. Sanderson. Austaralian Veterinary Journal, 81巻, 742-744ページ, 2003年

【非特許文献3】根岸靖雄ら、生体材料、19巻、27~35ページ、2001年

【非特許文献4】松末吉隆、骨・関節・靱帯、17巻、1243~1251ページ、2004年

【非特許文献5】Larry L. Hench、Journal of Materials Science: Materials in Medicine、17巻、967-978ページ、2006年

産業上の利用分野


本発明は、薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液を調製することによって、界面においてアルコキシシランを加水分解し、薬物-シリカ封入体を生成させる方法に関する。本発明はまた、前記方法によって得られた薬物-シリカ封入体を生体に許容される支持材と混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
薬物のシリカ封入体の製造方法であって、アルコキシシランと反応してシリカを生成させることができる基を有する薬物の水性溶液の層とアルコキシシランの液層からなる二層分離液を、薬物の水性溶液の層の上層にアルコキシシランの液層を加えるか又はアルコキシシランの液層の上層に薬物の水性溶液の層を加え、静置することにより調製して、該二層分離液の界面において薬物のシリカ封入体を生成させることを特徴とする方法。

【請求項2】
前記水性溶液のpHが6.2~8.2であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記水性溶液のpHが6.5~7.5であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【請求項4】
薬物の水性溶液が、薬物がリン酸緩衝液に溶解した水性溶液であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。

【請求項5】
薬物が、細胞壁合成阻害作用型抗生物質、細胞膜阻害作用型抗生物質、核酸合成阻害作用型抗生物質、蛋白合成阻害作用型抗生物質、葉酸代謝経路阻害型抗生物質、βラクタマーゼ阻害薬、サルファ薬、抗感染症薬、および防腐剤からなる群より選択される少なくとも一つの薬物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。

【請求項6】
薬物が、アンピシリン、バカンピシリン、アモキシシリン、ピブメシリナム、アモキシシリン、スルタミシリン、ピペラシリン、アスポキシリン、ベンジルペニシリン、クロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン、セファロクル、セフロキサジン、セファドロキシル、セフィキシム、セフテラムピボキシル、セフロキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフォチアムヘキセチル、セフジニル、セフチブテン、セフジトレンピボキシル、セフカペンピボキシル、セファゾリン、セフォゾプラン、セフメタゾール、セフォチアム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフメノキシム、セフトリアキソン、セフタジシム、セフォジシム、セフピロム、セフェピム、ファロペネム、イミペネム、パニペネム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、アズトレオナム、バンコマイシン、テイコプラニン、ホスミシン、硫酸ポリミキシンB、硫酸コリスチン、グラミ
シジンS、アンホテリシンB、レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、ガチフロキサシン、プルリフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサン、リファンピシン、ジベカシン、トブラマイシン、アミカシン、イセパマイシン、ミクロノマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ロキタマイシン、ジョサマイシン、ロキスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、テリスロマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、トリメトプリム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、サルファメトキサゾール、サラゾピリン、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、グリセオフルビン、アムホテリシンB、5-フルオロシトシン、フルコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカビル、イドクスウリジン、アマンタジン、インターフェロンγ、リバピリン、ラミプジン、メトロニダゾール、チニダゾール、フルコナゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、ジエチルカルバマジン、プラジカンテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、リネゾリド(linezolid)、スペクチノマイシン、ネチルマイシン、シソマイシン(sisomycin)、リンコサミン(lincosamin)、ラモプラニン(ramoplanin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ナイスタチン、フシジン酸(fusidic acid)、クロルヘキシジン、およびポリヘキサニド(polyhexanid)からなる群より選択される薬物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。

【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法によって薬物のシリカ封入体を製造し、得られたシリカ封入体を、生体に許容される支持材と混合するか、または該支持材にカプセル状に包み込むことを特徴とする、医薬組成物の製造方法。

【請求項8】
生体に許容される支持材が生体内分解性ポリマーである、請求項7に記載の方法。

【請求項9】
生体内分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリデプシペプチド、およびポリアミノ酸からなる群から選択される少なくとも一種類以上のポリマーである、請求項8に記載の方法。

【請求項10】
医薬組成物が、骨髄炎の治療用または予防用である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。

【請求項11】
医薬組成物が、骨腔補填剤または骨接合剤である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
産業区分
  • 薬品
  • 高分子化合物
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2007108375thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、下記までご連絡ください


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close